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経費と勘定科目の関係性
経費と勘定科目の関係性について解説します。
そもそも経費とは、事業を運営するために必要な費用のことです。経費によって課税対象額を減らせるため、有効に利用すれば節税になります。
勘定科目は経費をグループ分けするための項目です。
給与や、従業員の移動にかかった交通費などといった、多岐にわたる経費を勘定科目によって分類することで、適切な経費管理が行えます。
経費を項目ごとに分類する理由
勘定科目を利用し、経費を項目ごとに分類する理由としては、お金を何に使ったか整理することが挙げられます。
何にどれぐらいお金を使ったかを明確にすることで、無駄な経費をチェックしやすくなります。
また、適切に勘定科目を使用することは、会社の経営状況を示す財務諸表を作成したり分析したりする際にも役立ちます。
経費に関する勘定科目一覧
経費に関する勘定科目をご紹介します。勘定科目の名前や内容を把握し、経費を分類する際の参考にしてください。
給与賃金
「給与賃金」は、従業員の役務に対する報酬を分類する勘定科目です。
具体的には、給与や賃金、退職金などが当てはまります。食事や被服などの、従業員への現物給付も「給与賃金」に該当します。
ただし、個人事業主が親族に支払った給与は、必要経費とするためには要件を満たす必要があるため注意しましょう。
地代家賃
「地代家賃」は、事業を運営するために利用している不動産の賃料を分類する勘定科目です。
店舗や駐車場、事務所などを利用する際にかかる、敷地の地代や建物の賃料が該当します。事務所が自宅と兼用の場合は、かかった費用を事業用と私用で按分する必要があります。
また、自家用の自動車によって発生した駐車場代は、事業に供した部分だけが経費です。経費は事業に関する支出です。そのため、何を経費にできるかには気をつける必要があります。
租税公課
「租税公課」は、税金を支払った際に使用する勘定科目です。
事業税、固定資産税、自動車税、不動産所得税、印紙税や消費税などが該当します。商工会議所や同業者組合などへの会費や組合費も含みます。
ただし、所得税、相続税、住民税などは「租税公課」に含みません。税金がすべて「租税公課」になるわけではないため注意が必要です。
税金だけでなく、国民年金の保険料や国税の延滞税・加算税、地方税の延滞金・加算金、さらに罰金や交通反則金なども必要経費にできないため注意しましょう。
水道光熱費
「水道光熱費」は、水道代や電気代、ガス代などを分類する勘定科目です。
石油代や灯油代なども該当します。
水道代や電気代などは、「水道光熱費」としてまとめて計上することも、「水道料金」「電気料金」などと分けて計上することもできます。
どの支出が多いかを確認したいならば分けて計上するとよいでしょう。
「水道光熱費」として計上できるのは、事業で使用した分だけです。
自宅を会社や事務所として使っている場合、生活で使用した分と事業で使用した分を分ける必要があります。
一般的には仕事で使用している時間や日数を目安に按分します。計算方法について税務署から質問された場合に対応できるよう、按分の基準は明確にしておきましょう。
通信費
「通信費」は電話料金やインターネットの利用料、切手代などの勘定科目です。
郵便代や書留代も「通信費」として処理できます。
「通信費」に似た勘定科目で「荷造運賃」という科目があります。「通信費」は郵便物を送る場合に使用するのに対し「荷造運賃」は主に商品を送る場合に使います。
個人の携帯電話を業務用でも使用する場合、私用で使った分は経費に計上できないため注意が必要です。
旅費交通費
「旅費交通費」は、電車やバス、タクシーなど公共交通機関の料金を計上するための勘定科目です。
出張先で宿泊した場合は、宿泊代金も計上できます。
似た勘定科目に「交通費」があります。「交通費」には、所属している勤務地に関する移動にかかった費用を計上してください。
通勤定期や、所属している勤務地から取引先に出張した際の交通費は「交通費」の勘定科目を使用します。
一方「旅費交通費」は、所属している勤務地以外での業務に関する経費を計上します。遠方の取引先へ出張した場合の交通費や宿泊代などは「旅費交通費」で処理してください。
