「住民票の発行手数料はどの勘定科目を使えばいいのだろう?」
「住民票の発行手数料を経費で計上するとき、何に注意したらいいのだろう?」
このようなお悩みではないでしょうか?
仕事で住民票が必要になって取得したものの、どの勘定科目を使って処理をすればよいのかわからない人も多いことでしょう。
そこで、本記事では住民票の発行手数料の勘定科目について詳しく解説していきます。
パターン別の仕訳例や記帳する際の注意点、さらに経費計上できる場合とできない場合などについても解説します。
住民票の発行手数料の勘定科目でお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。
目次
住民票の発行手数料の勘定科目は?
住民票の発行手数料の勘定科目は、租税公課が使われることが一般的です。
租税公課は、税金や行政サービスに対して支払う費用などのことで、住民票の発行手数料は行政サービスの費用に該当するからです。
ただし、各企業で適した勘定科目を自由に決められる「経理自由の原則」というルールがあるため、住民票の発行手数料を租税公課以外の勘定科目で計上していても問題はありません。
また「継続性の原則」という会計上のルールもあり、一度決めた勘定科目を継続的に使用する必要があります。
したがって、すでに住民票の発行手数料を租税公課以外で計上している場合でも、すぐに勘定科目を変更しないようにしてください。
もし気になる場合は、現在の勘定科目に決定した社内での経緯を確認するとよいでしょう。
【パターン別】住民票の勘定科目と仕訳例
住民票の発行手数料を支払うといっても、いろいろなケースが想定されます。勘定科目と仕訳例をパターン別に解説していきます。
解説するのは、下記の4つのケースです。
- 会社の現金で支払った場合
- 住民票を複数発行した場合
- 従業員が発行手数料を立て替えた場合
- 従業員がオンライン申請した場合
どれも重要な内容のためケースごとに一つずつ解説していきますが、特に自分自身に該当するケースをしっかりと確認するようにしてください。
会社の現金で支払った場合
会社の現金で住民票の発行手数料を支払った場合、下記の仕訳例のように租税公課と現金を用いて仕訳をします。
・住民票の発行手数料200円を会社の現金で支払った場合の仕訳例
借方 | 貸方 |
租税公課 200円 | 現金 200円 |
住民票を複数発行した場合
次に、住民票を複数発行した場合を考えてみましょう。
住民票を複数発行した場合、すぐに使用しないものが含まれるため、貯蔵品などの勘定科目でいったん計上し、使用するときに貯蔵品から租税公課に計上する方法も考えられます。
ただし、住民票を使用する際は「発行から6か月以内」といった期限が定められているケースが多いことでしょう。
したがって、近いうちに使用されることがわかるため、住民票を複数発行した場合でもすべての金額を費用計上しても問題ないといえます。
しかし、もちろん今後使用する見通しがないにもかかわらず、住民票を複数発行して費用計上すると問題になる恐れがあるため、必要な分だけを発行するようにしてください。
・住民票を4枚発行し、800円(200円×4枚)の発行手数料を、会社の現金で支払った場合の仕訳例
借方 | 貸方 |
租税公課 800円 | 現金 800円 |
従業員が発行手数料を立て替えた場合
住民票を発行する際、発行手数料代として会社が現金を支給せずに、従業員が発行手数料を立て替えた場合を考えてみましょう。
従業員が発行手数料を立て替えた場合の仕訳の貸方には、本来会社が支払うべき経費を立て替えた際に使用する未払金や未払費用などの負債科目を使用して仕訳をします。
・住民票の発行手数料200円を、従業員が一時的に立て替えて支払った場合の仕訳例
借方 | 貸方 |
租税公課 200円 | 未払金 200円 |
従業員がオンライン申請した場合
住民票は役所に足を運ばなくても、オンライン申請をして自宅への郵送も可能です。
住民票をオンライン申請した場合は、郵送料を含めて料金の支払いを行うことになります。ここでは、オンライン申請をした場合の仕訳を考えてみましょう。
オンライン申請の場合における仕訳のポイントは、消費税の取扱いです。
