インボイス制度で個人事業主が受ける影響は?個人事業主が準備すべきことも解説

個人事業主は売上が1,000万円以下の場合が多く、ほとんど免税事業者です。

インボイス制度導入にともない、不安に思っている人もいます。

導入後も請求書発行事業者にはなれますが、導入前に準備できることを確認しておきましょう。

インボイス制度で個人事業主が受ける影響や事前に準備したいこと、課税事業者になった場合にやるべきことなどをご紹介します。

インボイス制度導入による個人事業主への影響

インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式のことで、2023年10月1日よりスタートします。

「適格請求書等保存方式」が正式名称です。

現在(2023年9月)、消費税は軽減税率があるため8%と10%の税率が存在します。複数の税率が混在していても、正しい会計処理や申告が行えるようにインボイス制度は導入されるものです。

インボイス制度が導入されると、適格請求書の発行がない取引の場合、消費税の仕入税額控除を受けられません。

売り手は買い手に適格請求書を発行し、お互いに保存を行うことで、消費税の仕入税額控除が適用されます。

適格請求書は、適格請求書発行事業者の登録がないと発行できません。登録ができるのは課税事業者のみです。

免税事業者が多い個人事業主の場合、免税事業者のままでいるか、適格請求書を発行するために課税事業者になるか検討を行う必要があります。

課税事業者になれば、適格請求書発行事業者の登録を済ませ、適格請求書の発行はできますが、消費税の納税義務を免れることはできません。

売上1,000万円以下の免税事業者が受ける影響

インボイス導入後も免税事業者のままでいる場合、取引先が課税事業者であると消費税の仕入税額控除ができないため、値下げをお願いされたり、取引を断られたりする恐れがあります。

取引先に適格請求書発行事業者になるよう強要したり、大幅な値下げを行ったりすることは独占禁止法違反ですが、消費税分の値下げ程度は応じなくてはいけない可能性が高いでしょう。

また、免税事業者のままでいると、今後新規の取引を獲得するのも厳しい状況になるかもしれません。

課税事業者になった場合

売上が1,000万円以下でも、所轄の税務署に消費税課税事業者選択届出書を提出すれば課税事業者になれます。

課税事業者として登録された日の売上からは、消費税の納税義務が発生します。

課税事業者になると2年間は戻れないため注意しましょう。

課税事業者になれば、適格請求書発行事業者の登録申請書の審査後、取引先の仕入税額控除の対象になります。

インボイス制度導入の2023年10月1日から適格請求書発行事業者になりたい場合は、2023年9月30日までに登録申請を行いましょう。

開始後は申請書の提出日から15日後以降の希望日であれば登録できます。

インボイス制度導入前に個人事業主が準備すべきこと

インボイス制度導入前に慌てないように、今から準備できることはしておきたいですよね。

まずは取引先が課税事業者と免税事業者のどちらが多いか考えなくてはなりません。

取引先が課税事業者だった場合と免税事業者だった場合に分けて、どのような準備が必要か見ていきましょう。

主な取引先が課税事業者だった場合

主な取引先が課税事業者だった場合、免税事業者のままでは適格請求書が発行できないため、相手は仕入税額控除ができません。

取引先である課税事業者は、仕入税額を負担しなくてはならないため、値下げに応じたり、取引が中止になったりとさまざまな影響が考えられます。

課税事業者の取引先が多い場合は、すぐに課税事業者になるのではなく、値下げなどに応じた場合と免税事業者になり消費税を納税した場合、メリットが大きいのはどちらか把握してからにするといいでしょう。

主な取引先が免税事業者だった場合

主な取引先が免税事業者だった場合、適格請求書の発行や保存は必要ありません。

免税事業者のままでいても、取引に影響が出ることはないでしょう。

個人事業主が適格請求書発行事業者になる方法

適格請求書発行事業者になるには、まずは所轄の税務署に消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者に登録しましょう。