広告宣伝費
「広告宣伝費」は、会社の商品やサービスなどを告知するために支出した費用を計上する勘定科目です。
新聞や雑誌、テレビといったメディアに掲載する費用は「広告宣伝費」を使用します。
商品を知ってもらうためのチラシや試供品にかかった費用も「広告宣伝費」です。
商品やサービスの宣伝を目的としたホームページの作成・維持にかかる費用も「広告宣伝費」として計上できます。
ただし、商品の販売機能や動画の配信機能、PDFなどのデータダウンロード機能などを備えた高機能のホームページは「広告宣伝費」ではなく、無形固定資産として計上する必要があります。
接待交際費
「接待交際費」は、事業の関係者や仕入先などの顧客に対し、接待や贈答などを行った際の費用を計上する勘定科目です。
ただし、法人税法では、以下の5つに該当しないものを指すことに注意してください。
- もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用。
- 飲食その他これに類する行為のための費用のうち、1人あたりの金額が5,000円以下の費用。
- カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するための費用。
- 会議の際に茶菓子や弁当などの飲食物を提供するための費用。
- 新聞、雑誌などの出版物や放送番組を編集するための座談会、あるいは記事収集や放送のための取材に必要となる費用。
接待や交際に関する費用は、仕事とプライベートの混同が起きやすいため、税務調査の際はより厳しくチェックされる恐れがあります。
消耗品費
「消耗品費」は、文房具や用紙をはじめとする消耗品を購入した費用を計上する勘定科目です。
取得価額が10万円未満であれば、パソコンやデジカメ、ソフトウェアなども「消耗品費」として計上できます。
取得価額が10万円以上か未満かの判断は、自分の会社が税込経理方式か税抜経理方式かによって異なります。
税込経理方式ならば、消費税を入れた金額で判断します。税抜経理方式ならば消費税を抜いて考えます。
また、取得価額が10万円以上でも、使用可能期間が1年未満であれば「消耗品費」として処理できます。
さらに、青色申告者ならば申告書に一定事項を記載することによって、取得価額が30万円未満まで経費にできます。ただし、年間の合計額が300万円までという条件に注意しましょう。
福利厚生費
「福利厚生費」は、会社が従業員のために支出する費用を計上する勘定科目です。
従業員の生活向上を目的に、飲食や住居に関するさまざまな手当が対象になります。
ただし、自社の従業員に対する費用に限られるという点は注意してください。社外の人の飲食費は「接待交際費」として計上します。
「福利厚生費」は、法定福利費と法定外福利費の2つに分けられます。
法定福利費は、会社が支出すると法律で定められているものを指します。社会保険料などは法定福利費です。
一方、法定外福利費は会社が任意で行う、法律で定められていない支出を指します。交通費や住宅手当などが該当します。
減価償却費
「減価償却費」は、取得価額が10万円を超える資産を購入した場合に、取得した金額を耐用年数に応じて配分し費用計上する勘定科目です。
時間の経過とともに資産価値が下がっていく資産が対象となり、建物や車両、機械などが該当します。
ソフトウェアや特許権などの無形固定資産も「減価償却費」の対象です。
一方、土地などは時間の経過によって価値が減少しないため減価償却は行いません。
耐用年数は法律で定められているため、「減価償却費」として計上する際は、計上しようとしている資産の耐用年数を調べましょう。
雑費
「雑費」は、ほかの勘定科目に当てはまらない、一時的で少額の費用を計上する勘定科目です。
一時的かどうかについて法律上の基準はありません。
ただし、むやみに「雑費」で処理すると、内訳が不明瞭になります。
毎月必ず発生するような支出頻度が高い出費は、「雑費」とは別に勘定科目や補助科目を設定し計上すると、帳簿がわかりやすくなるでしょう。
また少額の基準も明確に決まっていません。会社の規模が大きければ、少額の基準も高くなります。ほかの科目より金額が大きくならない程度が目安です。
荷造運賃
