印鑑証明書を発行したときの勘定科目は?仕訳例や注意点を解説

印鑑と定款の画像です

「印鑑証明書を発行したけど、どの勘定科目を使えばよいのだろう?」

「印鑑証明書の発行手数料の仕訳例や注意点を確認したい」

このように悩んでいませんか?

印鑑証明書を発行したものの、発行手数料についてどの勘定科目を使い、どのように仕訳を切ればよいのか、分からない人も多いことでしょう。

そこで、本記事では印鑑証明書を発行したときの勘定科目を解説します。

さらに、シチュエーション別の仕訳例や注意点も解説していきます。

印鑑証明書の発行手数料の会計処理ができずに悩んでいる人は、ぜひ最後までお読みください。

印鑑証明とは

印鑑証明とは、印鑑が登録されたものであることを公的に証明する書類のことです。

印鑑証明は、法人は法務局、個人事業主は各市区町村の役所へ行けば取得できます。

なお個人事業主の場合、お住まいの自治体によっては、各市区町村の役所以外にもコンビニエンスストアや郵便局で印鑑証明を取得できるところもあります。

個人事業主で印鑑証明が必要な人は、お住まいの自治体のホームページを確認してください。

ここでは、印鑑証明の理解を深めるために、下記2点について解説します。

  • なぜ印鑑証明が必要なのか
  • 印鑑証明書と印鑑登録証の違い

なぜ印鑑証明が必要なのか

印鑑証明は、契約の当事者が本人であることを確認するために必要です。

印鑑証明を行うには、任意の印鑑と法人名などの情報をつなげて登録を行う「印鑑登録」を済ませておく必要があります。

印鑑登録を行うと、登録した印鑑の印影(押印して書面に残るあと)と氏名・住所などの情報がつながった形になり、印鑑の使用者が印鑑登録をした人であることを公的に証明できます。

したがって、印鑑証明を行えば契約を行う際に当事者が本人であることが分かるため、本人のなりすましを防ぎ、安全に取引を行えるでしょう。

また、印鑑証明が必要となるシーンは、不動産の購入・売却などの高額な物品の取引時や銀行からの借入時など、重要な契約を行うときです。

印鑑証明書と印鑑登録証の違い

印鑑証明書と印鑑登録証は名称が似ているため、違いが分かりづらい人も多いことでしょう。

違いは下記の通りなので、印鑑証明書と印鑑登録証の区別が付きづらい人は確認してください。

  • 印鑑証明書:印鑑が各市区町村の役所に登録されたものであることを公的に証明する書類のこと。また重要な契約時に求められ、印鑑登録証かマイナンバーカードを用いて発行できる。
  • 印鑑登録証:各市区町村の役所で任意の印鑑を登録するともらえるカードのこと。

また、印鑑登録証は印鑑登録をしたことが分かるカードのため、印鑑証明書の代わりにはならないことに十分注意をしましょう。

印鑑証明書を発行したときの勘定科目

前の章では、印鑑証明の定義や必要な理由などを解説しましたが、印鑑証明書を発行した際は、どの勘定科目を使用すればよいのでしょうか?

印鑑証明書を発行したときの勘定科目は、下記の3つを使います。

  • 租税公課
  • 支払手数料
  • 雑費

租税公課の使用が一般的ですが、支払手数料と雑費で計上可能です。

それぞれの勘定科目ごとに仕訳例を解説していきますので、仕訳を切るときの参考にしてください。

租税公課で仕訳を切る場合

1つ目は租税公課です。

租税公課は、国税や地方税などの租税、国や地方公共団体などに支払う公課のことで、国や地方自治体に払う税金や、会費・手数料などを計上する際に使用する勘定科目です。

租税公課の対象となる主な例は下記の通りなので、覚えておきましょう。

  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 商工会議所、商店会などの会費

印鑑証明書を発行すると、法務局か地方公共団体へ支払いを行うことになるため、一般的には租税公課を用いて仕訳を切ります。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)印鑑証明書1通の発行手数料450円を現金で支払い、租税公課で計上した。

