経費精算は、事業活動において発生した経費を正確に管理し、精算をするプロセスです。経費精算を行うことで、従業員は自己負担なく業務に関わった費用を適切に払い戻しを受けられます。経費精算の申請から承認、払い戻しと流れに沿って解説します。
経費精算とは?経費精算の種類や流れ、知っておくべきことを解説
経理部門には所属しているけれど、経費精算に携わっていないため、経理清算についてよくわからない、業務を効率化するために経費精算の大まかな流れが知りたいなど、疑問や悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
「今さら聞けないけど、経理精算ってなに?」という人のために、経費精算についての流れや、知っておくべきポイントなどを具体例を交えてわかりやすく解説します。
経費精算は、「出張費」「交通費」「交際費」などのように日常業務に関連する費用の払い戻しを行うものです。事業活動をしていれば、必然的に経費が発生します。
この記事は経費精算の業務を行う経理担当者だけでなく、経費精算の申請をする従業員にも役立つように経費精算を解説しています。業務改善を考えている人にもおすすめです。
目次
経費精算とは
経費精算とは、事業活動において営業などを行なった際に発生した金銭を、会社に申請して払い戻しを行うプロセスです。経理精算を行うためには、原則として領収書の提出が必要です。
たとえば得意先の担当者との打ち合わせのために喫茶店でお茶を注文したとしましょう。この場合、支払ったお茶代は、事業活動に関連する費用として計上され、会社に申請して経費精算が行われます。
具体的に経費計上できる項目を一部ご紹介します。
- 広告宣伝費
- 旅費交通費
- 交際費
- 通信費
- 水道光熱費
- 事務用品費
- 消耗品費
- 地代家賃
- 保険料
- 減価償却費
- 福利厚生費
- 図書費
領収書を提出することにより、従業員の架空請求などの不正を防ぐことができます。領収書は、支払ったことを証明する重要な書類です。
経費精算は企業において重要な業務の一つであり、正確な管理と適切な払い戻しを行うことで、経費の効率的な管理ができます。
経費精算の種類
経費の申請から処理されるまでの業務は、どのように進んでいくのでしょうか。
従業員が一時的に支払いを行い、あとで精算する場合、立替金などと混同するかもしれません。
しかし、勘定科目の立替金は、従業員や取引先などが負担すべき金額を会社が一時的に立て替えた際に使用する科目です。
経費精算を行う際、以下の3つの書類を作成する必要があります。
- 仮払経費申請書
- 仮払経費精算書
- 出張旅費精算書・旅費精算書
上記の3つの書類は、どのように記入するとよいのか、書類の用途について詳しく説明します。
仮払経費申請書
仮払経費申請書とは、出張などの概算金を事前に申請する際に記載する書類のことです。
仮払経費申請書は、法的に決まったフォーマットはありません。しかし、多くの会社が独自のフォーマットを用意しています。
以下の項目が記載されていると、確認作業がスムーズに進むでしょう。
- 申請者情報(書類番号、所属、氏名など)
- 仮払希望の総額、仮払希望日
- 目的・用途(出張や研修など業務目的)
- 内容・詳細
内容や詳細の記載については、会社によって異なる場合があります。社内ルールにしたがってどの程度詳しく記載するのかを確認しましょう。不明な項目がある場合には、上司などに確認してください。
上司や上長などから承認を得たあと、仮払経費申請書は完成します。
仮払経費精算書
仮払経費精算書は、仮払経費申請書で仮払いした経費を精算する際に記載する書類です。
仮払経費申請書で事前にかかる経費の概算予定を立てたあと、実際に仮払いされた総額が、「どのように使用されたのか」「剰余金があるのか」「不足金があるのか」を正確に申告するために使用します。
仮払経費申請書も、法的に決まったフォーマットがないため、それぞれの会社が独自のフォーマットを用意していることが多いでしょう。
精算は実際に支払った金額を基準として行われますので、支払った金額を証明するために領収書が必要です。仮払経費申請書を提出したあと、仮払経費精算書が必要になります。
消費税法施行令第49条によると、3万円未満の取引については領収書不要と記載されています。しかし、領収書は使用した金額の証拠となるため、常に受け取るようにしましょう。
参考:e-Gov法令検索「消費税法施行令」
出張旅費精算書・旅費精算書
一部の会社では、出張旅費精算書と旅費精算書を別に管理している場合もありますが、一緒に旅費精算書で管理している場合もあります。
出張旅費精算書・旅費精算書は、出張や打ち合わせの移動などで発生した費用を精算するために使用される書類です。決まったフォーマットがなく、それぞれの会社が用意した独自のフォーマットを使用できます。
