領収書に印鑑は必要?領収書に押す印鑑の種類や押印するメリットも解説

領収書には、多くの場合は印鑑が押されていますが、実は法的に必要だと定められているわけではありません。押印がされていなくても、必要な項目が記載されていれば領収書として認められます。

本記事では領収書の基本事項から印鑑の必要性、領収書に押す印鑑の種類、領収書に印鑑を押す場合にありがちな疑問などをご紹介します。領収書に押印をすることは、偽造防止や信頼度の上昇に有効です。

法的に必須ではないのにもかかわらず、領収書に押印がされる理由もご説明します。印鑑の持つメリットを理解すれば、領収書の作成や受領をする際に選択肢が広がるでしょう。

領収書に印鑑は押す必要はある?

領収書に印鑑を押す必要はあるのでしょうか。「領収書に印鑑がなくても基本的に問題はない」「収入印紙を貼り付ける場合は消印が必要」「電子データの領収書には押印は不要」の3点をご紹介します。

領収書に印鑑がなくても基本的に問題はない

領収書に印鑑がなくても基本的に問題はありません。領収書が法的に効力を認められるために必要な項目はいくつかありますが、そこに押印は含まれていないためです。

法的に必要がないとはいえ、実際には多くの領収書に印鑑が押されているのが現状です。これは社会的な習慣としての意味合いが強く、取引相手への信頼を示すための手段という側面があります。

押印は通常の署名と比較して偽ることが難しいため、信頼性が高くなります。サインよりも取引相手に信頼されるような署名の手段を手に入れたいのであれば、領収書に押印を行うことを検討してもいいでしょう。

通常の企業だけではなく個人事業主に関しても、基本的に領収書へ印鑑が押されている必要はありません。領収書のために印鑑を用意するかどうかは、事業者それぞれの裁量に任されています。

収入印紙を貼り付ける場合は消印が必要

例外的に領収書へ印鑑が必要となるのは、収入印紙を貼り付ける場合です。収入印紙の再利用を防ぐために、領収書と印紙の模様部分とを跨ぐかたちで押印します。法律上では「消印」と呼ばれますが、割印という呼び方のほうが一般的かもしれません。

金額が5万円を超えた領収書は課税文書となり、収入印紙が必要になります。仮に収入印紙を貼り付けていても、消印がなければ納税をしたと認められません。消印を忘れないようにしましょう。収入印紙の金額は領収書の金額によって変わります。

領収書の金額ごとの収入印紙の金額

  • 5万円未満のもの:なし
  • 5万円以上100万円以下のもの:収入印紙200円分
  • 100万円を超え200万円以下のもの:収入印紙400円分
  • 200万円を超え300万円以下のもの:収入印紙600円分

消印に関しては複数人が押す必要はなく、発行側の代表者一名のもののみで構いません。

参考:国税庁「印紙の消印の方法」

電子データの領収書には押印は不要

電子データの領収書であれば押印は不要です。そもそも紙に印刷されたものではないため押印できませんが、署名や領収書の信頼性などの部分が電子データの領収書には元々備わっています。

電子データの領収書には、収入印紙も不要になります。収入印紙は紙の課税文書のみに必要なものだからです。印紙代や消印を押す手間が省けるため業務の効率化が可能です。

領収書を電子データでやりとりすると、多くのメリットが発生します。印刷や発送の手間が省けることや、保管・管理のコスト減、保管している領収書の検索が容易になるなど、業務負担の軽減が期待できるでしょう。

電子データの領収書を利用すれば、改ざんのような不正行為も防げる可能性が高くなります。領収書をデータで取り扱う場合は、電子帳簿保存法に則ったかたちで保存してください。

領収書の基本事項

領収書の基本事項にはどのようなものがあるのでしょうか。「領収書に記載すべき内容」「印鑑を押す場所」の2点をご紹介します。

領収書に記載すべき内容

領収書に記載すべき内容は、消費税法で定められています。内容は以下の通りです。

  • 書類作成者の名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(但し書き)
  • 税率ごとに区分し合計した税込対価の額
  • 交付を受ける者の名称

内容に漏れがあると、正式な領収書として認められません。すべての項目を満たすよう、丁寧に確認しつつ作成・受け取りしましょう。

また、2023年10月1日から開始するインボイス制度下では、領収書も記載事項を満たしていればインボイス(適格請求書)として認められます。記載事項は以下の通りです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象品目はその旨も記載)
  • 税率ごとに区分した合計取引金額
  • 税率ごとに区分した消費税額または適用税率

印鑑を押す場所

領収書の中で、印鑑を押す場所はとくに定められていません。そのためどこに押印するかは自由に決めることができます。

押印されることが多いのは、発行者の名称が記載されている部分の近くでしょう。名前とセットになることで署名の信頼度を印象付けられます。とくにこだわりがない場合は、名前の近くに押印するといいでしょう。

それ以外の場所を選ぶのであれば、なるべく空いたスペースにしてください。押印はハッキリと視認できなければ意味が薄れてしまうため、印鑑に彫られた内容がよく見える場所を選ぶべきです。

領収書に押す印鑑の種類は?