借方貸方
租税公課 450円現金 450円

支払手数料で仕訳を切る場合

2つ目は支払手数料です。

支払手数料は、取引をした際に発生した手数料を計上する際に使用する勘定科目で、支払手数料の対象となる主な例は下記の通りです。

  • 銀行の振込手数料
  • 各種証明書の手数料
  • 事務手数料
  • 不動産売買の仲介手数料

印鑑証明の発行手数料も、上記の例で挙げたような手続き時に発生した手数料と考えられるため、支払手数料で計上できます。

支払手数料で仕訳を切る場合の仕訳例は、下記の通りです。

(仕訳例)印鑑証明書1通の発行手数料450円を現金で支払い、支払手数料で計上した。

借方貸方
支払手数料 450円現金 450円

雑費で仕訳を切る場合

3つ目が雑費です。

雑費はほかの勘定科目に該当せず、さらに重要性が低く、少額で一時的に計上する取引の際に使用する勘定科目です。

印鑑証明書の発行手数料は、法人が取得する場合450円と金額が大きくありません。

また、会社の事業によりますが、発行する回数も多くないことが想定されます。

そのため、既に解説した租税公課や支払手数料で計上せずに、印鑑証明書の発行手数料を雑費として計上することもできます。

ただし、印鑑証明書の発行手数料だけでなく、そのほかの勘定科目に該当しない取引のものも雑費で計上されるため、経費管理の面では注意が必要です。

雑費で計上した場合の仕訳例は、下記の通りです。

(仕訳例)印鑑証明書1通の発行手数料450円を現金で支払い、雑費で計上した。

借方貸方
雑費 450円現金 450円

【シチュエーション別】印鑑証明書を発行する際の仕訳例

印鑑証明書の発行手数料の仕訳を切る際は、租税公課・支払手数料・雑費の勘定科目を使用可能です。

ただし、印鑑証明書を発行するには複数の方法があるため、それぞれの方法にあわせて会計処理を行う必要があります。

そこで、ここではシチュエーション別に、印鑑証明書を発行する際の仕訳例を解説します。

  • 収入印紙を購入後、法務局に提出した場合
  • すでに持っていた収入印紙を使い、法務局に提出した場合
  • オンラインで発行した場合
  • コンビニエンスストアで発行した場合

なお、印鑑証明書の発行手数料には、一般的に使われる租税公課を用いて解説しています。

収入印紙を購入後、法務局に提出した場合

法人の印鑑証明書を発行するために法務局へ行った場合、発行手数料分の金額の収入印紙を購入し、印鑑証明書を発行するための申請書に貼った後に、窓口へ提出して申請するのが一般的です。

上記の場合、購入した収入印紙分の金額を租税公課で計上することになります。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)印鑑証明書を発行するために450円の収入印紙を現金で支払い、申請書に収入印紙を貼り付け、法務局に提出した。

借方貸方
租税公課 450円現金 450円

すでに持っていた収入印紙を使い、法務局に提出した場合

次は、すでに持っている収入印紙を使い、法務局で印鑑証明書の発行を行ったケースを考えてみましょう。

すでに収入印紙を持っていた場合でも、購入した際に前の章で解説したように仕訳を切り、月末や期末を迎える前に法務局に提出していれば、さらに仕訳を切る必要はありません。

ただし、もし収入印紙を購入して月末や期末をまたぎ、収入印紙が未使用のまま金庫に保管されていた場合は、一般的には収入印紙を貯蔵品に計上する必要があります。

したがって、収入印紙を購入して月末や期末をまたいで法務局に提出する場合は、下記の順番で仕訳を切らなければいけません。

  1. 収入印紙を購入したとき
  2. 期末を迎え、収入印紙が未使用だったとき
  3. 貯蔵品で計上していた収入印紙を法務局に提出したとき

1から順番に解説していきます。

1.収入印紙を購入したとき

まずは、収入印紙を購入したときに仕訳を切ります。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)収入印紙450円分を現金で購入した後、収入印紙を社内の金庫に保管した。

借方貸方
租税公課 450円現金 450円

2.期末を迎え、収入印紙が未使用だったとき

次に、期末や月末を迎えて金庫に保管されている収入印紙が未使用だった場合、貯蔵品に振り替える必要があります。

貯蔵品は、資産価値があり未使用のものを計上するときに使用する勘定科目で、金券や切手なども未使用の場合は、貯蔵品に計上する必要があります。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)期末を迎え、金庫に保管している収入印紙が未使用だったため、貯蔵品に振り替えた。

借方貸方
貯蔵品 450円租税公課 450円

3.貯蔵品で計上していた収入印紙を法務局に提出したとき

最後に、金庫で保管され、貯蔵品で計上されている収入印紙を使って法務局で印鑑証明書を発行したときは、貯蔵品から租税公課に振り替える仕訳を切ります。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)金庫に保管されていた未使用の450円の収入印紙を使い、申請書に貼って法務局に提出し、印鑑証明書を発行した。

