簿記1級は意味がない?簿記1級を取得するメリットが大きい人と小さい人について解説!

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簿記2級を取得した方や経理職の方などは、ステップアップのために簿記1級の取得を検討した方も多いのではないでしょうか?一方で、「簿記1級は取得しても意味がない」と言われることもあります。本記事では、簿記1級が意味がないと言われる理由や、簿記1級の取得によるメリットが大きい人と小さい人について解説します。簿記1級の取得により年収が上がるのかについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

簿記1級の難易度と必要な勉強時間

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一言に「簿記」といっても簿記試験には様々な種類があります。簿記試験の種類は全部で以下の3種類です。

・日商簿記検定(日本商工会議所及び各地商工会議所主催簿記検定試験)

最も有名な試験で、2021年の受験者数は60万人を超える。試験は、3級から1級まで用意されている。

・全商簿記検定(全国商業高等学校協会主催 簿記実務検定試験)

商業高校の生徒が主に受験する試験で、合格率は比較的高い。試験は、3級から1級まで用意されている。

・全経簿記検定(簿記能力検定試験)

会計の専門学校や高等専修学校の生徒が多く受験する。試験は、3級、2級、1級、上級が用意されている。

本記事では、受験者数が多く知名度も高い「日商簿記検定」について解説します。日商簿記検定1級(以降は簿記1級と記載)の合格者の推移は以下の通りです。

試験日実受験者数合格者数合格率
2022.6.128,918名902名10.1%
2021.11.219,194名935名10.2%
2021.6.137,594名746名9.8%
2021.2.286,351名502名7.9%
2020.11.158,533名1,158名13.5%

簿記1級の合格率は約10%で推移しています。簿記3級の近年の合格率は約40%〜50%、簿記2級の合格率は約20%〜30%です。

簿記1級の受験者の多くは簿記2級に合格していると考えられるため、簿記1級の難易度はかなり高く、難関資格となっています。

また、一般的に合格までに必要な勉強時間は以下の通りです。

簿記3級簿記2級(簿記3級の保有を前提)簿記1級(簿記2級の保有を前提)
勉強時間80~150時間150時間~350時間500時間~700時間

簿記1級は、3級や2級と比べて桁違いに勉強が必要になります。

以下の記事では、簿記1級の合格率について詳細に解説しています。簿記1級の試験情報についてさらに知りたい方は是非参考にしてみてください。
簿記1級の合格率が知りたい!取得するメリットや勉強時間はどのくらいかかる?

簿記1級を取得するメリットが大きい人

メリットが大きい人の画像です

簿記1級は出題範囲が広く、勉強のために多くの時間が必要です。その分、資格を取得すれば様々なメリットを得られます。特に、勤めている企業の特徴や資格取得の目的によってはより簿記1級を活かすことが可能です。簿記1級を取得するメリットが大きい人の特徴を解説します。

大企業に勤務している人や転職を考えている人

大企業の経理や会計、財務部門への転職を考えている方や現在勤務中の方は、簿記1級を取得するメリットはとても大きいです。簿記1級では連結会計の問題が頻出されます。連結会計とは、親会社と子会社などの支配従属関係にある複数企業を一つの組織として捉えて財務諸表などを作成する会計です。

大企業は子会社や関連会社などのグループ会社を持っている場合が多いため、簿記1級で連結会計を習得していることは大きな強みとなります。連結会計は簿記2級でも出題されますが、出題範囲が簿記1級の方が広く、より専門的です。具体的な学習範囲は以下の通りとなります。

連結会計の出題範囲

出題範囲の画像です
参考:商工会議所簿記検定試験出題区分表「商業簿記・会計学(1~3級)」

上記の通り、簿記1級に合格するためには連結会計の深い理解が必要となります。グループ会社を持つ大企業への就職や転職を考えている方は、簿記1級の取得は大きなアピールとなるでしょう。

他にも、簿記1級では高度な会計処理を多く学びます。様々な取引をする大企業にとって、簿記1級取得者のニーズは高いです。

メーカーで勤務している人や転職を考えている人

メーカー(製造業者)の経理や会計、財務部門への転職を考えている方や勤務中の方は、簿記1級を取得するメリットが大きいです。簿記1級では、工業簿記と原価計算が幅広く出題されます。工業簿記や原価計算は、主に製品を製造するメーカーが用いる会計方法です。

そのため、工業簿記と原価計算を深く理解している方は貴重な人材となります。工業簿記は簿記2級でも学習できますが、簿記1級ではより深い理解が必要です。たとえば簿記1級では、「差額原価収益分析」と「戦略の策定と遂行のための原価計算」を学習します。具体的な出題範囲は以下の通りです。

差額原価収益分析

1.業務的意思決定の分析

2.構造的意思決定の分析

 ・資本予算の意義と分類

 ・設備投資の意思決定モデル

 ・設備投資のキャッシュ・フロー予測

 ・資本コストと資本配分

戦略の策定と遂行のための原価計算

1.ライフサイクル・コスティング

2.品質原価計算

3.原価企画・原価維持・原価改善

4.活動基準原価計算

上記を習得すれば、メーカーの経営や意思決定に携わることもできるでしょう。メーカーの経理や会計、財務部門で働いている方や転職を考えている方は、簿記1級の取得を検討してみてください。

簿記検定試験出題区分票「工業簿記・原価計算(1~2級)」

税理士を目指す人

簿記1級に合格すれば、税理士の受験資格が得られます。

税理士試験の受験には、受験資格が必要です。税理士の主な受験資格は以下の通りとなっています。以下のいずれかを満たせば、受験が可能です。

・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者

・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者

・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者

・司法試験合格者

・公認会計士試験の短答式試験に合格した者

日商簿記検定1級合格者

・全経簿記検定上級合格者

・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者

・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者

・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者

大学を卒業していない方や実務経験がない方などは、簿記1級への合格で新たに税理士の受験資格を得ることができます。また、簿記1級と税理士試験の会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)は、試験範囲が8割程度被っていると言われており、税理士資格取得のためにも簿記1級の勉強は効果があります。

