出張した際に社用車に入れたり、工場の設備の燃料として使われたりするガソリン代。
実はガソリン代を計上するときの勘定科目は、一つに決められていないことをご存じでしょうか?
ガソリン代は勘定科目が決められていないからこそ、どの勘定科目にすれば良いのか悩む人も多いことでしょう。
そこでこの記事では、ガソリン代の一般的な勘定科目や、パターン別の勘定科目の選び方を解説していきます。
さらに、ガソリン代の決算処理に関する注意点も解説しますので、ガソリン代の勘定科目でお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。
目次
ガソリン代の勘定科目に関する基本知識
ガソリン代を経費で計上する際の勘定科目は、会計上や税務上による決まりがありません。
なぜなら事業によりガソリンを使う頻度や、ガソリン代の重要性が異なるからです。
たとえば、ガソリンをよく使う運送業やタクシー業と、社用車をほとんど使用しない企業では、ガソリン代の大きさや重要性が異なります。
したがってガソリン代は企業の事業内容や、事業における重要性、またガソリンの管理方法などにより、車両費や旅費交通費などから最適な勘定科目を選べるのが特徴です。
そこで、次の章ではガソリン代の一般的な勘定科目を4つ解説します。
どの勘定科目をしたら良いか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
ガソリン代の一般的な勘定科目
ガソリン代を計上するときに使われる一般的な勘定科目は、下記の4つです。
- 車両費
- 旅費交通費
- 燃料費
- 消耗品費
一般的には上記4つの中で自社に最適な勘定科目を選ぶことになります。
一つずつ解説していきますので、自社がガソリン代を計上するのに最適なのはどれなのかを考えながら、お読みください。
車両費
1つ目は車両費です。
車両費は車検代や修理代、自動車保険代などを計上でき、ガソリン代も車両費で計上できます。
勘定科目を車両費にすれば、車両にかかった費用をすべて車両費として計上が可能です。
車両の保有台数が少ない企業であれば、車両にかかった費用をすべて車両費にまとめることで、管理がしやすくなります。
一方で、車両に関する費用がすべて車両費にまとまってしまうため、ガソリン代や車両の修理代などを分けて費用管理ができないのが注意点です。
たとえば、多くの車両を保有していて、車両にかかった費用を細かく管理したい企業の場合は、ガソリン代を車両費に計上してしまうと、費用の管理がしづらい恐れがあります。
したがって、勘定科目を車両費に計上するかどうかは、車両の保有台数などを考慮して決めたほうが良いといえるでしょう。
旅費交通費
2つ目は旅費交通費です。
旅費交通費は、出張時にかかった交通費や宿泊代などを計上する勘定科目で、ガソリン代を業務上の移動で使用したときは旅費交通費で計上できます。
ガソリン以外の車両に関する費用は車両費に計上されるため、ガソリン代を旅費交通費に計上すれば、ガソリン代と車両に関する費用を分けて管理ができ、さらにガソリン代の把握もしやすくなります。
ただし出張の多い業種や職種の場合、旅費交通費の計上金額が多くなり、ガソリン代だけを把握するのに手間がかかってしまうことが予想されます。
したがって、勘定科目を旅費交通費にするかどうかは、車両に関する費用をどのように管理するか、また出張が多い業種なのかなどを考慮して決めると良いでしょう。
燃料費
3つ目は燃料費です。
燃料費は、燃料として費用が発生した際に使う勘定科目で、燃料にはガソリンだけでなく、軽油や重油も含まれます。
ガソリンは車両の燃料になるため、燃料費で計上可能です。
燃料費で計上すれば、車両費・旅費交通費と分けられるため、ガソリン代の把握が容易になります。
したがって、燃料費はガソリンを多く使用する運送業などに適しているといえるでしょう。
消耗品費
4つ目は消耗品費です。
消耗品費は、文房具や用紙、包装紙といった短期間で消耗される備品類を購入した際に使われます。
消耗品は幅広く使われるのが特徴で、ガソリン代も消耗品費に計上可能です。
ただし、消耗品費で処理してしまうと、ほかの備品類の費用と混ざってしまい、ガソリン代だけの管理が難しくなってしまいます。
したがって、企業の中でガソリン代の使用金額が小さく、重要性が低い場合は、消耗品費に計上するのが適しているといえるでしょう。
どのような場合に経費として計上できる?
