こんにちは。
突然ですが、皆さんの中に、次のような方はいらっしゃらないでしょうか。
✅勤務先で新たに月次決算を行うことになったけど、 何から始めれば良いか分からない…
✅経理職に配属が決まったけど、月次決算が何か分からない…
このコラムは上記のような方々に向けて書いています。
「経理職がどのような業務を行っているかわからない」「年次決算はやったことがあるけど、月次決算は初めてやる」などの悩みを持っている方も多いと思います。
今回は月次決算についてご説明するので、このような悩みが少しでも解消できると思います。
また、同様の内容が動画版でもご覧いただけます(ご登録はCPAラーニング 公式サイトから)。
動画版は、会計士YouTuberくろい先生がより楽しさを重視して分かりやすく解説しています。
ただ、動画版は30分程度かかるので「時間がない」「自分のペースでガンガン進めたい」という人にはコラム版をおすすめします。
目次
1.月次決算の必要性
そもそも月次決算とは、どのような業務かイメージできますか。
月次決算とは、年次決算と同様の業務を毎月月初に行う事です。
月次決算は、法律で強制されておらず、月次決算資料の作成は任意であり、提出期日も定められていません。
この点は、年次決算との主な違いになるので押さえておきましょう。
【参考】年次決算と月次決算の違い
つまり、年次決算は年に1回の決算日に決算書作成や税金計算などを行いますが、この業務を年11回(年次決算日除く)行うのが月次決算です。
※そもそも「年次決算」について分からないという方は、経理実務 入門をご覧ください!
月次決算の説明を聞いて、「手間がかかってめんどくさい」と感じた方もいると思います。
そのため、まずは月次決算の目的を説明します。
年次決算の早期化
月次決算は年次決算の準備になるため、月次決算を行うことで年次決算を短期間で行うことができます。
上場企業は年次決算の早期化につながる月次決算を積極的に行っていることが多いです。
なぜなら、早期に年次決算を開示することは株主にいち早く会社の情報を届けることであり、株主からの信頼を得ることに繋がります。
つまり、月次決算は企業のブランドイメージの向上につながるのです。
また、年次決算の書類提出が間に合わず、税金の支払いが遅れると追徴課税を受けることがあるため、年次決算を早期化できる月次決算は重要です。
追徴課税とは、税金の支払いが遅れた場合や金額が少なかった場合にペナルティとして課される税金です。
きちんと支払いを行えば、支払う必要のない税金のため、追徴課税を受けることがないようにしましょう。
タイムリーな経営成績を把握
月次決算を行うことで早期に経営成績を知ることができるため、経営者のタイムリーな意思決定に役立てることができます。
例えば、新商品が順調に販売できているにも関わらず利益が出ていない場合を想定します。
この時に年次決算しか行っていなければ、経営者は新商品から利益が出ていないことを年度末に初めて知ることになります。
一方で、月次決算を行っていれば、毎月新商品の利益情報を知ることができ、致命傷になる前に対策を立てることができます。
資金繰りの把握
はじめに、資金繰りについてよく分からないという方は、【初心者経理】売掛金・買掛金の管理って?仕訳計上タイミングから台帳・管理表作成その他重要ポイントの紹介!というコラムで解説しているので読むことをおすすめします。
タイムリーな経営成績の把握と似ていますが、月次決算をすることで、納税など資金が必要なタイミングで借入を行ったり、資金確保の計画を立てることができます
年次決算のみでは、年度末に急に「納税するお金が足らない」という事態を招く可能性がありますが、月次決算をしていれば資金の状況を毎月知ることができます。
そのため、資金が足りない場合は借入をするなどの対策を講じることができるのです。
2.月次決算でやること
月次決算が、会社にとって重要な業務だということは理解できたと思うので、この章ではより具体的な月次決算の業務内容を見ていきましょう。
詳細は会社ごとに違いますが、一般的には以下の3つがあります。
経費精算
まずは経費精算が挙げられます。
経費精算とは、従業員から締切日以内に経費精算書類を入手し、仕訳入力することです。
※経費精算の詳細については、【初心者経理】経費精算と領収書について〜知らないと損する常識から2022年1月から改正の電子保存まで分かりやすく解説〜をご覧ください!
