財務会計の利害調整機能とは?情報提供機能についても解説!

財務諸表の画像です

本記事では、財務会計の役割である利害調整機能と情報提供機能についてわかりやすく解説します。

財務会計は、企業外部のステイクホルダーに対して説明を提供するのが目的の会計です。

財務会計には、利害調整機能と情報提供機能(意思決定支援機能)があり、これが社会のなかでどのように役立っているのかを本記事では明らかにします。

財務会計とは

財務会計とは企業の経済活動を数値で表現し、外部のステイクホルダー(利害関係者)に対して、情報を提供するシステムのことです。

企業の資産、負債、純資産の状況や収益・費用に関する情報を、決算書としてまとめて公表します。

主要な決算書としては、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」があり、これらは一般に財務諸表と呼ばれています。

財務諸表をステイクホルダーに公開することで、企業に投資をしている投資家であれば、会社の財政状態や経営成績を把握が可能です。

企業と関わるステイクホルダーは、それぞれ利害を持って企業と関わっています。

たとえば、会社の株式を保有している投資家は、会社の株価や配当に関心を持っているかもしれません。一方、会社にお金を貸している銀行であれば、貸しているお金がきちんと返済されるかどうかに関心を持っているでしょう。

企業が多くの株式を投資家に買ってもらいたいからといって、企業が配当を多く行えば、会社からお金が流出します。そうなれば、資金を貸している銀行は貸したお金が返済されるかどうか心配になるはずです。

こうした問題を財務会計は解決します。具体的にどのように解決しているかを、以下では解説します。

情報提供機能

財務会計は、ステイクホルダーに対して情報を提供することで、会社が今どのような状況にあるかを明らかにしています。一般に、財務会計の情報提供機能と呼ばれています。

財務会計は、企業が行うさまざまな経済活動を数値化し、その結果を決算書として整理・公表することで、株主や債権者、投資家といった外部の利害関係者に対して、事業の健全性や収益性、資金の流れなどを透明に伝える役割を果たします。

投資家がある企業の株を購入する際は、企業の過去の収益状況や資産の状態を確認するために、貸借対照表や損益計算書を参照します。

投資家は賃借対照表や損益決算書を参照することで、会社の状況を把握することができます。財務会計を把握した結果、投資に値しないと判断すれば、投資家は企業に対する投資を控えるでしょう。より、価値が高い会社への投資に切り替えるはずです。

このように、財務会計の情報提供機能が効果的に働くことによって、ステイクホルダーが合理的に意思決定ができるようになっています。

利害調整機能

財務会計が担っているのは、情報提供機能だけではありません。情報提供機能が働くと同時に、利害調整機能も機能します。

利害調整機能とは、企業の経営活動に関わる多様なステイクホルダーの間で、情報の非対称性を縮小し、それぞれのステイクホルダー間の利害を調整する役割のことをいいます。

利害調整機能は、企業経営の透明性を高めるとともに、持続的な企業成長を支えるうえで重要な機能です。

株式に投資を行っている人は、投資した会社がどれくらい配当を行うのかを気にしています。つまり、会社に対して配当が欲しいという利害を持っているわけです。

一方、資金を提供している銀行は、会社が資金を返済できるかどうかを気にしています。つまり、会社に対して返済できるかどうか利害(関心)を持っているわけです。

会社の経営者であれば、会社の業績を向上させて、その分経営者報酬を高めようと考えている(利害をもっている)可能性があります。

ほかにも、国や地方自治体は、法人税などの税金を企業から公平に徴収する利害(関心)を持っていると考えられるでしょう。

このように、会社と関わる利害関係者(ステイクホルダー)は、それぞれがそれぞれの利害を持っています。

しかし、すべての利害を同時にかなえることは困難です。配当を行いすぎれば、銀行への資金の返済可能性は低くなりますし、経営者に報酬を支払いすぎれば、それだけ税収は減ることになります。

こうした利害の対立を調整する役割を担っているのが財務会計です。

利害調整機能に関わる団体について

財務会計は、企業活動に関与するさまざまな団体の間での情報の透明性を保ち、その利害を調整する役割を果たしています。

、企業の持続的な発展をサポートするとともに、ステイクホルダーの利害を調和するサポートの役割です。

以下では、財務会計の利害調整機能と関わる団体(主体)について解説していきます。

株主と経営者

株主と経営者は、企業の運営に関して異なる利害を持っています。

株主は、投資として企業に資金を提供する者として、投資に対する十分なリターンを期待しています。

自身の投資が安全であるか、企業が持続的に成長していく可能性があるかを評価するために、企業からの情報開示を強く望んでいます。

このため、透明性の高い情報提供が必要です。

一方で、経営者は日々のビジネス運営において企業の成長を追求します。

新しい事業展開、M&A、リスク管理など、さまざまな戦略的判断が含まれます。

経営者はしばしば中長期的な視点での成長を重視し、短期的な収益よりも企業の将来価値の最大化を目指して活動することがあるのです。

このときに財務会計の役割が重要になります。

財務会計は、企業の経営状況や財務状態を客観的かつ透明に示す情報を提供するためのツールとして機能します。

たとえば、経営者が新しい事業展開を提案したとしましょう。

事業が将来的にどれだけのキャッシュフローを生み出す可能性があるのか、リスクはどれほどかを示すために、財務会計情報が利用されます。

財務会計は、株主と経営者の間の情報の非対称性を解消し、双方の利害を調整することが可能です。

株主と債権者

株主と債権者は、企業の資金供給者としての立場は共有しているものの、それぞれが持つ利害は異なります。

株主は企業の所有者として、企業の成長と利益の最大化を目指します。企業が高いリスクを取って新しい事業や投資を行い、結果として高いリターンを得ることを多くの株主が望むでしょう。

