日商簿記3・2・1級は転職に有利?難易度や転職市場での評価の違いを転職サポート歴20年以上のベテランが徹底解説!

会計資格の代表である「日商簿記検定」ですが、「難易度はどれくらいなのか」「実際のところ転職市場でどのように評価されているのか」気になる方は多いと思います。

本記事では、長年キャリアサポートの専門家として活躍されているプロに、日商簿記の各級の取得難易度や転職市場での価値を聞いてみました。

<お話しを聞いた方>
中園隼人(なかぞの・はやと)

経歴
2001年3月 早稲田大学人間科学部 卒業
2003年3月 早稲田大学大学院人間科学研究科 修士課程修了
2003年4月 株式会社MS-Japan 入社(東証プライム市場:6539)
2013年6月 同社取締役 就任
2020年3月 同社取締役 退任
2020年4月 フリーランスとして税理士法人・コンサルファーム等の顧問に複数従事
2021年4月 CPAキャリアサポート株式会社ゼネラルマネージャー 就任
2022年9月 同社代表取締役 就任
現在に至る

1.簿記とは

簿記とは「帳簿記入」の略語で、企業のお金の流れをルールに沿って記帳する知識や技術そのものを指します。

つまり、会社がどのような経営活動をしているのか、どれだけ利益を出しているのかを可視化するためにルールに従って記録する知識・技術のことです。

簿記検定に合格することで、この「簿記」の知識がどれだけあるかを証明することができるようになります。

ただし、簿記検定は3級から1級まで三段階用意されており、各級で難易度や転職市場での価値はバラバラです。そこで、ここからは日商簿記の各級の取得難易度や転職市場での価値についてご紹介していきます。

2.会計職へのエントリーとして最適な日商簿記3級

まずは、一番難易度が低い簿記3級からご紹介させていただきます。

2-1【日商簿記3級の難易度】簿記3級は平均合格率40%で比較的簡単

日商簿記3級は、簿記の基礎知識を学ぶ資格です。

日商簿記3級では中小企業の簿記の基本的な原理や帳簿の記録方法、決算の基礎知識などを学びます。

ビジネスパーソンが持っておくべき基本的なお金の流れを理解できるため、会計や経理業務だけでなく幅広く活用できます。

日商簿記3級は平均合格率が40%と高く、難易度も比較的簡単です。

およそ100時間〜150時間での学習で合格が可能と言われています。

受験者の2〜3人に1人は合格できるので、簿記初心者でも挑戦しやすいと言えます。

▼日商簿記3級の難易度や試験内容についてより詳細に知りたい方はこちらをご覧ください。
「簿記3級とは簿記の入門資格!難易度・試験内容・取得メリットまとめ」

2-2【日商簿記3級の就職・転職での評価】簿記3級は「会計職に就きたい」というやる気を示せる

Q.キャリアサポートの専門家の中園さんから見て簿記3級は転職市場でどのように評価されていると考えますか?

日商簿記3級は、取得しやすいですし、「会計職に就きたい」ということを端的に示せるいい資格です。

やる気があることを示せますし、仕訳についてもある程度知っているということの裏付けにもなるので、仮に似たような年齢・能力の人材が採用時に並んだとしたら、日商簿記3級を持っている人のほうが評価されるでしょう。

未経験から会計職に就きたいのであれば、エントリーとして最適な資格だと思っています。もちろん、20代など若い方で、やる気があって元気な方であれば、資格は問われないでしょうが、「会計職に就きたい」というアピールは強いに越したことはありません。

「20代より上でも、簿記3級を取得して、未経験で会計職になれますか」

と聞かれますが、お住まいの地域によっても違うので、一概には言えないのが実情です。東京は人が多い分、競争も厳しいです。未経験者が、最初から正社員で採用されるのは難しいかもしれません。

一方で、地方都市であれば、若い人が少ないので年齢が上がっても採用される可能性が高くなります。経理経験のない主婦の方や、30代の方でも会計事務所で正社員採用されるようなこともあります。