以下のようなイメージで経費精算を行います。
ここで注意しなければいけないことは次の2つです。
①経費精算書は必ず提出期限を設けて、アナウンスしましょう
→経費精算書類が従業員から提出されないと経費精算はできません。明確に締切期限を設けましょう。
月末から3営業日や5営業日までを期限とするのが一般的です。
②締切期限まで、アナウンスし続けましょう。
→締切期限までに提出しない従業員はたくさんいます。
根気強く、しつこくアナウンスしましょう。
なお、海外出張や入院などの仕方がない理由で遅れて提出してきた場合は、翌月分として精算することができます(※年度をまたぐ繰越は、利益操作になってしまうため、やってはいけません)。
しかし、特に理由もなく遅れてきた場合は上司を通じて厳罰した方が良いかもしれませんね。
決算整理仕訳の処理
次に、決算整理仕訳を計上する必要があります。
月次で計上する決算整理仕訳の例としては次のようなものがあります。
・減価償却費
→1か月分を月次決算で計上しましょう。固定資産管理システムなどのシステムを利用すれば自動入力も可能です。
・前払費用の償却、固定資産税や事業所税などの月次按分
→1年分支払っている費用のうち、1か月分計上しましょう。
・貸倒引当金や賞与引当金などの引当金計上
→年次決算で引当金の計上を行っている場合は、1か月分を計上しましょう。小さい会社だと、引当金の計上がない場合もあります。
・法人税の概算計上
→会社によっては月次での税引後利益を出さない場合もありますが、月次の税引後利益を知りたい場合は、法人税等を月次決算で概算計上することがあります。
・売上の概算計上
→下の図のように売上確定しない場合や締め日が月をまたぐ場合には概算計上することがあります。概算計上する時には、必ず摘要欄に「概算計上」と記載しましょう。
・諸経費の概算計上
→下の図のように請求書が届かない場合や締め日が月をまたぐ場合には諸経費を概算計上することがあります。
請求書が届かないために概算計上を行わなくてはならなくなる場合の対策として、営業担当者を通じて取引先に早めに請求書を送付してもらえないか交渉してみましょう。
給与等を計上する場合は、仕訳入力の際に「5月分給与未払計上」と摘要欄に記載しましょう。
⚠️概算計上した際の留意点
必ず洗替仕訳をしましょう。
洗替仕訳を行わないと、費用が二重計上されてしまいます。
経営陣への月次業績の報告
タイムリーな意思決定に資するよう、経営陣に毎月の財務数値を報告します。
具体的には、以下のような項目が挙げられます。
・前年同期比との比較
→当月の業績と前年同月の業績を比較します。差異原因分析を行うことで、当期のトレンドを把握することができます。
・月次の業績推移
→月次ベースの業績推移を把握することで、当期の年次決算の着地見込みを予想し、必要に応じて対策を行います。
・予算との対比
→予算を達成できているかを把握するため、年次予算を月次に展開して、予算と実績を比較します。
予算未達の場合は、差異原因分析を行うとともに、年次予算の見直しが必要かどうかを検討します。
・製品別、事業別の業績
→全社業績の把握のみならず、製品別・事業別の業績を把握することで、会社の状況をより正確に把握することができます。この情報があれば、来月以降により正確な対策を講じることができます。
3.月次決算のスケジュール
最後に、毎月行う月次決算をどういったスケジュールで行うかについてです。
月次決算のスケジュールは、経営陣の月次定例報告会を基準とし、そこから逆算して決めていきましょう。
具体的には下の図のようなイメージです。
月次業績報告資料は、必須となる資料はありませんが、経営陣が業績の把握に資する資料を作成します。
具体的には、貸借対照表・損益計算書・資金繰り表などが挙げられます。
月次決算のスケジュールを決定したら、このスケジュール通りに月次決算を実現できるように社内で共有することをおすすめします。
各部署と協力して、月次決算をスムーズに行いましょう。
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経理の仕事は、伝票起票や経費精算など細かな日次業務が多く、全体像を見失いがちです。
その結果「何のためにこの業務をしているんだろう」とモチベーションの低下に繋がることもあります。
そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
イメージとしては日々の仕事を「点」ではなく「線」として捉えること。
毎日の仕訳にしても、何となく取引金額を入力するのではなく、自社や取引先の財政状態や経営成績を念頭に置いたうえで入力することが大切です。
こうすることで、自社が取引先・借入先に対して、適切に支払いができるのか、あるいは取引先・貸付先から適切に入金が行われるのかを、仕訳と同時に予測できます。
極端な例ですが、こうした「意識的」な仕訳を繰り返すことで、会社の経営状況が見えてきて、黒字倒産を未然に防ぐといったことも。
また、全体像を把握できていると、業務の優先順位を自ずとつけられるようになるので、仕事のスピードがぐっとあがっていきます。
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4.まとめ
いかがでしたか。
今回ご紹介した内容は、比較的念入りに月次決算業務を行う場合を想定しています。
実際には年次決算のみの会社も多く、経理人材が足りない会社は年次決算のみでも良いと思います。
そのため、経理人材が不足しているにも関わらず、丁寧に月次決算を行おうとするのではなく、身の丈に合った決算を行いましょう。
このコラムは、実務コース 経理実務コース#09月次業務 – 月次決算を元に作成しています。
より詳細が気になるという方や、文字より音声の方が理解が深まるという方は、ぜひ本編もご覧ください。
以上、実務コース 経理実務コース#09月次業務 – 月次決算でした。
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月次決算に関してよくある質問
月次決算の早期化のメリットは?
経営の状態についてタイムリーに把握できることから、迅速な意思決定を行うことができるようになります。また、年次決算の早期化にもつながります。
月次決算の早期化の方法は?
会計システムを優れたものにすることや、業務フローの見直しなどが挙げられます。
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