たとえば、出張や打ち合わせの際はバスや地下鉄などの公共交通機関を利用することがあるとしましょう。最近は券売機で切符を購入することは少なく、多くの人は交通系ICカード(例:Suica)利用しているかもしれません。少額のバス代や電車代は、領収書を受け取ることが難しい場合もあります。
消費税法施行令では、3万円未満の取引については領収書が不要とされています。しかし、新幹線代などは簡単に領収書を発行してもらえるため、領収書を添付するようにしましょう。
経費精算業務で知っておくべきこと
経費精算は、事業活動をするうえで欠かせない業務です。
経費精算の方法や注意点は会社ごとに異なる場合があります。仮払経費申請書、仮払経費精算書、出張旅費精算書・旅費精算書は決まったフォーマットはなく、それぞれの会社が用意した独自のフォーマットを使用できます。
経費精算の方法や処理を誤ると、税務調査で指摘を受けたり、不正行為につながったり大きなトラブルに発展する恐れもあるでしょう。
次の章では経費精算に関連する問題点についても触れ、対策などを考えてみましょう。
金額のミスや申請から承認を得るまで時間がかかる
金額のミスや承認までに時間のかかる要因は、以下のようなものが考えられます。
金額のミスの多くは、ヒューマンエラーだと考えられます。
金額の計算ミスや転記ミスがその例です。
たとえば、自動販売機で差し入れの飲料を買った場合は領収書がありません。領収書が複数ある場合は、用紙の大きさやフォーマットが異なることがあります。このような場合は、計算ミスを起こしやすいでしょう。
計算ミスが起きたときは、金額のミスを修正する必要があります。再度申請を行う必要が出てくるかもしれません。
会社によっては、承認者が多い場合や複数の部門をまたいで承認を得る必要がある場合は、時間がかかりやすくなります。会社の規模が大きければ大きいほど、承認や書類の確認などに時間がかかる恐れがあります。
従業員が経費精算の手続きに慣れていない場合、必要な書類の整理や書類の記載などに時間がかかってしまうでしょう。
社内ルールを作り効率化するのが重要
経費精算の業務には、申請者、承認者、経理担当などと複数の従業員が関わるため、手間と時間がかかります。事前に社内ルールを作り運用していくと業務がスムーズに進められるでしょう。
社内ルールを決めておくことは、不正などのリスクを回避することにもつながります。
出張をした場合で説明します。社内ルールが決められてない場合、「経費で落とせるから」と必要以上に高価なホテルに宿泊したり、観光したりして使用してしまうことも考えられます。
経費の不正利用は、会社の利益を低下させますし、税務調査などでも指摘されるかもしれません。もし、不正が発覚すれば、社会的信用も落としてしまいます。
社内ルールがあれば、経費精算の処理をする経理部の負担も軽減されます。
同じような内容が承認されたり、承認されなかったりといった、承認結果のズレも防ぐことが可能です。
会社の規模にかかわらず、経費精算の社内ルールは作成するほうがよいでしょう。
経費精算の流れ
経費精算の流れを順を追ってみました。以下の通りです。
- 社内ルールに基づいて経費精算申請をする
- 決裁権限者、経理担当者などが承認する
- 従業員が業務上、必要な費用を支払う
- 領収書をもらう
- 社内ルールに基づいて経費精算精算をする
- 決裁権限者、経理担当者などが承認する
- 経理担当者が仕訳をする
- 従業員に払い戻しする
総額が高くなると、従業員に負担をかけてしまいます。概算金が高い場合は、仮払い申請を提出し先に仮払金を支払うこともあります。
立て替えた費用の領収書を保管する
経費精算では、従業員が支払ったことを証明する領収書を仮払経費精算書とともに提出してもらいます。この領収書が紙の領収書であれば、原本のまま保管します。
インターネットでやり取りをした場合、電子メールなどでWeb領収書をもらったことありませんか。Web領収書をプリントアウトして提出した経験がある人もいるかもしれません。
Web領収書は、2022年1月1日より電子帳簿保存法に則った電子保存が必要になりました。
現在(2023年6月)は猶予期間ですが、猶予期間終了後の2024年1月1日からは、Web領収書は電子保存が義務化となります。
経費精算には領収書が欠かせません。従業員には、電子取引をした場合の電子保存について対応を進める必要があります。
経費精算を作成・提出する
経費精算の手続きの方法やフォーマットは会社により異なります。確認作業から承認、仕訳と手間と時間がかかります。業務をストレスなくスムーズに進めるためには、社内ルールの策定とマニュアル化が重要です。
マニュアルがあれば、マニュアルに沿って作業を進められ、ミスや不備を減らすことが期待されます。ミスや不備があると、承認までに時間がかかる場合もありますので注意が必要です。
経費精算の書類は、「面倒くさいから」といってあと回しにすると、トラブルの原因にもなります。
提出についても、提出期間がある場合は指定された期間内に提出してもらいますが、提出期間が決まっていない場合は、早めに提出してもらうようにしましょう。
正しく仕訳されているか確認し、払い戻しする
