仕事に使用している社用車は、耐用年数に渡り経費として処理することができます。経費処理するための計算方法や減価償却のやり方などをわかりやすく説明します。また、社用車に付随する費用の経費処理のやり方などもすっきり解決。自信をもって経理業務を進めることができるようになります。
仕事に使っている社有車は経費にできます。社用車の経費処理の方法や経費にできる費用のご紹介もします。
購入やリースなど社有車を手に入れる方法は色々ありますよね。選ぶ車も新車から新古車、中古車とさまざまです。「たまには、プライベートにも使うけど……経費で大丈夫?」などの疑問や不安もこの記事を読めば解決できますよ。
一緒に読み進めながら、車の耐用年数や減価償却費も計算してみましょう。会社にとってお得感のある車が選べるといいですね。
目次
社用車は経費にできる?
社用車は耐用年数に渡り経費処理ができます。しかし、条件により経費処理することができない車もあります。すべての車が経費処理できるわけではありません。
たとえば、嗜好性の強いスポーツカーや突拍子もなく高価な車などは経費にならない恐れがあります。明らかに業務に欠かせない実態がなければ、税務調査などで指摘をうけてしまうため、経費計上は認められにくいのです。
注意してほしいのは、仕事で使用する車でも個人名義で購入された場合です。原則として経費処理が認められません。仕事で車を使用し経費処理をする場合、車は法人名義で購入しましょう。
中古車を購入した場合
中古車を購入した場合、適切に「車両運搬具」として固定資産に計上します。
一括で車を購入したからといって、消耗品などのように一度に全額を経費処理するのは、適切ではありません。定められた耐用年数に償却率を乗じて減価償却費を計上する必要があります。
普通自動車の場合の耐用年数は、事業者ごとに定められています。
- 【一般事業者】6年
- 【タクシー会社などの運送事業者】4年
上記の耐用年数は新車の場合です。中古車の耐用年数は計算式により算出します。また、耐用年数が過ぎている場合は一律2年で減価償却します。
中古車の耐用年数の計算方法と減価償却費については、後述の【新車と中古車の償却方法は異なる】の項目をご覧ください。
固定資産に計上する取得価格ですが、車両本体の価格だけではありません。納車費用やドライブレコーダー、カーナビなどの付属品も計上できます。また、車庫証明、検査登録などの法定費用も固定資産に計上が可能です。
しかし、自動車税や自賠責保険料など計上できないものもありますので、よく確認して処理しましょう。
ローンで購入した場合
車の購入は、必ずしも現金購入ばかりではありません。銀行などのカーローンを利用して購入する場合は、どのような処理をするのでしょうか。
ローンを利用して購入した場合は、現金購入と同じように「車両運搬具」として固定資産に計上します。そして、耐用年数に償却率を乗じて減価償却費を計上する必要があります。
ローンの残高は、「長期未払金」に計上しましょう。
たとえば、ローンを利用して300万円の車を購入した場合の仕訳は、以下の通りです。
借方 | 摘要 | 貸方 |
車両運搬具 300,000円 | 社用車購入 | 長期未払金 300,000円 |
ローンの元本と一緒に支払う利息は、「支払利息」で経費処理ができます。
たとえば20,000円の支払いの内訳を元本18,000円、支払利息2,000円とします。仕訳は、以下の通りです。
借方 | 摘要 | 貸方 |
長期未払金 18,000円 | 社用車ローン元本 | 現金 20,000円 |
支払利息 2,000円 | 社用車ローン利息 |
リース契約した場合
車を現金やカーローンで購入するのではなく、カーリースを利用する方法もあります。
カーリースは、カーリース会社と契約をして、毎月リース代金を支払っていきます。リース代金の内訳は、以下のようなものが含まれています。
- 車両本体価格
- 登録諸費用
- 自賠責保険
- 車検基本料
- 自動車税
- 自動車重量税など
カーリースの場合、車の所有権はカーリース会社にあります。そのため「車両運搬具」として固定資産に計上しなくてもよく、減価償却の計算も不要です。
カーリースは、下取りを前提に契約することもできます。下取りが前提だと最終的に支払う金額が少なくてすみます。また、毎月のリース代金は、定額で経費処理できます。減価償却などの手間もないため、経理業務の負担を軽減してくれるでしょう。
