領収書の保管期間は何年?ケース別で対処方法を解説

領収書は、商取引の支払いの証拠となる書類です。

領収書がない場合、支払いの証拠がないため、税務調査や監査の際に指摘されることがあるので注意しなければなりません。

法人税法や所得税法で求められている保管期間中に領収書が保管されていないと、罰則が適用されることもあるため注意しましょう。

本記事では、領収書の保管期間についてケース別に詳しく解説していきます。

領収書を保管しないといけない理由

領収書を保管しないといけない主な理由は、確定申告などの際に必要となるからです。

領収書は経費が実際に発生し、費用が支払われたことを示す法的な証拠です。

領収書はビジネスが行った取引の正確さと透明性を保証しています。

したがって、領収書がない場合、支払いを行ったことの証拠がありません。

確定申告では、正確に納めなければらない所得税額や消費税額を計算する必要があります。

計算するうえでは、領収書の数字に基づいている必要がありますし、監査や税務調査など、支払いを行った証明を提示することを求められるケースがあります。

そのため、きちんと領収書を保管して、証明を求められたときに支払いを行った証明ができるよう準備しておくことが必要です。

法人には法人税法が、個人事業主には所得税法が適用され、それぞれの規定に従い、領収書の保管期間が定められています。

保管が不適切であると判明した場合、追徴課税などの追加負担が発生するリスクがあるので注意してください。

税務調査官が過去にさかのぼって徴税できる期間は7年間であり、この期間にわたって関連文書を保管することが求められます。

領収書の保管期間は?

領収書やそのほかの財務文書の保管期間は、個人事業主と法人で異なり、確定申告の状況や事業の損益によっても変わります。

ここでは、国税庁の指針に従い、これらの文書をどのように、どの程度の期間保管する必要があるのかを解説します。

個人事業主の場合は5年~7年保管

個人事業主の場合は、確定申告の状況によって領収書を5年、もしくは7年保管することが必要です。

以下では、確定申告の方法である白色申告と青色申告に分けて、領収書の保管期間を解説します。

白色申告の保管期間

白色申告とは、簡易な帳簿(収支内訳書)のみを使用し、確定申告を行う方法です。

白色申告の方式を採用する個人事業主は、原則として関連する領収書や帳簿を5年間保管する義務があります。

5年という期間は、該当する年度の確定申告が締め切られた日から起算します。

しかしながら、税務上の検査や再評価、あるいは不明瞭な取引が疑われる場合など、将来発生する可能性のある問題に備えて、これらの文書をさらに長い期間、実質的には7年間保管することが推奨されます。

なぜなら、国税庁が行う税務調査は、遡って最大7年間の取引記録を対象とする可能性があるからです。

加えて、長期にわたる文書の保管は、事業の財務状況を正確に把握し、必要に応じて適切なビジネス戦略を立てる際にも役立ちます。

青色申告の保管期間

青色申告は、より詳細な帳簿を維持し、特定の税制上の優遇措置を受けることができる確定申告の方法です。

青色申告を行う個人事業主は、一般的に関連する領収書や財務文書を7年間保管しなければなりません。

7年という期間は、所得税法に基づき、各事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から計算されます。

