ビジネスにおいて、コピー機やプリンターを使用する際に発生するコピー代は、経費として正確に計上する必要があります。
しかし、コピー代をどのような勘定科目に分類すべきか、また具体的な仕訳はどのようになるのか、わからない人も多いかもしれません。
本記事では、コピー代の適切な勘定科目と仕訳例をくわしく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
コピー代や印刷費の勘定科目と仕訳例を紹介
コピー代や印刷費の支出は、ケースによって以下のような勘定科目に分類できます。
- 印刷製本費
- 消耗品費
- 事務用品費
- 広告宣伝費
- 外注費
- 仕入
- 通信費
- 雑費
一つずつ、勘定科目に分類する理由と仕訳例を解説していきましょう。
印刷製本費
「印刷製本費」とは、企業が印刷物や製本物を制作する際に発生する費用を記録する勘定科目です。
具体的には、報告書、マニュアル、会議資料などの印刷物や、冊子や装丁された書籍などの製本物にかかる費用を記録します。以下に「印刷製本費」が使われるケースを挙げます。
- 営業活動などで使用するプレゼンテーション資料や提案書
- 自社の事業や製品に関する情報をまとめたカタログや冊子
- 社内向けのマニュアルや報告書
上記のような印刷物のコピーや印刷は通常、専門の印刷業者に外部委託することが一般的です。企業はこれらの業者への支払いを「印刷製本費」として計上します。
仕訳例1)営業活動で使用するプレゼンテーション資料のコピーを印刷会社に依頼し、代金5万円を振り込んだ。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
印刷製本費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 | 〇〇プレゼンテーション資料印刷代 |
消耗品費
「消耗品費」とは、企業が日常の業務遂行や事務処理において使用する消耗品(耐久性のない物品)にかかる費用を記録する勘定科目です。
具体的には、事務用品、清掃用品、飲料品などの消耗品の購入費用を記録します。以下に「消耗品費」が使われるケースを挙げます。
- 文具類(ボールペン、鉛筆、消しゴム、ノートなど)
- オフィス機器の消耗品(プリンター用インク、トナーカートリッジ、紙など)
- 企業で使用する清掃用品(洗剤、掃除機のフィルター、モップなど)
コピー代や印刷費を「消耗品費」に計上するケースもあります。印刷業者に発注する頻度が少なく、多くは社内で印刷するようなケースは、事務処理に必要な一連の費用として「消耗品費」にまとめて処理することも可能です。
また、印刷業者に外注する分だけを「印刷製本費」とし、社内で印刷するのにかかったコピー代やインク代などの費用は「消耗品費」として分類することもできます。
仕訳例2)コピー代のトナーカートリッジ代金12,000円を現金で支払った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
消耗品費 | 12,000円 | 現金 | 12,000円 | トナーカートリッジ代 |
事務用品費
「事務用品費」とは、企業が事務作業や管理業務において使用する事務用品の購入費用を記録する勘定科目です。
具体的には、事務機器、文具類など、事務処理や文書管理に関連する物品の購入費用を記録します。以下に、「事務用品費」が使われるケースを挙げます。
- 事務機器(製本機、ラミネーター、ラベルプリンター、裁断機、ホッチキス、ホワイトボードなど)
- 文具類(ボールペン、鉛筆、消しゴム、ノート、封筒、付箋紙、クリップ、ホッチキス針、コピー用紙など)
「事務用品費」は「消耗品」と分けて管理する場合に使用する勘定科目です。たとえば「事務用品費」は事務作業に必要な文具や用品に関連する費用とし、「消耗品費」は一度の使用で消耗する物品に関連する費用とするなどです。
企業の会計方針によっては、これらの費用を統合して一つの勘定科目で管理することも可能です。そのため、コピー用紙やトナーカートリッジ代を「事務用品費」に計上するケースもあります。
仕訳例3)コピー用紙を購入し、代金3,000円を振り込んだ。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
事務用品費 | 3,000円 | 普通預金 | 3,000円 | コピー用紙代 |
広告宣伝費
「広告宣伝費」とは、企業が商品やサービスの宣伝・広告活動にかかる費用を記録する勘定科目です。
具体的には、広告媒体への広告料金、広告代理店への支払い、広告制作物の制作費用などを記録します。以下に「広告宣伝費」が使われるケースを挙げます。
