本記事では、会計とファイナンスの違いを解説します。
会計とは、会社の財政状態や経営成績を示すツールである一方、ファイナンスとは、企業が行う資金調達活動のことです。
ファイナンスを行う(資金調達活動)ためには、会計が欠かせません。
本記事ではその理由をわかりやすく解説します。
目次
会計とは
会計とは、企業が行う経済活動の結果を貨幣価値で記録し、報告するためのツールです。
具体的には、商品を100円で販売した事実を簿記という記録技術を使って記録し、その記録に基づいて報告を行うのが会計です。
諸説ありますが、もともと、会計(accounting)とは、「説明する」という意味を持っており、これが派生して、「会計責任(accountability)」という言葉が生まれたと言われています。
会計責任とは、「経営者が投資家から集めたお金をどのように使ったかを説明する責任」と定義される言葉です。
つまり、会計とは投資家から集めたお金をどのように使ったかを記録し、報告するためのツールであると考えられます。
以下では、企業活動において会計がどのように活用されているのかを解説します。
利益を管理すること
会計の中心的な役割の一つは利益を管理することにあります。
利益とは、企業の収益と費用の差額のことです。利益の発生と費消をきちんと把握することは、企業の健全な経営に欠かせません。
言い換えれば、投資家から集めたお金をどのように費消し、どれだけの売上を発生させたのかを記録しておくことで利益を計算するのが、会計の重要な役割の一つです。
たとえば、100円で仕入れた商品を200円で販売すれば、100円の利益が出ることになります。100円の利益が出ているという事実を計算する(利益を計算する)ためには、商品を100円で仕入れたという事実と、商品を200円で販売したという事実を記録しておく必要があるというわけです。
会計を通じて、売上、コスト、そのほかの経済的な情報を適切に記録・集計して、特定の期間ごとの利益や損失を明確にします。
これにより、経営者や企業に投資を行う投資家は投資判断、資金計画、業績評価などの重要な意思決定に必要な情報を得られます。。
この意味で利益の管理は、企業の持続的な成長と安定を保証するための基盤となるプロセスであると考えられるでしょう。
管理会計と財務会計がある
会計には大きく分けて「管理会計」と「財務会計」という2つの分野があります。
管理会計と財務会計には、目的、情報の提供先、使用されるデータの種類などに大きな違いがあります。
まず、管理会計は、経営者や経営陣を中心とした内部関係者に向けた情報提供を目的とし、経営の効果的な計画・実行をサポートするためのデータを提供します。
内部関係者の意思決定に有用な情報を提供するのが管理会計の重要な役割です。たとえば、製品の原価計算、予算作成、業績評価などの情報が該当します。
一方、財務会計は、外部のステイクホルダー(株主、債権者、投資家など)に向けて、企業の財務状況や業績を公正かつ適切に報告することが目的です。
報告は、決算書(損益計算書、貸借対照表など)の形式で一般に公開され、会社計算規則や会計基準に基づくルールに従って作成されます。
このように、管理会計と財務会計はそれぞれ異なる目的と対象者を持ちながら、企業の会計情報の側面を補完し合っています。
ファイナンスとは
ファイナンスとは、資金の調達、運用、管理に関する学問や活動を指し、経済の資金の流れや価値の最適化を追求する学問分野です。企業経営においてのファイナンスは、単に資金調達活動を指す場合が多いです。
以下では、企業活動においてファイナンスがどのような意味を持つのかを解説します。
資金調達や運用の意思決定
ファイナンスの中心的なテーマの一つは、資金調達や運用に関して合理的な意思決定を行うことです。
企業や個人はさまざまな目的のために資金を必要とし、資金を効率的に調達する方法を模索します。具体的な資金調達の方法には、借入、株式の発行などがあり、それぞれにリスクとコストがともないます。
企業が資金調達を行う際に、株式を発行するべきなのか、銀行から借り入れを行うべきなのか、リスクやコストを勘案して、合理的な意思決定をするための理論を提供するのがファイナンスです。
調達した資金の運用に関しても、投資先の選定、リターンとリスクのバランス、資本のコストなどを考慮しながら最適な選択を行う必要があります。こうしたプロセスにおける意思決定は、ファイナンスの理論やツールを用いて、より合理的に行われることが求められます。
投資・資金調達・分配をする際の意思決定に役立つ
ファイナンスの理論や方法論は、投資、資金調達、利益の分配などの金融活動の全般にわたる意思決定の支援を目指したものです。
投資の際には、プロジェクトの将来のキャッシュフローの予測や現在価値の計算を通じて、最も価値をもたらす投資先を選択します。
資金調達の際には、財務構造や資本コストを考慮し、合理的な方法を選ぶことが重要です。
利益の分配においても、株主への配当、企業の成長のための再投資、債務返済など、さまざまな選択肢の中から最適なバランスを見つける作業が必要となります。
この意味でファイナンスの知識は、これらの複雑な意思決定を効果的に行うための鍵といえるでしょう。
たとえば、ファイナンスは、企業経営において以下のような点で役立ちます。
- 資金調達
効率的な方法での資金の確保やコストの最小化をサポートします。
- 投資判断
資金をどのプロジェクトや活動に投じるべきかを評価し、最大のリターンを目指す決定を支援します。
- リスク管理
金融リスクを評価、監視し、それに対する戦略を立てる手助けをします。
- 財務分析
企業の財務状況やパフォーマンスを分析し、経営者やステークホルダーに適切な情報を提供します。
- 資金の分配
得られた利益を再投資するか、株主に配当するかなど、資金の最適な使い道を決めるサポートを行います。
このように、ファイナンスは企業の資金の調達、運用、リスク管理の過程を最適化し、企業の価値を最大化するための意思決定をサポートします。
会計とファイナンスの違い
会計は経済活動の記録・報告を主に扱う一方、ファイナンスは資金の調達・運用、価値の最適化に関する学問領域です。
以下では、会計とファイナンスの違いを、次の2つの観点から説明していきます。
- 収益の捉え方