参考:国税庁「税理士試験受験資格の概要」

簿記1級を取得するメリットが小さい人

メリットが小さい人の画像です

簿記1級を取得すれば会計の理解が深まり、様々なメリットが得られます。一方で、簿記1級の取得によるメリットが小さい人もいます。簿記1級を取得するメリットが小さい人を紹介します。

会計・経理・財務などを専門としない職種で働いている人

会計や経理、財務を専門としない部署や職種で働いている方は、簿記1級を取得するメリットは薄いかもしれません。簿記1級ではかなり専門的な内容を学習します。一般的な営業マンや事務職が知っておくべき内容としては、オーバースペックと言えます。

もちろん、簿記1級を取得すれば専門性は身に付きます。ただし、資格取得のためには多大な勉強時間が必要です。実務で簿記や会計知識を直接使う予定のない方は、簿記1級の勉強にあてる時間を、他に実務と直接関係のある資格勉強や自己研鑽に充てることも検討してみてください。

専門的な知識を求められない中小企業の経理職など

同じ会計や経理、財務に関わる仕事でも、求められる仕事内容は会社によって様々です。簿記1級はかなり専門的な内容を学習します。簡単な経理・会計処理しか必要ない会社では、簿記1級で学習した内容を実務で使うことはあまりないかもしれません。

また、メーカー(製造業者)以外の会社では、簿記1級で学習する工業簿記や原価計算を実務で利用することはほとんどないでしょう。

簿記1級は意味がないと言われる理由

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簿記1級の取得は意味がないと言われることもありますが、なぜこのようなことが言われるのでしょうか?簿記1級は意味がないと言われる理由を紹介します。

税理士や公認会計士のような独占業務がない

簿記1級には、独占業務がないです。そのため、簿記1級を取得しなくては携われない業務は存在しません。一方で、税理士や公認会計士は独占業務があります。税理士と公認会計士の独占業務は以下の通りです。

税理士:税務の代行、税務署類の作成、税務相談

公認会計士:監査

独占業務がないことが、簿記1級の取得に意味がないと言われる理由です。ただし、資格取得の過程で習得した知識が実務で役に立つことはもちろん、社内の昇進や転職時のアピールになるため十分に資格取得の意味はあるでしょう。

実務経験がないと転職でアピールしづらい

新卒の場合は実務経験がないことは当たり前ですが、転職時には実務経験を評価する企業も多いです。そのため、経理や会計、財務の実務経験が全くないと、転職がしづらいです。

簿記1級を持っていることがマイナスになるわけではありませんが、簿記1級を保有している実務経験無しの方と、簿記2級を保有している実務経験5年の方では、後者を採用する企業もあるでしょう。

簿記1級を取得すれば年収は上がる?

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簿記1級を取得すれば年収は上がるのでしょうか?簿記1級取得が年収に与える影響を解説します。

資格手当などで給与が月数千円~数万円上がる場合がある

簿記1級を取得すれば資格手当がもらえる会社もあります。額は様々ですが、月数千円から数万円の昇給が可能です。また、会社によっては一時金として資格手当が支払われる場合もあります。

転職すれば年収の増加が狙える

簿記1級は、比較的大企業にニーズのある資格です。簿記1級を取得して大企業への転職ができれば、年収があがる可能性は高いでしょう。

企業規模ごとの平均年収は以下の通りです。

資本金2000万円未満:約380万円

資本金2000万円以上5000万円未満:約420万円

資本金5000万円以上1億円未満:約420万円

資本金1億円以上10億円未満:約480万円

資本金10億円以上:約620万円

上記の通り、会社の規模が大きいほど平均年収もあがります。簿記1級を取得し、大企業への転職ができれば年収があがる可能性は高いです。

民間給与実態統計調査

簿記1級に関するよくある質問

簿記1級を取得するメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

  • 高度な会計知識が身につく
  • 企業での昇進やキャリアアップのチャンスが広がる
  • 高いスキルを持った人材として求められるため、就職や転職活動で有利になる可能性がある

簿記1級を取得しても役に立たない人はいますか?

簿記1級を取得しても、実務での経験やスキルに乏しい場合は役に立たない可能性があります。また、1級を取得したことによって、自己満足に陥り、スキルアップに繋がらない場合もあります。

簿記1級を取得するために必要な勉強時間や学習方法について教えてください。

簿記1級は、独学でも合格可能ですが、一定の勉強時間が必要です。1級の合格者の多くは、予備校や通信講座を利用して勉強しています。勉強時間は人それぞれですが、平均的には半年から1年程度必要とされています。学習方法としては、講義を受講し理解を深めたうえで、問題演習を反復することが有効です。

まとめ

本記事では、簿記1級取得の意味やメリットについて解説しました。簿記1級は難関度が高く、出題範囲は多岐にわたります。また、合格には多大な勉強時間が必要です。自分が簿記1級合格によるメリットがどの程度見込めるかを考えて、受験するかを判断しましょう。

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この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

この記事を監修した人

登川雄太

監修者登川雄太

監修者登川雄太

2007年 慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格。監査法人トーマツでの勤務を経て、現在はCPA会計学院の専任講師、CPAラーニングの講師を務める。会計をわかりやすく解説するWEBサイト「会計ノーツ」を運営。著書『世界一やさしい会計の教科書1年生』。

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