- 屋外広告(駅のポスター、チラシ、看板広告、交通広告など)
- メディア広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなどのメディアへの出稿料)
- 広告代理店や制作会社に支払う制作費用(コピー制作、デザイン、撮影、編集など)
チラシやポスターなど、広告宣伝に関連するコピー代や印刷費は「広告宣伝費」を使用することも可能です。広告宣伝効果が期待できる費用を明確にしたいときなどに使用します。
仕訳例4)自社の広告用ポスターを作成し、代金200,000円を振り込んだ。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
広告宣伝費 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 | △△用ポスター代 |
外注費
「外注費」とは、企業が外部の業者や専門家に対して業務やプロジェクトの一部または全部を委託し、その対価として支払う費用を記録する勘定科目です。
具体的には、外部への業務委託や作業の外注化が行われた費用を記録します。以下に「外注費」が使われるケースを挙げます。
- 企業が自社内で行うべき業務の一部を業務委託する場合(会計処理のアウトソーシング、人事業務の委託、マーケティング調査の委託など)
- 企業が製品の製造工程を外部の製造業者に委託する場合(製品の組み立てや加工、梱包作業など)
コピーや印刷を本業としている会社が、自社で行うべき業務を外部へ委託する場合に「外注費」を使用します。たとえば、印刷会社が、印刷物のデザインを外部に委託した場合などです。
仕訳例5)印刷物のデザインを外部の業者に委託し、代金350,000円を振り込んだ。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
外注費 | 350,000円 | 普通預金 | 350,000円 | □□用デザイン代 |
仕入
「仕入」とは、商品や原材料などの仕入れに伴って発生する費用を記録する勘定科目です。
具体的には、仕入れた商品の価格や仕入れに関連する費用(運送費、関税、保険料など)を記録します。以下に「仕入」が使われるケースを挙げます。
- 商品の仕入れ(小売業や卸売業などの事業者が商品を仕入れる際に発生した費用)
- 原材料の仕入れ(製造業や飲食業などの事業者が製品や料理の原材料を仕入れる際に発生した費用)
- 仕入れに関連する諸費用(商品の運送費、関税、保険料、梱包費など)
仕入(仕入高)は、商品やサービスの販売のために直接要した費用のことを指し、売上高と対応します。コピー代や印刷費が「仕入」になるケースは、印刷物の販売が売上になる場合に限られます。
たとえば、外部業者に印刷を依頼し、できた印刷物を販売する場合は、印刷代を仕入として処理します。
仕訳例6)商品販売用の印刷を外部の業者に委託し、代金700,000円を振り込んだ。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
仕入 | 700,000円 | 普通預金 | 700,000円 | ◇◇販売用印刷代 |
通信費
「通信費」とは、企業が通信サービスを利用する際に発生する費用を記録する勘定科目です。
具体的には、郵便料金、電話代、インターネット接続費などを記録します。以下に「通信費」が使われるケースを挙げます。
- 郵便料金(切手、はがき、運送費など)
- 電話代(固定電話の通話料金、国内や国際の通話料金など)
- インターネット接続費(インターネット回線の月額料金、データ通信料金など)
コピー代や印刷費を「通信費」として処理するのは、暑中見舞いや年賀状の印刷代などです。
仕訳例7)暑中見舞いの印刷代金30,000円を現金で支払った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
通信費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 | 暑中見舞い印刷代 |
雑費
「雑費」とは、企業がさまざまな小口の経費を記録する勘定科目です。
具体的には、業務に必要な細々した費用や雑多な経費が含まれます。以下に「雑費」が使われるケースを挙げます。
- 事務用品の購入(ペンや紙、消しゴム、クリップなどの小物から、プリンターインクやコピー用紙などの大口の購入まで)
- 小口交通費(従業員が業務上の移動や会議への参加などで発生する交通費やタクシー代など)
- 修繕費(オフィスや施設の修繕やメンテナンスにかかる費用など)