ガソリン代は、事業のために使用した場合に経費として計上可能です。
たとえば出張で車を使用してガソリンを入れたときや、工場の設備などで燃料としてガソリンを使用したときなどに経費として計上できます。
一方、個人的な用事や旅行などで車に入れたガソリン代は、事業のためにガソリンを使用しておらず、私用で使ったため経費として計上できません。
ガソリン代を経費で計上可能なのは、事業のために使用したものかどうかがポイントのため、ルールを守って経費計上を行いましょう。
【パターン別】ガソリン代の勘定科目の選び方
上述した通り、ガソリン代の一般的な勘定科目は下記の4つです。
- 車両費
- 旅費交通費
- 燃料費
- 消耗品費
それでは上記の4つの勘定科目は、どのように使い分けるのでしょうか?
そこでここでは、勘定科目の選び方をパターン別に解説していきます。
解説するのは下記の4つのパターンです。
- 車両数が少なくガソリン代が多くない。
- 出張費用が少なく、車両のメンテナンス代と分けて管理したい。
- ガソリン代と車両費・旅費交通費を分けて管理したい。
- ガソリン代が会社規模に対して非常に小さい。
一つずつ解説していきますので、自社に該当するパターンがあるかどうかを確認しながらお読みください。
①車両数が少なくガソリン代が多くない
車両数が少なくガソリン代が多くないときは、車両費で計上するのが適しています。
車両費に計上すれば、車両に関わる費用のすべてを車両費で計上できることになるため、車両に関わる費用の管理がしやすいことがメリットです。
したがって、車両数が少なくガソリン代が多くないときは、ガソリン代を車両費に計上することで、車両に関わる費用として車両費の勘定科目で一括管理すると良いでしょう。
一方、車両数が多くガソリン代も多い場合にガソリンを車両費にしてしまうと、ほかの車両に関わる費用と一緒に計上されてしまい、ガソリン代の管理がしづらくなってしまいます。
したがって、車両数が少なくガソリン代が多くない場合は、車両費で計上するのが適しているといえます。
②出張費用が少なく、車両のメンテナンス代と分けて管理したい
出張費用が少なく、車両のメンテナンス代と分けて管理したいときは、旅費交通費が適しています。
出張費用が少なければ旅費交通費で計上される金額が小さいため、ガソリン代を旅費交通費で計上してもガソリン代だけの金額を抽出しやすく、管理しやすいことがメリットです。
しかし出張費用が多い場合は、多くの出張費用の中にガソリン代が計上されてしまうため、ガソリン代の管理が困難になってしまいます。
また、車両のメンテナンス代は一般的に車両費で計上されることが多く、ガソリン代を旅費交通費に計上することで、車両のメンテナンス代とガソリン代を明確に分けられます。
したがって、出張費用が少なく、車両のメンテナンス代と分けて管理したいときは、旅費交通費が適しているといえるでしょう。
③ガソリン代と車両費・旅費交通費を分けて管理したい
ガソリン代と車両費・旅費交通費を分けて管理したいときは、燃料費が適しています。
燃料費で計上すれば、車両費・旅費交通費と明確に分けられるため、ガソリン代の管理が容易になります。
とくにガソリンを多く使用する運送業やタクシー業など、ガソリン代の金額が大きく管理が重要な企業の場合は、車両費・旅費交通費と分けて管理できるように燃料費を使用したほうが良いでしょう。
④ガソリン代が会社規模に対して非常に小さい
ガソリン代が会社規模に対して非常に小さいときは、消耗品費が適しています。
消耗品費は事務用品だけでなく、電池や作業用工具など幅広く使われる勘定科目です。
ガソリン代が会社規模に対して非常に小さく重要性が低い場合で、消耗品費に含めても管理上問題がない場合は、消耗品費で計上すると良いでしょう。
一方で、ガソリン代が会社規模に対して非常に大きい場合は、ガソリン代は会社にとって損益の影響が大きく重要性の高い費用のため、わかりやすい勘定科目で管理すべきです。
したがって、もしガソリン代が会社規模に対して非常に大きいときは、自社にとって管理しやすい勘定科目、たとえば車両費や旅費交通費などで計上するのが適しているといえます。
ガソリン代の決算処理に関する注意点
ここまでは、ガソリン代の一般的な勘定科目や、パターン別の勘定科目の選び方を解説してきました。
それでは、実際にガソリン代を経費で計上する際の注意点はあるのでしょうか?
