法人税申告書は決算日から2か月以内に税務署へ提出しなくてはなりません。
さまざまな添付書類がある中で、重要な役割を担っている勘定科目内訳明細書。
勘定科目ごとに細かく記載内容が決められているため、難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。
勘定科目内訳明細書の書き方を、注意点も含めてくわしく解説します。
目次
勘定科目内訳明細書とは
勘定科目内訳明細書は、法人税申告書を提出する際に添付が必要な書類の一つ。
企業は法人税申告書を決算日から2か月以内に税務署に提出する義務があります。
税務署は勘定科目内訳明細書を見て、企業の財産や取引の状況を確認しています。
基本的には、自社の経理担当や経営幹部が作成する勘定科目内訳明細書ですが、税理士が代行で作成するケースも。
勘定科目内訳明細書は、法人税申告書のほかに資金調達を行うときにも金融機関への提出が必要です。
「総勘定元帳と同じなのでは?」と思った人もいるかもしれませんが、日々の取引を勘定科目ごとに記録するのが総勘定元帳。
一方、決算書類である貸借対照表および損益計算書を基に、各勘定科目の残高や内容を確認しながら、期末残高の内訳をまとめたのが勘定科目内訳明細書です。
勘定科目内訳明細書には何を記載する?
勘定科目内訳明細書は、16種類に分類されています。
すべてを作成する義務はなく、資産と負債科目は、期末に残高が残っている勘定科目のみで問題ありません。
損益科目では、役員報酬や人件費など特定の科目で、内訳明細書の作成が必要です。
記載する内容は勘定科目によって異なるため、くわしくは次の項目で確認していきましょう。
勘定科目内訳書の書き方
勘定科目内訳書は、必ず国税庁が公表している様式で提出しなくてはならないと決まっているわけではありません。
必要事項が記載してあれば、独自のフォームでもOKです。
また、国税庁のCSV提出用テンプレートを活用しても構いません。
勘定科目ごとに、勘定科目内訳書の書き方をご紹介します。
預貯金等の内訳書
預貯金等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 金融機関名
- 種類
- 口座番号
- 期末残高
- 摘要
国税庁の記載方法には、期末残高を入れる定めはありませんが、残高をチェックしないと決算書類との一致を確認できないため、入れたほうがいいでしょう。
受取手形の内訳書
受取手形の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 振出人
- 振出年月日
- 支払期日
- 支払銀行
- 債権金額
- 割引銀行名および支店名等
- 摘要
同一取引先で100万円以上になるときは、個別に記載しなくてはなりません。
そのほかの取引はまとめて記載してもOKですが、割引手形だけは個別記載をしてください。
売掛金の内訳書
売掛金の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目(売掛金・未収入金)
- 相手先名
- 期末残高
- 摘要
同一取引先で50万円以上になるときは、5件まで個別に記載しなくてはなりません。
相手先の情報などは、契約書や請求書から転記しましょう。
仮払金、貸付金など受取利息の内訳書
仮払金の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目
- 名称
- 住所
- 期末残高
- 概要(取引内容)
同一取引先で50万円以上になるときは、5件まで個別に記載しなくてはなりません。
また、相手が自社役員や株主、関係会社の場合は、50万円以下でも個別に記載が必要です。
貸付金など受取利息の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 貸付先名
- 期末残高
- 期中の受取利息額
- 利息
- 担保の内容
仮受金と同じく、同一取引先で50万円以上になるときは、5件まで個別に記載が必要です。
また、相手が自社役員や株主、関係会社の場合や、期末残高がなくても期中の受取利息が3万円を超えるときも個別に記載をします。
棚卸資産の内訳書
棚卸資産の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目
- 品目
- 数量
- 単価
- 摘要
品目は細分化できるかもしれませんが、項目が多くなりすぎないようにしましょう。
有価証券の内訳書
有価証券の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 区分種類銘柄
- 期末残高
- 期中増(減)の明細
- 摘要
有価証券は、期末残高が0の場合でも記載しなくてはなりません。
固定資産の内訳書
固定資産の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 種類(構造・用途・面積・所在地など)
- 期末残高
- 期中取得(処分)の明細
固定資産も、期末残高が0の場合でも記載しなくてはなりません。
支払手形の内訳書
支払手形の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 支払先
- 提出年月日・支払期日
- 支払銀行名
- 期末残高
- 摘要
同一取引先で100万円以上になるときは、個別に記載しなくてはなりません。
