目次
1. はじめに
「経理」の仕事については、【初心者経理】経理の仕事内容と年間スケジュールをわかりやすく解説!! 現場に配属される前にイメージを持ちましょう!という記事でご紹介させていただきました。
経理業務は、日次・月次・年次・都度の大きく4つに分けられるとお話しいたしました。
今回は日次業務のうち、勤怠管理・有給休暇管理について見ていきたいと思います。
2. 本論
はじめに労務管理とは、従業員がその能力を会社で最大限発揮できるように環境整備・統制・運用していくことだと考えます。
更に労務管理には、以下の3つのことが必要です。
①労働環境の整備
②勤怠管理
③有給休暇管理
それぞれ以降で見ていきましょう。
①.労働環境の整備
労働環境の整備は以下の3つに分けることができます。
(1)就業規則の整備
はじめに就業規則とは、従業員の労働条件や待遇などの会社のルールを定めたものです。
就業規則は、常時10人以上の従業員(契約社員・パート・アルバイト含む)がいる事業場では作成しなくてはいけません。
就業規則は、厚生労働省HPによると下記のような内容を記入することになっています。
また、従業員の代表者(従業員の過半数が代表と認めたもの)が就業規則に対する意見書を作成する必要があります。
その就業規則に意見書を添付したものを労働基準監督署へ提出します。
そして、従業員への配布や事業場への備え付けなどを行い労働者への周知をします。
(2)法定労働時間・休日の理解
法定労働時間・休日とは、労働基準法で定められた労働時間の上限と最低限の休日のことです。
労働基準法第32条には、労働時間について次のように定められています。
・使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
・使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日ついて8時間を超えて、労働させてはならない。
また、労働基準法第35条には、休日について次のように定められています。
・使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
以下の場合は、いずれも労働基準法に規定されている範囲内のため、認められている例です。
しかし、皆さんの中には「自分は、法定労働時間以上や法定休日に労働している」という方も少なくないのではないでしょうか。
そのような方がお勤めの会社は、法律違反をしているわけではなく、以降の章で説明する36協定を締結しているからだと考えられます。
(3)36協定の締結
◆事前届出(一般)
法定労働時間以上や法定休日に労働させる場合、事前に従業員の代表と36協定を締結する必要があります。
ここで、「36協定」とは労働基準法の第36条に規定されていることが名前の由来になっています。
36協定届を厚生労働省のHPよりDLし、労働基準監督署へ届出をすることで行えます。
なお、36許定届を提出したからといって働かせ放題というわけではありません。従業員を守るための法律が規定されています。
具体的には、協定届を提出したとしても法定時間外の労働は月45時間、年360時間までとされています。
◆事前届出(特別条項)
次に、特別条項付き36協定届を提出した場合、以下のように規制が一部緩和されます。
・年6回までなら月45時間超過可
・時間外労働:年720時間以内
・法定休日+時間外労働:月100時間以内
・法定休日+時間外労働:2〜6か月平均80時間以内
◆割増賃金
法定労働時間以上の労働や法定休日での労働時間などは割増賃金が必要です。
賃金が割増となる割合は条件によって異なります。
具体的には以下の4つに分けられます。
・法定時間外労働:25%増の割増賃金
・法定休日労働:35%増の割増賃金
・深夜労働(22時〜):25%増の割増賃金
・1か月60時間超の時間外労働:50%以上の割増率計算する
法定時間外労働、深夜労働、法定休日労働、法定休日労働+αの場合で賃金が異なります。
例えば、午前9時始業、午後6時終業の会社で時給が1,000円の人が勤務している場合は以下のようになります。
②.勤怠管理
勤怠管理とは、従業員の健康と安全に配慮し、36協定の遵守及び適切な賃金の支払いのため、従業員の労働時間を正確に管理することです。
勤怠管理は以下の2つに分けることができます。
(1)勤怠管理の方法
労働日ごとに始業時刻と終業時刻を記録して、実労働時間を確認するための方法としては、大きく次の4つに分けられると思います。
①オフィスビルの入退館記録
②パソコンのログオン時間
③タイムカード記録
④勤怠管理システム
大手企業だと①②④などを連携させて正確に労働時間を計ることを目指している会社もあります。
(2)賃金台帳の作成
労働基準法第108条で、従業員の給与の支払い状況の管理をするために、使用者は適切な賃金台帳を調整しなければならない、と規定されています。
原則5年(経過措置で当分の間は3年)の期間保存しなければならないこと、一定の必要記載事項が定められています。
③.有給休暇管理
有給休暇管理とは、一定の要件を満たす場合に、法律で定める年次有給休暇を付与するための管理のことです。
有給休暇管理は以下の2つに分けることができます。
(1)有給休暇
・継続勤務要件:雇用から6か月間継続して勤務していること
・出勤率:継続勤務要件の期間の全労働日の80%以上の出勤をしていること
上記の要件を満たした場合、10日以上の有給休暇を付与し、年5回以上取得させる必要があります。
また、1年毎に1日ずつ増やすようにし、3年目以降は2日ずつ付与日数が増え、最大で20日間付与されます。
なお、法律で定めるミニマムの条件であるため会社によって有給休暇のルールは変わってきます。
また、その他の留意事項として次のようなものがあります。
【原則】
・労働者が指定した時季に取得させる
・繰越は2年(時効)で、最大40日繰越が可能
・従業員の同意があっても買取はできない
【例外】
・指定された有給休暇日に事業の正常な運営を妨げるなどの特別な理由がある場合には指定された休暇日を変更できる
・時効や退職などで消滅する分は有給休暇の買取可能
(2)年次有給休暇管理簿
年次有給休暇管理簿の作成が義務付けられています。
労働基準監督者の調査の際に、有給休暇をきちんと使わせていることの証明のため、以下の必要記載項目を記載し3年間保存する必要があります。
①基準日(労働者に年次有給休暇を付与した日)
②日数(基準より労働者が1年間で取得した有給休暇の日数のこと)
③時季(実際に年次有給休暇を取得した日)
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4.まとめ
いかがでしたか。
勤怠管理・有給休暇管理について理解は深まりましたか。
健康第一ですが、きちんと管理しないと従業員の健康を守ることができません。
経営者の方は注意して、健康と安全を守って欲しいです。
経理はその管理をサポートすることが大切です。
仮に従業員が働かせ過ぎてしまった場合は、適切な賃金を支払うようにしましょう。
このコラムは、実務コース 経理実務 入門 # 05 日次業務 – 勤怠管理・有給休暇管理を元に作成しています。
より詳細が気になるという方や、文字より音声の方が理解が深まるという方は、ぜひ本編もご覧ください。
以上、実務コース 経理実務コース # 05 日次業務 – 勤怠管理・有給休暇管理でした。
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5.勤怠管理・有給休暇管理に関してよくある質問
法定労働時間とは何ですか?
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限ことです。
労働基準法第32条には、労働時間について次のように定められています。
・使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
・使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日ついて8時間を超えて、労働させてはならない。
36協定とは何ですか?
「36協定」とは、法定労働時間以上や法定休日に労働させる場合に事前に従業員の代表と締結する必要のある協定のことで、労働基準法の第36条に規定されています。
なお、36協定届を提出したとしても法定時間外の労働は月45時間、年360時間までとされています。
有給休暇はどのような場合に取得できますか?
雇用から6か月間継続して勤務し、かつ、当該期間の全労働日の80%以上の出勤をしている場合、10日以上の有給休暇を付与し、年5回以上取得させる必要があります。