電子帳簿保存法とは、近年のデジタル化の進展に伴い、企業や個人事業主が電子データとしての帳簿や関連書類を保存する際の基準や要件を定めた法律です。
従来の紙ベースの帳簿保存から、時代のニーズに合わせた電子データの保存へとシフトする中で、どのようなデータを、どのように保存すれば良いのか、どのような場合には電子保存が認められるのかといった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法の概要から、対象となる者や書類、
具体的な保存要件までをわかりやすく解説していきます。デジタル時代の帳簿保存に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、税務に関連する帳簿や書類の保存方法に関する法律であり、近年のデジタル化の進展を背景に、企業や個人事業主が電子データとしての保存を行うことを認めるものです。
従来、税務関係書類は紙の形式での保存が基本的な原則とされていました。
しかし、電子帳簿保存法により、決算関係書類や各種帳簿などの重要な文書を電子データとして保存することが可能となりました。
とくに注目すべきは、2022年1月の法改正により、電子取引での取引情報を電子データとして保存することが義務付けられた点です。
改正によって、電子取引で扱われたデータを紙に出力して保存することは許されなくなりました。
取引情報の電子化は、デジタル化が進む現代社会において、電子データの取り扱いが一層重要となることを反映したものです。
さらに、電子保存の義務化に対して、企業や個人事業主には準備のための猶予期間が設けられています。
具体的には、2023年12月末までの2年間がその期間とされており、この期間に適切な電子保存の体制を整えなければなりません。
総じて、電子帳簿保存法は、現代のビジネス環境において電子データの重要性が増していることを受け、税務関係の文書保存に関する新しい指針を提供するものといえます。
企業や個人事業主は、電子帳簿保存法の内容を正確に理解し、適切な対応を進めることが必要となります。
電子帳簿保存法の対象者とは
電子帳簿保存法は税務関係の帳簿や書類を電子データとして保存する際の取扱いを定めた法律です。
近年のデジタル化の進展に伴い、多くの事業者に影響を及ぼしています。
では、電子帳簿保存法の対象者は具体的にどのような事業者なのでしょうか。
基本的に、電子帳簿保存法はすべての法人が対象となります。
電子帳簿保存法は、大企業から中小企業、さらにはスタートアップに至るまで、法人の規模や売上の大小に関わらず適用されるものです。
また、法人だけでなく、個人事業主も基本的には電子帳簿保存法の対象となります。
しかし、例外として、電子データを一切取り扱わない、すなわち完全にアナログベースで業務を行っている企業や個人事業主は、電子帳簿保存法の対象から除外されます。
令和3年度の改正により、電子帳簿保存法の対象範囲はさらに広がりました。
令和3年12月末までは、帳簿や書類の承認を受けた一部の事業者のみが対象でしたが、令和4年1月以降は、会計ソフトを使用する多くの事業者が対象となり、その数は飛躍的に増加すると見込まれています。
また、電子帳簿保存法の施行に伴い、電子データの管理に関するハードルは下がったものの、新たな罰則規定が設けられました。
電子帳簿の保存に関連する不正行為が発覚した場合、罰則として青色申告の適用取り消しや重加算税の追徴課税などが科される可能性があります。
したがって、電子帳簿保存法の詳細や最新の動向をしっかりと把握し、適切な対応を進めることが求められます。
電子帳簿保存法の対象となる書類
電子帳簿保存法は、デジタル時代にあわせて、帳簿や取引関係の書類を電子的に保存することを認めた法律です。
電子帳簿保存法により、事業者は紙の帳簿や書類を保管する必要がなくなり、経理作業の効率化やコスト削減が期待できます。
対象となる書類は、保存方法別に3つの区分に分けられています。それぞれの区分について、具体的な対象書類を詳しく見ていきましょう。
電子帳簿等保存の対象書類
電子帳簿等保存とは、事業者が電子的手段を用いて作成した帳簿や書類を、電子データとして保存する方法のことを言います。
紙の帳簿や書類を保管する場所やコストを削減するだけでなく、データの検索や管理も容易になるというメリットがあるので、事業者にもメリットがあるものです。
具体的には、会計ソフトや経理システム、その他のビジネスツールを使用して作成されたデジタルデータが電子帳簿保存法の電子データに該当します。
対象となる書類は以下のように分類されます。
- 国税関係の帳簿
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 売上台帳
- 仕入台帳