租税公課は消費税が発生しない非課税扱いであるのに対し、郵送料の消費税は課税扱いです。
そのため、オンラインで申請した住民票の発行手数料と、郵送料を別で計上して仕訳をするとよいでしょう。
なお、住民票の発行手数料を計上する租税公課が非課税扱いなのは、発行手数料が法令に基づいて徴収される手数料で、課税の対象としてなじまないことが理由です。
気になる人は、下記の国税庁のホームページを参考にしてください。
・従業員が住民票の発行をオンライン申請し、発行手数料200円、郵送料120円を支払った場合の仕訳例
借方 | 貸方 |
租税公課 200円 | 未払金 320円 |
通信費 109円 | |
仮払消費税 11円 |
住民票発行手数料を記帳する際の注意点
前の章でパターン別の住民票の勘定科目と仕訳例を解説しましたが、記帳する際に注意すべきポイントがあります。
ここでは、住民票の発行手数料を記帳する際の注意点を解説します。
主な注意点は下記の3つです。
- 支払手数料の場合は非課税にする
- 仕入れ額控除の対象にならない
- 勘定科目を安易に変えない
支払手数料の場合は非課税にする
住民票の発行手数料を支払手数料の勘定科目で計上する際、ほかの支払手数料が消費税の課税扱いであったとしても、住民票の発行手数料は非課税にすることに注意をしてください。
なぜなら、住民票の発行手数料は課税の対象としてなじまず非課税のため、支払手数料の勘定科目を使用する際にも同じ考え方をすべきだからです。
住民票の発行手数料以外の支払手数料が消費税の課税扱いだからといって、同じように住民票の発行手数料も課税にするのは、誤りであることを覚えておきましょう。
もし非課税取引でなく課税取引にして仕訳をしてしまうと、消費税の申告の際に過少申告となり、追徴課税のペナルティを受けてしまう恐れがあるため、十分注意をしてください。
なお、支払手数料だけでなく、雑費などを使用しているケースでも同様の考え方になることも覚えておくとよいでしょう。
仕入税額控除の対象にならない
住民票の発行手数料は、非課税取引のため仕入税額控除の対象になりません。
仕入税額控除とは、売上時の消費税額から仕入時にかかった消費税額を引いて納税することにより、消費税の二重課税を解消できる仕組みのことです。
仕入税額控除の対象となるのは、課税仕入の取引をした場合に限られます。
したがって、住民票の発行手数料は非課税取引のため、仕入税額控除の対象にならないことを覚えておいてください。
勘定科目を安易に変えない
勘定科目を安易に変えないことも、住民票の発行手数料を記帳する際に注意すべきポイントです。
「継続性の原則」という会計上のルールがあるため、一度決めた勘定科目を継続して使用し、変えるべき理由がなければ安易に変えないようにしてください。
また、過年度分析をする場合に比較できず、正しい損益管理ができないことも勘定科目を安易に変えてはいけない理由の一つです。
ただし、当初想定していたよりも住民票の発行手数料の金額が大きくなり、社内の管理方法を変えて運用するために、勘定科目を変更したいこともあるでしょう。
もし勘定科目を変更したい場合は、まず社内で勘定科目を変更することによる影響や妥当性を十分に協議し、監査を受けている会計士に相談することをおすすめします。
住民票の発行手数料は経費計上できない?
ここまで住民票の発行手数料の適切な勘定科目や仕訳例、また記帳する際の注意点を解説してきましたが、住民票の発行手数料はすべて経費計上できるのでしょうか?
ここでは、住民票の発行手数料の経費計上について、下記の3つの項目で解説していきます。
- 経費計上できる場合とできない場合
- 租税公課で経費となる税金や公共料金
- 租税公課で処理できるものすべてが経費計上できる訳ではない
経費計上できる場合とできない場合
住民票の発行手数料が経費で計上できる場合は、住民票の取得が事業に必要なときです。
たとえば、従業員の本人確認時や、海外出張に行くためのパスポートの取得時などのときです。
上記のケースのときは、事業を行うために住民票が必要なため、住民票の発行手数料を経費で計上できます。
一方で、経費で計上できない場合はどういうときでしょうか?