複数台の社用車が必要な場合、カーリースであれば初期費用が抑えられて用意することができるので、とても便利です。
社用車の経費処理の計算方法
社用車の購入にかかった費用は、新車でも中古車でも金額にかかわらず、全額を一度に経費処理することはできません。購入にかかった費用は、減価償却という方法で経費処理をします。
減価償却とは、業務に長期にわたって使用する固定資産の取得にかかった費用を毎年分割して経費処理する方法です。
では、どのような計算方法で経費処理をするのでしょうか。
固定資産として減価償却する
すべての固定資産に対して、減価償却をすることはできません。時の経過とともに価値が減少していくものを減価償却していきます。
減価償却を使って経費処理できる資産は、車以外に建物や機械など時の経過とともに価値が下がっていくものです。具体的に価値が下がっていくものには、車以外にどのようなものがあるのでしょうか。
減価償却できる固定資産は、大きく3つに分けられます。
- 有形減価償却資産
- 無形減価償却資産
- 生物
車や建物や機械などは、有形減価償却資産にあたります。有形減価償却資産とは、簡単にいうと、形がある、目に見える資産のことです。
たとえば新しい車のモデルが出たとしましょう。そうすると、以前のモデルの車の価値は減少していきます。これが有形減価償却資産です。。
意匠権や商標権、ソフトウェアなどは、無形減価償却資産にあたります。有形減価償却と比べると、形がない、目に見えない資産です。借地権は、減価償却資産には含まれません。
牛や馬などの動物、オリーブ樹、かんきつ樹などの植物は、生物に分類されます。動物は、繁殖用、種付用などが減価償却の対象ですが、売却目的、食肉用の家畜などは減価償却の対象外です。
定額法と定率法の2つある
車の減価償却の計算は、原則、法人は定率法、個人事業主は定額法で行います。
具体例を挙げて見ていきましょう。
たとえば車の購入に300万円かかったとします。一般事業者、普通自動車の新車であれば耐用年数は6年です。
法人の場合は下記のようになります。
【定率法】
定率法は、固定資産の金額に定められた償却率を乗じて、減価償却費を計算する方法です。耐用年数6年の定率法の償却率は0.333です。
減価償却費の計算
1年目:3,000,000×0.333=999,000
2年目:取得価格から1年目の減価償却費を引いたものが簿価になります。
簿価:3,000,000-999,000=2,001,000
簿価に対して償却率を乗じます。
2001,000×0.333=666,333
3年後以降も同じく計算します。
最後に簿価1円にしてください。
個人事業主の場合は、下記のようになります。
【定額法】
定額法は、固定資産の金額に定められた償却率を乗じて、減価償却費を計算します。耐用年数6年の定額法の償却率は0.167です。
減価償却の計算
1年目:3,000,000×0.167=501,000
2年目:3,000,000×0.167=501,000
3年目以降も同じく計算します。最後に簿価1円にしてください。
新車と中古車の償却方法は異なる
減価償却は、固定資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算します。一般事業者の新車(普通自動車)の耐用年数は、6年です。中古車の場合、耐用年数は、新車に比べ短くなります。
中古車の耐用年数の計算方法は、以下の通りです。
耐用年数-経過年数+経過年数×20%=中古車の耐用年数
※この計算で算出された数字に1年未満の端数があるときは、切り捨ててください。
※さらに、算出された数字(耐用年数)が2年未満の場合は、2年とします。
具体例を挙げて耐用年数を計算してみましょう。一般事業者で3年落ちの車の耐用年数を計算します。
上記の計算式にあてはめてみましょう。
6-3+3×20%=
①法定年数6年から経過年数3年を引くと3年
②経過年数3年の20%は0.6年
③①+②=3.6年。1年未満は切り捨ててますので、耐用年数は3年です。
購入した車の購入額が同じでも耐用年数により償却率が異なるので、減価償却費の額が変わってきます。節税もふまえ、中古車の購入を検討するのもよいでしょう。
社用車で経費にできるもの
社用車を購入し業務で使用すると、維持するために色々な費用がかかります。主だったものをいくつか挙げてみました。