借方貸方
租税公課 450円貯蔵品 450円

上記で解説した1から3までの仕訳を切ることで、印鑑証明書の発行手数料の仕訳を正しく切れます。

手順は多いですが忘れずに仕訳を切り、適切な会計処理を行いましょう。

オンラインで発行した場合

印鑑証明書はオンラインでも発行可能で、インターネットバンキングや電子納付が可能なATMなどを利用して、発行手数料を支払います。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)印鑑証明書をオンライン手続きで発行申請を行い、発行手数料として390円を支払った。

借方貸方
租税公課 390円預金 390円

コンビニエンスストアで発行した場合

個人の印鑑証明書は、マイナンバーカードを作成していれば、コンビニエンスストアで発行できます。法人の印鑑証明書は、コンビニで取得できません。

仕訳例は下記の通りです。

(仕訳例)個人事業主がコンビニエンスストアで印鑑証明書を発行し、現金200円を支払った。

借方貸方
租税公課 200円現金 200円

印鑑証明書の発行手数料に関する注意点

ここまで印鑑証明書を発行したときの勘定科目や、シチュエーション別の仕訳例を解説してきました。

次に会計処理を行う際に注意すべき点があるため、解説します。

印鑑証明書の発行手数料に関する注意点は、下記の3点です。

  • 印鑑証明書の発行は消費税の非課税取引に該当する
  • 摘要欄へ何に支払ったものか記載する
  • 基本的に同じ勘定科目を使用する

印鑑証明書の発行は非課税になる

印鑑証明書を発行したときの手数料は、消費税の非課税取引に該当します。

なぜなら、印鑑証明書の発行手数料が国税庁の定める「国等が行う一定の事務に係る役務の提供」に当たるからです。

出典:国税庁「No.6201非課税となる取引

事務に係る役務の提供は、印鑑証明書の発行手数料以外にも特許、免許、公文書の交付などの事務に関わるサービスの提供を指し、非課税扱いです。

したがって、印鑑証明書の発行手数料の仕訳を切るときは、消費税の区分を非課税にしてください。

なお、非課税の取引が多い租税公課を使用している場合は問題がないかもしれませんが、課税の取引が多い、支払手数料や雑費を使用している場合はとくに注意をしましょう。

摘要欄へ何に支払ったものか記載する

印鑑証明書の発行手数料の仕訳を切る際は、租税公課・支払手数料・雑費を使用します。それぞれの勘定科目では、印鑑証明書の発行手数料以外の経費を多く計上するでしょう。

そのため、仕訳ごとに情報が何もないと、経費管理をする際に何に対するお金の支払いなのかが、分からなくなる恐れがあります。

したがって、摘要欄へ「印鑑証明書の発行手数料」などと、何に支払ったものかを記載して仕訳を切るとよいでしょう。

基本的に同じ勘定科目を使用する

印鑑証明書の発行手数料の仕訳を切る際に、基本的に同じ勘定科目を使用することが大切です。

なぜなら「継続性の原則」という会計上のルールがあり、基本的には一度決めた勘定科目を使用することになっているからです。

もし、安易に何度も勘定科目を変更してしまうと、経費管理が難しくなる上に、不正をしているのではないかと、税務調査や会計士監査の際に怪しまれてしまう恐れがあります。

勘定科目を自由に決められる「経理自由の原則」のルールもあるため、どの勘定科目を使用しても問題ありません。しかし、変更する際は簡単に変えるのではなく、社内で協議してから変更するとよいでしょう。

ここまで印鑑証明書の勘定科目について解説してきましたが、解説した内容は簿記の知識があればスムーズに理解できることです。

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まとめ

本記事では、印鑑証明書を発行したときの勘定科目について詳しく解説しました。

印鑑証明とは、印鑑が登録されたものであることを公的に証明する書類のことで、契約の当事者が本人であることを確認するために必要です。

印鑑証明書の勘定科目は、下記の3つを使用します。

  • 租税公課
  • 支払手数料
  • 雑費

一般的には租税公課が使われますが、支払手数料と雑費でも計上可能なことを覚えておきましょう。

また、本記事では下記のシチュエーションの仕訳例を解説しました。

  • 収入印紙を購入後、法務局に提出した場合
  • すでに持っていた収入印紙を使い、法務局に提出した場合
  • オンラインで発行した場合
  • コンビニエンスストアで発行した場合

どのように仕訳を切ればよいか悩んでいる人は、上記の中に該当するシチュエーションがないかを確認してください。

印鑑証明書の発行手数料の会計処理を行う際に、注意すべき点は下記の3点です。

  • 印鑑証明書の発行は非課税になる
  • 摘要欄へ何に支払ったものか記載する
  • 基本的に同じ勘定科目を使用する

それぞれ理解した上で、印鑑証明書の発行手数料の仕訳を切りましょう。

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この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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