振込手数料の勘定科目は?仕訳方法や経費にする際の注意点も紹介

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振込手数料の勘定科目や仕訳方法、経費にする際の注意点は、会計処理において重要な要素です。

企業が買掛金を支払ったり、売掛金を受け取ったりすることは日常的に行われています。そのたびに振込手数料は発生します。振込手数料の1回の単価は少額ですが、よく発生する経費なため、総額が大きくなります。振込手数料を正確に計上することは、財務情報の信頼性を確保するために不可欠です。

本記事では、振込手数料の勘定科目として一般的に使用される「支払手数料」について説明します。また、振込手数料を経費として計上する際の注意点も解説。適切な会計処理により、企業の財務状況を正確に把握し、効果的な経営を行うことができます。

振込手数料の勘定科目は「支払手数料」

銀行で振込をするときに発生する振込手数料について、通常は「支払手数料」として会計上の費用として処理されます。企業が取引や支払いを行う際に発生する手数料、発行手数料、代引き手数料、仲介料などが「支払手数料」に仕訳されます。

しかし使用している会計システムによっては、「支払手数料」という勘定科目が設定されていない場合もあるでしょう。支払手数料の金額が少額であり、個別に処理することが煩雑である場合は、「通信費」や「雑費」で処理することもあります。

振込手数料の仕訳方法

振込手数料の仕訳例をあげてみましょう。

銀行から振込手数料が引かれた場合

支払手数料(費用科目)     550円銀行預金(資産科目)      550円

現金で振込手数料を支払った場合

支払手数料(費用科目)     550円現金(資産科目)        550円

「支払手数料」を計上し、資産(銀行預金、現金)が減少します。

自社が負担する場合

振込手数料は、請求書の発行者が負担するのか、請求書を受け取ったほうが負担するのか迷いますよね。トラブルを防ぐためにも、取引を行う前に双方で取り決めしておき、契約書などにどちらが振込手数料を負担するのかを記載しておきましょう。

パターンは以下の2つがあります。

  • 当方負担:請求書を受け取ったほうが振込手数料を負担
  • 先方負担:請求書を発行したほうが振込手数料を負担

請求書を発行して、振込手数料を自社で負担する場合に考えられることは、顧客へのサービス向上です。顧客に利便性を提供して取引や支払いをスムーズにするため、振込手数料を自社で負担します。

顧客にとっては、振込手数料が発生せずにサービスを受けられます。追加の経費が発生しないため、顧客満足度も向上し、継続的な取引にも貢献できるでしょう。

また、商品やサービスの販売価格に振込手数料を含めている場合もあるかもしれません。この場合も、振込手数料は自社が負担します。

自社が振込手数料を負担する場合の仕訳の具体例をあげてみましょう。

100,000円の売掛金の入金がありました。

銀行預金           99,450円売掛金           100,000円
支払手数料           550円

100,000円の買掛金の支払いをしました。

買掛金           100,000円銀行預金          100,550円
支払手数料           550円

相手が負担する場合

振込手数料を相手が負担する場合は、以下のようなメリットが考えられます。

  • コスト削減
  • 収益向上

相手側が振込手数料を負担する場合は、企業としては負担が軽くなります。1回の振込手数料が少額でも長期で契約している場合は、頻繁に振込手数料が発生します。相手が振込手数料を負担してくれれば、コストの削減が可能です。

コストを抑えることができれば、収益の向上に寄与する可能性が高くなります。

民法第484条、第485条の「持参債務の原則」では、振込手数料は債務者である請求書を受け取った側が負担するとされています。先にも述べましたが、取り決めがされている場合には取り決めた通りに行います。

民法 | e-Gov法令検索

相手が振込手数料を負担する場合は、自社には振替手数料がかからないため、支払手数料を計上することはできません。

相手が振込手数料を負担する場合の仕訳の具体例をあげてみましょう。

100,000円の売掛金の入金がありました。

銀行預金          100,000円売掛金           100,000円

100,000円の買掛金の支払いをしました。

買掛金           100,000円銀行預金          100,000円

振込手数料を経費にする際の注意点

振込手数料を経費として計上するには、適切な勘定科目を選択すること。一般的には「支払手数料」が使われていますが、会計システムにより「支払手数料」を設定してない場合もあります。「通信費」や「雑費」で処理しましょう。

振込手数料が発生した日に、経費として計上します。計上する際には、正確な会計記録と詳細情報が必要です。窓口で支払った場合は振込金受領書、ATMで支払った場合はご利用明細表などが発行されます。証拠書類になりますので、保管しておきましょう。

「買掛金」を決済するときは相殺が必要

振込手数料における相殺では、「買掛金」から振込手数料を引いて送金します。

同一企業との取引において「売掛金」「買掛金」の両方がある場合も、相殺が可能です。相殺は、債権と債務を相互に消し合うことです。

具体例をあげて債権と債務を消してみましょう。

A社の売掛金が100,000円、また、A社の買掛金が80,000円あります。

月末の処理は次の通りです。

売掛金               100,000円売上                 100,000円
仕入                 80,000円買掛金             80,000円

支払日に相殺が行われ、処理は次の通りです。

銀行預金           20,000円売掛金           100,000円
買掛金            80,000円

販売手数料と支払手数料は分ける

販売手数料は、代理店や仲介人に対し販売金額に応じて支払う手数料です。販売手数料は売上に直接影響する経費で、販売手数料を支払った場合は、販売に属する経費として 通常は「販売促進費」という勘定科目を使用して計上します。

これに対して「支払手数料」は、売上に直接関係しない経費になります。一般管理費扱いの「支払手数料」と販売費扱いの販売手数料は、きちんと区別して処理しましょう。

販売手数料を受け取る場合は、売上高に対して手数料を受け取ることが一般的です。しかし販売手数料は売上高とは別の収益勘定科目として「販売手数料収益」「手数料収入」などの勘定科目で計上してください。

