会社は1年に1回、1年間の会社の成果を示す2つの財務諸表(会社の成績表)を作成します。
2つの財務諸表とは、財政状態を示す「貸借対照表」と、経営成績を示す「損益計算書」のことです。
簿記の目的は、財務諸表を作成し、株主や債権者といった利害関係者に活用してもらうことであるため、財務諸表の重要性は高いと言えます。
また、簿記3級の試験では、第3問で決算整理前残高試算表から財務諸表を作成する問題が頻出であり、合格するために貸借対照表への理解は必須です。
本記事では、簿記の基本である貸借対照表の見方について、貸借対照表の構成を解説し、事例を基に分析を行っていきます。
貸借対照表を理解することで、効果的に簿記の学習を進めることができます。
また以下の記事では、簿記の学習の基本的な進め方について解説しているので、簿記の勉強を始めようとしている方・始めたての方は是非一読ください。
簿記検定に合格するための正しい勉強方法とは?
目次
1.貸借対照表とは
貸借対照表とは、会社の「財政状態」を表す財務諸表です。
財政状態を分かりやすく表現すると、「今、何をいくら持っているのか」という財産の状態です。
貸借対照表は、ある一定時点において会社が何をいくら持っているかを示します。
あくまで一定時点における情報であることを念頭に置いてください。
貸借対照表には、簿記の5要素(資産、負債、純資産、費用、収益)の内、資産、負債、純資産の3要素が含まれています。
貸借対照表の借方に資産、貸方に負債、純資産が計上され、借方と貸方の合計額は一致するという関係があります。
貸方に計上される負債と株主資本の違いは、返済義務があるかどうかです。
負債は、債権者から借り入れた資金などであり、これには返済義務があります。一方で、株主資本は、株主から出資を受けた資金などであり、これには返済義務はありません。
このように、資金調達の方法によって、負債または株主資本に計上するかが決定します。
「借方」「貸方」についてもっと知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
【必見】簿記初心者が押さえるべき借方と貸方の意味や使い方などを解説
2.資産とは
資産とは、会社が保有している現金や建物などの財産のことを指します。
具体的には、資産は「現金」、「物」、「権利(債権)」の3つに分類されます。
また、会社はキャッシュ(現金)を増やすために資産を保有していることから、「資産はキャッシュを増やすための源泉」と表現することができます。
保有する資産が営業活動のサイクルに入っているか、もしくは1年以内に現金化されるか否かで「流動資産」と「固定資産」に区別されます。
また「繰延資産」も資産を構成する一要素ですが、ここでは説明を割愛します。
流動資産
流動資産とは多くの場合、短期的に現金化、もしくは費用化される資産のことです。
ここでは詳細に説明しませんが、おおよそ1年以内に回収できるものが流動資産に該当します。
流動資産の代表例として、キャッシュそのものである現金や、すぐに売ることができる商品・製品、債権などが挙げられます。
固定資産
固定資産とは多くの場合、長期的に現金化、もしくは費用化できる資産のことです。
固定資産の代表例として、長期的に保有する土地や建物、機械装置、車両などが挙げられます。
3.負債とは
負債とは、資金の調達源泉のうち返済義務のあるものを指します。
負債は、「将来、金銭などを支払わなければならない義務(債務)」と表現されます。
資産と同様に、保有する負債が営業活動のサイクルに入っているか、もしくは1年以内に放棄、引き渡す義務があるか否かで、「流動負債」と「固定負債」に区分されます。
流動負債
流動負債とは多くの場合、短期的にキャッシュを返済しなければならない負債のことです。
おおよそ1年以内に返済義務が生じている負債が流動負債に該当します。
流動負債の具体例として、商品を仕入れた際に発生する買掛金や、固定資産を購入した際に発生する未払金、返済期限が1年以内である短期借入金が挙げられます。
固定負債
固定負債とは多くの場合、長期的にキャッシュを返済しなければならない負債のことです。
固定負債の代表例として、返済期限が1年超である長期借入金や社債が該当します。
4.純資産とは
純資産とは、資金の調達源泉のうち返済義務のないものを指します。
ただ定義上において、純資産の正しい定義は「資産と負債の差額」となっています。
純資産は、株主が保有するものかどうかで、「株主資本」と株主資本以外に区分されます。
株主資本
株主資本とは、株主に帰属するものです。
株主資本には、会社の設立や増資の際に株主から出資してもらった資本金・資本剰余金や、出資してもらった資金から生み出した利益の積み重ねである利益剰余金が含まれます。
株主への還元などにも株主資本が使われます。
株主資本以外
株主資本以外とは、株主の保有していないものです。
純資産のうち、株主資本に該当しないものがすべて「株主資本以外」に入ってくると押さえていただいて問題ありません。
株主資本以外には、評価・換算差額等(その他の包括利益累計額)、新株予約権、非支配株主持分が含まれます。
5.貸借対照表から会社の安全性をチェックしてみよう
貸借対照表からその会社の財務基盤の健全さについて読み取ることができます。