決算処理する際の注意点は、下記の3つです。
- 貯蔵品に計上するのは必須ではない。
- 勘定科目は基本的に変更できない。
- 軽油とガソリン代は取り扱いが異なる。
一つずつ解説していきますので、それぞれの注意点を確認していきましょう。
貯蔵品に計上するのは必須ではない
1つ目は、貯蔵品に計上するのは必須ではありません。。
ガソリンが未使用であれば、資産勘定の貯蔵品に計上するべきという理解はその通りです。
しかし、実務を行う際に処理が複雑になるため、一般的にはガソリン代を使用したときに費用計上を行うケースが多く、貯蔵品に計上するのは必須ではありません。
運送業やガソリンスタンドなど、ガソリンが企業の決算に重要な影響を与える企業以外は、未使用分のガソリンを貯蔵品に計上するのは必須ではないことを覚えておきましょう。
勘定科目は基本的に変更できない
2つ目は、勘定科目は基本的に変更不可です。
既に述べたようにガソリン代の一般的な勘定科目には、車両費・旅費交通費・燃料費・消耗品費がありますが、都合が悪くなったからといって会計年度の途中での変更は基本的にできません。
なぜなら、考え方に一貫性がないと受け取られ、利益操作などの不正を行っているのではないかと監査人に指摘される恐れがあるためです。
また企業会計上の継続性の原則を守っていないことにもなり、どの情報が正しいのか分からなくなってしまいます。
したがって、ガソリン代をどの勘定科目で計上するかは、基本的に変更できないことを念頭に置いたうえで、慎重に決めるようにしてください。
軽油とガソリン代は取り扱いが異なる
3つ目は、軽油とガソリン代は取り扱いが異なります。
実は、軽油代とガソリン代では税金の扱いが異なるため注意が必要です。
軽油代とガソリン代を費用計上するときの計算式は、下記の通りです。
軽油代=(本体価格+石油石炭税)×消費税+軽油引取税
ガソリン代=(本体価格+ガソリン代+石油石炭税)×消費税
上記の計算式の通り、軽油代に含まれる軽油引取税は不課税のため、消費税が課されません。
もし軽油代の軽油引取税を不課税と知らずに誤って課税処理をした場合、消費税の納付額が過少となり、税務調査で追徴課税になる恐れがあります。
したがって、軽油代を計上するときは、軽油引取税に消費税を含めないように注意して処理をしましょう。
ガソリン代の交通費精算のやり方とは
出張をした際にガソリン代の交通費清算を行うことがありますが、ガソリン代を交通費精算するときは、どういうやり方があるのでしょうか?
交通費精算をする際に、ガソリンを使用した車が社用車なのか、それとも自家用車なのかで精算方法が異なるため、それぞれ解説していきます。
まずガソリンを使用した車が社用車の場合、ガソリン代は業務で使用したことが想定されるため、ガソリン代の全額を経費計上できます。
したがって、ガソリンを入れた際に受け取った領収書やレシートをもとに、交通費精算を進めていきましょう。
一方、自家用車を使って業務に必要な移動をした際に、ガソリン代を交通費精算するケースを考えてみましょう。
自家用車を使用して交通費精算する場合、ガソリンを入れた際の領収書を見ても、業務で使用したガソリンなのか、プライベートで使用したガソリンなのか判断がつきません。
そこで多くの企業では、業務のために走行した距離と社内で決められたガソリンの単価をもとに、精算するガソリン代を決定しています。
たとえば自家用車で出張をし、走行距離が100キロメートルだった場合を考えてみましょう。
ガソリンの単価の相場は1キロメートル当たり10円~20円とされる場合が多いため、ここでは20円を採用して計算すると、下記の計算式になります。
(業務のために走行した距離)100キロメートル×(ガソリンの単価)20円=2,000円です。
したがって、走行距離が100キロメートルの場合は2,000円の交通費精算を行えることになります。
上記の計算方法であれば、車の燃費による影響を受けずに公平に精算でき、わかりやすい計算式を用いて交通費精算できます。
社用車と自家用車それぞれの交通費精算の方法は重要なので、覚えておきましょう。
ただし通勤手当としてガソリン代を精算する場合、非課税限度額が決められていることには注意をしてください。
出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
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まとめ
この記事では、ガソリン代の勘定科目について解説しました。
ガソリン代は1つの勘定科目に決められていないため、企業の事業内容や事業におけるガソリン代の重要性などから、勘定科目を決める必要があります。
一般的なガソリンの勘定科目は下記の4つです。
- 車両費
- 旅費交通費
- 燃料費
- 消耗品費
本記事では、パターン別でガソリン代の勘定科目の選び方も解説していますので、参考にしてください。
さらに、ガソリン代を決算処理する際に下記の3つの注意点があることも覚えておきましょう。
- 貯蔵品に計上するのは必須ではない。
- 勘定科目は基本的に変更できない。
- 軽油とガソリン代は取り扱いが異なる。
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