会社では、原則月に一度従業員に対して給料を支払います。しかし、同じ給料でも従業員の雇用方法や給料の支払方法によって仕訳の方法はさまざまです。
給料の仕訳は考慮すべき項目が多く、難しさを感じる方も多いのではないでしょうか?また、厳密には給料と給与は意味が異なるため、2つの違いを理解しておくことも重要です。
本記事では、給料の意味やケースごとの具体的な仕訳方法、さらに税金や社会保険料の納付時の仕訳方法についても解説します。
簿記の勉強をしていて給料の仕訳がわからない方や実務において仕訳方法がわからずに困っている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
給料とは?
給料と給与は混合して使われることが多いですが、実は意味が異なります。給与は、基本給に加えて残業代や各種手当なども含まれます。
一方で、給料は労働への報酬のうち変動がない部分である基本給のみを指します。そのため、給料には残業代は含まれません。
基本給や残業代を分けて仕訳するのは手間がかかるため、一般的に会計実務で用いるのは給与です。
本記事でも、基本給や残業代、各種手当を含めた金額である給与を従業員に支給することを前提に各種仕訳方法を解説します。
雇用形態ごとの勘定科目
勘定科目は法律で明確に定義されているわけではないため、企業ごとに自由に設定が可能です。
ただし、一般的に使われる勘定科目は存在し、多くの企業がこれを採用しています。一般的に使用される雇用形態ごとの勘定科目をご紹介しますので、参考にしてください。
正社員の場合
正社員とは、会社との雇用契約上で特別の取り決めをせず、また雇用期間を定めずに雇われている従業員です。会社に正規雇用されているため、一般的に安定して収入を得ることができます。
正社員に給与を支払った際に使われることの多い勘定科目は以下の通りです。
- 給与
- 給与手当
- 給料賃金
- 賃金
どれを使っても問題ありませんが、会社内で別々の勘定科目を使っていると取りまとめに時間がかかるため、表記方法は統一します。
また、製造業の会社では原価計算が必要になるため、工場従業員などへの給与と営業職などへの給与を分けて記帳するのが一般的です。
これは、工場で製品の製造に従事している従業員への給与は製造原価に区分し、営業や広報、経理、総務などの本社業務のみに従事している従業員への給与は、一般管理費に区分するためです。
製造原価に含まれる給与は「賃金」、一般管理費に含まれる給与は「給与」などとして分類するのが一般的です。
役員の場合
役員とは、取締役、会計参与、監査役などです。
役員への給与は株主総会で決定することや一定の支払条件を満たすことなどがルールとしてあり、通常の従業員への給与とは区別して計上します。勘定科目は「役員報酬」を用いるのが一般的です。
パートやアルバイトの場合
パートやアルバイトはパートタイム労働者と呼ばれ、同じ事業所で働く正社員と比較して所定労働時間が短い労働者を指します。
正社員とパートタイム労働者への給与を分けて仕訳する場合には、パートタイム労働者の給与の勘定科目は「雑給」を使うのが一般的です。
派遣社員の場合
派遣社員とは、派遣元である派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の会社で働く労働者を指します。実際に働いている会社と雇用契約を結んでいる会社が別々であるのが特徴です。
派遣社員への給与は一般的に以下の勘定科目を用います。
- 人材派遣費
- 外注費
- 外注公費
派遣社員は自社で雇用しているわけではないため、正社員やパートタイム労働者への給与と分けて計上する必要があります。
給与の仕訳方法
具体例をもとに、給与の仕訳方法を見ていきましょう。正社員への給与の支払いを普通預金から行うことを前提として、具体例を紹介します。
また、給与支払い時には税金や社会保険料の天引きを行うため、これらの仕訳も必要です。税金や社会保険料の天引きに関する仕訳の詳細は、後述しています。
勘定科目は会社によって異なるため、あくまで参考として確認してください。
給与計算と支給日が同じ場合
まずは、給与の仕訳と支給を同時に行う場合です。
40万円の給料を支払い、1万円の所得税・2万円の住民税・6万円の社会保険料・2000円の雇用保険料を給与天引きした場合の仕訳は以下となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与 | 400,000 | 現金預金 | 308,000 |
預り金(源泉所得税) | 10,000 | ||
預り金(住民税) | 20,000 | ||
預り金(社会保険料) | 60,000 | ||
立替金(雇用保険料) | 2,000 |
給与は費用のため、借方欄に記帳します。現金預金から従業員へ実際に支払った金額は貸方に記帳し、給与天引きを行った社会保険料や税金は預り金や立替金として貸方に記帳します。
給与として記帳した金額が「額面給与」、現金預金として記帳した金額が「手取り」の金額になります。
給与計算と支給日が異なる場合
給与の締め日が月末で給与支給日が次月の25日というように、給与の計上と支給のタイミングがずれている企業は多々あります。
給与は発生した段階で計上する必要があるため、給与計算の締め日を迎えれば実際の支給がまだでも仕訳を行う必要があります。その際に用いられる勘定科目が「未払費用」です。
40万円の給料を計上し(従業員への支払いは次月)、1万円の所得税・2万円の住民税・6万円の社会保険料・2000円の雇用保険料を給与天引きした場合の仕訳は、以下となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与 | 400,000 | 未払費用 | 308,000 |
預り金(源泉所得税) | 10,000 | ||
預り金(住民税) | 20,000 | ||
