予算管理とは、予算と実績を比較し分析する仕事です。異常が起こったときにはなるべく早く改善しなくてはならず、企業の健全な経営を保つためには、状況の把握は欠かせません。予算管理のやり方や目的、コツなどをご紹介します。
予算管理は、利益を生み出すために欠かせない大切なものです。
現状を把握して、業績が悪化した場合は分析、改善策を検討します。
しかし、実際に業務を行ったことがないと、どのように管理をしていいのかイメージしにくいですよね。
予算管理の目的を明確にし、やり方や業務効率化のコツなどをくわしく解説します。
目次
予算管理とは
予算管理とは経営管理の一つであり、新しい期が始まるときや月次単位で作成した予算と実績を比較し、適正な管理を行うことです。
課題や問題点がある場合は、原因追及のため分析も行います。
予算管理の担当者は、会計の基礎知識だけではなく、財務諸表や予算報告書を読み取るスキルが必要です。
また、各部署から正確な情報を得るため、コミュニケーション能力も求められます。
予算管理の目的
予算管理の主な目的は、会社の利益目標の達成。
利益を生み出すには、正確な予算管理が欠かせません。
具体的には、自社の目標を社内に共有し、現状の把握を行い、利益目標を達成し安定した経営につなげることです。
自社の目標を社内の共通目標にする
売上数値や原価や管理費などの削減すべきコストの目標値などを提示し、社内で目指すべき着地点を共有します。
具体的に数値で表すことにより、多くの人に共有しやすくなります。
現状を把握する
予算管理を行うと、計画通りに実行されているか、現状の把握ができます。
計画からずれたときは、原因を追究し改善策を検討しなくてはなりません。
また、計画とかけ離れ業績が悪化している場合、事業撤退などの判断材料にもなります。
一方、計画よりも数値がいいときも、原因の追究が必要です。
月次で管理している場合、単月で見ると利益がアップしていても、次の月に予定していた売上などが早く計上されただけで、長期間で見ると計画通りであることも考えられます。
一時的に利益が増えても安心してはいけません。
経営を安定させる
現状の把握を行うことで、問題点や改善策を早く見つけることができ、経営の安定につなげられます。
予算管理は、経営計画の見直しを行う必要があるのか判断するときも役に立ちます。
市場の動向や世界情勢が変わっても、予算管理を行っていれば異変に気付きやすく適切な対処ができるでしょう。
予算管理で管理すべき4つの予算
管理すべき予算は、売上予算・原価予算・利益予算・経費予算の4つに分類されます。
具体的にどのような予算なのか見ていきましょう。
①売上予算
当期中に達成できる売上高の計画のことを指します。売上目標とほぼ同等の意味です。
売上予算を算出するときは前年の実績を参考にしますが、将来の目標数値から算出するパターンもあります。
モノやサービスを扱う事業であれば、単価を販売予定の数量にかけることで算出が可能です。
ただし、売上予算は市場動向などに左右されやすいため、定期的な見直しと柔軟に対応するスキルが求められます。
②原価予算
原価予算とは、製品やサービスに必要な原材料を仕入れるときにかかる費用などを見積したものです。
損益計算書における売上原価にあたる部分の予算で、原価予算は生産計画と合わせて作成されます。
売上予算同様に市場動向などに左右されやすいため、こちらも定期的な見直しが必要です。
③経費予算
企業活動を継続していくには、売上原価以外に経費もかかります。
経費とは、損益計算書における「販売費及び一般管理費」にあたる部分の予算で、人件費や宣伝広告費、賃貸料・水道光熱費・旅費交通費・交際費などです。
経費予算は製品の原価には含まれないものの、コスト削減は利益アップにつながります。
売上が増えると、営業活動が活発になることから経費も必然的に増えるため、過度な経費削減は従業員に負担をかけるなど、企業活動の継続に影響するため注意しましょう。
経費予算は、売上予算や原価予算と比べると市場の影響などを受けにくいため、予算管理がしやすいことが特徴です。
④利益予算
利益予算とは、売上から原価と経費を差し引いて算出し、最終的な利益目標を明確にするものです。
売上予算が達成できなくても、原価や経費を抑えることができれば、利益予算は達成できます。
反対に売上予算が達成していても、原価や経費が増えていれば、利益が出ないこともあります。
売上から原価と経費を差し引いたのち、次期の計画や投資予定なども考慮しなくてはなりません。