3.評価が高く、資格として「コスパ・タイパ」がいい日商簿記2級

続いて、難易度が比較的高いものの転職市場で評価される簿記2級についてご紹介させて頂きます。

3-1【日商簿記2級の難易度】簿記2級は平均合格率30%で難易度は比較的高い

日商簿記2級とは、商業簿記と工業簿記の両方を学び企業の財務諸表作成・経営管理ができる知識を身につける資格です。

日商簿記3級では企業のお金の流れを財務諸表に記録する知識を中心に学びますが、日商簿記2級ではそこから一歩進み帳簿記入だけでなく経営管理する知識も学びます。

つまり、日商簿記2級までを取得すると、財務諸表の作成と経営管理の双方が理解でき会計や経理業務の即戦力として活躍できるようになります。

日商簿記2級の平均合格率は約30%であり、比較的難易度が高いです。

およそ250時間程度の学習で合格が可能と言われています。

10人中3人程度しか合格できないため、比較的難易度が高いと言えるでしょう。

▼日商簿記2級の難易度や試験内容についてより詳細に知りたい方はこちらをご覧ください。
「簿記2級とは専門的スキルが身につく資格!難易度・試験内容まとめ」

3-2【日商簿記2級の就職・転職での評価】簿記2級は会計資格としてきちんと評価される

Q.キャリアサポートの専門家の中園さんから見て簿記2級は転職市場でどのように評価されていると考えますか?

「日商簿記2級以上」を条件としている会社はよくあります。日商簿記3級はあくまでもエントリーであり、ちゃんと評価されるのは2級以上でしょう。

転職者に人気があるのが、給料が高い事業会社の経理です。

事業会社にも上場企業・スタートアップ・外資系・金融などいろいろありますが、圧倒的に数が多いのが中小企業です。

ただし、中小企業はどうしても人数が少ない中で経理を回すので、即戦力人材が求められがちです。日商簿記2級を取得したというだけでは、なかなか採用にたどり着くのは難しいのが正直なところです。

一方、人気の事業会社の経理にこだわらず、会計事務所や税理士法人に目を向ければ、採用可能性はグッと高くなります。

税理士試験の受験者数がピーク時より半減していたり(最近は上昇していますが)、業界の高齢化が進んでいたりしていることから、「可能性がある人」を採用する傾向にあります。
家庭や金銭的事情が許すのであれば、パートやアルバイトでもよいので会計事務所や税理士法人で1〜2年経験を積むと、その次の転職時に事業会社の経理に正社員として採用されやすくなります。

▼日商簿記2級のコースはこちら
「日商簿記2級のコース一覧」

4.実務経験を求められがちな日商簿記1級

最後に非常に難易度が高く、専門性の高い簿記1級についてご紹介させて頂きます。

4-1【日商簿記1級の難易度】簿記1級は非常に難易度が高い

日商簿記1級とは、商業簿記と工業簿記の両方を学び企業の財務諸表作成・経営管理ができる知識を身につける資格です。

日商簿記1級は帳簿記入・経営管理の専門的な知識だけでなく、会計基準や会社法などを理解し法規に沿って経営分析をするスキルを身につけます。


日商簿記2級や3級と比較すると知識量と専門性が格段に上がります。

ただし、それだけに日商簿記1級の平均合格率は約10%であり、かなり難易度が高いです。

合格にはおよそ500〜2000時間の学習が必要と言われています。

10人中1人程度しか合格できないため、非常に難易度が高いです。

▼日商簿記1級の難易度や取得のメリットについてより詳細に知りたい方はこちらをご覧ください。
「簿記1級を取得する8つのメリット!スペシャリストとして活躍できる」

4-2【日商簿記1級の就職・転職での評価】簿記1級のみではなく実務経験を積むと高く評価される

Q.キャリアサポートの専門家の中園さんから見て簿記1級は転職市場でどのように評価されていると考えますか?

