日常的に使用される「仕入れ」という言葉。
飲食店や小売業者などでは、商品を仕入れたり、商品を作るための材料を購入したりすることは当たり前のため、仕入れの仕訳は欠かせません。
仕入れの仕訳には種類があり、勘定科目も変わってきます。
今回は、簿記検定にも役立つ、仕入れの勘定科目や日常の仕訳から決算整理仕訳までくわしく解説していきます。
正しく理解することで、簿記検定はもちろんのこと、実際の経理業務でも頭を悩ませることなくスムーズに会計処理ができるようになりますよ。
目次
1.商品の仕入れとは?
仕入れとは、自社で販売する商品やその商品を作るための材料などを、メーカーや卸売業者から買うこと。
勘定科目は5つのグループに分けられます。
決算書の貸借対照表(B/S)に使われる、資産・負債・純資産。そして、損益計算書(P/L)に使われる、収益・費用。
仕入は費用の勘定科目です。帳簿上には「仕入」と記載されますが、損益計算書(P/L)では「売上原価」と記載されることが多いです。
2.仕入れの仕訳方法
仕入れの仕訳方法は、三分法になるか分記法になるかによって、変わってきます。
どのような仕訳になるのか、それぞれ見ていきましょう。
⑴三分法
三分法の場合の仕入の仕訳は、商品を仕入れた場合は「仕入」、商品を売った場合は「売上」という勘定科目を使用します。
仕入の仕訳のため、10,000円の商品を現金で仕入れた場合は、以下の通りです。
仕入 10,000円/現金 10,000円
⑵分記法
分記法の場合の仕入の仕訳は、商品を仕入れた場合は「商品」、商品を売った場合は「商品売買益」という勘定科目を使用します。
三分法と同じく例題を確認しましょう。10,000円の商品を現金で仕入れた場合は、以下の通りです。
商品 10,000円/現金 10,000円
⑶おすすめは三分法
三分法と分記法の仕入の仕訳を比べてみると、「仕入」「商品」という勘定科目の違いだけですが、商品を売った際に違いが表れます。
10,000円の商品を11,000円で売った場合の仕訳を見てみましょう。
三分法の場合
現金11,000円/売上11,000円
分記法の場合
現金 11,000円/商品 10,000円
/商品売買益 1,000円
このように、分記法では一目でいくらの利益が出たのかわかるようになっています。
しかし、実際の経理処理や簿記3級の試験では、三分法が使用されます。さらに、日々の仕訳は楽になるので、三分法の方がおすすめです。
三分法では決算整理仕訳の際に「繰越商品」という勘定科目を使用します。
三分法と分記法の他にも、五分法や総記法といった仕訳方法があります。
⑷支払い方法は現金だけではない
例題として現金で支払ったときの仕訳を行いましたが、支払い方法はもちろん現金だけではありません。
銀行口座を用いて払う場合は「預金(普通預金・当座預金)」となります。他にも手形の場合は「支払手形」、掛けで支払った場合は「買掛金」と記載します。
3.期末棚卸資産の評価
三分法では、仕訳ごとに利益がわかりません。しかし、同じ商品や材料であっても、一会計期間中に数量や価格は変化します。期末商品棚卸高をどのように評価するかによって、帳簿上の価格が変わってきます。
評価方法の種類を見ていきましょう。
⑴棚卸資産の評価方法
・先入先出法
先に仕入れた商品から先に払い出す方法です。
メリットとしては、常に先に仕入れたものを出しているため、実際の物の流れと金額が一致しやすいこと。しかし、入出庫が頻繁に行われる物は、管理が複雑になります。
・移動平均法
仕入れをするたびに、残高を数量で割り、平均単価を計算して払い出す方法です。
売上原価を正確に把握できる反面、仕入のたびに平均単価を計算するという手間が発生します。
・総平均法
1ヶ月、1年などの一定期間を決め、仕入額と期首残高の総数量で割り、平均単価を計算して払い出す方法です。
計算は簡単ですが、一定期間が終了するまで、単価が確定せず、常に売上原価を把握することができません。
・個別法
個別に単価を管理して、払い出しをしたときに取得原価を払い出し単価とする方法です。
実際の物の流れと完全に一致するため、一番正確性が高いですが、個別に管理をするため、商品数が多い、仕入れが多いという場合は、非常に面倒な作業となります。