予算管理のやり方
予算管理はPDCAサイクルに沿って行われます。
PDCAサイクルとは「PLAN」「DO」「CHECK」「ACTION」の4つに分かれています。
まずは目標設定を行い、それを実行し、結果を基に課題や問題点を確認したあとに、改善を行う流れです。
PDCAサイクルは一度行えばいいという問題ではなく、何度も改善を重ねることが大切であり、予算管理のみならず企業活動の基本でもあります。
まずは予算編成を行う
予算編成を行う方法は、トップダウン方式とボトムアップ方式の2種類があります。
トップダウン方式は、経営層が決めた予算を基に予算管理をしていく方法です。一方、ボトムアップ方式は、各部門からの予算を積み上げて会社の予算を決定します。
トップダウン方式は、予算計画に時間がかからないことがメリットです。
しかし、現場にとっては非現実的な目標数値であることも多く、従業員に負荷がかかることがあります。
ボトムアップ方式は、現場の意見が反映された現実的な予算計画が立てられますが、時間がかかることに加え、経営方針に合わない予算ができあがる可能性もあります。
実際にはどちらか一つに絞るのではなく、両方の方式を取り入れている企業がほとんどです。
まずは経営層から予算方針が発案され、予算管理部門が各部門へ予算方針を作成します。
各部門は予算案を作成し、予算管理部門と調整を行い、経営層に報告・承認を得る流れが一般的です。
予算に基づいて実行する
予算が決定したら、売上・原価・利益・経費の種類ごとに予算管理を日々行います。
1年の予算計画を月ごとに割り振り、目標設定を行うのが一般的ですが、月単位では大幅にずれることもあるため、日割り・週割りをして進捗率の算出をしましょう。
日々予算を意識して業務を進めていくことが大切です。
期末に予算と実績の分析を行う
計画を実行したら、期末に予算と実績の分析を行います。
分析は定期的に行うことが大切です。
変動が少ない場合は毎月、季節によって変動が大きい場合は、3か月ごとにチェックをするといいでしょう。
分析方法は、差異分析がおすすめです。計画と実績にどのくらい差異があったかを分析する方法で、原因を調べて対処方法を検討します。
誤差が5%以内であれば問題はありませんが、15%以上になると予算編成に問題があったり、市場動向の影響を受けていたり、効率的に製造や販売が行えなかった可能性が考えられます。
リアルタイムで分析を行うことができれば、期末の差異を最小限に抑えることが可能です。
差異分析のほかにも、予算と実績の累計同士を比較する進捗分析や、実績と次月以降の月次予算を合わせて算出する見込み分析なども適切な管理をするのに役立ちます。
予算管理を改善する
予算と実績に大きな乖離があった場合は、原因を調べて改善策を検討しましょう。
予算編成に問題がないのに、実績との差異が大きい場合は、事業の将来性がない可能性も考えられます。
予算編成が正しく行われている場合は、前年度の実績とも比較して、見切りをつけて事業撤退を検討する必要があるかもしれません。
予算管理における注意点
予算管理を行うときに活用されるツールといえばExcelやGoogleスプレッドシートです。
さまざまな部門から集めたデータを集計するにも便利なExcelですが、使用するときは注意しなくてはなりません。
ExcelやGoogleスプレッドシートを使用して予算管理を行う際の注意点を抑えておきましょう。
入力するのに手間がかかる
Excelは手入力が多いため、時間がかかります。
一度マクロなどを組んでしまえば、手入力を減らすことは可能です。
しかし、組織の体制が変更になるたびに、フォーマットや計算式を更新しなくてはならず、手間がかかってしまいます。
人的ミスが起こりやすい
関数を入れたり、マクロなどを活用したり、高度なExcelのフォーマットを作成しても、人が入力する以上、打ち間違えや計算ミスの発生は避けられません。
また、誤って関数やデータを削除してしまう危険性もあります。
リアルタイムで予算管理できない
Excelで管理をすると、データ入力に時間がかかるため、リアルタイムでの予算管理は厳しくなります。
月内にデータを集計できないため、状況の把握ができず、対応が遅れてしまう恐れがあるでしょう。
予算管理のコツ
正確な予算管理を行うには、ExcelやGoogleスプレッドシートの活用だけではなく、システムやソフトの導入を検討しましょう。
すぐにシステムを導入できない場合は、月次単位でも予算を作成する、定期的な見直しなどが不可欠です。