- 現金出納帳
- 固定資産台帳
- 決算関係書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 棚卸表
- 自分で作成した取引関連書類
- 見積書控
- 契約書控
- 請求書控
- 発注書控
うえの書類は、電子帳簿保存法の下で、原則として電子データとしての保存が認められています。事業者は上で紹介した書類を安全に保管し、必要に応じて迅速にアクセスできるようにすることが必要です。
スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存は紙媒体の書類を電子的にアーカイブするための手法として広く採用されています。
スキャナ保存を活用して情報を電子化することは、物理的なスペースを節約し書類の検索や共有を容易にするというメリットがあるものです。
具体的には、スキャナやデジタルカメラを使用して、紙の書類を高解像度の画像データとして保存します。
デジタル化された書類は、クラウドストレージや社内のサーバーに保存され、必要に応じてアクセス可能です。
スキャナ保存の方法は、自社で作成・発行した書類だけでなく、取引先や顧客、その他の第三者から受け取った書類にも適用されます。
スキャナ保存により、取引の履歴や証拠を電子的に保持することが可能となります。
対象となる書類は以下の通りです。
- 自社が作成した書類
- 見積書控
- 契約書控
- 請求書控
- 発注書控
- 取引先から受け取った書類
- 領収書
- 見積書
- 契約書
- 請求書
- 発注書
- 納品書
うえで紹介した書類は、スキャナ保存を行うことで、長期間の保存や迅速なアクセス、さらにはデータのバックアップといったメリットを享受することができます。
電子取引の対象書類
電子取引の対象書類は、紙を一切使用せずにオンライン上での取引に関連する書類を指します。
情報の電子化は、デジタル化の進展とともに増加しているオンライン取引の実態に合わせて、適切な書類管理を実現することを目的としたものです。
電子取引の対象となる書類は、取引の証跡や税務上の根拠としての役割を果たすため、適切に保存することが求められます。
対象となる主な書類やデータは以下の通りです。
- ECサイト関連
- 購入時の領収書
- 注文確認メール
- 配送情報
- メールデータ
- 見積書
- 契約書
- 請求書
- Web上の取引情報
- オンラインでの領収書
- 契約内容の確認ページ
- 支払い確認ページ
- EDIやその他のデータ送受信
- 注文データ
- 納品データ
- 請求データ
うえで紹介したデータは、取引が完了した時点での内容を正確に反映しているため、後からのトラブルや確認作業において非常に重要な役割を果たします。
とくに税務申告の際には、うえの取引情報が取引の根拠となるため、適切な形式での保存が必須となります。
電子帳簿保存法の業務フローへの影響
電子帳簿保存法は、企業の経理や帳簿の取り扱いに関する法律として、近年のデジタル化の波に対応する形で導入されました。
電子帳簿保存法の改正や導入により、企業の業務フローには多大な影響が及んでいます。
以下では、その詳細について解説します。
電子帳簿等保存法
電子帳簿等保存法は、現代のデジタル時代における帳簿や関連書類の取り扱いに関する法的枠組みを提供するものです。
電子帳簿保存法のなかで、企業や個人が電子的な形式での帳簿の保存を行う際の基準や要件が詳細に定められています。
従来、多くの企業や組織は、紙ベースでの帳簿保存を主として行ってきましたが、情報技術の進化や業務のデジタル化の波に対応するため、電子データとしての保存が一般的となってきました。
電子帳簿保存法は、デジタル化の波を背景として、電子データの保存に関する明確なガイドラインやルールを提供することを目的としたものです。
具体的には、電子データの真実性、完全性、可視性などの要件を満たすための方法や手段についての指針が示されています。
また、電子帳簿保存法の導入により、企業はデータの管理や保存に関する業務の効率化を追求することが可能となりました。
しかし、その一方でデータの漏洩や不正アクセスなどのリスクも増大しており、適切なセキュリティ対策やデータ管理の体制の構築が企業にとってはより一層重要となっています。
スキャナ保存
スキャナ保存は、物理的な紙の文書や帳簿をデジタル化するための技術的手段として広く利用されている方法です。
スキャナ保存を用いることで、大量の紙の文書を効率的に電子データとしてアーカイブすることが可能となり、物理的なストレージスペースの節約やデータの迅速な検索・取得が実現します。
電子帳簿保存法の規定によれば、スキャナ保存されたデータは、一定の要件を満たすことで、法的に有効な記録として認められるようになりました。