ただし、青色申告特別控除を受けるための要件として申告した前々年度の所得が300万円以下の場合に限り、保管期間が5年間に短縮される特例があります。

この特例は、行政の負担を軽減し、中小企業に対するインセンティブを提供するためのものです。

しかし、税務調査などの可能性も考慮に入れ、できるだけ長い期間、文書を保管しておくに越したことは無いでしょう。

さらに、青色申告を行うことで、事業の正確な財務分析が可能となり、将来的な計画立案や予算編成に有利に働きます。

法人の場合は原則7年保管

法人にとって、領収書やその他の関連書類の保管は、単なる組織的な義務を超えて、コンプライアンスや将来的な財務計画の重要な要素となります。

法人税法の規定により、法人は領収書を原則として7年間保管する必要があります。

この期間は、該当する事業年度の確定申告が終了した翌日から始まります。

法人が領収書のような書類を保管しなければならないのは、会社が行う取引の透明性を確保し、必要に応じて税務当局の調査や評価に対応できるようにするためです。

さらに、7年間の保管義務は、企業が税務上の適合性を維持し、潜在的な税務リスクや罰則から自身を守るためにも重要となります。

長期間の記録保持は、内部監査や財務報告の精度向上、さらには投資家などの利害関係者への信頼性の確保にも寄与します。

収益が赤字だった場合の保管期間

事業が赤字、すなわち課税所得がマイナスの場合、特に青色申告を行っている事業においては、損失を将来の収益に対して控除できるという税務上のメリットがあります。

この税務上特例措置は、欠損金の繰越控除と呼ばれ、青色申告で継続的に確定申告を行っている法人にのみ適用されるものです。

赤字が発生した年度の関連文書、とくに領収書は、通常の7年という期間を超え、最大10年間保管しなければなりません。

この追加の期間(3年)は、欠損金の繰延控除が可能な期間と一致しており、将来的な税負担の軽減や資金流動性の改善に役立ちます。

適切な文書の保管は、欠損金の繰延控除を正当に主張し、税務当局の検証を円滑に進めるために不可欠です。

仕入税額控除を受けている場合の保管期間

仕入税額控除は、消費税法に基づく控除で、事業主が仕入れにかかった消費税を納税額から差し引くことができるというものです。

仕入税額控除を利用するには、関連する領収書や取引文書を最低7年間保管することが要求されます。

領収書の保存が求められるのは、消費税の正確な計算を保証し、税務調査の際に必要な書類を提供できるようにするためです。

領収書の保管方法について

現代のビジネス環境では、領収書の管理は会計処理の信頼性と透明性を保証するために不可欠です。

適切な領収書の保管方法を理解し、実行することは、税務調査や内部監査に対応するため、また、日々の経理業務を円滑に行うためにも重要です。

以下では、紙の領収書の保管方法、電子データの保管方法、法改正による変更点について詳しく述べます。

紙の領収書の保管方法

紙の領収書の保管は、物理的なスペースを必要とします。

そのため、紙の領収書をきちんと整理するとともに、領収書の取扱いを組織内で周知しておかなければなりません。

領収書を紙で保存する一つの基本的な方法は、領収書をノートに貼り付け、日付順に整理することです。

時系列に沿って取引を追跡し、必要に応じて迅速に情報を取得することが容易になります。

また、ファイリングシステムを利用すると、クリアポケットやバインダーを使用して領収書を整理し、カテゴリーや日付で区分けることが可能です。

封筒を使用したシンプルな方法もありますが、紛失のリスクがともなうため、適切なラベリングと安全な保管場所が必要となります。

加えて、紙ベースの領収書は時間の経過とともに劣化する恐れがあり、災害による損失のリスクもはらんでいます。

したがって、これらの領収書のデジタルバックアップの作成も検討する価値があります。

電子データの保管方法

デジタル時代の進展により、電子データの保管は経理処理の効率化、スペースの節約、データ復旧の可能性の向上といった多くの利点をもたらします。

電子帳簿保存法の導入にともなって、作成・受領した領収書の電子保存が義務付けられており、印刷しての保管は認められていません。

電子データでの保管は、特定のシステムやプラットフォームを使用してデータを整理し、適切なデータセキュリティ対策を施すことが重要です。

また、定期的なバックアップと災害復旧プロセスを設定することで、データの損失リスクを最小限に抑えることができます。

法改正による変更点について

2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法によって、取引における電子データの保存が義務づけられました。

ただし、電子取引の電子データ保存に関しては、2023年12月までの宥恕期間が設けられています。

宥恕措置の期間中は、取引における電子データを電子データのままで保存せずとも問題ありません。

しかし、2年間の宥恕措置が終わると、領収書の保存が義務づけられている方は、電子データ(取引データ)は電子データのままで保存しなければなりません。

その結果、将来的には、電子メールやオンライン上で受け取った領収書などを紙で保存することが禁止されることになるため注意してください。

領収書の保管に関するよくある質問

領収書の保管に関して、多くの方が疑問に感じやすいのが、公共料金の領収書と市民税の領収書です。

以下では、それぞれの領収書の取扱いについて詳しく解説していきます。

公共料金の領収書の保管期間は?

公共料金の領収書は、一般的な取引記録としての役割を果たすため、保管にも特別な注意が必要です。

税法では、領収書の保管期間が一般的に7年間であると定められています。

公共料金には、電気、ガス、水道などの公共料金の領収書も含まれます。

7年という期間は、税務当局が遡及して調査する可能性のある期間です。

したがって、万が一の税務調査や、自身の会計記録の整合性を保つためにも、公共料金の領収書は少なくとも7年間保管することをおすすめします。

市民税の領収書の保管期間は?

市民税の領収書についても、ほかの財務文書や領収書と同様に、最低7年間の保管が推奨されます。

市民税は、居住者が地方自治体に支払う税金であり、支払い記録は、個人または事業主の税務記録として重要です。

市民税の領収書は、税務申告時に市民税の支払いを正確に行ったことを証明する重要な文書です。

また、将来的に自身がどれくらい税金を払ったのかを確認したり、税務当局による監査・調査のためにも、領収書を適切に保管しておくことが重要となります。

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まとめ

本記事では、領収書の重要性と、適切に保管することの法的な必要性を解説しました。

領収書は単に取引の証拠となるだけでなく、税務調査や法的な監査の際に、経費の正当性を証明する不可欠な要素です。

そのため、領収証を安全かつアクセス可能な方法で保管することは、個人事業主や法人にとって極めて重要です。

とくに、法人税法や所得税法で規定されている保管期間は、一般的に7年間とされており、この期間内に税務調査官が過去の記録を調査する権限を持っています。

領収書が適切に保管されていない場合、不正確または不完全な経費報告が行われたと見なされ、罰則や追加の税金が課される恐れがあるため注意しましょう。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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