- ガソリン代
- 税金
- 保険料
- 車検・洗車・修理費用
- 駐車場代
かかった費用は、経費処理できます。ここで注意したいのは、公私をしっかり区別することです。プライベートで社有車を使った部分は、経費処理できません。
たとえば、プライベートで社有車を使って出かけたとしましょう。この場合、事故を起こしたら使用したガソリン代、修理費用などは経費処理にできません。
もしも自動車を業務とプライベートの両方で使用する場合は、適正に按分する必要があります。
ガソリン代
ガソリン代を経費計上するのに利用される勘定科目は、「車両費」「燃料費」「旅費交通費」などです。経費処理するとき、一度「旅費交通費」と決めて処理をしたのなら、そのあとも「旅費交通費」で処理をしましょう。一度決めた勘定科目は統一します。
勘定科目ごとに特徴があるのでご紹介します。どの勘定科目を選んだら、会社に適切かわかりますよ。
ガソリン代を勘定科目の「車両費」として処理した場合、社有車にかかる費用が一括でわかるようになりますが、ガソリン代のみを管理しにくくなります。
燃料費を選んだ場合、ガソリン代にいくらかかったかは把握しやすくなるでしょう。
旅費交通費を選んだ場合は、社有車のメンテナンスとガソリン代をわけて管理できますが、出張が多い会社では、ガソリン代を把握するのが難しくなります。
税金
車を所有していると、自動車税や自動車重量税などの税金が課税されます。これらは勘定科目の「租税公課」として経費処理します。
「租税公課」は、経理などの仕事をしてる人以外は、あまり聞きなれない言葉です。ざっと説明しますね。
租税とは、国や地方公共団体に納付する税金です。一例は、以下の通りです。
- 自動車税
- 軽自動車税
- 登録免許税
- 印紙税
- 事業所税
- 固定資産税
公課とは、租税以外に国や地方公共団体が徴収する手数料、罰金、会費などです。一例は、以下の通りです。
- 国や地方公共団体が発行する各種証明書の発行費用
- 商工会などの会費
- 交通局前反則金
- 延滞税などの罰金
法人税や所得税などと違い、自動車税や自動車重量税などは「租税公課」で経費処理ができます。
保険料
自動車保険は、2種類あります。
- 自賠責保険
- 任意保険
車に乗るためには、一般的に自賠責保険と任意保険の両方に加入します。
自賠責保険は、「保険料」または「車両費」で会計処理します。自賠責保険は法律で義務付けられていますし、保険期間が最長でも3年で保険料も高額ではないため、支払いをしたときに全額を経費処理にすることが可能です。
任意保険も、契約期間が1年以内であれば、「保険料」または「車両費」で経費処理します。契約期間が1年であれば、翌年度まで契約期間がまたがっても、支払日に全額を経費として処理が可能です。
しかし、任意保険の契約期間が1年を超える保険料を一括で支払った場合、「長期前払費用」に計上し、経過期間ごとに按分してから、経費処理を行ってください。
車検・洗車・修理費用
車検費用を経費計上するのに利用される勘定科目は、「租税公課」「保険料」「車両費」「修繕費」などです。車検費用の勘定科目は項目ごとに分類が必要です。一つずつ説明していきますね。
まず、車検費用の内訳を見てみましょう。
車検のとき一緒に支払う「自動車重量税」と「印紙代(検査手数料)」の勘定科目は「租税公課」になります。
車検の際に支払う「自賠責保険料」の勘定科目は「保険料」です。自賠責保険は、一般的に加入が強制されています。
「車検基本料」や「法定点検料」、「修理費用」、「部品代」、「整備費用」、「洗車」など維持管理に必要なものは、勘定科目の「車両費」または「修繕費」になります。
駐車場代
社有車の駐車場代を経費処理するのに利用される勘定科目は「地代家賃」または「旅費交通費」です。
社有車のために、月極めの駐車場を契約することもあるでしょう。月極めの駐車場代の支払いは、「地代家賃」で会計処理をします。営業の打ち合わせなどで、コインパーキングを使う場合は、「旅費交通費」で経費処理をしてください。
基本的に、駐車場代は「地代家賃」または「旅費交通費」で経費処理しますが、使用場面に応じてほかの勘定科目を使うことがあります。
たとえば、社員旅行のとき支払った駐車場代であれば「福利厚生費」、取引先との接待のときに支払った駐車場代であれば「交際費」、社員研修のときに支払った駐車場代であれば「研修費」になります。