「荷造運賃」は、商品を梱包し、発送する際の費用を計上する勘定科目です。
梱包に使う段ボールやテープ、緩衝材やのり、ひもなどは「荷造運賃」に計上できます。「消耗品費」に似ていますが、商品の梱包が目的ならば「荷造運賃」で処理しましょう。
また、商品を送る際の運賃も「荷造運賃」に計上します。ゆうパックや書留、宅配便、公共交通機関の運賃も含まれます。
「通信費」との違いは、送るものが商品かどうかです。
商品を発送する場合は「荷造運賃」、請求書などの書類を送る場合は「通信費」で計上することが一般的です。
外注工賃
「外注工賃」は、仕事を外部の業者に発注した際の費用を計上する勘定科目です。「外注費」などと呼ぶ場合もあり、外部業者への下請け賃料などが該当します。
「外注工賃」は「給与」と混同しやすいため注意が必要です。「外注工賃」は「給与」と違い、源泉徴収義務が原則ないうえ、社会保険の加入義務もありません。
そのため本来は「給与」に当たる費用を「外注工賃」として処理していると判断された場合、源泉徴収を追徴課税されたり、延滞税・加算税を課されたりする恐れがあるため注意が必要です。
「外注工賃」か「給与」かの判断は、明確な基準はなく総合的に判断されます。国税庁が公表している一定の判断基準が参考になります。
- 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
- 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
- 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
- まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
- 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
出典元:国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」
貸倒損失
「貸倒損失」は、債権の回収ができなくなった場合の損失を計上する勘定科目です。
代表的な債権としては、売掛金や貸付金、受取手形などがあります。
民事再生法などの規定によって債権が消滅するといった法律上の貸倒だけでなく、債務者の状況を考慮して債権の全額が回収できないと判断される事実上の貸倒も該当します。
売掛債権に限定で、取引を停止したあと、一定期間弁済がない場合は形式上の貸倒として損金処理できます。
修繕費
「修繕費」は、建物や機械などの維持管理や修理費用を計上する勘定科目です。
原状回復のための修理であることがポイントで、修理の結果資産価値が上がったり、耐用年数が伸びたりすると原則「修繕費」は使用できません。
新しい機能を追加した場合も該当しません。このような場合は資産として計上し「減価償却費」として処理する必要があります。
利子割引料
「利子割引料」は、利子や割引料を計上するための勘定科目です。
利子は銀行などからの借入金に発生する利息などを指します。事業用の借入金や、住宅ローンなどが該当します。
一方、割引料は手形などの割引によって支払う費用のことです。割引料とは、手形を期日より前に換金する際の手数料を指します。
支払った利子のみを分類する場合は「支払利息」という勘定科目を使用します。また、割引料のみを分類する場合は「手形売却損」という勘定科目を使用しましょう。
確定申告をする際は、両者の合計金額を「利子割引料」として記入します。
賃借料
「賃借料」は、会社の経営のために借りた土地や建物、機械などの費用を計上する勘定科目です。
契約によって、毎月支払う場合や、数カ月分をまとめて支払う場合などがあります。1年以内の料金をまとめて支払う場合は、一括で「賃借料」として計上が可能です。
土地や建物の賃料を「地代家賃」、機械などのリース料金を「リース料」などと別の勘定科目を使用して計上している会社もあります。
新聞図書費
「新聞図書費」は、会社経営で必要な新聞代や書籍の購入費用を計上する勘定科目です。
電子書籍などの購読料やサブスクリプション料金、資料用のDVDなども「新聞図書費」として処理できます。
「新聞図書費」として計上できるのは、事業に直接関係する情報や知識を得る場合に限られます。
