簿記のテキストはさまざまな出版社から出ているので、迷ってしまいますよね。
とくに簿記1級は、出題範囲も広く、勉強時間も長いので、どのテキストや問題集を選んだらいいのかと頭を悩ませている人も少なくありません。
簿記1級のおすすめテキストとあわせて、出題内容や合格率、勉強方法などをくわしく解説します。
目次
簿記1級とは
一般的に簿記1級とは、日本商工会議所が主催している日商簿記検定1級のことを指します。
簿記には日商簿記のほかに、全経簿記と全商簿記があります。
簿記3級は商業簿記のみ、簿記2級は商業簿記と工業簿記でしたが、簿記1級では「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の4科目。
商業簿記と工業簿記は、簿記2級よりもさらに深い知識が求められます。
簿記1級から新しく出題される「会計学」は、主に大企業の会計処理で必要な連結会計などの知識を問われ、「原価計算」は製品の原価を計算します。
試験時間は、商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分。
途中に休憩をはさみ、計180分となっています。
合格率
簿記1級の合格率は10%前後。おおよそ1,000名程度となります。
簿記3級は40〜50%、簿記2級は20〜30%であることから、簿記1級が難関資格であるとわかりますね。
簿記1級を取得すると、税理士試験の受験ができます。
なお、2023年度の税理士試験からは、会計学に関する試験科目(簿記論・財務諸表論)は受験の制限がなくなるため、誰でも受験が可能です。
しかし、税法に関する科目(所得税法・法人税法・相続税法・消費税法または酒税法・国税徴収法・住民税または事業税・固定資産税)は、簿記1級の取得や学識、職歴などの条件があります。
税理士試験のほかに、職業能力開発促進法の指導員試験資格を受験するときに、事務科の試験科目の一部が免除されます。
必要な勉強時間
簿記1級に合格するには、500〜2,000時間の勉強が必要です。
かなり幅がありますが、知識や経験の差で勉強時間が異なり、独学や通信講座、スクールに通うなど、勉強方法によっても差が出ます。
簿記2級までの知識がしっかりとある人は、最短である500〜700時間での取得が目指せるでしょう。
反対にまったく簿記を勉強していない初心者は、1級の勉強に取り掛かるまでの準備にも時間を要します。
3級の知識を得るまでに50時間前後、2級の知識を得るまでに100時間前後が目安です。
以下の記事では、簿記1級の試験難易度などを詳細に解説しています。簿記1級の取得を考えている方は是非参考にしてみてください。
簿記1級の合格率が知りたい!取得するメリットや勉強時間はどのくらいかかる?
簿記1級におすすめのテキスト5選!
簿記1級は科目が多いため、テキストと問題集を合わせると、8冊または12冊になることが多いです。
テキストだけで合格を目指すことは難しいですが、問題にチャレンジするのは、しっかりと簿記の知識をインプットできてから。
まずは、テキストを一通り読んでみることが大切です。
簿記1級のおすすめテキストを見ていきましょう。
①いちばんわかる日商簿記1級シリーズ
簿記のWEB講義でお馴染みのCPA会計学院が出版している「いちばんわかる日商簿記1級シリーズ」。
商業簿記・会計学は、教科書が3冊、問題集が2冊。
工業簿記・原価計算は、教科書が2冊、問題集が1冊となっています。
ほかのテキストにくらべると、少ないように感じますが、充実した内容です。
図解が豊富なのでわかりやすく、WEB講義とテキストが連動しているため、わからない部分はすぐに動画で確認ができます。
WEB講義をしているのは、CPA会計学院の人気講師。
試験のポイントやわかりにくい部分も丁寧に説明してくれます。
いちばんわかる日商簿記の3級や2級シリーズも、簿記初心者でもわかりやすいと好評です。
復習が必要な人はいちばんわかる日商簿記でそろえてみてはいかがでしょうか。
独学でも合格を目指せるように作られたテキストなので「簿記1級を勉強したいけど、スクールに通う暇がない」「テキストだけでわからない部分を動画で見たい」という人にもおすすめのシリーズです。
参考:Amazon「いちばんわかる日商簿記1級 商業簿記・会計学の教科書 第I部」
②サクッとうかる日商簿記1級シリーズ
「サクッとうかる日商簿記1級シリーズ」はその名のとおり、短期間でサクッと勉強したい人におすすめのテキスト。
ネットスクールが出版しているテキストで、全12冊。
商業簿記・会計学も、工業簿記・原価計算も、基礎編1・基礎編2・完成編とわかれており、合格に必要な知識を段階的に習得できます。
日商簿記検定だけではなく、全経簿記上級試験にも対応。
「簿記1級を取得したいけど、勉強時間が長すぎて挫折しそう。」と感じている人は、見てみてくださいね。
参考:Amazon「サクッとうかる日商1級 商業簿記・会計学 テキスト 基礎編1」
③簿記1級 みんなが欲しかった簿記の教科書シリーズ
TACから出版されている滝澤みなみさん監修の「簿記1級 みんなが欲しかった簿記の教科書シリーズ」。
こちらは全12冊です。
豊富な図解と丁寧な説明で、よくわからずに読み進めなくてはいけないモヤモヤとした気持ちを解消してくれるテキスト。
テキストには基本問題も多く掲載されており、しっかりと理解できているか確認しながら進められます。
参考:Amazon「簿記の教科書 日商1級 商業簿記・会計学 (1) 損益会計・資産会計編 第7版」
④スッキリわかる日商簿記1級シリーズ
「スッキリわかる日商簿記1級シリーズ」はかわいらしいイラストが多いテキスト。イラストだけではなく、易しい言葉が使われているので親しみやすいシリーズです。
飽きずに楽しく勉強したい人におすすめの1冊。こちらもTACから出版されています。