その後、個人事業主が適格請求書発行事業者になるにはどのような手続きを行えばいいのかご紹介します。

適格請求書発行事業者の登録を申請する

課税事業者になっても適格請求書発行事業者の登録を行わなくては適格請求書の発行はできないため注意しましょう。

適格請求書発行事業者の登録申請は、郵送またはe-taxで行えます。

所轄の税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を出し、審査が通ると登録通知が届きます。登録通知は再発行ができないため、なくさないように気をつけてください。

現在は2023年9月末までの登録申請者までが、2023年10月1日が登録開始日になります。

適格請求書の写しを保存しておく

適格請求書は売り手も買い手も保存しなくてはなりません。

自分が売り手で適格請求書を発行する場合は、写しをしっかりと保存しておきましょう。

適格請求書に記載する項目は以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分した消費税金額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

保存期間は通常7年間、青色申告で欠損金がでた場合は10年間が保存期間です。

インボイス制度に対応した帳簿を作成する

インボイス制度は請求書だけではなく、帳簿も対応したものを作成しなくてはなりません。

帳簿への記載項目は以下のとおりです。

  • 仕入先の氏名または名称
  • 仕入年月日
  • 取引内容
  • 税率
  • 課税仕入額

適格請求書では記載が義務付けられている登録番号は、帳簿に記載する必要はありません。

消費税の確定申告を行う

適格請求書発行事業者になれるのは課税事業者だけです。

課税事業者は消費税の納付義務があります。

個人事業主の場合、課税対象期間は1月1日~12月31日、申告期間は課税対象期間の翌年の1月1日~3月31日、納付期限は課税対象期間の翌年の3月31日までです。

申告や納付が遅れると延滞税などがかかるため注意しましょう。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 消費税及び地方消費税の確定申告書第一表(消費税及び地方消費税の申告書)、第二表(課税標準額等の内訳書)
  • 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
  • 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
  • マイナンバーカード、マイナンバーを確認できる本人確認書類

税務署に持参するほかに、郵送やe-taxでも消費税の確定申告ができます。

消費税の納税方法は?

消費税の納税方法は、本則課税と簡易課税があります。

本則課税は売上税額から仕入税額を引いたもの、簡易課税は売上税額にみなし仕入率をかけ、売上税額から引いたものです。

原則は2つの納税方法ですが、インボイス導入の関係で軽減措置が受けられるため、該当するのか確認しましょう。

消費税の納税額は売上税額の2割になる

インボイス導入にともない課税事業者になった場合、売上税額が2割になります。

この負担軽減措置は3年間受けられます。

負担軽減措置は事前に届出は不要で、売上と収入の税率を把握するだけで経費の集計は必要ありません。

簡易課税制度

簡易課税制度とは、前々年(前々事業年度)の課税売上が5,000万円以下の小規模事業者が対象となる制度です。

一般課税で納付金額の計算を行うと、課税取引・非課税取引・付加税取引・免税取引に分けなくてはなりませんが、消費税額を計算するのはとても手間がかかります。

このような事務負担を軽減するために、受け取った消費税額にみなし仕入率(業種ごとに決まっている一定割合)をかけて計算し、納付するのが簡易課税制度です。

インボイス制度導入により、仕入税額控除の要件は変わりましたが、簡易課税制度は変わっていません。

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まとめ

インボイス制度の導入は、個人事業主にもさまざまな影響があります。

混乱しないように導入前から準備を進めましょう。

課税売上が1,000万円以下でも、取引先に課税事業者が多い場合、値下げだけではなく最悪の場合取引が中止となり、新規の取引も獲得しにくくなる恐れがあるため、適格請求書事業者になったほうがメリットは大きいこともあります。

課税事業者になっただけでは適格請求書発行事業者にはなれないため、所轄の税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を出しましょう。

免税事業者から課税事業者へなる場合、インボイス制度の開始直後は負担軽減措置や補助金など、支援措置もあるので活用してください。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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