領収書にはいくつか記載事項があります。そのうちの一つが日付です。領収書の日付は金銭のやりとりがいつ発生したのかを把握するうえで極めて重要であり、領収書の発行された月や年度が業務に大きく関係する経理担当者にとっては、欠かせない情報といえるでしょう。
本記事では、領収書における日付の必要性や、正しい書き方、再発行に関する注意点、領収書の日付が記載されていなかった場合や間違いがあった場合の対処法などをご紹介します。
領収書のなかでも基本的な項目といえる日付ですが、経理業務上では多くの意味を持つ重要項目です。正しい知識を身につけ、理解を深めていきましょう。
目次
領収書には日付の記載が必要
領収書には、日付の記載が必要です。法律と関係したところでは、仕入税額控除を受けるための申請に有効であるといった理由がありますが、それ以外に実務上でも領収書に日付が記載されていると役立つ場面が存在します。
領収書の日付が有効な例として「その日に受領したという証拠になる」「社内の不正を発見するため」の2点をご紹介します。
その日に受領したという証拠になる
領収書の日付は、その日に領収書を受け取ったという証拠になります。
領収書を受け取ったということは、つまり金銭のやりとりが発生したということです。経理の業務では金銭のやりとりがいつ発生したかを把握することはとても重要であるため、領収書に日付が記載されている必要性が高いといえるでしょう。
また、取引相手から領収書の内容について間違いがあると申告された場合にも、日付が記載されていると対応がスムーズになります。領収書を日付を基準にファイリングして管理することで、該当する領収書を簡単に見つけだせます。
社内の不正を発見するため
領収書に日付の記載を義務付けることで、不正を発見する効果が期待できます。
社員から経費として提出された領収書に不正があった場合、見逃すと重大な損害を招く恐れがあります。日付をはじめとした記載項目を厳守させることで、改ざんや二重発行などによって作成された怪しい内容の領収書を発見しやすくなるかもしれません。
なにより重要なのは、領収書に対して厳しい基準とチェック体制が設けられているということを社内に周知させることです。結果として不正行為を働いても発見されてしまうリスクが高いと判断され、不正行為そのものの発生を未然に防ぐことが期待できます。
領収書の日付の書き方は?
領収書の日付を書く際には、いくつか守りたいポイントが存在します。ただ日付を記載するといっても、内容や方法についての選択肢は多種多様だからです。
日付の記載方法に誤りがあると、最悪の場合領収書が経費として認められなかったり、税務調査の際に問題視されてしまったりといった恐れがあります。守りたいポイントを押さえ、書類として問題のない領収書を発行しましょう。
具体的な領収書の日付の書き方として「実際に支払いが行われた日付を記載する」「和暦・西暦は略して記載しない」の2点をご紹介します。
実際に支払いが行われた日付を記載する
領収書には、実際に支払いが行われた日付を記載しましょう。
領収書は金銭のやりとりが発生したことを証明する書類です。そのため再発行のような一部例外を除いて、原則として日付も金銭のやりとりが発生したその日を記載します。
注意しておきたいのが、商品やサービスを引き渡したり、施したりした日付ではないということです。先に商品を引き渡し、後日になってから銀行振込などで料金が支払われた場合、支払い日の日付を領収書に記載してください。
領収書に支払いが行われた日ではない日付を記載していると、経理や税務調査の担当者に不正を疑われてしまう恐れがあります。
契約締結日や商品の引き渡し日などと混同してしまいがちですが、支払い日の日付を記載するという原則を正しく理解して、内容に誤りのない領収書を発行できるように心がけましょう。
和暦・西暦は略して記載しない
領収書に日付を記載する際は、和暦・西暦を略さないように気をつけましょう。
書類によっては平成をH、令和をRと略したり、西暦を下2桁のみ表記したりといった表現が許されているものもあります。たとえば社内で閲覧するだけの書類や、親しくなっている取引相手とのメールの文面などではこういった表記も許容範囲内です。