- 時間軸
収益の捉え方が異なる
会計とファイナンスでは、収益の捉え方において異なるアプローチを持っています。以下では、それぞれの捉え方について解説します。
会計のアプローチ
- 実績ベース
会計は過去の取引や活動に基づき、主に簿価に焦点をあてて収益や費用を計上します。具体的には、過去1年間の実際の売上や経費を基に、企業の財務状況や業績を反映します。
- 詳細な記録
会計では、具体的な売上高や支払った電気代、賃金などの詳細な情報を損益計算書やバランスシートに記録します。これにより、企業の収益性や財務健全性を詳細に把握することができます。
- 外部報告
会計の主な目的の一つは、ステイクホルダー(株主、債権者、従業員など)に対して、企業の財務状況や業績を透明に報告することです。
ファイナンスのアプローチ
- 将来予測
ファイナンスは、将来の収益やキャッシュフローを予測し、資金の最適な配分や投資判断を行います。過去のデータを基に、未来のビジネスの方向性やリスクを評価します。
- 資本の最適化
ファイナンスの目的は、企業の資本を最適に運用し、最大の収益を追求することです。これには、投資、資金調達、資本コストの最小化などの戦略的な判断が含まれます。
- リスク管理
ファイナンスは、企業のリスクを管理し、不確実性を最小限に抑えることを目指します。これには、ヘッジ戦略やリスク分散の手法が用いられます。
まとめると、会計は過去の実績に基づいて詳細な財務情報を提供するのに対し、ファイナンスは将来の収益やリスクを予測し、企業の資本を最適に運用することを目指すといえるでしょう。
時間軸が異なる
会計とファイナンスとでは、時間軸の取り扱いにも違いがあります。
例を挙げると会計は、あるレストランが前月に何回取引を行い、取引でいくらの売上があり、どれだけの経費がかかったかという過去の事実を記録します。
この記録に基づいて、特定の期間内の経済活動を貸借対照表を損益計算書にまとめ、ステイクホルダーに報告するのが業務です。
つまり、会計は主に過去から現在までの情報を取り扱うといえます。
一方、ファイナンスの領域では、主に現在の情報から未来の出来事を推定します。
たとえばある企業が新しい製品を開発する場合を考えてみましょう。
現在の市場状況や競合状況を基に、その製品の未来の販売数、それにともなうキャッシュフローやリターン、さらには関連するリスクを予測・評価します。
そのうえで、製品の開発にかかる初期投資が将来どれくらいの期間で回収できるか、投資が企業にとって価値があるかの判断をします。
具体的には、新製品の投資案件を評価する際に、将来5年間の収益やキャッシュフローの予測を基に現在価値を計算し、投資を決めることが可能です。
会計が過去から現在を明確に捉えるのに対し、ファイナンスは現在から未来を予測し、最適な意思決定をサポートする役割を持っています。
ファイナンスが重要な理由
ファイナンスは、経済活動の核心を成すものとして認識されるべきです。
これは、企業の健全な経営を維持・拡大するための要となる要素であり、重要性は多岐にわたります。
まず、資金の調達においては、ファイナンスの理論や手法が極めて重要です。
たとえば新しい事業展開や製品開発を検討するとしましょう。必要な資金の量や資金の調達方法(自己資金、外部からの借入れ、株式の発行など)を適切に行うには、ファイナンスの知識が不可欠です。
次に、資金の運用に関しても、最適な運用方法を選択し、リスクを管理するためのファイナンスの手法や知識が求められます。
ファイナンスの観点から、企業が得た利益を再投資するか、株主に配当するかの判断も考慮されるべきでしょう。
ファイナンスは、経営の方針や戦略を策定するうえでも大きな役割を果たします。
ファイナンスの理論や手法は、企業の将来的な収益性や成長可能性、業界内での競争力を評価し、適切な経営戦略を立案するための分析や意思決定に用いられます。
企業活動においてファイナンスが重要である理由は、企業活動に必要な意思決定を合理的に行うのに必要だからです。
ファイナンスには会計記録が必要
ファイナンス活動を適切に行う上で、会計の記録は非常に重要です。
会計は経済活動の記録・報告を行うものであり、ファイナンスが会計をもとに未来の活動や判断を行うものであるという関係性があるからです。
企業が新規投資の検討や事業の拡大を計画する際、過去の財務データや業績を参照して現在の健全性や持続可能性を評価します。
たとえば、ある企業が新しい製品を市場に投入するとしましょう。開発にかかる費用や市場導入後の収益性を予測するためには、過去の同様の事例や現行製品の業績データが必要です。過去のデータは、会計記録から提供されます。
資金調達の際、銀行や投資家は企業の財務健全性を評価するために、損益計算書やバランスシートなどの会計情報を参照します。
このように、会計はファイナンス活動の基盤となる情報を提供し、その上での意思決定や分析活動をサポートする役割です。
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経理業務は全体像がわかればもっと効率的に!
経理の仕事は、伝票起票や経費精算など細かな日次業務が多く、全体像を見失いがちです。
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そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
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まとめ
会計とファイナンスは、経営の健全性と持続可能性を確保するための相互補完的な関係にあります。
ファイナンスは経済活動の核心であり、資金の調達、運用、経営戦略策定における重要な役割を果たします。
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一方で、ファイナンス活動の基盤として、会計の記録が極めて重要です。
これは、経済活動の記録や報告を行い、その情報をもとに未来の活動や判断をサポートする役割を持っているためです。
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