企業活動や経理といった業務について考えるうえで、避けては通れない言葉が会計処理です。字面から漠然とした意味は推測できても、「具体的にどういった内容を示している言葉なのかは理解していない」といった方も多いのではないでしょうか。
本記事では会計処理という言葉の意味から具体的な業務内容、実際に会計処理を行ううえで守らなければならないルールなどを詳しく解説します
会計処理と混同しがちな経理処理との違いについても解説しますので、この機会にそれぞれの意味をしっかりと理解しておきましょう。
目次
会計処理とは
企業活動の中では日々さまざまな取引が発生し、それによって起こる金銭の出入りを帳簿に記入する行為を会計処理と呼びます。要は「仕訳を行うこと」が会計処理です。
管理会計と財務会計はそれぞれ社内向けか社外向けかといった点に特徴があり、目的やルールの有無が異なります。
管理会計は社内で売り上げや利益、原価などを管理する目的で行われます。経営状況を理解しやすくすることで、経営方針を立てる際の重要な指針となります。社内のみで扱われるものなので、処理方法にこれといったルールは存在しません。
財務会計は社外に向けて業績を報告するために必要な業務です。財務諸表の作成が、財務会計における最重要の業務といえるでしょう。管理会計とは異なり、各種法律や企業会計規則のようなルールにしたがって業務を行う必要があります。
会計処理の具体的な業務内容
会計処理は日次、月次、年次と期間ごとに区切られています。すべての業務はつながっていますが、内容は別物です。ここからはそれぞれの業務内容を、業務を進めるうえで心がけたい点を交えつつ具体的にご紹介します。
日次での業務内容
日次での業務においては、日々の取引に伴って発生する仕訳を行うことになります。業種や事業規模によって変わってきますが、経費・売り上げ・仕入の管理や、それによって発生した請求書と領収書の発行、立替金および未払金の処理などが主な業務です。現金出納帳への記入も同時に行います。
基本的に日次での業務で取り扱うのは、数こそ多いものの単体で見れば小粒な処理です。しかし、ここでの仕事を疎かにすると、徐々に大きなズレとなってのちのちに響いてきます。とくに経費は勘定科目も多く仕訳が煩雑になりがちなので、あまりためこまずに順次処理していきましょう。
月次や年次での業務にかかる負担を少ないものにするためにも、日次での業務を丁寧にこなしておきたいところです。そのためには、帳簿上の残高と実際有高にズレが出ていないか常に注意を払っておきましょう。とにかく細かいところに気を配りつづけることが、日次での業務においては重要です。
月次での業務内容
月次での業務では、日次で行ってきた会計処理を月末にまとめることになります。その月の収入と費用を計算し、損益を導きます。企業によっては月次決算を行っているところもあり、その場合は決算書の作成も行います。決算を行わない場合も、月次の経営状態を明確にすることは翌月以降の経営方針を定めていくうえで重要です。
さらに月給制であるなら、給与に関連する処理も必要になります。給与計算や源泉徴収などをまとめて行い、支払いまで済ませるのが一連の流れです。場合によっては立替金の精算を日次での業務ではなく給与計算の際に行うこともあります。
月締めで契約を結んでいるものがあれば、売り上げや仕入の会計処理も月次で行います。保険料や公共料金などは月ごとの支払いとなる場合が多いため、基本的に月次での業務で処理することになるでしょう。月次での業務は日次と年次の中間に位置し、日々の処理のなかで起きたミスを修正しつつ年次の業務へとつなげていく重要なものです。
年次での業務内容
年次での業務では、主に期末決算に関する処理を行います。会社法440条によって、どの株式会社も年度ごとの決算は必須となっています。決算で作成した財務諸表は株主総会のあと公告しなければなりません。年度内に行ったすべての記帳を確認及び整理し、自社の置かれている状況を洗い出す重要な業務です。
決算を報告書にまとめたあとは、法人税の支払いに関する処理が必要です。法人税法において税金を申告して納付するまでの期間は、事業年度終了日の翌日から二か月以内と定められています。そのため、期末決算に関わる業務は、その時点を期限として進めていくことになります。
これまで日次と月次で行ってきた会計処理をまとめ、決算として仕上げるという大がかりな業務となります。年次での業務は、経理業務を担当する者にとって最重要です。処理する範囲が広いため負担は大きいですが、丁寧な仕事を心がけましょう。
企業会計原則というルールを守る必要がある
会計処理を行っていくうえで遵守しなければならないルールがあることをご存知でしょうか。経理業務に携わるならぜひ知っておきたい「企業会計原則」と呼ばれる7つのルールを、それぞれ詳しく解説していきます。
真実性の原則
「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」
真実性の原則は企業会計原則全般に通じる原則で、ほかの原則よりも上位に位置づけられています。とくに財務諸表の作成について、数値の改ざんや操作を固く禁じている項目と読むことができるでしょう。ここで知っておきたいのは、原則の中で定められている真実が「絶対的真実」ではなく「相対的真実」であるという点です。
これは会計処理の方法に関してある程度の自由が認められていることを意味しますが、あくまで不正のない範囲に限られます。真実性の原則は、その時代ごとの企業会計基準に合致した相対的な真実に沿っての会計処理を求められます。
正規の簿記の原則
「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」
正規の簿記の原則では、正確な会計帳簿の作成が要求されています。正確な会計帳簿の実現には企業の経済活動がすべて網羅的に記録されていること、会計記録が検証可能な証拠資料に基づいていること、すべての会計記録が継続的かつ組織的に残されていること、という3つの条件を満たす必要があります。
実務で採用されることの多い複式簿記はこれらの条件を満たす記録方法といえるでしょう。複式簿記を用いて財務諸表を作成することが、正確な会計帳簿の作成につながります。