簿記1級のテキストは全12冊のシリーズが多いですが、スッキリわかる日商簿記1級シリーズは全8冊。
テキストと問題集が1冊にまとまっているので、お財布にも易しいのがうれしいですよね。
「テキストを読むのは苦手なので、問題集を中心に勉強していきたい」という方にも向いているテキストです。
参考:Amazon「スッキリわかる日商簿記1級 商業簿記・会計学 (1) 損益会計編 第9版 [テキスト&問題集]」
⑤よくわかる簿記シリーズ
「よくわかる簿記シリーズ」はTACの簿記検定講座で使用されている、TACの公式教材です。
こちらは全12冊。テキストと合格とレーニングを終えたら、過去問題集もよくわかる簿記シリーズでおこなうといいでしょう。
過去問題集には、TACの現役講師のくわしい解説がついています。
シンプルにまとめてあるテキストなので、楽しく勉強したい人には向きませんが、細かい論点までしっかりと学習したい人にはぴったりです。
イラストはありませんが、図解や表が豊富なので、わかりやすい内容になっています。
参考:Amazon「合格テキスト 日商簿記1級 商業簿記・会計学 (1) Ver.13.0」
簿記1級テキストの選び方
簿記1級のテキストは、2級や3級とくらべると数が少ないですが、内容も難しいため、悩んでしまいますよね。
テキストを選ぶ際に、最初に気をつけたいポイントは、最新版を選ぶこと。
商業簿記・会計学は2022年度に試験範囲が大きく変更されています。主に「収益認識に関する会計基準」の適用によるものです。
一方、工業簿記・原価計算は、試験範囲の変更はしばらくおこなわれていないため、少し古いテキストでも対応できます。
ほかにもテキスト選びのコツをチェックしていきましょう。
説明がわかりやすい
自分にとって、説明がわかりやすいテキストを選ぶことが大切です。
同じ説明がされているものでも「簡単に説明されていてわかりやすい」と感じる人もいれば、「具体的に書かれていないのでわかりにくい」と思う人もいます。
できれば本屋さんへ足を運び、パラパラと数ページめくり、わかりやすい、読みやすいと感じたものを選びましょう。
イラストや図解の豊富さ
文字だけではなく、イラストや図解が豊富なテキストがおすすめ。
図解は全体像のイメージがしやすく、理解を深めるために重要な役割を担っています。
ただし、イラストが多すぎるものは、親しみやすくはなりますが、わかりやすいテキストとはいえない可能性もあるので、注意してください。
テキストでわからない部分は、動画を活用するのもおすすめです。
情報の網羅性
簿記1級は、幅広い知識が必要となります。
試験対策に特化した出題率の高い問題をしっかりと勉強しながら、全体を網羅した学習が大切です。
そのため、出題率の高い問題だけでなく、簿記1級の内容をしっかりと取り上げているテキストを選ぶようにしましょう。
出題率の高い問題は、よりわかりやすく説明しているテキストと併用して使うといいですよ。
情報が網羅されているテキストを活用し、基本をしっかりと抑えて、簿記の知識を深めることが重要。
難しい問題が出題されても応用ができ、問題を解く能力がアップするため、高得点を目指せるでしょう。
簿記1級おすすめの勉強方法
テキストを購入したら、さっそく勉強をスタートしましょう。
簿記1級は勉強時間も長いため、間違った勉強方法を続けていると挫折してしまうことも。
テキストを読み終えて、問題集にチャレンジしたときに、まったく合格点に届かないこともあります。
簿記1級合格を諦めないために、おすすめの勉強方法をご紹介します。
苦手な科目を作らない
問題が解けるとうれしいですよね。得意な科目を伸ばすことも大切ですが、得意な科目だけに集中しないようにしましょう。
簿記1級は、苦手科目があると合格できない仕組みになっています。
山をはったり、出題率の高い問題だけをおこなったり、苦手な科目を放置しないようにしましょう。
簿記1級の配点は各科目25点。
合格には70%以上の点数が必要ですが、1科目ごとに40%以上の正答率がないと、全体で70%以上の点数を取っても不合格となります。
さらに、簿記1級では、傾斜配点という採点基準が設けられているといわれています。
合格率を調整するために、正答率の高い問題の配点をあげることがあります。
そのため、難しい問題を解けたからといって合格する可能性が高まるわけではありません。
商業簿記・会計学は、仕訳や財務諸表、穴埋め問題、○×問題などが出題されます。
工業簿記・原価計算は1問で出した答えを使用した関連する問題を解く形式のため、最初から間違えてしまうと0点の可能性もあります。
例題を完璧にする
簿記1級は難しいため、答えがすでに記載してある例題すら解けないこともあります。
問題集を解くことも大切ですが、まずは焦らずにテキストに記載してある例題を完璧に解けるようにしましょう。
新しい問題には、例題をしっかりと解けるようになってからチャレンジしてください。
理解を重視する
簿記1級では、テキストを繰り返し読み、理解を深めることが大切です。
1級の出題範囲は広いため、暗記のみの学習では追いつきません。
3級や2級では、ある程度出題のパターンが決まっており、繰り返し解いていくことで試験対策ができますが、簿記1級は仕訳の意味まで理解する必要があります。
理解しないまま進めると、定型的な問題は解けても、応用されたものや初めて見た問題は解けません。
問題集を繰り返しおこなうことも大切ですが、問題が解けない、何度やっても間違ってしまうときは、テキストを読み直し理解することに重きを置いて学習しましょう。
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まとめ
日商簿記1級は難易度の高い資格ですが、キャリアアップや転職に有利になったりと、メリットの大きい資格です。
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