住民票の発行手数料を経費で計上できないのは、事業に関係なく私用で住民票が必要になったときです。
もし、私用で住民票が必要になったにもかかわらず、会社が支払っていた場合は、立替金などの勘定科目を使用して、従業員本人から住民票の発行手数料を徴収するようにしてください。
租税公課で経費となる税金や公共料金
住民票の発行手数料以外にも、租税公課で計上して経費となる税金や公共料金があります。
租税公課で経費となる税金や公共料金の例は、下記の通りです。
- 税金:印紙税、固定資産税、事業税、自動車税、登録免許税、不動産取得税など
- 公共料金:協同組合、商工会、商工会議所、商店会、同業者組合などの会費、組合費、賦課金
なお、上記の例以外にも租税公課で経費となる税金や公共料金があるため、支払いの都度、経費となるかどうかの確認をするようにしてください。
租税公課で処理できるものすべてが経費計上できる訳ではない
一般的には租税公課で処理できるといわれているものでも、計上時に租税公課として経費計上できないケースがあります。
たとえば、関税のケースです。
関税は海外から仕入れた際にかかるものですが、租税公課ではなく、仕入の付随費用として費用勘定の仕入や固定資産などで会計処理することがあります。
仕入で会計処理された後、売り上げがあがった際に対応させる形で売上原価として会計処理されます。
また、もし仕入でなく固定資産の付随費用とみなされた場合は、建設仮勘定で会計処理され、稼働確認がされた後に減価償却費として費用計上されるのが一般的です。
したがって、一般的には租税公課として処理するものでも、ケースによっては計上時に租税公課として経費計上できる訳ではないことを覚えておいてください。
また、会計上は租税公課で処理するものの、法人税を計算する際の費用、つまり損金に算入できないものがあることも、覚えておくとよいでしょう。
例としては、下記のものが挙げられます。
- 住民税
- 所得税及び復興特別所得税
- 相続税
- 国税の延滞税・加算税
- 地方税の延滞金・加算金
- 罰金
住民税などの税金は、所得に対して課されるもののため、税務上の損金に算入できません。
また、国税の延滞税・加算税などのペナルティについても損金算入できません。
なぜなら、ペナルティに関する費用が損金に算入できてしまうと法人税が低くなり、ペナルティの意味が薄れてしまうことが懸念されるからです。
以上のように、会計上は租税公課で処理できても、税務上の損金に算入できないものがあることも覚えておきましょう。
ここまで住民税の発行手数料について解説してきましたが、簿記の知識があるとスムーズに理解できるでしょう。
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まとめ
本記事では、住民票の発行手数料の勘定科目について詳しく解説しました。
住民票の発行手数料の勘定科目は、租税公課が使われることが一般的です。
ただし、租税公課以外で計上していても、一度決めた勘定科目を継続的に使用する必要があるため、すぐに勘定科目を変更しないように注意をしてください。
そして、住民票の勘定科目と仕訳例を下記の4つのパターンで解説しました。
- 会社の現金で支払った場合
- 住民票を複数発行した場合
- 従業員が発行手数料を立て替えた場合
- 従業員がオンライン申請した場合
どの勘定科目を使えばよいか悩んでいる人は、本記事内の仕訳例を確認してください。
また、住民票発行手数料を記帳する際の注意点は下記の3つです。
- 支払手数料の場合は非課税にする
- 仕入税額控除の対象にならない
- 勘定科目を安易に変えない
上記3点は、住民票の発行手数料を仕訳する際に確認するようにしてください。
さらに、住民票の発行手数料が経費計上できるのは事業に関係するときで、租税公課で処理できるものすべてが経費計上できる訳ではないことにも注意をしましょう。
本記事では住民票の発行手数料について詳しく解説しましたが、簿記の知識があればスムーズに理解できることでしょう。