「複式簿記を普段使っているけど歴史を学んだことはない」
「複式簿記が広まった理由を知りたい」
「株式会社が複式簿記を使うようになったのはいつからか」
と気になる方も多いのではないでしょうか。
簿記には単式簿記と複式簿記の2つがあり、日本で複式簿記が広まったのは明治時代です。一万円札の肖像でもある福沢諭吉が広めたといわれています。
株式会社では日常的に複式簿記を使って記録をしていますが、なぜ複式簿記を使うようになったのか知る機会も少なかったことでしょう。
本記事では、複式簿記の歴史や日本が複式簿記を使うようになった理由を解説します。
複式簿記の歴史に興味がある人、どのように広まったのか知りたい人はぜひ参考にしてください。
また以下の記事では簿記検定の種類について解説しています。ご興味のある方は、是非一読ください。
【日商簿記、全商簿記、全経簿記の違いとは?】〜ネット試験などの最新情報もご紹介します!〜
目次
複式簿記とは
複式簿記とは、取引における原因と結果の2側面を記録するものです。
たとえば、ものを買ったとき、支払い方法は現金なのか、普通預金での支払いなのかなど、発生する取り引きの目的とその手段まで記録されます。そのため、取引の発生原因やお金の流れが明確です。
複式簿記では、「仕訳」という形で記録・集計をします。勘定科目を資産、負債、純資産、収益、費用の5つのグループに分類し、「貸借対照表」や「損益計算書」の2種類を作成できます。
貸借対照表と損益計算書を作成することで、企業の経済活動や経営成績を把握できるようになるメリットもあります。
複式簿記の目的は以下の3つです。
- 財政状況の把握
- 経営管理
- 外部報告
決算時に財務諸表を作成して公表することが総合的な目的です。
複式簿記以外にも、単式簿記があります。
単式簿記とはお金の出入りを管理するものです。複式簿記は、単式簿記よりも多くの情報を読み取れるため、会社では複式簿記が用いられています。
また、以下の記事では単式簿記と複式簿記の違いについて解説しているため、ご興味のある方は一読ください。
単式簿記と複式簿記の違いとは?徹底解説
複式簿記の歴史
複式簿記はいつ、どこで誕生したのかというと、古代ローマ説や中世イタリア説など諸説あります。もっとも広く受け入れられているのは、14世紀の中世の時代です。ベニスの商人が貿易全体のもうけを把握するために複式簿記を採用し、始めたのが最初であるという説が有名です。
「ベニス式簿記法」とも呼ばれており、基本的な簿記の原理は、今の複式簿記にそのまま受け継がれているといわれています。
複式簿記が広まるきっかけとなったのが、「近代会計の父」と呼ばれるイタリアの数学者のルカ・パチョーリの著書「スムマ」という文献です。
「スムマ」は、当時の算術・代数・三角法などの知識を集大成した数学書です。商業取引のための記録方法を解説した書籍であり、初めて複式簿記の理論と実践をまとめたものが書かれています。
ルカ・パチョーリが提唱する簿記の理論は、ヨーロッパにおける科学的会計の基礎となっています。簿記会計が今のように広まったのは、彼のおかげだと言っても過言ではありません。
複式簿記が広まった理由
複式簿記を使うことで、単式簿記ではできなかった取引の原因と結果を「仕訳」を用いて管理できるようになりました。今ではシステムを利用し複式簿記を使用して帳簿付けするのが一般的です。
また、複式簿記を使うことで、健全な経営管理ができているという点にも役立っています。
なぜ複式簿記が広まったのか、理由としては3つ挙げられます。
- 間違いを見つけやすい
- 取引をもれなく記録できる
- 商品や事業毎の利益を算出できる
以下に詳しく解説します。
間違いを見つけやすい
複式簿記では、「借方」と「貸方」が一致しなければ帳簿付けできません。必ず貸借を合わせる必要があり、貸借の金額は常に同じ金額でなければなりません。比較することで間違いにすぐ気が付くことができます。
以下に1つの取引の仕訳例を用いて説明します。
5万円のイスを現金で購入した場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 50,000円 | 現金 | 5,000円 |
借方の金額は5万円で合っていますが、貸方の現金の金額が5千円と桁が間違っています。
よって貸借の金額が4万5千円の差額が出ています。
現在では、簿記はシステムで管理していることが多いため、貸借の金額が合っていないと、帳簿へ記帳ができない仕組みとなっています。
このように、双方の金額が合わないなど帳簿に間違いがあった場合、原因を探す過程で、間違いをすぐに把握することができます。
単式簿記では、1つの勘定科目を使い、増減を記録するものであるため、どこで間違いが起こっているのか見つけることができません。
このように、複式簿記を使うことで、間違いを見つけやすく修正がすぐできるというメリットがあります。
取引を漏れなく記録できる
会社経営には取引を漏れなく記録できることは重要です。なぜなら、複式簿記を使い、取引を詳細かつ正確に記録することで、会社では財務状況や経済活動をより正確に把握できていることを示せるからです。
さらには、商品の売買や支払いの記録の間違いは信用に大きく影響します。たとえば、A社とB社の商品売買を例に解説します。
A社はB社から商品を1,000個購入したが、B社は1万個販売したと記録していたとします。このように販売個数の間違いがあると、何個売って、どれだけのもうけが出たのかわかりません。
また、記録していても、個数や金額が間違っていれば、管理がずさんだと思われ、信用を失い、取引をやめることになるでしょう。
複式簿記を使い、間違いなく取引を記録し、元帳などの書類で証明ができれば、取引先への信頼関係を向上させられるでしょう。また、商売に対する誠実さを表せられます。
このようにして、数ある記帳方法の中でも複式簿記が「正確に記帳できる簿記」として認知され、広まった理由になったといわれています。
複式簿記によってより適切な帳簿記入が可能となりました。
以下の記事では、そもそも帳簿とはどのようなものであるのかを解説しています。簿記の勉強にも実務にも役立つ内容であるので、ぜひ参考にしてみてください。
帳簿ってなに?帳簿の種類や付け方についても解説!
