経理の業務上、領収書は重要な意味を持ちます。領収書を紛失してしまった場合、再発行が可能なのかどうか知りたい方も多いのではないでしょうか。
本記事では領収書の再発行について、発行する側と受け取る側双方の視点から詳しくご説明します。領収書を受け取ることしかない方にとっても、再発行が断られることが多い理由を知れば、もしもの場合の対処に役立つはずです。
さらに領収書を紛失した場合の対処法や、紛失を防ぐために重要な保管のポイントなどもご紹介します。仕入税額の控除を受けるためにも、領収書の知識を深めていきましょう。
目次
領収書の再発行には応じなくてはいけない?
領収書の再発行は、法律上義務ではありません。違法ではないため可能ですが、判断は発行者当人に委ねられます。発行者当人の判断で、再発行の依頼を断ることもできます。領収書の再発行を受け付けていない事業者がほとんどです。
領収書を受け取る側は、領収書の再発行は基本的に断られるものだと理解したうえで、厳重に保管・保存するようにしましょう。
さらに追加で知っておきたい点として「領収書の再発行にはリスクがある」トラブルの予防として「再発行はできないとあらかじめ伝える」の2点をご紹介します。
領収書の再発行にはリスクがある
領収書の再発行は発行側にリスクが発生する場合があります。領収書の再発行は、領収書の二重発行となってしまうかもしれないからです。
領収書は取引1件につき1枚、というのが基本的なルールです。「紛失したと申し出を受けて再発行したものの、実際には紛失しておらず、2枚とも経費として計上された」場合、領収書の不正使用となります。受け取った側はもちろんのこと、発行した側も罰則を受けるリスクがあります。
こうしたリスクを回避するために、領収書の再発行を断っている事業者がほとんどです。再発行を行う場合は、不正使用にならないよう入念に確認しなければなりません。
再発行はできないとあらかじめ伝える
領収書の再発行を行わない方針であるならば、その旨をあらかじめ取引相手に伝えておいたほうがいいでしょう。事前に伝えていないと、取引相手が再発行を求めてきた場合に断る必要があり、トラブルの元となるかもしれません。
口頭で再発行ができない旨を伝えるよりも、書面で通達するほうがいいでしょう。領収書の空いたスペースに、紛失しても再発行には応じられない旨を明記しておくと確実です。
事前に通達しておくことで、取引相手も領収書の扱いが慎重になり、紛失のリスクが低下する可能性もあります。再発行ができない旨を、なるべくネガティブな印象にならないよう取引相手に伝えましょう。
領収書の再発行を依頼する場合
領収書の再発行を依頼する場合、知っておきたいポイントがあります。「支払ったことを証明できる書類を見せる」「再発行である証拠が残るように文書で依頼する」をご紹介します。
領収書の再発行は依頼しても断られる恐れがありますが、事前に準備をしておくことで受け付けてもらえる可能性がでてきます。
支払ったことを証明できる書類を見せる
領収書の再発行を依頼したい取引が実際に行われたことを証明するために、書類やデータを提示しましょう。クレジットカードの利用明細や銀行口座の出金履歴であれば、証明する材料として十分です。
再発行する側が懸念する点は、再発行した領収書が不正行為に使用されることです。支払った事実を証明することで、悪意がないことを意思表示しましょう。
仮に支払いの事実を証明しても、再発行が拒否される可能性はあります。あくまで取引があった事実が証明できるだけで、領収書を紛失したことの証明は不可能であることを理解しておきましょう。
再発行である証拠が残るように文書で依頼する
領収書を再発行してもらう際には、再発行したものであることが分かるようにしておく必要があります。領収書の空いたスペースに「再発行」と明記してもらうなど、誰の目にも明らかな形であることが望ましいです。
もしあとになって紛失したと思っていた領収書が見つかった場合に、同じ領収書が2枚存在することになり、最悪の場合両方を経費として計上してしまう恐れがあります。
「再発行」と明記しておくことで、そういった事態を防げます。意図せず不正を犯してしまわないように、再発行を依頼する段階で相手に依頼しておきましょう。
領収書やレシートを紛失した際の対処法
領収書やレシートを紛失してしまい、再発行もできない場合は支払額を経費として計上できないのでしょうか。実は、領収書やレシートを紛失した場合でも経費として認めてもらうことは可能です。
領収書やレシートを紛失した取引を経費として認めてもらうために、経理担当者へとれる選択肢として「クレジットカードや電子マネーの決済履歴を見せる」「紛失の旨を記載した支払証明書を承認してもらう」の2点をお伝えします。
クレジットカードや電子マネーの決済履歴を見せる
クレジットカードや電子マネーの決済履歴を見せることで、取引の事実を証明できます。クレジットカードや電子マネーは利用明細が存在するため、証憑として扱えます。
経理担当者には取引のあった日付や、相手の正式名称、金額、使用目的などを詳細に伝えておきましょう。取り違えが起きてしまうと、あとあと重大なミスへと発展する恐れがあるため、注意してください。
領収書やレシートの代わりとなるのは利用明細であり、請求明細ではない点に注意しましょう。請求明細では取引内容の詳細が確認できず、証憑として不十分です。
紛失の旨を記載した支払証明書を承認してもらう
会社組織内で仕事をするなかで領収書やレシートを紛失した場合は、支払証明書を書くことで経費として申請できる可能性があります。支払証明書は支払った側の人間が発行する書類であり、領収書に近い役割を持っています。
支払証明書には、領収書の記載内容に加えて紛失した旨を記載します。組織内の上長から承認をもらうことで、紛失した領収書やレシートの代わりに申請が可能です。
あくまで代替措置として作成される書類であり、支払証明書の数が多すぎると税務調査の際に問題視される恐れがあることは理解しておきましょう。
レシートでは経費にできない?
