本や書籍を購入した場合、「この本は、経費になるんだろうか?」と悩まれる人もいるでしょう。一般的に、本や書籍の購入費用は「新聞図書費」という勘定科目で経費計上します。
本や書籍には、ビジネス書や手引き書、参考書、雑誌、マンガ、趣味関連の本などさまざまあります。すべての本や書籍が経費計上できるわけではありません。
また、用途により「新聞図書費」でない勘定科目を使用する場合もあります。仕訳を切る方法や知っておくべき注意点などわかりやすく解説します。
経費としての本や書籍の計上は、企業の知識向上や業務改善に貢献する重要な要素です。正確な会計処理と適切な計上方法を守りながら、有益な書籍の活用を促進しましょう。
目次
本や書籍の勘定科目は?
企業では、従業員の新しい知識の吸収や業務の改善目的で、本や書籍を購入することがあります。業務に関連する本や書籍の購入費用は、経費に計上が可能です。
一般的に、本や書籍の経費計上には「新聞図書費」という勘定科目が使用されます。新聞図書費は、企業が購入した本や書籍、出版物に関連する費用を記録するために使われます。
2023年10月からインボイス制度が始まります。インボイス制度に関する手引書や関連書籍を購入した場合は、「新聞図書費」として経費を計上してください。
本や書籍の購入費用を「新聞図書費」として経費に計上する際には、いくつかの注意点があります。
まず、購入した書籍が事業に直接関連していることを明確にし、業務改善や従業員の教育・研修などに役立つものであることが重要です。
書籍の購入に関する領収書や請求書を適切に保管し、将来の監査や税務調査に備える必要があります。
【パターン別】本や書籍の仕訳を切る方法
本や書籍を仕訳する方法は、企業ごとに適切な勘定科目を選択する必要があります。
勘定科目は企業ごとに異なる場合があります。これは、法律で勘定科目の名称が明確に定められていないため、企業内で独自のルールを設定しているからです。
勘定科目を設定したら、継続性の原則に基づき同じ勘定科目を毎回使用するようにしてください。
一般的には「新聞図書費」という勘定科目がよく使用されますが、ほかにも「研修費」や「福利厚生費」として仕訳される場合もあります。
また、百科事典などの全巻セットを10万円以上で購入した場合は「減価償却資産」として扱うことがあるでしょう。この場合、「減価償却費」として経費を計上する必要が生じます。
新聞図書費で仕訳を切る場合
「新聞図書費」は企業の経費として業務に必要な情報収集のために購入される本や書籍を計上する際に、一般的に使用される勘定科目です。
具体的には、新聞、地図、辞書、専門書、ビジネス書籍などが該当します。新聞の電子版の有料サイトの購読料も「新聞図書費」として経費計上することができます。
以下に、「新聞図書費」を用いた本や書籍の仕訳方法を説明します。本や書籍の購入時には、次のような仕訳を行います。
新聞図書費 4,400円 | 現金 4,400円 |
この仕訳により、「新聞図書費」という勘定科目で経費を計上します。現金で支払った場合は「現金」が相手方です。
「新聞図書費」の仕訳は、本や書籍の購入時に行われますが、用途が明確であることが求められます。「新聞図書費」は経費として計上されるため、利益に影響します。ただし、購入した本や書籍が業務活動に直接関連している場合に限り「新聞図書費」として計上しましょう。
なお、「新聞図書費」の仕訳は本や書籍の購入だけに限らず、定期購読料なども含まれます。
「新聞図書費」は、企業が情報収集や業務に必要な知識の獲得を目的として本や書籍などを購入した場合に使用される勘定科目です。業務に関連しない場合には、使用できません。正確な仕訳が行われることにより、企業の財務情報が適切に反映されます。
研修費で仕訳を切る場合
本や書籍を購入した場合、「研修費」で仕訳を切ることもあります。「研修費」は、従業員などが研修を受けたときに発生した費用を仕訳する際に使用します。
研修のために人数分の資料として書籍を購入した場合に、「研修費」として経費を計上することが可能です。
たとえば、従業員10人が参加する研修で、各人に1,000円の書籍を配布する場合、以下のような仕訳が行われます。
研修費 10,000 円 | 現金または未払金 10,000円 |
この仕訳により「研修費」という勘定科目に経費が計上されます。研修に関連して購入された書籍の費用が明確になり、経費として適切に処理されます。
「研修費」の仕訳により、企業は研修に必要な書籍の購入費用を正確に管理し、研修活動の経費を適切に反映することができるのです。
研修ですが、企業の業務にその研修が必要であるかないかは、重要な要件です。 主な要件を3つあげてみました。
- 職務に直接必要な技術もしくは知識を習得の研修
