領収書の控えの扱い方は?必要な理由や紛失した場合についても解説

控え書類

領収書を発行した際、発行側が控えを保存することは重要です。取引の証拠を残しておくことで、後に取引内容の確認が必要となった場合に領収書と控えを照合できるうえ、売上の確認もスムーズに行えるからです。

本記事では、領収書に関する基本的な知識や控えの保存が必要な理由、紛失した場合の対処法、おすすめの保存方法などをご紹介します。

とくにそれぞれの保存方法にはメリットとデメリットがあるため、正しく理解したうえでどういった方法を採用するか考えなければなりません。領収書の知識を深め、自社に最適な保存方法を選択できるようになりましょう。

領収書に関する基本知識

領収書は、金銭のやりとりが発生したことを証明する書類です。金銭を受け取った側が発行し、支払った側が受領します。経理上重要な書類であり、紛失しないよう厳重に保管しなければなりません。

領収書に関する基本知識として「領収書は正確に管理・保存する必要がある」「領収書に記載すべき項目」「領収書の発行時には控えが出る」の3点を解説します。

領収書は正確に管理・保存する必要がある

受け取った領収書は、一定期間の保管が法律で義務付けられています

法人か個人事業主か、青色申告か白色申告かで保管する期間は変わりますが、基本的には事業年度における確定申告書の提出期限の翌日から、7年保管する必要があります。長期の保管に耐えられるような態勢を、事業者として整えておかなければなりません。

領収書を紛失してしまうと、税務調査の際に問題視されてしまう恐れがあります。保管方法を工夫して、紛失リスクを極力減らすようにしましょう。領収書を電子化すれば、保管スペースを削減しつつ、あとで必要になった際に取り出すことも簡単になります。

領収書に記載すべき項目

消費税の仕入税額控除を受けるためには、領収書に規定の項目が記載されている必要があります。必要な項目は、以下の通りです。

  • 領収書を発行した事業者の名前および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引の内容(但し書き)
  • 取引の金額(税率ごとにまとめて)
  • 消費税額等
  • 領収書を受け取る事業者の名前(宛名)

インボイス制度の導入により、登録番号や消費税額の記入が必要となっていますので注意してください

また高額な取引に関しては、金額に応じて収入印紙の貼付が必要です。領収書の額面と収入印紙の金額は、以下のように対応しています。

  • 5万円未満の取引……収入印紙不要
  • 5万円~100万円の取引……収入印紙200円分
  • 100万1円~200万円の取引……収入印紙400円分
  • 200万1円~300万円の取引……収入印紙600円分
  • 300万1円~500万円の取引……収入印紙1,000円分
  • 500万1円~1,000万円の取引……収入印紙2,000円分

領収書の発行時には控えが出る

領収書を発行した側は、基本的に控えを保存します

領収書のなかには二枚つづりになっていて一枚目の内容が二枚目に転写されるものがあるため、発行側は転写されたものを控えとして保存します。

また、単純に発行した領収書と同じ内容を控えとして、別途発行も可能です。この場合は、領収書の控えであることが誰の目にも明らかになるよう、目立つ印を控え側に入れておくようにしてください。

領収書を受け取った場合、一定期間の保管が法律で義務付けられていますが、領収書の控えも同様です。長期の保管が必要となるため、保管方法を整備し、紛失しないような態勢を整えておきましょう。

領収書の控えは保存しなくてはならない

領収書を受け取った側が一定期間保存しなければならないように、発行側は控えを保存しておく必要があります。保管方法を工夫して、紛失しないように気をつけましょう。

領収書の保存に関連して「領収書の控えの保存期間」「欠損金の繰越控除をするには?」の2点をお伝えします。

領収書のような書類は、帳簿と同じく一定期間の保管が法律で義務付けられています。これは、領収書の控えも同様です

法人か個人事業主か、青色申告か白色申告か、領収書がインボイス(適格請求書)かどうかで保管する期間は変わりますが、基本的にはその事業年度における確定申告書の提出期限の翌日から、7年保管する必要があります。長期の保管に耐えられるような態勢を事業者として、整えておかなければなりません。

領収書の控えを紛失してしまうと、税務調査の際に問題視されてしまう恐れがあります。保管方法を工夫して、紛失リスクを極力減らすようにしましょう。領収書を電子化すれば、保管スペースを削減しつつ、あとで必要になった際に取り出すことも簡単になります。

法律上の理由以外にも、領収書に記載された金額に間違いがあった場合に、控えがあると照合がスムーズになるといった利点が存在します。領収書の控えは、保管するよう心がけましょう。

欠損金の繰越控除をするには?

欠損金の繰越控除を受けるには、領収書を10年保管しなければなりません

「前年度の赤字額を翌事業年度に繰り越すことで、法人税額を節税できる」仕組みのことを、欠損金の繰越控除といいます。損金の繰越控除を利用して、企業は法人税の負担を複数年度に分散可能です。

企業活動のなかでは、特定の年度のみ大幅な赤字を計上してしまう恐れも十分に考えられます。そういった場合に、欠損金の繰越控除は大きな効果が期待できるため、制度を利用できるよう領収書を控えも含めて保管しておきましょう。

領収書の控えが必要な理由

領収書の控えを保存することは法律で定められた義務ですが、それ以外にも控えがあることで役に立つ場面が存在します。実務上のどのような場面で領収書の控えが必要となるかを、理解しておきましょう。

領収書の控えが必要な理由として「取引をした証明になる」「金額の間違いに対応しやすい」「売上確認もしやすい」の3点をご紹介します。

取引をした証明になる

領収書の控えを残しておくことで、取引をした事実の証明ができます

領収書の控えは領収書本体と内容が同じであることから、控えを保管しておくと自社でどういった取引を行ったかの確認がスムーズに行えます。税務調査の際に必要な取引記録の証明としても有効です。