領収書ではなくレシートであっても、経費に計上することは可能です。領収書のように宛名が記載されていないと経費として認められないと思われがちですが、以下の項目が記載されていれば計上できます。
- 発行元の名前
- 発行年月日
- 合計金額
- 購入内容
経費として認められるために重要なのは、支払いの内容が分かることです。レシートに記載されている内容だけでも、取引の証明としては十分です。領収書をもらい忘れたり、発行できない状況であっても、経費として計上できることをおぼえておきましょう。
しかし、経費として計上できた場合でも、宛名がない事実が税務調査の際に問題となる恐れがあります。領収書に宛名がない場合は、別途資料を用意して、宛名の不足を補うことになるでしょう。資料としては会議の議事録や打ち合わせのメモなどがあります。
出金伝票も領収書の代わりとして使える
出金伝票は領収書の代わりとして使えます。出金伝票とは、企業から支出のあった取引を記録する伝票です。お金の動きをわかりやすくし、管理の効率化に役立ちます。内容が定められているものではありませんが、以下のような内容が記載されていることがほとんどです。
- 取引のあった日付
- 取引相手
- 勘定科目
- 摘要(購入内容)
- 金額
出金伝票の記載内容は領収書と似通っており、経費として認められるために必要な項目を満たしています。そのため領収書の代わりとして使用できます。ただし、自社で発行するため、社内に対してしか効力を発揮できません。
ICカードで支払った交通費や割り勘で支払った打ち合わせ時のお茶代、ご祝儀や香典などは領収書をもらうことが困難です。このような場合は出金伝票へ記入して支払いがあった事実を記録しておき、経費として計上しましょう。
領収書で困らないようにするためには
領収書の再発行は拒否される可能性もある上に、依頼する手続きに手間がかかってしまいます。領収書が再発行できない場合でも、代わりとなる書類が受け取れることもあります。保管・保存をしっかりと行い、紛失を未然に防ぐことがなによりも重要です。
領収書で困らないようにするために気をつけたいポイントとして「病院では支払証明書を貰う」「電子レシートを発行してもらう」の2点をお伝えします。
病院では支払証明書を貰う
病院での支払いに際して受け取った領収書を紛失した場合、医療費控除を受けるためには支払証明書を貰うようにしましょう。
基本的に病院では領収書の再発行を受け付けていません。代わりに、支払証明書という書類を発行してもらえます。支払証明書は領収書の代わりとして医療費控除を受ける際に使用できます。
支払証明書の発行には数千円程度の手数料がかかり、数日から1か月程度の所用日数がかかります。病院ごとに異なるため、事前に確認をしておきましょう。
電子レシートを発行してもらう
電子レシートを発行してもらうことで、紛失する心配はなくなるでしょう。電子データとしてレシートを発行してもらうことで管理が簡単になりますし、紙のレシートのように保管に気を遣う必要もありません。レシートを受け取る側としてはメリットが多くなります。当然経費として計上可能な証憑です。
電子レシートはスマホに専用のアプリをダウンロードすることで使用可能となります。経済産業省が2018年に導入実験を行うなど普及に向けての準備が進められており、今後一般的なレシートが紙から電子へと置き換わることが予想されます。
仕入税額控除には領収書の保存が必要
仕入税額の控除を受けるには領収書の保存が必要です。領収書のような取引の記録となる書類は、法律上保管が義務付けられており、個人も法人も基本的には7年間保管していなければなりません。
インボイス制度の開始後は、インボイス(適格請求書)とそれ以外の請求書とを分けて保管する必要があります。場合によっては管理体制の再構築が必要になるでしょう。
領収書を電子データとして受け取っていれば、保存や管理が簡単です。電子データで受け取った領収書は、プリントアウトして保存できないことに注意しましょう。電子帳簿保存法にのっとったかたちでの保存・管理を心がけてください。
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まとめ
領収書の再発行は法律上義務ではなく、不正に使用されるといったリスクも考えられます。領収書の再発行を受け付けていない事業者がほとんどです。発行側は領収書を発行する際に再発行ができない旨を伝えておくと、不要なトラブルが回避できます。
領収書以外にも出金伝票やレシート、支払証明書が領収書のような役割を果たします。再発行ができない場合は別の書類での代替も考慮するべきです。
レシートが電子データであれば、保管が簡単になります。仕入税額の控除を受けるためには領収書の保存が必要なため、可能な限り紛失を避け、なるべく再発行の依頼をせずに済むような管理を心がけましょう。