経費精算が正しく仕訳されているかを確認してから、払い戻しを行います。以下に、確認すべきポイントをいくつか挙げてみました。
- 領収書と経費明細を照合し、金額や内容が一致しているか確認する
- 申請された経費が予算内に収まっているか確認する
- 経費科目と費用負担部門が正確に仕訳されているか確認する
金額や内容が一致していない場合には、申請者に確認してください。予算を大幅に超えている場合にも確認が必要です。経費精算が正しく仕訳されていることを確認してから、すみやかに払い戻しの手続きを適切に行いましょう。
経費精算の正確性とスムーズな処理は、社内ルールの策定と従業員への教育の徹底によって実現されます。これらの取り組みがなければ、正確な仕訳やスムーズな払い戻しは難しいでしょう。
継続精算の注意点
経費精算の種類や流れなどを説明しましたが、ここでは経費精算するときの注意点を4つご紹介します。
- 経費精算の期限
- 経費になる対象
- 正しい勘定科目で申請する
- 領収書や契約書を保管する
注意点を押さえながら経費精算を行うことで、経費の管理や精算の業務をスムーズに進められます。経費の正確性や透明性も確保が可能です。
経費精算の期限
経費精算は定められた期限内に手続きを行うことが重要です。
経費精算の期限は、会社のルールや所属する組織により異なる場合がありますが、一般的には月末が締め切りとなることが多いのではないでしょうか。これは月次決算の期限にあわせて設定されているためです。
出張や研修などの場合は、担当部署が実際にかかった費用を早急に把握する必要があるため、短い期限で提出をお願いされることもあるでしょう。具体的な提出期限は、社内ルールや組織の指示にしたがって決められます。
経費の申請から精算は、期限内に完了させることが望ましいです。期限を過ぎてしまうと、承認や処理に遅延が生じる恐れも大きくなり、承認や処理が難しくなります。予算管理や会計関連の業務にも影響を及ぼしかねません。
経費になる対象
経費になるかならないかの判断基準は、業務関連の支払いかどうかです。個人的な支払いは、経費とみなされません。経費精算を行う際には、規定や社内ルールを確認し、適切な処理をしましょう。
具体的な経費の対象は、会社により多少異なる場合があります。同じ会社でも新入社員と役員のように従業員のランクに応じて宿泊費の上限が異なる場合があります。上限を超える部分については、基本的には個人の負担となるでしょう。
経費精算では、業務関連の費用と個人的な費用を明確に区分けしなくてはなりません。個人的な費用は、経費精算の対象外です。
経費精算の際に、経費に該当するのか、個人的な費用なのか迷われる場面も出てくるかもしれません。そのような場合は、すみやかに上司などに確認し、適切な処理を行いましょう。
正しい勘定科目で申請する
勘定科目は明確な決まりはないため、 会社により勘定科目の設定は異なります。経費精算の際によく使われる代表的な勘定科目についてご紹介します。
- 旅費交通費
- 交際費
- 消耗品費
- 福利厚生費
- 雑費
電車代、バス代、ガソリン代、駐車代などは旅費交通費です。レンタカー代は、旅費交通費のほかに、車両費で処理する会社もあります。接待時の駐車代は、交際費に該当します。
交際費は、取引先との食事代やあいさつ回りの際の手土産などです。
消耗品費は、文房具や名刺代、オフィス用品などです。文房具などは、事務用品費で処理する会社もあります。
どの科目にも該当しない費用や、少額で継続的に発生しないようなものは雑費で処理されることが多いでしょう。迷った場合は、自己判断しないで確認することが重要です。
領収書や契約書を保管する
決算に必要な書類や、金銭取引や経費精算に関連する領収書などは、保管義務があります。これらの保管期間は、原則7年です。実際に保管を始めて7年ではなく、法人税の申告期限の翌日から7年です。
また、長く事業を行っていると赤字で決算を迎え、繰越欠損金が発生してしまうこともあります。
繰越欠損金は、翌年度以降に持ち越すことが可能です。この場合、金銭に関する帳簿や領収書などの保管期間は、原則10年に延長されます。
2022年1月1日より電子帳簿保存法に則ったWeb領収書の電子保存が必要になりました。Web領収書の保管期間も紙の領収書と同様です。
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まとめ
経費精算の種類から流れなどを解説しました。日々の経理業務や会計業務はたくさんあり、それぞれの業務には、知っておくとよいことや注意点があります。
経費精算の業務は、事業活動をすれば発生する、企業にとって欠かせない業務です。申請から承認、払い戻しまで時間がかかりやすいですが、正確かつすみやかに業務を完結させたいものです。ミスや遅延が発生してしまうと従業員からの信頼を失ってしまう原因にもなりかねません。
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