領収書に押す印鑑の種類には、どのようなものがあるでしょうか。「角印」「実印」「鯱旗」の3点をご紹介します。

角印

領収書に使われる印鑑の種類としては、一般的なのは角印ではないでしょうか。正方形の枠で囲まれた押し跡が特徴で、企業名が刻まれたものが多いことから「社印」と呼ばれることもあります。

役所や銀行に提出する書類に使う印鑑登録がされたものは、丸い押し跡の印鑑が多く採用されています。丸印と見分けのつけやすい角印は、領収書に押す印鑑として適しているといえるでしょう。

業務上必須ではありませんが、社内で閲覧する文書や重要度の低い契約書・納品書など、活躍の場は多岐にわたります。可能であれば角印の用意をしておくことをオススメします。

実印

実印を領収書に押すこともできますが、あまり推奨はできません。企業における実印は、法務局に登録することで法的な効力を持つようになります。

株券の発行や不動産の売買、企業の買収など、会社にとって重要な契約書や法的な手続きに使われる印鑑です。商業登記規則に則って、一辺が1㎝以上3㎝以下の正方形に収まるサイズのものを作成しましょう。

実印は重要な場面で使われる印鑑なため、領収書のような利用頻度の多い用途にはあまり適していません。実印の重要性を保つためにも、可能であれば領収書には角印など別の印鑑を押すようにしてください。

シャチハタ

領収書に押す印鑑は、シャチハタでも構いません。そもそも押印自体が義務付けられていないため、形式にも決まりがないからです。

シャチハタはインクが内臓されているスタンプのような形式で、インク浸透印とも呼ばれるハンコです。角印のシャチハタも丸印のシャチハタも存在します。

シャチハタは、朱肉を使わないことや印面がゴムであることを理由に、公的な書類や重要度の高い書類では仕様を断られることもあります。

代わりに手軽に押せて替えの効くものでもあるため、領収書のような大量に押印する必要のある書類には適しているともいえるでしょう。

領収書に印鑑を押すメリットはある?

領収書に印鑑を押すことは法的な義務ではありませんが、メリットはあるのでしょうか。「偽造防止として役立つ」「会社の信頼度が上がる」の2点をお伝えします。

偽造防止として役立つ

領収書に印鑑を押すことで、偽造を防止する効果が期待できます。法的には押印がされていなくても領収書としては問題ありませんが、押印された領収書は押印のない領収書に比べて偽造の難易度が上がります。

領収書の偽造は会社の信用に関わる問題です。意図せず不正行為に関わってしまった、というような事態を避けるためには、領収書に印鑑を押したほうがいいかもしれません。

領収書に押印がされていると、取引相手に向けた「偽造防止に力を入れている」というアピールにもなります。安心して取引を進めてもらうためにも、領収書への押印を推奨します。

会社の信頼度が上がる

領収書に印鑑を押すことで、取引相手から信頼を得られる可能性があります

法的に必要だとは定められていませんが、慣習として長期にわたって領収書には押印がされてきました。領収書には押印がされているものであるという認識の人も少なくないでしょう。

領収書に押印をしないと、取引相手から無礼だと思われてしまう恐れがあります。慣習を守らないことをよしとしない考え方もあるからです。

そのようなトラブルを避けるためにも、領収書には押印をしたほうが無難でしょう。取引の本筋ではない部分で揉めごとを起こさないためにも、領収書用の印鑑を用意することを推奨します。

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領収書に印鑑を押すときのよくある疑問

領収書に印鑑を押すときによく浮かぶ疑問である「領収書に印鑑を押し忘れたらどうなるの?」「印鑑代わりにサインは有効?」の2点にお答えします

領収書に印鑑を押し忘れたらどうなるの?

領収書に印鑑を押し忘れてしまっても、経理上は問題ありません。法的に定められている領収書の記載内容に、押印は含まれていないからです。

しかし、普段は領収書に押印をしている企業の場合は問題があります。取引相手はそれまでと内容が異なることに不安を覚えるかもしれません。再発行を要求されたり、内容の確認を行う必要がでてきたりする可能性があります。

このように、法的には問題ないとはいえ実務上は問題視されてしまう恐れがあります。いつも領収書に印鑑を押しているのであれば、押し忘れのないように徹底した確認を心がけましょう。

印鑑代わりにサインは有効?

印鑑がない場合、領収書にはサインのみでも問題ありません。押印されていない領収書でも、経費として計上することは法的に認められています。以下の項目が記載されていれば、領収書として認められます。

  • 書類作成者の名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(但し書き)
  • 税率ごとに区分し合計した税込対価の額
  • 交付を受ける者の名称

また、2023年10月1日から開始するインボイス制度下では、領収書も記載事項を満たしていればインボイス(適格請求書)として認められます。こちらにも押印は必須ではありません。記載事項は以下の通りです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象品目はその旨も記載)
  • 税率ごとに区分した合計取引金額
  • 税率ごとに区分した消費税額または適用税率

まとめ

領収書に印鑑がなくても、基本的に問題はありません。領収書が法的に効力を認められるために必要な項目はいくつかありますが、そこに押印は含まれていないからです。収入印紙を貼る場合のみ、消印が必要となります。

領収書に押す印鑑の種類には「角印」「実印」「鯱旗」の3種類があります。押印をする場所はどこでも構いませんが、発行者の署名の近くが一般的です。

領収書への押印には、偽造防止や会社の信頼度上昇が期待できます。慣習として長く続けられているため、法的に義務付けられていないとはいえ可能性な限り行ったほうがいいでしょう。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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