電子帳簿保存法により、企業や組織は紙の原本を保管する必要がなくなり、コスト削減や業務効率の向上が期待できます。
ただし、電子帳簿保存法の規定では、スキャンしたデータが元の文書の内容を正確に反映していること、そしてそのデータが変更や改ざんから守られていることが必要です。
さらに、保存されたデータは一定期間内に容易にアクセスでき、必要に応じて可視化することができる必要があります。
要件を確実に満たすためには、スキャナの品質、保存フォーマット、データ管理システムなど、多くの要因を慎重に検討し、適切な対策を講じることが不可欠となります。
電子取引
電子取引は、インターネットや電子メールなどのデジタル技術を活用して、商品やサービスの購入、売却、交換などの商取引を行う現代の取引形態です。
近年、オンラインショッピングやデジタルサービスの利用が増加する中、電子取引の重要性は日増しに高まっています。
電子帳簿保存法の導入に伴い、電子取引に関する取引記録や契約文書、請求書、領収書などの文書は、電子データとしての保存が推奨され、一部は義務付けられているので注意が必要です。
情報の電子化によって、取引の透明性や追跡可能性が向上し、不正や詐欺のリスクを低減することが期待されています。
しかし、電子取引のデータ保存には、データの機密性やプライバシーの保護、さらにはデータの長期的な保存といった課題も伴います。
そのため、適切なセキュリティ対策やデータバックアップ、アーカイブのシステムを導入し、定期的な点検や更新を行うことが必要です。
また、消費者との信頼関係を維持するためにも、電子取引に関するデータの取り扱いには十分な注意が必要となります。
とくに、国際的な取引を行う場合、異なる国や地域の法律や規制に適合するような対応が必要となることもあります。
2023年の改正で電子取引の何が変わった?
2023年の税制改正により、電子取引に関する要件や対応が大きく変わりました。
とくに、検索要件の対象者の変更や宥恕措置の廃止が主な改正点として挙げられます。
2023年の変更は、企業や個人事業主が電子取引のデータをどのように保存・管理するかに大きな影響を与えています。
検索要件が不要となる対象者の変更
2024年1月からの改正により、特定の条件を満たす事業者に対して、電子取引データの検索要件が不要となりました。
具体的には、売上高が5,000万円以下の事業者が対象となります。
改正によって、現行の1,000万円以下からの大幅な引き上げとなっている点を理解しておくことが大切です。
条件としては、取引データを取引年月日や取引先ごとに整理して見やすい形式で出力できるようにすること、または、税務調査時に要求されたデータのダウンロードに応じることが挙げられます。
法律の改正により、中小企業を中心に、電子取引データの管理が大幅に簡素化されることが期待されています。
宥恕措置(ゆうじょそち)の廃止
で電子取引した取引情報の書面保存が一定の要件下で認められていました。
しかし、宥恕措置は2023年12月をもって廃止される予定です。
一方で、2024年1月からは新たに「猶予措置」が実施されることとなりました。
猶予措置では、特定の要件を満たす場合に、電子取引した取引情報の書面保存を認めることとなっています。
具体的な要件としては、保存が難しい相当の理由があること、税務調査時に要求されたデータや書類の提出が挙げられます。
ただし、「相当の理由」の具体的な内容については、現時点ではまだ公表されていないため、今後の公表を待つ必要があります。
今までの改正によって、電子取引に関するデータの保存や管理に関する要件や対応が大きく変わり、企業や個人事業主の対応が求められることとなりました。
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そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
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まとめ
電子帳簿保存法は、デジタル時代に合わせて企業や個人事業主が電子データでの帳簿や関連書類の保存を適切に行うためのガイドラインを提供する法律です。
電子帳簿保存法のもとで、特定の要件を満たす場合、紙の帳簿や書類を電子データとして保存することが認められます。
対象となる者は、事業を運営するすべての企業や個人事業主で、保存すべき書類には仕訳帳や総勘定元帳などの基本的な帳簿が含まれます。
電子帳簿保存法の理解と適切な適用は、効率的なビジネス運営と税務上のコンプライアンスを確保するために不可欠です。
今後もデジタル化が進む中、電子帳簿保存法の最新の動向や要件をチェックし、適切な対応を心がけましょう。