駐車場代は目的によって使いわけてください。
社用車を購入するなら「4年以上の中古車 」
普通自動車の中古車の社用車を購入するなら、4年以上の中古車がおすすめです。
一般事業者の場合、新車の耐用年数は6年、中古車の耐用年数は経過した年数で計算します。4年落ちの車の耐用年数の計算は、6-4+2×0.2で耐用年数は2年になります。
※3年10か月以上経過した車から耐用年数は2年。
耐用年数2年の場合、定率法の償却率は1.000になります。1年間で全額を減価償却費で経費として計上ができるのです。
また、この車の使用頻度が減ることもありえます。維持費用も考えてもう使わないとなれば、売却もありえるでしょう。取得額とそう変わらない金額で車が売却できた場合、売却益が生まれることがあります。
値崩れしない メーカーを選ぶことも大切
社用車を選ぶには、車種の特徴を理解して、業務に合った最適な車を選ぶことが大切です。
営業であれば小回りがきく、納品も多々あるのなら、ライトバンなどのように荷物が多く積めるなど業務に合った車を選びますが、もう一つ気にかけてほしいことがあります。それは値崩れしない車です。
「使わなくなったら、維持費もかかるし売りたい」と考えているのならば、中古車市場で需要のある車を選択するとよいでしょう。需要の高い車は、価値を維持しやすく、値崩れしにくい傾向にあります。
車の選択は、予算、機能、走行距離などを考えなくてはなりません。とくに売却も視野にいれているのであれば、購入価格が多少予算を上回っていても、買取価格が高ければ結果的にお得になります。ぜひ、需要のある中古車を選択しましょう。
社用車を購入するのとリースどっちが良い?
購入とリースでは、経費処理方法や所有権などが異なります。どのように使用するのかにより、購入かリースかを選ぶとよいでしょう。
購入は、自由に売却や処分ができますが、車検や保険手続きなど手間がかかります。固定資産なので、減価償却など経費処理も増えます。しかしながらリースと異なり、走行距離が長くなったりしても追加料金は発生しません。
それに比べリースは、車検や保険料などは、リース代とひとまとめになっています。所有権がリース会社なので、税金など法律上支払わなくてはならないものは、リース会社が支払います。リース代は毎月定額で経費として計上できます。リースは、中途解約すると違約金を請求される場合もありますので注意しましょう。走行距離に制限があり、追加費用で請求されることもあります。
CPAラーニングなら簿記講座や実務講座など800本以上の講義が無料で見放題
経理業務は全体像がわかればもっと効率的に!
経理の仕事は、伝票起票や経費精算など細かな日次業務が多く、全体像を見失いがちです。
その結果「何のためにこの業務をしているんだろう」とモチベーションの低下に繋がることもあります。
そのため、経理の仕事は特に、常に全体像を捉えながら進めていかなければなりません。
イメージとしては日々の仕事を「点」ではなく「線」として捉えること。
毎日の仕訳にしても、何となく取引金額を入力するのではなく、自社や取引先の財政状態や経営成績を念頭に置いたうえで入力することが大切です。
こうすることで、自社が取引先・借入先に対して、適切に支払いができるのか、あるいは取引先・貸付先から適切に入金が行われるのかを、仕訳と同時に予測できます。
極端な例ですが、こうした「意識的」な仕訳を繰り返すことで、会社の経営状況が見えてきて、黒字倒産を未然に防ぐといったことも。
また、全体像を把握できていると、業務の優先順位を自ずとつけられるようになるので、仕事のスピードがぐっとあがっていきます。
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まとめ
業務に使っている社用車は経費で処理できることが分かりました。
社用車を購入するのか、リースにするのかで経理処理がかわります。さらに購入する社用車が、新車か中古車かによっても減価償却費が異なります。
社用車を経費処理するときには、細かな条件により処理方法が異なってきますので、間違えないように気をつけてください。
また、社用車に付随する費用ですが、会社により勘定科目が異なる場合も出てきます。一度決めて使った勘定科目は、統一して使うようにしましょう。
以上が、社用車の経費処理の際に気をつけるポイントです。