月次決算に時間を取られ過ぎているという悩みを抱えていませんか?
月次決算は管理会計の手法のひとつで、経営成績と財政状況を把握するための重要な業務です。しかし、毎月行う作業であるため、毎回時間を取られ過ぎてしまうという負担は何とか軽減したいですよね。
月次決算に要する時間を短縮できれば、より迅速な自社の経営把握に繋がり、よりスピーディーな経営改善が期待できます。
今回のコラムでは、月次決算業務の内容の説明や早期化のメリットなどについて紹介します。
目次
1.月次決算業務とは
①月次決算の目的
月次決算とは、月ごとに決算を行うことを指します。
法令上、月次決算の実施義務はありませんが、月次決算の実施により経営成績と財政状況を月ごとに確定できるため、迅速な経営判断を行うことを目的に多くの会社で実施されています。
年次決算とは違って、月ごと季節ごとの経営成績と財政状況を把握することができるため、よりタイムリーな事業戦略を練ることができます。
さらに、年次決算の目的は、株主などへ年間の経営成績と財政状況を公開することであり、実施方法も規定に則る必要があります。
しかし、会社の任意で行う月次決算は、経営判断に必要な情報に特化して実施するといった柔軟な対応が可能です。
②業務の内容(一般的な月次決算)
a. 残高確認
帳簿上の現預金の残高と金庫や通帳に記載の残高の一致を確認し、差異がある場合は原因を特定して修正処理を行います。
b. 月次棚卸高の確定
在庫の数量をカウントし、帳簿金額を確定します。
尚、「実地棚卸」は省略できる場合があります。
c. 仮勘定の整理
仮払金や仮受金などの仮勘定を正しい勘定へ振り替えます。
d. 経過勘定の計上
前払費用や未払費用などの実際にサービスの提供を受けていないものや実際の支払がないものに関して、勘定を計上します。
e. 引当金や減価償却費の計上
退職給付費用や賞与など将来発生する年間費用を見積り、月次決算ではその12分の1を計上します。
減価償却対象の固定資産がある場合は、同様に月割り計上します。
f. 月次試算表の作成
試算表は3種類あり(合計試算表、残高試算表、合計残高試算表)、任意で選択します。
仕訳を総勘定元帳に転記して月次試算表を作成し、数字に差異がないことを確認します。
g. 月次業績報告
年次決算は法令に則り、財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の作成が必要になりますが、月次決算は任意決算のため、経営にとって役立つ書類を作成します。
前年同月実績や月別の予算などの比較資料も作成し、経営陣に報告するのが一般的です。
2.月次決算の重要性
冒頭にも記載しましたが、月次決算は管理会計の手法の1つです。
管理会計とは、経営者の意思決定の材料となる会計のことを指し、会社の「安全性」「収益性」「生産性」「成長性」などを分析して経営の方向性を決定するものです。
管理会計の手法である月次決算は、その実施により毎月の経営実態をタイムリーに把握することに繋がります。
さらに、事前に事業計画と目標をセットしておくことで、月ごとに進捗管理及び改善が行えるため、かなり会社にとって効果的です。
また、月次決算の実施により精度の高い年次予測が可能になるため、次年度以降の事業計画を効果的に立案できるという経営上のメリットもあります。
さらに、財務状況を正確に把握できるため、経営の透明性も向上します。
以上より、会社にとって月次決算は重要であることが分かりますね。
3.月次決算の早期化によるメリット
①迅速な意思決定及び対応が可能
毎月の経営成績と財政状況をタイムリーに把握することが可能だからこそ、迅速な意思決定及び対応に繋がります。
具体的には、「ある部門の売上が落ち込んでいる」、「昨年もしくは先月に比べて出張費が異常に増えている」などの問題が生じた場合に、素早い原因追及と対策を行うことができますね。
原因に気付く段階が早いほど、有効な手段が多く、効果も高くなります。迅速に意志決定及び対応が可能なことは大きなメリットと言えますね。
②信用が増す
直近の経営状況を早期に金融機関などに開示することができるため、融資・投資の可否やその金額の判断の際にプラスになります。
③業務プロセスの継続的な改善
月次決算により、日次業務で生じる誤りを早期に発見することができます。
誤りの是正及び誤りが生じがちな業務プロセスを見直すことに繋がり、不正な会計処理の早期発見が可能になると言えます。
4.早期化(業務効率化)の方法
以下のような方法が挙げられます。
・チェックリストを活用してミスを削減
・業務フローを見直して無駄な工程を削減
・集める証憑の締日を早くする
・より機能面で上位な会計システムを導入する
チェックリストの活用や業務フローの見直しに関しては、都度の月次決算において、より早く行うためにはどこを見直すべきかのアンテナを張ることが重要になります。
また、機能面で優れている会計システムを導入すると、仕訳入力の速度が上がったり、決算書が作成しやすくなったりと経理業務の根本から早期化を図ることができます。
早期化のメリットを享受したい場合は、上記のような効率化を図ってみてはいかがでしょうか。
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毎日の仕訳にしても、何となく取引金額を入力するのではなく、自社や取引先の財政状態や経営成績を念頭に置いたうえで入力することが大切です。
こうすることで、自社が取引先・借入先に対して、適切に支払いができるのか、あるいは取引先・貸付先から適切に入金が行われるのかを、仕訳と同時に予測できます。
極端な例ですが、こうした「意識的」な仕訳を繰り返すことで、会社の経営状況が見えてきて、黒字倒産を未然に防ぐといったことも。
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6.最後に
月次決算の実施により「早期に正確な経営状況を把握できる」「迅速な意思決定」「事業計画の効果的な立案」などのメリットを得ることができると分かりました。
年次決算の手間を分散することもできます。
導入していない企業は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、既に月次決算を行っている会社も、早期化を実現すればメリットをより享受できますね。
今回のコラムでは月次決算について取り上げさせていただきました。
実務のスキルを学んだり、実務に関する知識を身に付けたりといった基本を繰り返して経理のプロを目指していきましょう。
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月次決算に関してよくある質問
月次決算の早期化のメリットは?
経営の状態についてタイムリーに把握できることから、迅速な意思決定を行うことができるようになります。
月次決算の早期化の方法は?
会計システムを優れたものにすることや、業務フローの見直しなどが挙げられます。
月次決算は誰にとって有効なのか?
月ごとの進捗管理などを通じてより迅速な経営判断につながるため、経営者などに役に立つ管理会計手法となっています。