しかし、領収書は取引相手に発行するものであり、税務署からのチェックを受ける書類でもあります。内容の取り違えや書類の不備が発生しないで済むように、省略した表現は避けたほうがいいでしょう。
とくに和暦を簡素なアルファベット1文字に省略していると、文字の書き換えのような不正行為を働いているのではないかと、疑われてしまう恐れがあります。不要な疑いの目を向けられないためにも、領収書の日付欄では和暦・西暦を略さないようにしてください。
領収書を過去の日付で発行するケースについて
基本的に領収書は金銭のやりとりが発生したときに発行されるため、発行された日の日付を記載しますが、稀に過去の日付を記載するケースが存在します。
領収書の過去の日付で発行するケースとして「過去の日付で発行する場合」「再発行を求められた場合」の2点を詳しくお伝えします。
過去の日付で発行する場合
金銭の支払いが行われたあと、その場で領収書を発行しなかった場合、後日になってから領収書の発行を依頼される可能性があります。
後日でも領収書の発行は可能ですが、取引があった事実を確認できるものが必要です。さらに支払いが発生した日付も同時に把握できなければなりません。レシートを相手が所持しているのであれば、その内容を参照して領収書が発行可能です。
気をつけたいポイントが、発行する領収書に記載する日付です。発行を依頼された日付を記載すると不備となってしまうため、支払いが発生した日付を記載するよう注意しておきましょう。
再発行を求められた場合
領収書の紛失といった理由で、再発行を求められる場合があります。再発行が必要となった理由にもよりますが、原則として再発行の要求に応じる義務はないということは理解しておきましょう。
とくに取引相手の紛失といった相手方に落ち度のある理由の場合、トラブル防止を理由に再発行を断ることも選択肢として考えてください。領収書を発行する段階で再発行ができない旨を伝えておくという方法もおすすめです。
仮に再発行を行うのであれば、同じ内容の領収書を二重に発行したという事実を忘れないようにしてください。印をつけるといった方法で、再発行した領収書であることが誰の目にも明らかになるよう工夫しましょう。
領収書の日付を意図的に変更することはできない
領収書の日付を意図的に変更することはできません。
日付を含め、領収書の内容は改ざんの許されない重要なものです。仮に内容が修正されていた場合、第三者から見ても適正な修正であることがわかる必要があります。そうでなければ税務調査の際に改ざんの疑いがあるとして、管理体制に厳しい追及が行われるでしょう。
領収書を受け取った側に悪意がなく、日付が誤っているといった理由から日付の変更を求める場合は、まずは再発行を依頼してみましょう。この条件ですと、発行側のミスなので再発行は認められることが多いはずです。
もし社内規則を理由に再発行を断られた場合は、訂正を依頼しましょう。領収書の訂正は発行側のみが行えます。誤った日付の上に二重線を引き、訂正印を押したあと正しい日付を記載することで正式に訂正が認められます。
訂正によって領収書の内容が読み取りづらくなってしまうと、税務調査の際に確認の手間がかかってしまう恐れがあります。訂正はコンパクトかつ、ていねいに行いましょう。
領収書の日付が記載されていなかった場合の対処法
業務のなかでは、受け取った領収書をあとになって確認すると日付の記載が抜けていた、という事態が発生することもあります。
そもそも領収書の受け渡し時にはしっかり必要事項がすべて入っているか確認することが第一です。しかし、人間の行う業務である以上、ミスを完全になくすことは不可能でしょう。その場合どのように対処すればいいのでしょうか。
まず、受領側は発行側に日付の追記を依頼します。日付の記載されていない領収書の実物を直接持参するかたちが望ましいです。いつの取引なのかを証明できるもの(口座や電子マネーの支払記録など)があれば、そちらも提示するといいでしょう。
もし記載を断られてしまったり、個人経営の小売店や飲食店で支払記録が確認できなかったりした場合は、領収書の日付欄を空白にしたまま別途メモなどで支払日を記録しておきましょう。日付が空白でも正式な領収証として認められる場合もあります。
領収書の日付を間違えてしまった場合