なぜなら、株主のリターンは企業の業績に直結しているからです。企業が大きな利益を上げると、配当や株価上昇という形で株主に還元されます。

一方、債権者は、貸し付けた資金の安全性と、返済を確実に受け取ることを最優先に考えます。

高いリスクを取る企業活動は、返済能力に影響を及ぼす恐れがあるため、債権者にとっては好ましくない場合があります。

このような株主と債権者の利害の違いや対立が生じる中で、財務会計は重要です。

財務会計によって公表される財務諸表は、企業の財務状態や業績を明確に示すものです。債権者は財務諸表をもとに、企業の信用リスクを評価し、株主は投資判断を下します。

たとえば、負債比率や流動比率などの指標は、企業の財務健全性や債務返済能力を示すものとして、債権者にとっては重要な情報です。

一方、収益性を示す指標や成長性を示す指標は、株主にとっての判断材料となります。

財務会計は、株主と債権者がそれぞれの立場から必要とする情報を提供し、双方の利害を調整する中立的な役割を果たしています。

企業と国

企業と国の間の関係は、経済発展と社会の公共の利益をバランスよくさせるためのものであり、この2つの団体(主体)は異なる利害を持っています。

企業は基本的に、「利益の最大化」「競争力の強化」「持続可能な成長」を目指します。

これにより、株主へのリターンを確保し、事業の拡大や新たな投資機会の追求が可能。となるのです。

企業は、税負担の軽減や規制の緩和など、ビジネスを円滑に行うための条件を求めることが一般的です。

一方、国や政府は、国全体の経済の安定と成長、公共の福祉、国民全体の利益を守るという役割を持っています。

これには、適切な税収を確保し、公共の利益を守るための規制の施行が含まれます。

企業の不正行為や環境問題などの社会的問題への対応も、国の役割として期待されます。

このような背景の中で企業と国の間には、税制、規制、助成金や補助金の政策など、さまざまな項目に関する利害の対立が生じるでしょう。

そのようなとき財務会計は、企業と国の利害の調整や対立の解消に役立ちます。

企業が公正かつ透明に自らの経済活動や財務状態を報告することにより、国は企業の健全性や納税の正確性を監督し、適切な政策判断を下すことができます。

具体的な例をあげるとすると、企業が適切に利益を報告することで、国は適切な法人税を徴収することが可能です。

一方で、国が税制のインセンティブを提供することで、企業の投資意欲や研究開発活動を促進することもできます。

これらの情報交換や政策の策定には、財務会計に基づく正確な情報が不可欠であり、財務会計が2つの主体間の利害の調整を行っています。

財務会計というルールの重要性

財務会計というルール(共通基盤)が重要である理由は、財務会計が社会的なインフラとして機能しているからです。

財務会計が社会的なインフラとして機能することの重要性は、基本的な役割や機能からも明白です。

以下では、具体的な理由を明らかにします。

  • 信頼性の向上

企業や組織の財務状況や業績は、多くのステイクホルダー(株主、債権者、従業員、取引先、消費者、政府など)にとって極めて重要な情報です。

財務会計が社会的なインフラとして整備されていることで、情報が一定の基準やルールに従って公正に報告されることが保証され、情報の信頼性が向上します。

  • 透明性の促進

財務会計の情報提供機能により、企業の経済活動や財務状態が明確になり、外部からの監視や評価が容易になります。

投資家は企業の健全性や将来性を評価する際に、財務会計情報を基に判断を下します。この透明性は、企業の誠実な経営を促し、不正やリスクの未然防止にも寄与します。

  • 利害の調整

財務会計が提供する情報は、企業とそのステイクホルダー間の利害の調整に不可欠です。

債権者は企業の債務返済能力を評価するため、財務会計が提供する情報が必要です。同様に、株主は企業の利益の分配や再投資の方針を知るために財務会計情報が必要です。

企業とステイクホルダーが同じ財務会計情報を得ることで、両者の関係は円滑に進行し、経済活動が健全に展開できます。

  • 政策策定の基盤

国や自治体は、財務会計情報を基に、税制改革や産業振興策、規制緩和などの政策を策定します。企業の実態や業界の動向を把握することで、的確な経済政策を実施するための根拠が得られます。

これらの点から、財務会計が社会的なインフラとして確立されていることは、経済活動の健全性や持続性、さらには社会全体の公共の利益の確保にとって極めて重要です。

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まとめ

財務会計は、企業の経済活動を数値的に捉え、その成果や状態を外部の関係者に伝える役割を果たしています。

一つ目の機能は、企業の財務的健全性や業績を財務諸表を通して明示的に示す情報提供機能です。

投資家や債権者は企業の財務状態やパフォーマンスを評価し、適切な経済的決定を下すことが可能となります。

二つ目の機能は、企業とその関係者との間に生じる利益の対立を緩和する利害調整機能です。

これは、透明性の高い情報提供を通じて、企業とステイクホルダーとの信頼関係を構築・維持する役割を果たします。

これらの財務会計の機能を通じて、企業は持続的な成長を目指し、ステイクホルダーとの関係の強化が実現されます。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

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簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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