自社がどのような取引を行ったか確認する行為は、企業活動のなかでも基本的かつ重要です。確認の頻度も多くなることが予想されるため、控えを保管して必要なタイミングですぐに提示できるような態勢を整えておくことをおすすめします。

もし控えを残していないと取引の事実を証明することが難しくなり、税務調査で問題として指摘されてしまう恐れがあります。ほかの手段で取引の事実を証明する場合も、業務負担増は免れません。そういった事態を避けるためにも、領収書の控えをしっかりと保管しておきましょう。

金額の間違いに対応しやすい

領収書の控えがあれば、記載した金額に間違いがあった場合の対応も容易です

取引が終了したあとで、取引相手から領収書の内容に間違いがあったと申告される場合があります。そういった場合に領収書の控えを用意していないと、内容の照合がすぐには行えず、手間がかかってしまいます。

金額の間違いはあったと申告された際、対応が遅れることで取引相手が不満を感じてしまう恐れがあります。取引相手と長期にわたって友好な関係を築いていくためにも、相手に不満を感じさせるような事態は避けたいところです。

控えを保管していれば、取引相手の言い分と控えの記載内容を照らし合わせるだけですぐに確認が可能です。

内容に間違いのある領収書を発行しないことが最重要なのは当然ですが、不測の事態が発生した際に困らないで済むよう、領収書の控えはしっかりと保管しておきましょう。

売上確認もしやすい

領収書の控えを保管していれば、売上の確認もスムーズに行えます

領収書の控えを保管していないと、売上の確認は別途書類やデータを調べて算出する必要があります。結果として事務負担が増えてしまい、人的コストの増加も避けられないでしょう。さらに悪いケースとしては、売上の確認ができないといった事態に陥るかもしれません。

売上の確認ができない状況は、企業にとって望ましくありません。取引の証明でもある領収書は、売上の確認において最重要といっていい存在です。いつでも確認がとれるよう、わかりやすい形での保管をおすすめします。

領収書の控えを保管していれば、集計するだけで売上の確認が可能です。不要な事務負担を経理担当者にかけないためにも、普段からしっかりと領収書の控えを作成しておいて、紛失しないよう厳重に保管しておくように心がけましょう。

領収書の控えを紛失した場合

領収書の控えを紛失した場合、業務にさまざまな支障が出る可能性があります

領収書の控えがないと取引の事実が証明できず、税務調査の際に問題視される恐れがあります。取引相手から記載内容に間違いがあったと申告された場合の対応も困難です。取引内容の照合が簡単にできないため、対応に時間がかかってしまうでしょう。

さらには売上の確認が難しくなり、事務負担が増えてしまうといったリスクもあります。法的な問題はもちろんのこと、取引相手に迷惑をかけないためにも、領収書の控えは厳重に保管しておいて、紛失しないよう気をつけてください。

おすすめの領収書の控えの保存方法

おすすめの領収書の控えの保存方法として「紙のまま保存する」「未渡しの領収書はそのまま保存する」「電子データに変換して保存する」の3点をお伝えします。

紙のまま保存する

紙で発行した領収書の控えは、そのままファイリングして保管できます

取引相手や取引内容、月や年度といった基準で区別して保管することがおすすめです。ファイルのカラーリングや棚の仕切りを工夫して、業務が行いやすい形式での保管方法を社内で検討しておく必要があるでしょう。

紙での保管は、特別な知識や設備を導入する必要がなく、手軽な管理方法です。しかし、保管スペースの確保がある点や、紛失リスクがやや高いといったデメリットも無視できません。領収書を発行する量によっては、ほかの保管方法を検討してもいいかもしれません。

未渡しの領収書はそのまま保存する

書き損じによって領収書を再発行した場合、手元には未渡しの領収書が残ることになります。未渡しの領収書は、破棄せずに保存しておくようにしましょう

領収書を発行する際は細心の注意を払い、ミスがないように気をつけて行うことが重要ですが、書き損じが発生してしまった場合には、ミスをした事実を証明することが大事です。

税務調査の際にミスをした分を破棄していると不正を疑われてしまう恐れがあります。

未渡しの領収書を保管していると、通常の領収書と混ざってしまうかもしれません。書き損じた領収書は、バツ印をつけるといった方法で見分けがつくようにしておきましょう。通常の領収書と混同しないよう、保管場所も分けておくとさらにいいでしょう。

電子データに変換して保存する

領収書の控えは、電子データとしても保管できます

領収書の電子保存は、以前まで承認が必要な導入の難しいものでした。しかし、電子帳簿保存法の改定により、2023年現在では手軽に電子化が行えます。最初から電子データとして発行できますが、紙の領収書をスキャンして電子データとして保管することも可能です。

領収書の電子データ化は保管スペースの削減や、領収書の確認が手軽に行えるといったメリットがありますが、一方で導入時ソフトの購入や社員教育といったコストがかかってしまうというデメリットもあります。双方を天秤にかけ、導入を慎重に検討しましょう。

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まとめ

領収書は金銭のやりとりが発生した際に発行される書類です。発行した側は発行と同時に領収書の控えを作成し、経理上重要な書類として保管しておきます。

領収書は基本的に7年の保管が法律上義務付けられており、控えも同様です。欠損金の繰り越し控除を受けるためには、10年間の保管が必要となります。赤字分を翌年度以降に分散できる有効な制度なので、活用できるように領収書の控えを保管しておきましょう。

領収書の控えは取引の証明になるだけでなく、記載内容に間違いがあった場合の確認を容易にしたり、売上の確認がしやすくなったりといった効果があります。領収書は紙での保管のほか、電子データとしても保管できます。

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