予算管理のコツをくわしく見ていきましょう。
予算管理システムやソフトを活用する
予算管理システムやソフトは、自動的に予算作成や進捗の把握、分析などを行ってくれるため、業務効率化にもつながります。
最近ではクラウド型のシステムもあるため、共有しやすくデータを紛失する危険性もほぼありません。
予算を月次単位でも作成する
予算は年次だけではなく、月次単位でも作成しましょう。
予算はあとから修正されることも多く、短い期間で記録しておくことが大切です。
実行後は実績の集計だけではなく、数か月先の見込みも報告してもらうことにより、さまざまな対策を打ち出すことができます。
適度な目標の達成難易度にする
予算は適度な難易度に設定するのも重要です。
最初から根拠もない達成不可能な目標を掲げてしまうと、従業員のモチベーションも下がってしまいます。
一方、低すぎる目標設定でもやる気が起きません。企業と従業員の成長を止めてしまう恐れがあります。
頑張れば達成できるくらいのやる気の出る適度な難易度に調整しましょう。
予算を定期的に見直し・修正する
月次の予算だけではなく、累計の予算もチェックしましょう。
現時点でどのくらい予算を達成しているのかがわかれば、正確なプランを立てることができ、予算の見直しにも役立ちます。
予算管理に必要なスキルや資格はある?
予算管理に必要なスキルは、財務諸表を読み取る能力です。
資格は必要ありませんが、簿記検定の取得をするのがおすすめです。
簿記3級は会計の基礎知識が学べます。
簿記2級になるとより深く会計の知識が必要です。
簿記2級から必須科目となる工業簿記では、原価計算の方法や経費に関する項目も出題されるため、予算管理に役立つ知識が身に付くでしょう。
また、予算管理にはコミュニケーション能力も必要とされます。
現場の責任者や経営層の意見をまとめ、予算作成が円滑に進むように努めるのも業務の一部です。
コミュニケーション能力を測る資格もありますが、ビジネスマナーや人としての振る舞いを学ぶのであれば秘書検定もおすすめですよ。
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経理業務は全体像がわかればもっと効率的に!
経理の仕事は、伝票起票や経費精算など細かな日次業務が多く、全体像を見失いがちです。
その結果「何のためにこの業務をしているんだろう」とモチベーションの低下に繋がることもあります。
そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
イメージとしては日々の仕事を「点」ではなく「線」として捉えること。
毎日の仕訳にしても、何となく取引金額を入力するのではなく、自社や取引先の財政状態や経営成績を念頭に置いたうえで入力することが大切です。
こうすることで、自社が取引先・借入先に対して、適切に支払いができるのか、あるいは取引先・貸付先から適切に入金が行われるのかを、仕訳と同時に予測できます。
極端な例ですが、こうした「意識的」な仕訳を繰り返すことで、会社の経営状況が見えてきて、黒字倒産を未然に防ぐといったことも。
また、全体像を把握できていると、業務の優先順位を自ずとつけられるようになるので、仕事のスピードがぐっとあがっていきます。
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なぜCPAラーニングで実務の「基本」から「応用」まで理解できるのか
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なぜなら、実務の要点を丸暗記するのではなく正しく理解することで、CPAラーニングの講義を通して学んだことを、自らの業務にも落とし込むことができるからです。
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まとめ
予算管理は企業の存続に欠かせない大切なものです。
予算を作成するのも大切ですが、実行したあとに結果を分析し、問題が起こったときに素早い対処が求められます。
Excelでの管理は人的ミスが起こりやすく時間を要するため、予算管理にはシステムやソフトの活用がおすすめです。
集計などの簡素化により、分析時間を増やし、よりよい改善策を見出すことが可能となるでしょう。
予算管理のスキルを高めたいと思ったときは、簿記検定の取得などにチャレンジしてくださいね。