日商簿記1級は非常に難しい試験です。

学歴や転職回数など、履歴書の形式的なことを気にするような風土の会社であれば評価されるでしょう。

ただ、どうしても世の中的には「日商簿記2級以上」という求人が多く、日商簿記2級にプラスして、経理の実務経験がある方と、日商簿記1級を持っているだけの未経験者では、圧倒的に前者が勝ちます。

「どうしても未経験から経理をやりたい!」というのであれば、日商簿記1級を振りかざすのではなく、「パートやアルバイトからのスタートでもいい」という覚悟で、会計事務所や税理士法人で、会計ソフトに仕訳を入力するところから何でもやって、ある程度の期間、しっかり業務経験を積んでいくのが良いと思います。

そうすれば、日商簿記1級を取得できるくらい能力の高い人材なのですから、上手くキャリアアップ転職をして、給料も待遇もグレードアップさせていくことができる可能性があります。

▼日商簿記1級のコースはこちら
「日商簿記1級のコース一覧」

5.日商簿記に+αするとよい能力

Q.中園さんは会計職に就くのに、日商簿記にプラスしてどんな能力があれば評価されると考えますか?

①会計ソフト

freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトはスタートアップでよく使われます。個人事業主を除くと、なかなか個人で触る機会は少ないでしょうから、CPAラーニングなどを利用していただければと思います。

上記以外だと、弥生会計や勘定奉行などもよく使われていますね。CPAラーニングではこのあたりもフォローしているので使ってみてください。

▼会計ソフトに関する講座一覧はこちらから
「クラウド会計のコース一覧」

②システム関連

どこの会社でもITリテラシーが高いことは評価される傾向にあります。

Google Workspaceの、ドキュメント、スプレッドシート、スライドなど、Googleの仕組みとか、その他の業務システムについてよくわかっていると高く評価されます。

他にも、Excelを使いこなせると、評価は高くなります。

▼会計パーソンのためのExcel講座はこちらから
「Exelのコース一覧」

③英語

外資系企業の経理であれば、英語は必須です。逆に、高い英語力があれば、経理としての経験が浅くても採用される可能性があります。求められるのは、社内公用語である英語ができて、本国とのやりとりがスムーズな人です。英語は相当な武器になるでしょう。

6.まとめ

今回は「日商簿記検定」各級の取得難易度や、転職市場での評価についてご紹介させて頂きました。

各級の特徴を理解することで、目指すべき級が決まった方も多いのではないでしょうか。

最後にこの記事の内容を振り返ってみましょう。

〇簿記3級は難易度が比較的簡単で、転職する際には会計職に就きたいというやる気を示せる。

〇簿記2級は難易度が比較的高いが、転職市場において会計資格としてきちんと評価される。

〇簿記1級は非常に難易度が高い。簿記1級と共に実務経験があると非常に高く評価される。

項目簿記3級簿記2級簿記1級
難易度比較的簡単比較的高い非常に高い
勉強時間100~150時間250時間前後500~2000時間
合格率約40%約30%約10%
転職市場での評価会計職に就きたいというやる気を示せる会計資格として評価される実務経験があると非常に高く評価される

最後に日商簿記を取得した後にぜひ活用して頂きたい転職サービスを2つご紹介させて頂きます。

6-1 未経験求人を多数掲載!会計ファイナンス人材特化型求人サイト「CPA Jobs」

経理・会計未経験から日商簿記を取得して転職を考えている方にはCPA Jobsをおすすめします。

CPA Jobsは公認会計士試験合格実績トップクラスの 「CPA会計学院」が運営している、会計ファイナンス人材特化型の求人サイトです。

業務未経験でも安心してチャレンジできる優良求人を積極的に掲載しており、会計実務未経験でも、日商簿記などの資格や会計の知識を評価してくれる企業が多数あります。

そのため、異業種からの転職や、これから会計分野に挑戦したい方にもおすすめな求人サイトです。

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6-2 会計ファイナンス人材特化型転職エージェント「CPASSキャリア」

経理・会計の経験があり、日商簿記を取得してさらなるキャリアアップを目指す方にはCPASSキャリアをおすすめします。

CPASSキャリアは会計ファイナンス人材に特化した転職エージェントです。

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この記事を監修した人

中園隼人

監修者中園隼人

監修者中園隼人

CPAキャリアサポート株式会社代表取締役 2003年に早稲田大学大学院卒業後、株式会社日本MSセンター(現株式会社MS-Japan:6539)に新卒入社。2013年に取締役就任。士業の人材紹介事業の統括者として株式上場にも貢献。2020年にフリーランスとして独立。2021年よりCPAキャリアサポート株式会社に参画し、2022年に代表取締役就任。現在に至る。

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