・最終仕入原価法
期末に仕入れた商品の単価を払い出しとしますが、最終仕入原価法は、「棚卸資産の評価に関する会計基準」の評価方法として定められていません。
税法上のみ認められている方法です。
⑵評価の違い
先入先出法・移動平均法・総平均法による評価の違いを見ていきましょう。
一定期間は1ヶ月と仮定して計算します。
例題
前月からの繰越した商品が10個あり、単価は100円とします。今月仕入れた商品は30個で単価は120円。この状態で20個商品が売れたときの単価の違いを確認しましょう。
📍先入先出法の場合
先入先出法は先に受けたものを先に出すため、前月の在庫を10個、今月仕入れたものを10個出すことになります。
(@100×10個)+(@120×10個)=2,200円
2,200円÷20個=110円
払出金額は2,200円、払出単価は110円になります。
📍移動平均法の場合
移動平均法は仕入れをするたびに、残高を数量で割っていくため、単価は次のようになります。
(1,000円+3,600円)÷(10個+30個)=115円
115円×20個=2,300円
払出金額は2,300円、払出単価は115円になります。
📍総平均法の場合
総平均法の場合は、一定期間中のすべての仕入れ額を個数で割ります。この商品がこのあと、一度も仕入がない場合は、移動平均法と同じになりますが、例えば20個売れた後に、10個商品を仕入れ、単価が110円だった場合の単価の求め方は以下の通りです。
(1,000円+3,600円+1,100円)÷(10個+30個+10個)=114円
114円×20個=2,280円
払出金額は2,280円、払出単価は114円になります。
⑶簿記3級では先入先出法と移動平均法
簿記3級では、先入先出法と移動平均法の問題が出題されます。
簿記2級では、先入先出法と移動平均法に加え、総平均法も出題されるため、違いをよく理解しておきましょう。
4.棚卸資産の決算整理仕訳
先ほどもご紹介しましたが、三分法では「繰越商品」という勘定科目を使用して、決算整理仕訳が必要です。
決算整理仕訳では、前年度に余った商品で資産にしてある「期首商品棚卸高」を今年度の費用に、今年度に余った商品である費用を、来年度の期首商品棚卸高になる「期末商品棚卸高」として資産とします。
例えば、期首の商品棚卸高が10,000円で、期末の商品棚卸高が20,000円の場合の仕訳は以下の通りです。
仕入 10,000円/繰越商品 10,000円
繰越商品 20,000円/仕入 20,000円
📍簿記3級で重点的にやるべき点
棚卸資産の問題は、簿記3級の決算整理仕訳問題で、かなり高確率で出題されます。
頭文字を取り、仕入勘定は「しいくりくりしい」、また売上原価勘定を使った仕訳は「うくうしくう」と覚え方もありますが、丸暗記をせずに意味も理解しておくと、上位級を取得するときに役立ちます。
また、仕訳だけではなく、試算表や精算表の問題で出題されることも。損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)に記入できるようにしておきましょう。
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6.まとめ
商品の仕入れをした際の仕訳は、三分法と分記法で変わってきます。
一般的に使用されるのは三分法で、簿記3級の試験でも使用されているので、よく覚えておきましょう。
三分法では、一つ一つの仕訳から利益が把握できないため、会計期間中に商品の数量や価格が変動する可能性があり、棚卸資産を評価する方法がいくつかあります。
簿記3級では、先入先出法と移動平均法、簿記2級では総平均法も加わってくるため、違いを理解しておくと、検定試験にも役立ちますよ。
商品仕入れについてよくある質問
仕入れの仕訳方法は具体的にどのようなものがありますか?
三分法や分記法などがありますが、おすすめは三分法です。
棚卸資産の評価にどのようなものがありますか?
先入先出法、総平均法、移動平均法、個別法などがあります。
簿記3級では、棚卸資産の評価の際、なにがよく使われますか?
簿記3級では先入先出法と移動平均法がよく聞かれます。
簿記2級ではそれに加え、総平均法がよく聞かれます。