休憩室などに置く新聞や雑誌などの購入代金は「福利厚生費」などで処理するとよいでしょう。
また、事業に関係する情報を得るためであっても、単発で購入した場合は「雑費」として処理しても問題ありません。
車両費
「車両費」は、会社が保有している車の維持・管理費用を計上する勘定科目です。
ガソリン代や車検費用が該当します。自動車に関する保険料や自動車税、修繕費なども「車両費」として計上が可能です。
この点、「保険料」や「修繕費」といった補助科目を設けて処理すると、管理しやすくなります。
またガソリン代を「消耗品費」、自動車税を「租税公課」として処理する場合もあります。
大切なのは、一度決めた仕訳の基準を変えず継続することです。
取材費
「取材費」は、取材にかかった諸費用を計上する勘定科目です。具体的には、取材先への交通費や取材相手との食事代、取材に関係する書籍代などが挙げられます。
ライターなどが取材によって記事を作成するケースが代表的なケースとして想定されます。
取材にかかった費用をまとめて「取材費」で処理すると、取材にかかった費用の総額を把握しやすいでしょう。
一方で、交通費を「旅費交通費」、取材相手との食事代を「接待交際費」などと「取材費」とは別の勘定科目で処理する場合もあります。
それによって取材にかかった費用の内訳を把握しやすくなります。
勘定科目の名称は新たに設定できる
勘定科目の名称は、新たに設定できます。
一般的に使用されている勘定科目では処理しにくいときなどは、新しく勘定科目を設定すると支出状況が明確になります。
しかし、無計画に勘定科目を増やすと、かえって帳簿が複雑になり会計処理がわかりにくくなる恐れがあるため注意が必要です。
新しく勘定科目を設定する場合、以下のことに気を付けるとよいでしょう。
- 業界用語や略称などを避け、客観的に内容がわかりやすい名称にすること。
- 帳簿と決算書で、同じ勘定科目を使用すること。
- 新たな勘定科目の使用基準を明確にし、同じ経費は同じ勘定科目を使用して処理すること。
個人事業主が確定申告で経費にできない支出
確定申告の際、経費にできない支出があります。
事業に関係がない支出は経費にできません。また、とくに個人事業主が経費にできない支出があるため注意する必要があります。
事業と関係のない支出
事業と関係のない支出は経費にできません。国税庁によると、必要経費に算入できる金額は次の金額とされています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
出典元:国税庁「やさしい必要経費の知識」
個人事業主は、業務とプライベートがはっきり分けにくい場合が多いため、経費にしようとしている支出が本当に業務と直接の関係があるかに注意しましょう。
事業主自身の福利厚生関連の支出
個人事業主は、事業主自身の福利厚生に関する支出を経費にできません。
福利厚生には、会社が従業員やその家族の生活を向上・維持する目的があります。そのため個人事業主には福利厚生という概念がありません。
事業主自身の保険料や健康診断の費用などは経費として計上できません。また個人事業主本人の給与や年金も経費にできないため注意しましょう。
ただし、雇用している従業員については、給与や福利厚生は経費として計上できます。
事業主自身に課された税金
個人事業主が個人として課された税金は、費用として処理できません。住民税や所得税などは、個人が納める税金であり事業と直接関係がないからです。
一方、事業に関係する税金ならば経費として処理できます。事業用で支払った印紙税や個人事業税などは費用計上できます。
また所有している自宅で仕事している場合、家事按分した固定資産税は費用として計上が可能です。
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まとめ
経費にできる代表的な勘定科目をご紹介しました。
使用すべき勘定科目の基準が定められていないものも多く、事業や契約に即して適切な勘定科目を選ぶことが大切です。
また、独自の勘定科目を新たに設定することで、会計処理をより明確にできる場合もあります。
個人事業主の場合、経費として計上できない支出があるため注意しましょう。