当期純利益とは?計算方法や意味などを解説

損益計算書の画像です

簿記を学ぶなかで「当期純利益の求め方・仕組みがいまいちわからない」という人もいるのではないでしょうか。

利益(収益)とは一言であらわすと「会社の財産を増やすもの」。

そして、利益(収益)の1つである「当期純利益」は、売上などのすべての収益から税金を含むすべての費用を引いた結果、最終的に手元に残る利益のことです。

今回は、当期純利益の求め方や仕組みを、簿記を学ぶ人にむけて「わかりやすくカンタン」に解説していきます。

1.当期純利益とは

当期純利益は、会社の「最終的な稼ぐ力」を表します。

冒頭でもあるように、「売上などのすべての収益から税金を含むすべての費用を引いた結果、最終的に手元に残る利益」のことです。

当期純利益に加味されるこの「費用」と「収益」には以下のようなものがあります。

・本業の売上を出すために発生した損益

・本業以外の損益

・イレギュラーに発生した特別損益

・税金等

ちなみに、収益がマイナスとなる場合は「当期純損失」になります。

次に、当期純利益の求め方を説明します。

【当期純利益の求め方】

当期純利益=税引前当期純利益 - 法人税等 ± 法人税等調整額

「税引前当期純利益」とは、当期純利益から税金を差し引く前の金額のことです。

※「法人税等調整額」はマイナスになる場合もあります。

【税引前当期純利益の求め方】

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

「平常時の会社の収益」をあらわす「経常利益」に、イレギュラーで発生する「特別損益」を加味して求めます。

2.当期純利益の詳細な説明、当期純利益の限界

(1)当期純利益からわかること、性質

📍当期純利益は利息・税金を控除した数値

当期純利益は、売上から「商品をつくるためにかかった経費」や「支払った利息」、「法人税などの税金」まで、すべて差し引いたあとに最後に残った利益。

当期純利益を、普段の生活に例えてみます。

一か月のお給料を売上だとすると、食費や光熱費、交通費、住民税や年金など、すべて支払ったあとに残る「自由に使えるお金」が当期純利益です。

「当期純利益」は、企業がどれだけの利益を出したのか「一番シンプルにわかる数値」で、手軽に「企業の経営状況を図る」ことができます。

📍当期純利益は株主の配当金に

当期純利益の使い道は2種類あり、「会社の資金にする分」と「株主への配当金に充てる分」にわけられます。

特に、後者の「株主への配当金に充てる分」はとても重要です。

配当金が多いほど「株主」は集まるので、「株式会社」の経営にかかる資金を出してくれる「株主」確保のために「配当金」は欠かせません。

(2)当期純利益ではわからないこと(当期純利益の不十分さ)

企業の利益が一番シンプルにわかる「当期純利益」ですが、「企業が本業でどれだけ稼いだのか」がわかりにくいという弱点があります。

なぜかというと当期純利益には、本業には関係のない「特別損益」なども含まれているからです。

「特別損益」はイレギュラーで発生する損益のことで、災害での損失や、土地の売却による収益などが含まれます。

この特別損益を利用して、経営状態が悪くても少しの細工で「当期純利益をプラスにする」ことができてしまうのです。

たとえば、経常利益の段階では「赤字」になっているにもかかわらず、当期純利益では「黒字」に変わっているケース。

これは、当期純利益をプラスにするために、所有していた土地などを売却して多額の「特別収益」を計上している可能性があります。

このように、簡単に数字をプラスできてしまうので、「当期純利益」だけで会社の状況を判断するのは危険です。

つまり、会社の経営状況は当期純利益だけでは十分に表すことができず、当期純利益に至るまでにいくつかの段階に分けて利益を算出する必要があります。

そして、会社の経営状況を正しく見極めるには、この各段階で算出される利益もチェックする必要があります。

3.各段階で算出される利益とその意味

収益は損益計算書で「6つの段階」に分けて計上します。

損益計算書とは、会社が「一年でどれくらいの利益をあげたか」を見るために、年間すべての収益・費用を並べたものです。

以下は損益計算書の内容を図にしたものです。

損益計算書の内容の画像です

損益計算書の「6段階の利益」を左から順に説明していきます。

【売上高】

一年間に会社であがったすべての収益。

「どれだけ売れたのか」をチェックできます。

【売上総利益】

売上高から、商品を用意するためにかかった費用「売上原価」を差し引いたもの。

売上原価はおもに「材料」のことを示し、例えばショートケーキの売上原価は小麦粉、生クリーム、イチゴなどになります。

売上総利益では、「商品を売ってどれだけ儲かったか」がわかります。

【営業利益】

売上総利益から、商品を売るためにかかった費用「販売費」(正式には販売費及び一般管理費)を差し引いたもの。

「商品を売るための営業活動でどれだけ儲かったか」がわかります。

販売費及び一般管理費には「給与及び賞与」「広告宣伝費」「減価償却費」などがあります。

【経常利益】

営業利益から、営業活動以外での収益・費用「営業外損益」を足し引きしたもの。

「平常時の会社の稼ぐ力」がわかります。

営業外収益に含まれるのは「受取利息」「受取配当金」など。

営業外費用には「支払利息」「社債利息」などがあげられます。

【税引前当期純利益】

経常利益から、イレギュラーに発生した収益・費用「特別損益」を足し引きしたもの。

特別損失に含まれるのは「災害損失」など。

特別収益に含まれるのは「固定資産売却益」があります。

【当期純利益】

税引前当期純利益から、法人税などの税金を差し引いたもの。

「当期純利益」が一年間の企業の最終的な利益です。

ちなみに、マイナスの場合は「当期純損失」になります。

4.当期純利益を用いた経営分析(計算方法と分析できること)