資本取引・損益取引区分の原則
「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、とくに資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」
資本取引・損益取引区分の原則では、企業財務の健全性を保つことが要求されています。資本を利益として消費することや、利益を隠すなどといった利益操作を禁じ、社外に財政状況や経営成績を正しく開示するよう促すものです。
資本剰余金は資本の増減を伴う資本取引、利益剰余金は費用または収益を生じさせる損益取引と、それぞれ発生源が異なります。この区別を明確にしたうえでの貸借対照表の作成を、資本取引・損益取引区分の原則は求めています。
明瞭性の原則
「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」
明瞭性の原則では、財務諸表が出資者や債権者にとって企業の状況を明確に理解する材料となることを企業会計に求めています。
財務諸表自体が真実かつ明確であることはもちろん、必要に応じて附属明細表などを用いて情報の補足を行わなければなりません。科目区分や配列の表示方法など、わかりやすさと見やすさに配慮した財務諸表の作成を心がけましょう。
継続性の原則
「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」
継続性の原則では、会計処理や手続きの方法に同じものを継続して用いることを求めています。
会計原則や手続きに関しては、どのような方法を採用するかある程度の自由が認められています。しかし、それを短期間で変更することを認めると、不正を行う余地が生まれる可能性があります。そういった事態を避けるために定められたのがこの原則です。
もちろん、企業の規模や経営方針の変化に伴い、変更したほうが合理的である場合には変更が認められます。厳しく制限をかけられてはいるものの、禁じられているわけではないことは理解しておきましょう。
保守主義の原則
「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」
保守主義の原則では、適当に健全な会計処理を求めています。これは利益については慎重に、損失については素早く漏れのない処理をおこなう、というような考え方です。
一方で、あまりにも保守主義を貫きすぎると利益操作につながる恐れもあり、その場合真実性を失った会計処理となってしまいます。あくまでも真実性の原則に反しない程度の、適当な健全さを心がけておく必要があるでしょう。
単一性の原則
「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない」
単一性の原則では、二重帳簿などの作成をしないよう求めています。財務諸表は目的や提出先によって複数種類作成される場合があります。しかし、それぞれにあわせて都合のいい内容のものを作成することは不正行為です。
どれだけ多様な財務諸表を作成しようとも、その源となる会計帳簿はただ一つである必要があります。日々の会計記録から正確かつ誘導的に作成された会計帳簿のみから、各種財務諸表を作成しなければなりません。
会計処理と経理処理は違う?
会計処理と混同しやすい言葉に経理処理があります。一見同じようなものに思えるかもしれませんが、実際の意味は微妙に異なり、使い分けられることが多いため区別をつけておきましょう。
会計処理とは先述の通り帳簿の記入、つまり仕訳を指す言葉です。
対して経理処理は、会計処理を含めた企業活動に関するあらゆるお金の流れ全般に関する処理を指します。経理という言葉が「経営管理」の略であることを頭に入れておくと理解しやすいかもしれません。
すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、経理担当者の業務は会計処理と経理処理をシームレスに行き来するものが多く、業務上その違いが強く意識されることはあまりありません。そのことが混同されがちな理由ともいえるでしょう。しかし、業務内でのコミュニケーションに齟齬(そご)を生じさせないためにも、別物だということは理解しておきましょう。
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経理の仕事は、伝票起票や経費精算など細かな日次業務が多く、全体像を見失いがちです。
その結果「何のためにこの業務をしているんだろう」とモチベーションの低下に繋がることもあります。
そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
イメージとしては日々の仕事を「点」ではなく「線」として捉えること。
毎日の仕訳にしても、何となく取引金額を入力するのではなく、自社や取引先の財政状態や経営成績を念頭に置いたうえで入力することが大切です。
こうすることで、自社が取引先・借入先に対して、適切に支払いができるのか、あるいは取引先・貸付先から適切に入金が行われるのかを、仕訳と同時に予測できます。
極端な例ですが、こうした「意識的」な仕訳を繰り返すことで、会社の経営状況が見えてきて、黒字倒産を未然に防ぐといったことも。
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まとめ
会計処理とは金銭の出入りを帳簿に記入することを指します。つまり、仕訳を行うことが会計処理だともいえます。管理会計は社内向け、財務会計は社外向けです。
会計処理は期間ごとに日次、月次、年次と区分することができます。日々の取引の記帳から決算まで、すべての業務はつながっています。
会計処理を行ううえでは、企業会計原則と呼ばれる7つのルールを順守しなければなりません。真実性の原則に代表される真実さや明瞭さを求める原則に従うことが、会計処理の業務には求められます。
会計処理と似た言葉に経理処理がありますが、それぞれ意味が異なります。経理処理は会計処理を含んだ、より大きな範囲のお金の流れを指す言葉です。