領収書の日付は重要な項目であり、記入には細心の注意を払ってミスがないよう心がけなければなりません。しかし、もし間違えてしまった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
「発行者側」「受領者側」それぞれの視点から、領収書の日付を記載する際に生じたミスへの対処法をお伝えします。ミスをしないことが重要なのは当然ですが、発生したミスに対処する術を知ることも同様に重要です。
発行者側
領収書の日付を間違えてしまった場合、発行者側は再発行を行いましょう。今回のケースでは発行者側に非があるため、取引相手の心証を考えるとすぐに再発行を行うほうがいいでしょう。
再発行の際、元の領収書は発行者側の責任で破棄せず保管してください。内容に不備のあった領収書も、通常の領収書同様に保存しておく必要があります。
社内規則で領収書の再発行ができないと厳格に定められている場合は、訂正を行いましょう。領収書の訂正は発行側のみが行えます。誤った日付の上に二重線を引き、訂正印を押したあと正しい日付を記載することが正式な訂正方法です。
受領者側
受け取った領収書に間違いがあった場合、受領側はすぐに再発行を依頼しましょう。今回のケースでは発行者側に非があるため、基本的に再発行の依頼は聞き入れてもらえるでしょう。
可能であれば、領収書を発行してもらったその場でミスに気がつくことが望ましいです。領収書をもらう機会が増えるとつい慣れから注意力が下がってしまいがちですが、内容に不備がないか確認することが受領側の姿勢としては理想です。
仮にその場で領収書の不備に気がつかないと、後日訂正や再発行の依頼をすることになります。正しい取引内容を証明する必要が出てくるため、最悪の場合訂正や再発行を断られてしまうかもしれません。
領収書を再発行する際の注意点
領収書の再発行は二重発行となってしまい、経理上のトラブルに発展するリスクがあります。可能であれば避けたい事態ですが、どうしても領収書を再発行しなければならない場合はどうすればいいのでしょうか。
領収書の再発行について発行者の視点に立って「発行者側が原因の場合は速やかに発行する」「受取側の都合の場合は慎重に対応する」の2点をお伝えします。
発行者側が原因の場合は速やかに発行する
再発行の原因が発行者側にある場合は、速やかに再発行を行いましょう。
再発行の際、元の領収書は発行者側の責任で破棄せず保管してください。内容に不備のあった領収書も、通常の領収書同様に保存しておく必要があります。破棄した領収書であることがわかるよう、はっきりと印をつけておく必要があります。
再発行した領収書についても、再発行したものであることがわかるような印を空いたスペースに記入してください。ミスをした時点で取引相手には迷惑をかけていることになります。相手側に負担を増やさないよう、早急な対応を心がけましょう。
受取側の都合の場合は慎重に対応する
受け取った側の都合で再発行を求められた場合は、慎重に対応してください。発行者は、領収書の再発行が不正行為に繋がる恐れがあるということを十分に理解しておく必要があります。
取引内容の確認はもちろん、相手に元の領収書を提出してもらうことを忘れないようにしましょう。再発行を行う場合、元の領収書は発行側が保管していなければいけません。
社内の決まりとして、そもそも再発行を断る方針の企業もあります。この場合は、訂正のような代替手段を提示するといいでしょう。最初に領収書を発行する段階で、再発行には応じられない、という旨を伝えておくことをおすすめします。
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まとめ
領収書の記載事項である日付は、金銭のやりとりがいつ発生したかを示す重要な情報です。改ざんのような不正行為は許されません。実際の支払日を和暦・西暦を省略せずに記入してください。
領収書の日付を意図的に変更することは認められていません。内容に誤りがあった場合は発行者側に申告し、再発行か訂正を依頼しましょう。支払の後日に発行してもらう場合や、渡された領収書の日付が空白だった場合は、支払の事実を証明できるものを持参しましょう。
領収書の再発行は二重発行となるため、トラブルに発展する恐れがあります。訂正のような代替案を採用するか、元の領収書を発行者側が確実に保管するなどして、不正行為に加担しないよう気をつける必要があります。