当期純利益を使って、さまざまな角度からの経営分析ができます。

経営分析は、「会社が自社の経営改善のため」、「外部の人が会社の投資価値を図るため」などの目的でするものです。

経営分析の指標のなかでも、日商簿記検定によく出る「売上高純利益率」と「ROE(自己資本利益率)」の2つを解説します。

(1)売上高純利益率

まずは、「会社の稼ぐ力」を分析する「売上高純利益率」について。

【売上高純利益率の求め方】

売上高純利益率(%)=当期純利益÷売上高×100%

「売上高純利益率」は、「当期純利益が売上高の何%を占めているか」を計算することで、「会社の最終的な稼ぐ力」を数値化します。

例えば、昨年度の売上高が100万円、当期純利益が1万円であれば、売上高当期純利益率=1万円(当期純利益)÷100万円(売上高)×100%=1%になります。

会社が自社の経営改善をしたり、外部の人が会社の実力を図ったりする際の参考にされる指標です。

(2)ROE(自己資本利益率)

次は、「会社の投資価値」を分析する「ROE(自己資本利益率)」について。

【ROE(自己資本利益率)の求め方】

ROE(%)=当期純利益÷株主資本×100

株主資本とはカンタンにいうと、「株主が出資した金額」のことで、貸借対照表では「純資産」に含まれます。

ROEは、「当期純利益が株主資本の何%を占めているか」を計算することで、「その会社に投資したら、どれぐらい利益を効率的に得られるか」を数値化します。

「出資する価値がある会社かどうか」株主が判断するうえで最も重要視される指標です。

(3)あえて当期純利益を用いる理由

当期純利益は「災害で発生した損害」や「土地の売却での収益」などの特別損益が加味されていて「本業で稼いだ利益がわかりにくい」という欠点があります。

にもかかわらず、売上高利益率やROE(自己資本利益率)を求める際に、当期純利益を利用するのはなぜでしょう。

その理由は、当期純利益が「株主へのリターン」に直結するからです。

売上高総利益率やROE(自己資本利益率)は、会社内部だけでなく外部の人(株主・投資を検討している人)も参考にする指標です。

株主への配当金は当期純利益から出します。

当期純利益が低ければ、どんなに「収益率」や「売上」が高くても、「この会社に投資したい」とは思いません。

(4)どれくらいの数値ならいいのか

「売上高純利益率」と「ROE(自己資本利益率)」はそれぞれ何%が適正値なのでしょうか。

どちらも、業界や国などによって数値にかなりの差があります。

そのため、同業種・同じ国など「境遇の近い会社」と比較して判断するのが一般的です。

📍売上高純利益率の目安

・飲食業界 75%~85%

・卸売業界 15~25%

・小売業界 25%~50%

売上総利益率は「業種によって全く違ってくる」ため、業種別の目安を紹介しました。

それぞれの業種で、この数値を下回ると収益の確保が難しくなってきます。

📍ROE(自己資本利益率)の目安

世界の基準では、ROE(自己資本利益率)が10%を超えると「出資する価値がある会社」とされています。

しかし、日本企業の平均は5%程度なので、10%未満がすべて「投資価値がない会社」とは言い切れません。

5.当期純利益と貸借対照表の関係

当期純利益と貸借対照表には関連性があり、当期純利益が変わると貸借対照表の数値も変わってくるのです。

ちなみに、貸借対照表は会社の資産・負債・資本(純資産)の状態を表した表のこと。

損益計算書で計上された当期純利益は、貸借対照表の「利益剰余金」に移されます。

この処理は毎年行われるため、利益剰余金は会社の利益が積み上げられているものであるといえます。

損益計算書で計上した「会社の利益(当期純利益)」は、貸借対照表の「会社の純資産」になるのです。

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7.まとめ

簿記を学ぶなかで、「当期純利益の求め方・仕組みがいまいちわからない」という人も多いのではないでしょうか。

そんな人のために、当期純利益の計算方法や意味について、わかりやすくカンタンに解説しました。

今回紹介した内容が、簿記を学ぶ人の参考になれば幸いです。

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7.Q&A

収益はいくつの段階に分かれて表示されますか

損益計算書では「6つの段階」に分けて収益を表示します。主に、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益に分けて表示します。

当期純利益を用いてどのような経営分析ができますか

売上高純利益率やROE(自己資本利益率)などがあります。売上高純利益率は当期純利益÷売上高×100で求められ、ROE(自己資本利益率)は当期純利益÷株主資本×100で求められます。

当期純利益と貸借対照表にはどのような関係がありますか

損益計算書で計上した「会社の利益(当期純利益)」は、貸借対照表の「会社の純資産」の一部を構成します。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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