電子帳簿保存法の改正 ~経理担当者が知っておくべきこと~

悩んでいる画像です

令和3年度の税制改正において、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成 10 年法律第 25 号。以下「電子帳簿保存法」)」の改正等が行われ、2022年(令和4年)1月1日より施行されました。

改正によって厳しくなったポイントもあるため、個人事業主を含む全ての企業の経理担当者は、今回の改正について正確に理解しておく必要があります。

今回のコラムでは、以下の点を解説します。
①電子帳簿保存法とは
②電子帳簿保存法の重要な点
③今回の改正のポイント
④電子帳簿保存法の3つの保存区分
⑤いつまでに対応を完了させるべきか

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法の画像です

電子帳簿保存法が制定された当初は適用要件が非常に厳しかったものの、ペーパーレス化や政府主導によるDX推進などから、見直しが行われ、条件も緩和されてきています。

◆電磁的記録による保存の区分

保存の区分の画像です

(引用元:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」)

各区分ごとに、改正される内容が異なることも注意したいポイントです。

電子帳簿保存法で重要視している観点

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律です。同法に基づく各種制度を利用することによって、経理のデジタル化及び生産性向上を図ることが出来ます。

この電子帳簿保存法では、帳簿。貸借対照表や損益計算書等の財務諸表、請求書、領収書などの書類等について、一定の要件を満たせばその全部または一部を電子データで保存できると定めています。この電子帳簿保存法が施行される以前は、上記の帳簿・請求書などの書類は紙の保存が必要で、電子データで保存する場合、なんと税務署長からの事前承認が必要でした。

電子帳簿保存法が定めるデータの保存方法は、①電子データ保存と②スキャナ保存があり、各々詳細な保存要件が定められております。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の概要

改正のポイント

電子帳簿保存法は、より多くの企業が電子データ保存に取り組みやすくなることを期待し、幾度も改正を繰り返しています。

今回の改正では、負担が軽減される点もあれば、厳しくなる点もあります。

このコラムでは両方のポイントをいくつか紹介していきますので、自社にとって対応が必要な部分の洗い出しや、運用フローの見直しのためにご活用ください。

◆負担が軽減されるポイント

改正前・後の画像です

(参考)

 日本データ通信協会「認定事業者一覧

 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」

※1

基準期間の売上が 1,000 万円以下の小規模な事業者である場合であって、税務職員の求めに応じることができるようにしている場合

なお、基準期間とは、個人事業者については電子取引が行われた日の属する年の前々年の 1 月 1 日から 12 月 31 日までの期間、法人については電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度のことを指す

※2

付与した時間に電子データが実在していて、それ以降改ざんがされていないことを証明するための技術のこと

※3

・書類の発行者がタイムスタンプを付与した場合

・電子データの修正や削除などの履歴が追えるシステムを使う場合

◆改正によって厳しくなるポイント

厳しくなるポイントの画像です

◆改正ポイントと区分対応

改正ポイントの画像です

電子帳簿保存法を対応する上で抑えるべき3つの保存区分

3つの保存区分の画像です

2022年1月施行改正電子帳簿保存法で何が変わったのか。少し触れていますが、この電子保存法対応を行う上で度々出てくる3つの保存区分について解説します。

保存区分によって、「①真実性の確保」と「②可視性の確保」の要件も異なってくるので、区分については理解しておきましょう。区分は以下3つです。

電子帳簿等保存

自社が一貫してシステム等を使用して作成する帳簿や自社が発行する請求書控え等については一定の要件のもとで紙での保存に代わり、電子データで保存する形態を言います。

会計システム内で保存される帳簿等が該当します。ポイントは、一貫してシステムを使用する点です。保存の際、満たすべき要件は以下になります。

真実性の確保

  • 入力起案の制限
  • 一定水準以上の解像度・カラーによる画像読み取り
  • 認定タイムスタンプの付与もしくは訂正・削除履歴が残るサービス上での保存
  • バージョン管理

可視性の確保

  • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
  • 見読可能装置の備え付け/整然・明瞭出力
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け
  • 検索機能の確保

スキャナ保存

自社が取引先から受け取った紙の請求書等や会社が作成した紙の請求書等の写しをスキャナにより電子データに記録する場合、一定の要件のもと、紙の保存に代わり電子データで保存ができる形態を言います。

要するに紙の書類をスキャンし、電子データとして保存する区分です。紙で受け取った書類をスキャンする場合が該当します。保存の際、満たすべき要件は以下になります。

真実性の確保

  • 入力起案の制限
  • 一定水準以上の解像度・カラーによる画像読み取り
  • 認定タイムスタンプの付与もしくは訂正・削除履歴が残るサービス上での保存
  • バージョン管理

可視性の確保

  • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
  • 見読可能装置の備え付け/整然・明瞭出力
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け
  • 検索機能の確保

電子取引に係るデータ保存

自社が紙で受け取る請求書等や発行する請求書等と同様の取引情報が記載された電子データを相手方から受領した場合、一定の要件の下で、その電子データで保存する様式です。

真実性の確保

  • 以下いずれかを満たす必要があり
  • 認定タイムスタンプが付された後の授受
  • 業務処理サイクル後、速やかに(2か月と7営業日)以内に、認定タイムスタンプを付す
  • データ訂正削除を行った場合にその記録がに残るシステム又は訂正削除が出来ないシステムで授受
  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備え付け

可視性の確保

  • 見読可能装置の備え付け/整然・明瞭出力
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け
  • 検索機能の確保

いつまでに電子帳簿保存法の対応を完了すべきなのか?

電子帳簿保存法の改正及び対応の開始は、経理業務に大きな影響を及ぼす「インボイス制度」と並行するスケジュールになります。

  • 2023年10月1日  インボイス制度開始
  • 2023年12月31日  改正電子帳簿保存法における電子取引の猶予期間終了

2023年10月から保存が開始出来るようにまず準備を進めましょう。

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最後に

電子帳簿保存法の改正に伴い、紙という「物」に縛られずデジタル化を加速していけることが1番のメリットに感じている方も多いと思います。

その結果、業務の効率化やテレワーク運用の推進、ペーパーレス化によるコスト削減に繋げられますね。

また、この改正により、経理担当者の業務や働き方についての選択肢が増えるため、業務フローの改革次第では、優秀な人材の採用や離職率の低下に寄与する可能性も出てくるのではないでしょうか。

さらに、罰則規定が新たに設けられておりますので、電子帳簿の保存方法が正しいことを今一度確認するきっかけになりましたら幸いです。

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この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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