預り金(社会保険料) | 60,000 | ||
立替金(雇用保険料) | 2,000 |
未払費用は1年以内に支払う予定の負債であるため、貸借対照表の流動負債に区分されます。未払費用で計上した給与を実際に従業員へ普通預金口座から支払った場合は、以下のように仕訳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払費用 | 308,000 | 普通預金 | 308,000 |
未払費用は、一時的に未払いとなっている費用を計上するための勘定科目のため、必ず支払いを済ませて借方への記帳を行いましょう。
給与の前払いをした場合
従業員へ給与の前払いをした場合は、「立替金」の勘定科目を用いて仕訳をします。従業員へ給料の10万円を前払いした場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
立替金 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
立替金は、一時的にお金を立て替えた際に用いる勘定科目のため、将来的に立て替えたお金は戻ってくることが前提となります。
給与から税金や社会保険料が天引きされる
給与を支払う際、従業員が納めるべき税金や社会保険料を天引きします。これらの給与天引きにかかる仕訳は給与計上時に同時に行いますが、仕訳の記帳方法は少し複雑です。
税金や社会保険料の天引きを行う際や支払先に納付した際の仕訳について解説します。
税金の仕訳方法
給与計上時に、会社が所得税と住民税を天引きします。これらは、会社が従業員へ支払うべき所得税、住民税を一時的に預かっているお金です。
そのため、給与計上時に給与天引きした所得税と住民税は預り金として仕訳をします。1万円の所得税・2万円の住民税を天引きした場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与 | 30,000 | 預り金(源泉所得税) | 10,000 |
預り金(住民税) | 20,000 |
預り金として計上した所得税と住民税を税務署へ納税した場合は以下のように仕訳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預り金(源泉所得税) | 10,000 | 現金預金 | 30,000 |
預り金(住民税) | 20,000 |
従業員が支払うべき税金を会社が一時的に預かっているだけなので、税務署へ納税した際には預かり金を借方に記帳し相殺します。
社会保険料の仕訳例
税金と同様に、給与計上時に健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料も会社が天引きします。それぞれの仕訳方法を紹介するので、参考にしてください。
①健康保険料と厚生年金保険料
健康保険料と厚生年金保険料は、所得税と住民税と同様に会社が一時的に保険料を預かり、あとで支払先に納付します。
給与天引きした健康保険料と厚生年金保険料は、一時的に預かっているお金のため、用いる勘定科目は「預り金」です。
健康保険料と厚生年金保険料の合計6万円を給与天引きした場合は、以下の通り仕訳を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与 | 60,000 | 預り金(社会保険料) | 60,000 |
健康保険料と厚生年金保険料は、従業員と会社員が半分ずつ負担します。会社が負担する健康保険料と厚生年金保険料の勘定科目は「法定福利費」です。
預り金として計上した所得税と住民税を税務署へ納税した場合の仕訳は、以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預り金(社会保険料) | 60,000 | 現金預金 | 120,000 |
法定福利費 | 60,000 |
仕訳を行ううえでの考え方は所得税や住民税と同じですが、保険料納付時には会社負担分の仕訳も必要であることを覚えておきましょう。
②雇用保険料
雇用保険料は、会社が労働基準監督署へ一括して保険料を支払った後に、従業員の給与から天引きされる仕組みです。そのため、会社は従業員が払うべき雇用保険料を事前に立て替えることとなり、「立替金」を用いて仕訳を行います。
会社が従業員から預り金として保険料を預かった後に、支払先に保険料を支払う所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料とは仕組みが異なるため注意が必要です。
雇用保険料6万7,500円(従業員負担分が2万5,000円、会社負担分が4万2,500円)を一括して労働基準監督署に支払った際の仕訳は以下のように行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
法定福利費 | 42,500 | 現金預金 | 67,500 |
立替金 | 25,000 |
毎月の給与から天引きした雇用保険料は、天引きした金額を立替金として貸方に記帳します。給与から2,000円の雇用保険料を天引きした場合の記帳は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与 | 2,000 | 立替金 | 2,000 |
雇用保険料は健康保険料や厚生年金保険料と同じ社会保険料ですが、納付方法の違いから仕訳方法も異なります。違いを理解して、確実に仕訳を行えるようにしましょう。
まとめ
本記事では、給与の仕訳方法について解説しました。給与の仕訳方法は従業員の雇用形態や支払い方法により異なります。
また、給与計上と同時に発生する税金や社会保険料の仕訳も複雑です。それぞれの違いを理解して、正しい仕訳ができるようにしましょう。
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