専門家への報酬は「支払報酬」として計上する

「支払報酬」は、大きく分けると以下の2つの支払いをした場合に使用します。

  • 講演料や翻訳料、原稿料など特定の業務の対価
  • 弁護士や税理士など専門家に支払う報酬

似ている勘定科目に「支払手数料」があります。取引に関する手数料や報酬を支払ったときに使用する勘定科目です。専門家への報酬も「支払手数料」に計上することも可能ですが、会計上は区別して「支払報酬」に計上するほうが一般的でしょう。

注意しなくてはならないポイントは、支払報酬料は源泉徴収の対象になり、支払調書の提出が必要なケースもあります。

弁護士や税理士などに対する報酬、画家や作家に対する画料、原稿料、講演料など、同一人に対する年間支払金額の合計額が50,000円を超える場合、支払調書の提出が必要です。

振込手数料を安くする方法

振込手数料1件の金額は、金融機関や振込する金額にもよりますが数百円と少額です。しかし取引する件数が増えれば、振込手数料の総額も大きくなります。

振込手数料は、一般的に「支払手数料」として経費に計上します。経費が増えれば収益は減少しますので、「振込手数料を少しでも抑えたい」と考えるでしょう。

ここでは、振込手数料が少しでも安くなる方法を3つご紹介しましょう。

インターネットバンキングを利用する

インターネットバンキングを利用すると振込手数料を安くすることができます。インターネットバンキングは、オンライン上で金融取引を行うことができるサービスです。

従来の金融機関との違いは、実店舗が存在しないこと。オンライン上に店舗があり、地代や修繕費、光熱費、人件費などの経費を抑えることができます。そのため、実店舗をもつ金融機関より振込手数料が安く、預金の利息が高いなどとサービスが充実していることが多いでしょう。

インターネットバンキングを利用するメリットは、店舗の窓口まで行かずに振込や記帳などの取引ができるため、経理担当者の時間短縮になります。金融機関への移動中に交通事故に巻き込まれるリスクもありません。安全性の面でも貢献できますね。

当座預金を活用する

当座預金を活用すると振込手数料を削減できます。

当座預金は、企業間の取引において小切手や手形などの決済に使用される口座です。当座預金を利用すると、小切手の引き出しに手数料がかかりません。

また、当座預金を利用した企業間の取引では普通口座への振り込み時に、手数料を削減することができます。

当座預金のメリットは振込手数料の削減だけではありません。もし当座預金の残高が不足している場合でも、限度額内であれば当座貸越という制度を利用することができます。企業が臨時の支払いや資金不足を補填する場合など、短期の資金調達にも活用ができます。当座貸越を利用するには、担保が必要です。

振込口座を同一行同一店舗にする

振込口座を同一行同一店にすることで振込手数料を削減できます。

振込手数料が発生するのは、企業間の取引による支払だけではありません。従業員の給料やボーナスの支払においても、銀行振込が主要な方法となっています。

毎月の給料振込で振込手数料が発生します。ボーナス支給月は、給料振込とボーナスの振込の2回が発生するため、振込手数料が2倍になってしまいます。従業員数が多い企業だと、振込手数料の総額もかなりの額になるでしょう。

振込手数料の単価は金融機関ごとに異なる上、振込金額によっても異なります。振込先の銀行ごとに、振込手数料が設定されています。

同一行同一店への振込手数料は、同一行他支店や他行に比べると安価です。従業員の給料口座を同一行同一店に統一することで、振込手数料の総額を抑えることができるでしょう。

売掛金から振込手数料が引かれて入金されているときの仕訳方法

売掛金が入金されたとき「あれ。ちょっと少ないな」ということがあります。それは、取引相手が振込手数料を、売掛金から差し引いて入金しているからです。

金融機関ごとに振込手数料の単価が異なるため一覧表を作っておくとわかりやすいでしょう。

入金された金額と振込手数料は分けて仕訳をします。支払手数料として経費計上する場合と、振込手数料の金額だけ売上をマイナスする場合の2パターンの説明をします。

支払手数料として仕訳を切る

売掛金から振込手数料が差し引かれて入金された場合、一般的には振込手数料を「支払手数料」に計上し、経費として処理します。

具体的に仕訳してみましょう。

100,000円の売掛金の入金がありました。

銀行預金           99,450円売掛金           100,000円
支払手数料           550円

一般的には「持参債務の原則」に基づき、振込手数料は債務者である請求書を受け取った側が負担するとされています。しかし、実際にはサービス向上などの理由で、債権者のほうが振込手数料を負担している場合が多いのではないでしょうか。

振込手数料を売上のマイナスとして仕訳を切る

売掛金から振込手数料が差し引かれて入金された場合、振込手数料の金額を売上の値引きとして、「売上」の勘定科目に割り当てて仕訳を切ります。

仕訳の具体例をあげてみましょう。

売掛金100,000円に対して99,450円入金がありました。

銀行預金           99,450円売掛金           100,000円
売上              550円

振込手数料を「売上」のマイナスとして仕訳する方法は、消費税の簡易課税を採用している企業にとってメリットがあります。簡易課税では、売上高にみなし仕入率を乗じて消費税を計算するため、消費税の額を少なくすることができます。

振込手数料を「売上」のマイナスとして処理するか、「支払手数料」で処理するかは、企業の判断によります。

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まとめ

経理業務をしていれば、日常茶飯事にでてくる振込手数料のことをご紹介しました。振込手数料1件1件は少額ですが、年間通しての総額は意外に大きな額となります。

振込手数料を少しでも安くする方法や、仕訳方法など実務に生かしていただければ、幸いです。

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