- 会議費用(会議室の利用料や講演者の謝礼、資料印刷など)
コピー代や印刷費で「雑費」を使用する場合は、コピー代や印刷費の発生頻度が低いときです。発生頻度が高いコピー代や印刷費を「消耗品費」や「事務用品費」などの科目に計上し、コンビニエンスストアでの一時的なコピー代などを「雑費」で処理する場合があります。
仕訳例7)コンビニエンスストアでのコピー代金60円を現金で支払った。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 摘要 |
雑費 | 60円 | 現金 | 60円 | ▼▼コピー代 |
【シーン別】コピー代の勘定科目
ここからは、コピー代の勘定科目・仕訳を以下のシーン別に解説します。
- コンビニエンスストアでコピーしたとき
- 会社の印刷機でコピーしたとき
- コピー作業を外注したとき
コンビニエンスストアでコピーしたとき
コンビニエンスストアで書類をコピーしたときの一般的な勘定科目は「消耗品費」もしくは「雑費」です。
消耗品費 | 事務処理に必要な一連の費用としてまとめて処理する場合。 |
雑費 | 発生頻度が低い場合。 |
ただし、ケースによっては「広告宣伝費」もしくは「仕入」を用いることもあります。
広告宣伝費 | チラシやポスターなど、広告宣伝効果が期待できる場合。 |
仕入 | 印刷物を販売する場合。 |
会社の印刷機でコピーしたとき
会社の印刷機で書類をコピーしたときにかかる費用は、コピー用紙の購入です。一般的な勘定科目は、コンビニエンスストアでコピーしたときと同様「消耗品費」もしくは「雑費」です。
ただし、ケースによっては「事務用品費」もしくは「貯蔵品」を用いることもあります。
事務用品費 | 事務作業に関連する費用としてまとめて処理する場合。 |
貯蔵品 | コピー用紙を購入する場合(後述参照)。 |
貯蔵品とは
ここで、勘定科目「貯蔵品」を説明します。
「貯蔵品」とは、事業に関連する物品のうち、未使用のまま貯蔵されるものを表す勘定科目です。たとえば、郵便切手、段ボールなどまとまった単位で購入し、長期にわたって使用する場合などが挙げられます。
コピー用紙をまとまった単位で購入した場合は、全額を「貯蔵品」に計上し、使用した分を「印刷製本費」に振り替えるケースが考えられます。
コピー作業を外注したとき
すでに上述しましたが、コピーや印刷を本業としている会社が、自社で行うべきコピー作業自体を外部へ委託する場合に「外注費」を使用します。
本来、自社で行うコピーや印刷を外部へ委託するときは、以下のようなケースが挙げられます。
- より高度な印刷技術が求められるとき
- 大量の印刷が短期間に必要なとき
消耗品費と事務用品費の違い
経理担当者は「消耗品費」と「事務用品費」の区別に悩むケースが多いです。以下に、それぞれの勘定科目の内容と例を説明します。
内容 | 例 | |
消耗品費 | 短期間で消耗するもの取得価額が10万円未満のもの耐用年数が1年未満のもの | 工具、掃除用品、飲料水、トイレットペーパー、観葉植物、電球、スリッパなど |
事務用品費 | 消耗品のうち、オフィス内の事務業務に使用するもの | ペン、ノート、ファイル、プリンターインク、コピー用紙、封筒、付箋など |
出典:帳簿の記帳のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou03.pdf
「事務用品費」は「消耗品費」の一部に含まれることから、全て「消耗品費」に統一して処理しても問題ありません。あくまでも、企業内での会計ルールに基づいて処理することが必要です。
一貫性を持って計上することが重要
会計処理は「継続性の原則」に従って、一貫性をもつことが重要です。
「継続性の原則」とは、企業会計において非常に重要な原則の一つです。会計処理は、企業が将来も継続していく前提で行われるべきであるという考え方です。
継続性の原則に基づいて会計処理が行われることで、企業は投資家や債権者、その他の利害関係者に対して、財務情報の信頼を得ることになります。
したがって、コピー代に関わらずある費用の計上について一度採用した勘定科目は、一貫性を持って継続して使用することが重要です。
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まとめ
仕訳は、各企業の会計方針や業種によって異なる場合があります。適切な勘定科目と仕訳を選択する際には、会計担当者や専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
経費の正確な計上は、会計処理の正確性と財務状況の把握に不可欠ですので、適切な勘定科目と仕訳を選ぶようにしてください。