- 免許もしくは資格を習得させるための研修
- 大学などにおける職務に関連する聴講
職務に関係ない研修では、経費の計上は、難しいでしょう。
福利厚生費で仕訳を切る場合
本や書籍を購入した場合、時には「福利厚生費」として仕訳を切ることもあります。
「福利厚生費」とは、企業が給与以外に社員のために支出する費用であり、業務には直接関係しない費用が該当します。社員旅行費やレクリエーション費、健康診断費用などが挙げられます。業務とは直接関係しない費用であっても、「福利厚生費」として経費計上することができます。
たとえば、業務に関係しない本や雑誌、マンガなどを購入し、休憩室に置いたとしましょう。以下のような仕訳が行われます。
福利厚生費 3,000円 | 現金 3,000円 |
従業員に図書券の配布は避けてください。図書券や金券など換金性の高い支給物を提供した場合、それを福利厚生費として認めることが困難になるおそれが高まります。換金性の高い支給物は従業員の給与とみなされ、課税対象となるので注意が必要です。
「福利厚生費」で書籍を購入するメリットは、個々のスキルアップによる生産性の向上などが考えられます。
従業員一人ひとりの知識が充実することで、仕事の質が高まり、生産性が向上します。従業員のモチベーションを向上させる自己啓発本やビジネス書には悩みや問題解決につながる多種多様な本があります。個々の成長のみで終わらず、企業全体の業績アップや成長につながることでしょう。
本に関する勘定科目の豆知識
前の章で述べたように、企業が 本や書籍を経費として計上する際、業務に必要な場合には 「新聞図書費」「研修費」が使用されます。
しかし、本や書籍は単に業務に必要なだけでなく、従業員の知識やスキルの向上、そして福利厚生にも貢献します。「新聞図書費」は企業が情報収集や業務に必要な知識の獲得を目的として購入する本や書籍に関連する勘定科目です。一方、研修費は従業員が研修を受ける際に発生する費用を計上するために使用されます。
本や書籍を従業員のために購入される場合、たとえば休憩室に置くための書籍など、従業員の福利厚生に関連します。このような場合には「福利厚生費」という勘定科目が使用されます。
「新聞図書費」について、もう少し詳しく説明しましょう。
新聞図書費が基本
本や書籍を購入した場合、「新聞図書費」を使用するのが一般的です。
経営や業務に関わる本や書籍の購入かどうかが重要です。業務で使用する主な書籍の種類は、以下の通りです。
- 新聞
- メールマガジン
- 有料サイトの購読料
- 専門書
- 業界紙
これらは経理や法務、人事などのさまざまな部門に関連しています。たとえば、税務や会計の法規制や手続きに関する書籍、労働法や労働基準についての情報を提供する書籍などが該当します。
最近では、インボイス制度に関する書籍を購入する企業も多いのではないでしょうか。
これらの書籍は、最新の情報や業界の動向を把握するために不可欠です。
さらに、従業員の教育やスキルアップのために必要な書籍も「新聞図書費」に含まれます。組織内でのトレーニングや専門的な研修プログラムの一巻として購入される書籍は、事業の成長と能力向上につながるでしょう。
税務調査では、内訳を詳しく尋ねられることもありますので、購入の目的や利用方法を明確に記録しておくことも重要です。
すべてを新聞図書費にする訳ではない
本や書籍をすべて「新聞図書費」に計上するわけではありません。以下の理由があります。
- 用途の関連性
- 企業のルール
- 研修費
- 福利厚生費
- 減価償却
本や書籍の購入が業務に直接関連している場合に、「新聞図書費」として計上が可能です。業務に関連しない本や書籍は「新聞図書費」として計上することはできません。その場合、他の勘定科目を使用する必要があります。
勘定科目は企業ごとに設定されるため、「新聞図書費」の勘定科目が設定されてない企業も存在するでしょう。企業は、自身の業種や業務内容に合わせて、適切な勘定科目を定めています。
企業が従業員の研修に関連して本や書籍を購入した場合は、「研修費」として計上することがあります。
福利厚生の一環として、休憩室に本や書籍を置く場合や、従業員の読書習慣を促進するために本や書籍を提供する場合は、「福利厚生費」として計上されることがあります。
本や書籍を購入することが少ない場合「新聞図書費」の勘定科目を設定していない企業も存在します。この場合は、「雑費」で計上するとよいでしょう。
高額な本や、百科辞典などのように全巻セットの購入など、特定の資産として扱われる場合があります。これらは減価償却資産として取り扱われ、一定期間にわたって「減価償却費」として計上されます。
社員が自費で購入した場合は控除の対象になることがある