また、100万円以上のものが5口に満たない場合は、期末残高が多いものから順に5口ほど記載してください。
買掛金の内訳書
買掛金の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目
- 相手先名
- 所在地
- 期末残高
- 摘要
- 未払配当金
- 未払役員賞与
同一取引先で50万円以上になるときは、5件まで個別に記載しなくてはなりません。
仮受金の内訳書
仮受金の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目
- 相手先名
- 期末残高
- 取引内容
相手先の期末残高が50万円以上のものは、個別に記載しなくてはなりません。
また、相手が自社役員や株主、関係会社の場合は、金額にかかわらず記載が必要です。
源泉所得税預り金の内訳書
源泉所得税預り金の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 支払年月
- 所得の種類
- 期末残高
借入金および支払利子の内訳書
借入金および支払利子の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 借入先名
- 法人・代表者との関係
- 所在地
- 期末残高
- 期中の支払利子額
- 利率
- 借入理由
- 担保の内容
相手先の期末残高が50万円以上のものは、個別に記載しなくてはなりません。
また、相手が自社役員や株主、関係会社の場合は、金額にかかわらず記載が必要です。
借入金の期末残高がなくても、期中の支払利息が3万円を超えるときも個別に記載をします。
土地の売上高等の内訳書
土地の売上高等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 区分(売上・仲介手数料)
- 所在地(土地)
- 売上年月日
- 売上先名
- 売上面積
- 売上金額
- 売上商品の取得年
会社によっては土地の売却が多いこともあります。
頻繁に土地の売却があるときは、内訳明細書は3枚程度にまとめるのがベストです。
売上高等の事業所別内訳書
売上高等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 事業所の名称・所在地
- 責任者氏名・代表者との関係
- 事業等の内容
- 売上高
- 期末棚卸高
- 期末従業員数
- 使用建物の総面積
- 源泉所得税納付税務署
- 摘要
役員報酬手当等など人件費の内訳書
役員報酬手当等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 役員名
- 氏名
- 代表者との関係
- 住所
- 常勤・非常勤
- 給与額
人件費の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 役員報酬手当
- 従業員給与手当・賃金手当
地代家賃等の内訳書
地代家賃等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 区分(地代・家賃)
- 借地(借家)物件の用途・所在地
- 貸主の名称・所在地
- 支払対象期間
- 支払賃借料
- 摘要
工業所有権等の内訳書
工業所有権等の内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 名称
- 支払先名・所在地
- 契約期間
- 支払対象期間・支払金額
- 摘要
雑益、雑損失などの内訳書
雑益、雑損失などの内訳書に記載するのは、以下の通りです。
- 科目
- 相手先名
- 取引内容
- 所在地
- 金額
勘定科目内訳明細書の注意点
勘定科目内訳明細書を作成するときは、貸借対照表および損益計算書と残高が一致しなくてはなりません。
残高が一致しないと、税務調査のリスクが増える可能性があります。
実際、勘定科目内訳明細書に記載ミスがあっても、税務調査で指摘を受けることは少ないです。
しかし、元となる決算書類(貸借対照表および損益計算書)にミスがあると、指摘を受けるため注意しましょう。
勘定科目内訳明細書の簡素化とは
平成30年度の税制改正により、勘定科目内訳明細書の簡素化が行われました。
資本金1億円超えの法人が対象となる電子申告の義務化に伴い実施されたものですが、大企業のみならず、中小企業も適用されます。
簡素化された内容
「記載省略基準の柔軟化(件数基準の創設)」「記載単位の柔軟化」から記載内容が見直しされ、専門知識があまりない人でも、作成が容易になりました。
勘定科目内訳明細書は、会計ソフトで作成するのが一般的ですが、平成31年の4月からはCSV形式で提出ができます。
そのため、会計ソフトの使い方を覚えなくても、Excelで入力し電子申告が可能です。
簡素化の具体的内容
簡素化された具体的な内容は、記載件数が100件までに制限されたこと、支店や事業所ごとの合計額を記載できるようになったことです。
今までは売掛金や買掛金などの内訳書は、100件以上取引先があっても記載する必要がありましたが、簡素化により取引金額の大きい取引先100件までの記載のみでOKになりました。
また、売掛金や買掛金などは、支店・事業所ごとに合算して記載する方法の選択も可能です。
ほかにも貸付金や借入金の理由欄が削除されるなど、いままで記載が定められていた記入欄がいくつか削除されています。
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