会社の財務基盤の健全さのことを「安全性」といいます。
安全性分析をすることによって、その会社が将来的に倒産する可能性が高いかどうか判定することができます。
安全性分析は、流動比率や当座比率を用いる短期的な安全性分析と、自己資本比率や負債比率、固定比率を用いる長期的な安全性分析に区別されます。
短期的な安全性分析
短期的な安全性分析では、おおよそ2~3年以内に会社が倒産する可能性があるかどうか判定するものです。短期的な安全性分析の指標として、流動比率、当座比率の2種類があります。
流動比率
流動比率は、会社が短期的に債務を返済する能力を有しているかどうかを示す指標です。返済期間が短い流動負債に対して、その支払いに充てる流動資産がどのくらい有しているのかがわかります。
流動比率(%)=流動資産流動負債100
基本的に、200%以上であれば短期的に安全であるとされます。
ただし、高ければ高いほどいいというわけではありません。
現金を過大に保有していた場合、本来であればそれを投資することで収益を上げられていたにも関わらず、安全性を優先したということは必ずしも望ましいとは言えないからです。また、売上債権や棚卸資産に不良債権や滞留在庫が含まれている可能性があるからです。
当座比率
当座比率は、流動比率と比較して、会社が短期的に債務を返済する能力を有しているかどうかについて、より厳しく判定するための指標です。
当座比率(%)=当座資産流動負債100
※当座資産とは、換金性の高い資産のことです。(簡略的な計算式:現金+売上債権+短期貸付金-貸倒引当金)
基本的に、100%以上であれば短期的に安全であるとされます。
長期的な安全性分析
長期的な安全性分析では、おおよそ3年以上に会社が倒産する可能性があるかどうか判定するものです。長期的な安全性分析の指標として、自己資本比率、負債比率、固定比率の3種類があります。
自己資本比率
自己資本比率とは、会社の財務基盤が健全であるか判定する指標です。
自己資本比率%=自己資本総資本100
※自己資本は、返済義務のない資金の調達源泉であり、純資産とほぼ同じ意味です。ただし、新株予約権を除く点で純資産と全く同じではありません。(自己資本=純資産-新株予約権)
※他人資本とは、返済義務のある資金の調達源泉であり、負債とほぼ同じ意味です。
※総資本は、自己資本と他人資本の合計です。
基本的に、50%以上であれば長期的に安全であるとされます。
負債比率
負債比率とは、自己資本比率と同様に、会社の財務基盤が健全であるか判定する指標です。自己資本と他人資本との構成割合を比較したものであり、他人資本への依存度がわかります。自己資本の割合が大きいほど、他人資本の返済がより期待されるといえ安全性が増すと考えられます。
負債比率(%)=他人資本自己資本100
※他人資本とは、返済義務のある資金の調達源泉であり、負債とほぼ同じ意味です。
基本的に、100%以下であれば長期的に安全であるとされます。
固定比率
固定比率とは、会社の固定資産投資の安全性について判定する指標です。長期にわたって保有される固定資産が自己資本で賄われていることが望ましいとされます。
固定比率(%)=固定資産自己資本×100
基本的に、100%以下であれば長期的に安全であるとされます。
6.事例を基に分析をしてみよう
以下のA社の貸借対照表を基に安全性分析をしてみましょう。
A社の流動比率、当座比率、自己資本比率、負債比率、固定比率を求めてみて、A社の安全性について読み解いてみましょう。
解答
流動比率:156%[流動資産5,000/流動負債3,200]
当座比率:125%[(現金預金400+売上債権2,400-貸倒引当金200+有価証券600+短期貸付金800)/流動負債3,200]
*市場性のある一時所有の有価証券と仮定
*棚卸資産は当座資産に含まれない
自己資本比率:60%[(株主資本7,000+評価・換算差額等800)/総資本13,000]
負債比率:67%[(流動負債3,200+固定負債2,000)/(株主資本7,000+評価・換算差額等800)]
固定比率:103%[固定資産8,000/(株主資本7,000+評価・換算差額等800+固定負債2000)]
流動比率が200%未満であることからA社は短期的に見て安全ではないと読み取れるかもしれませんが、流動比率よりも厳しく短期的な債務返済能力を有しているか示す指標である当座比率が100%超であることから、短期的に安全であると判定することができます。
また、自己資本比率は50%超、負債比率は100%以下、固定比率はほぼ100%であることから、A社は長期的に見て安全であると判定することができます。
これらの指標はあくまで会社の財務基盤が健全であるかどうかの判断材料の一つに過ぎず、他の指標や過去の貸借対照表から総合的に判断する必要があることを念頭に置いてください。
8.まとめ
貸借対照表の見方と分析方法について解説しました。
貸借対照表から会社の財政状態を把握することができ、安全性分析を行うことで会社の財務基盤が健全であるかどうか判定することができます。
本記事を通じて学習したことを踏まえて、実際の会社の貸借対照表を分析してみてください。
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