自費で本や書籍を購入した場合、特定支出控除の対象となることがあります。特定支出控除は、会社員などが業務に関連する支出を自己負担した場合に受けられる控除です。
特定支出に該当する費用は、以下の通りです。
- 通勤費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費
勤務必要経費には、専門書や専門紙などの購入費用として合計65万円まで控除の対象となることが記載されています。詳細な条件や制限事項については、国税庁のWebサイトを参照してください。
特定支出控除を受けるには、確定申告が必要です。その際に特定支出に関する証明書が必要となりますので、勤務先に依頼して証明書を取得してください。購入した本や書籍の領収書もしっかりと保存しておきましょう。
新聞図書費で仕訳を切る際の注意点
本や書籍を1冊ずつ購入するのではなく定期購読することもあるでしょう。経理処理はどのように行うのでしょうか?月々、銀行口座から引き落とされたり、一定期間の購読料を一括で支払ったりと契約内容により異なります。一定期間の購読料を一括で支払った場合、前払費用を考慮する必要もでてきます。
また、新聞の定期購読料には軽減税率が適用されるため、注意が必要です。「新聞図書費」で仕訳を切る際の注意点を説明しましょう。
定期購読の場合はサービス利用開始で費用が発生する
定期購読の場合、サービス利用開始時に全額を「新聞図書費」として計上します。期末決算時には、翌年度の定期購読費用を「前払費用」という資産科目に計上し、翌年度になったら「新聞図書費」に振替を行ってください。
具体的な例をあげてみましょう。
3月決算の企業で、10月に年間購読料として60,000円を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
新聞図書費 60,000円 | 現金 60,000円 |
3月の決算時には、翌年度の4月から9月分の購読料30,000円を「前払費用」として翌年度に振替えます。
前払費用 30,000円 | 新聞図書費 30,000円 |
このようにすることで、複数年度にわたる定期購読費用を適切に処理することができます。定期購読の契約内容や支払いスケジュールによっては、さらなる詳細な処理が必要な場合もあります。
サービス利用期間が複数年度にわたる場合は、注意して仕訳を行うようにしましょう。
週2回以上発行される新聞は軽減税率が適用される
軽減税率の適用対象となる「1週に2回以上発行する新聞」とは、通常の発行予定が週2回以上とされている新聞です。
ただし、国民の祝日や通常の新聞休刊日によって1週に1回以下の発行となる週があっても「1週に2回以上発行する新聞」に該当し、軽減税率の対象になります。判断が難しい場合は、領収書または発行会社に確認してください。
電子版の新聞は、軽減税率が適用されません。同じ内容でも、紙の新聞と電子版の新聞では、消費税が異なります。
「1週に2回以上発行する新聞」ですが、個人事業主やその家族だけが閲覧する新聞や直接業務に関係のない新聞は、経費として計上することはできません。
経理担当者は、軽減税率の適用条件や対象商品について常に最新の情報を確認し、正確な税率を適用するように注意してください。国税庁のガイドラインなどを活用することは重要です。
適切な経理処理により、税務調査においてスムーズに対応することができます。
電子書籍も新聞図書費で処理する
最近は、AmazonのKindleや楽天Koboなどを通して、業務に関連した本や書籍、雑誌などをダウンロードして購入する人も増えています。
この場合、それが印刷物ではなく電子書籍であっても、書籍としての性質は変わりません。そのため、これらの電子書籍の購入に関しては「新聞図書費」という勘定科目で処理します。購入時に経費として計上しましょう。
また、雑誌のマガジンやその他の雑誌の読み放題サービスなども、業務に直接関連している場合にのみ「新聞図書費」で処理してください。業務に関連する雑誌を大量に購入する事業者にとっては、紙の雑誌を書店で個別に購入するよりも、月額の定額払いで雑誌読み放題サービスを利用するほうがコストの面でお得になるでしょう。
重要なポイントは、電子書籍や雑誌などが業務に関連しているかどうかになります。「新聞図書費」で経費計上するには、明確に判断して購入してください。
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まとめ
本や書籍、新聞など、どの勘定科目を使用するのか解説しました。同事業に必要な情報収集のために購入される内容の新聞でも税率が異なったり、用途により勘定科目が異なったりすることで、経理処理を正確に行うことの重要性がわかりました。