商品や事業毎の利益を算出できる
複式簿記によって商品や事業毎の利益を算出できることは大きな利点です。なぜなら、複式簿記を用いることで、どの商品が売れているのか、商売の中で力を入れるところなど判断ができるからです。
たとえば、Cの商品の方が売れ行きがいいから、Cを多く仕入れて販売しよう、D商品は売れ行きが悪いから販売をやめよう、など記録をつけることで商品の利益を算出できます。
また、複式簿記を使って「貸借対照表」で財産計算を、「損益計算書」で損益の計算が行えます。二つの書類を比較することで、企業の経済活動の結果や、もたらされた利益を同時に把握できます。
これまで勘と経験だけで経営をしていた時代とは変わり、複式簿記で数字を管理して経営分析をするのにも役立てられるようになりました。
単式簿記ではできなかった、誠実な会計の証明や事業分析などが複式簿記ではできます。このように商売にとても役立つものであると認識され、世界中に広まりました。
日本で広まったのは明治時代
日本で複式簿記が広まったのは明治時代です。その前の江戸時代では、大福帳(売掛金元帳)などによる算盤使用に適した独自の帳簿システムが確立していました。
複式簿記を広めた人は、「学問のすすめ」の著者であり、一万円札の肖像でおなじみの福沢諭吉だといわれています。
福沢諭吉が明治6年にアメリカのテキストを翻訳した、「帳合之法(ちょうあいのほう)」という書籍が複式簿記の始まりです。以降、洋式の複式簿記が全国へ広がりました。
複式簿記の用語である「借方」「貸方」も福沢諭吉による翻訳により生まれたものです。
さらに福沢諭吉は、「商売には学問は不要」という江戸時代の考えを覆します。簿記を実用性のあるものにするため、簿記講習所を創設し、簿記教育を始めました。このようにして、日本では明治時代に福沢諭吉によって広まりました。
現在、簿記検定は日本でも非常に有名であり、就職活動や転職に活かせるほど価値のある資格となりました。そのような簿記資格に合格した証明となる合格証書は合格後どれくらいの期間で届くのか、あるいは紛失してしまった場合はどうするのかという不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
以下の記事では、簿記検定の合格証書について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
簿記の合格証書はいつ届く?発行方法やなくした場合についても解説
複式簿記と株式会社の関係性
複式簿記と株式会社の関係性は密接にあります。
株式会社は継続して利益を出していくものであり、出資した株主に対して継続的に配当(還元)をすることが求められます。あります。
そのため、経営成績と財政状態は常に区別しておかなければなりません。
「企業会計原則」の原則の中に、「資本利益区別の原則」があります。資本とは株式の発行など事業をするときに必要な元手になる財産のことです。株主から出資してもらうこともあります。
利益とは事業を行って出たもうけのことです。法人税は利益を元に課税されるため、資本と利益を明確に分けなければなりません。
資本取引と損益取引との区別をするためには、複式簿記を使って記帳します。貸借対照表にて財政状況を数字で管理し、損益計算書で収益を把握します。そして、2つの書類を税務署に提出をして正しく納税を行っているかの材料にもなります。
単式簿記では、収支と資本を区別できませんが、複式簿記では区別できます。このように株式会社を経営するためには、複式簿記を活用して正確な情報を表すことが重要です。
複式簿記と株式会社の関係性において、株式会社が複式簿記を活用する必要性が書かれました。その中でも外部に公表する財務情報を扱うのが商業簿記であり、会社内部で活用する財務情報を扱うのが工業簿記と大きく区別されています。
以下の記事では、商業簿記と工業簿記について解説しているので、参考にしてみてください。
商業簿記ってなに?工業簿記との違いや資格試験での出題についても解説!
簿記3級から1級まで学ぶならCPAラーニング!完全無料なのに合格者が続出する理由とは!?
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なぜCPAラーニングの簿記講座で合格できるのか
簿記の知識を正しく「理解」できる
「テキストの問題を何回も解いたのに、試験の問題は解くことができなかった。」
簿記検定に関わらず、今までこのような体験をした方も多いのではないでしょうか。
その原因としては、解答に必要な知識を「理解」せずに、ただ暗記していたことにあります。
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そのため、講義で説明された論点の会計処理について「理解」することができ、試験の問題にも対応することができます。
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まとめ
本記事では、複式簿記の歴史や広まった理由を解説しました。
複式簿記とは取引における原因と結果の2側面を記録するものです。
14世紀の時代に、ベニスの商人が貿易全体の儲けを把握するために複式簿記を採用し、始めたのが最初であるという説が有名です。
複式簿記が広まった理由として3つあります。
- 間違いを見つけやすい
- 取引を漏れなく記録できる
- 商品や事業毎の利益を算出できる
日本で複式簿記が広まったのは、明治時代に福沢諭吉がアメリカの書籍を翻訳したことからです。「借方」や「貸方」と翻訳をして、現在も使われるようになりました。
このように、複式簿記には昔から歴史があり、今も昔も変わらず会社や商売の役に立つものだと分かったでしょう。