ネット試験の登場で日商簿記検定はどう変わる?統一試験(筆記試験)との違いやメリットを徹底比較!

ネット試験でどう変わるの画像です

日商簿記検定のネット試験が2020年より開始され、既に1年以上が経過しました。

当コラムでは、最新の情報に基づき、ネット試験の登場で日商簿記検定はどう変わったのかについて、統一試験(筆記試験)との違いやメリットを徹底比較することでご説明します。

簿記試験の概要について知りたい、もう一度確認したい方は以下の記事を参考にしてみてください。
簿記とは何か、簿記試験の合格率や難易度、必要な勉強時間も徹底解説!

目次

日商簿記ネット試験の特徴

ネット試験の特徴の画像です

はじめに、日商簿記ネット試験の特徴について見ていきましょう。

① 持ち物

◆必要

・本人確認証(免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)

・電卓

◆現地での貸出

・筆記用具(持込も可)

・計算用紙(用A4紙2枚)

◆注意

・受験時刻の5〜30分前に入場可能

・受験時間を過ぎると受験できない場合もある

以下の記事では、ネット試験における持ち物・準備についても詳細に解説しています。試験前に一度確認することおすすめします。
日商簿記検定試験(筆記試験・ネット試験)の持ち物、準備について!

② パソコン操作

◆環境

実際の試験場は、モニター・キーボード・マウス1台ずつ、A4用紙2枚

※ パソコンの横に呼び出しボタンがあるので、トイレに行きたい場合や何か不具合があった場合は、ボタンを押すことですぐに試験官を呼ぶことができます。

会場の写真の画像です

◆試験の流れ

① 試験開始前に名前などの受験者情報を入力

※ 受験者情報の入力は試験時間にはカウントされないためゆっくり入力して大丈夫です。

② 注意事項の画面に遷移

③ 試験開始ボタンをクリック

※ 試験開始後は、大問1〜3問のボタンがあり、いつでもどの大問にも移れます。

※ 試験開始後は、試験終了までの残り時間が表記されます。

④ 試験終了ボタンをクリック、もしくは、試験終了時間になると試験終了

⑤ その場で合否発表

※ 必ず本試験前に模擬試験にて動作に慣れておきましょう(ネット模擬試験3級はこちら)。

◆注意点

・カンマ(,)は自動入力されるため、金額欄は数字のみを入力すること

・勘定科目は(借方)/(貸方)で重複してはいけないため、統合すること

(例)

注意点の画像です

③ 時間配分

時間配分の画像です

◆全体感

・紙試験に比べて合格しやすい印象

⇒解答方法を工夫して、時間短縮さえしっかりできれば合格可能性はグッと上がります。

・90分という試験時間はそこまでタイトではない

⇒できるだけ時間短縮できるように問題が作られています。どこを解答しなくてよいのか、どこに配点がくるのか、など考慮しなくて良い部分を見つけて、点数が来る箇所に焦点を当てて解答することがコツになります。

・工業簿記は、問題量が少なくなっており、難易度も易しくなっている傾向

・工業簿記を40分で仕留めて、商業簿記により多くの時間を割くのが理想的

◆第1問:10~15分

・勘定科目はプルダウン方式。

・プルダウンで出てくる勘定科目は1問ごとに5〜6個ほど。

※仕訳を紙に書いて、それを画面に打ち込むとかなり時間ロスになるので直接打ち込みましょう。

※いかに第1問を落とさないかが大事(簡単な割に1問3点と配点が高い)です。

◆第2問:20~25分

・連結精算表の作成の場合、連結財務諸表欄にしか点数配分が来ないと問題文に明記される。

⇒連結修正仕訳の欄にわざわざ数値を打ち込む必要がありません。紙にも書いて画面にも打ち込むと、かなり時間ロスになるので、配点のある欄のみを埋めましょう。

◆第3問:20~25分

・決算整理前試算表に未整理事項、決算整理仕訳を反映させて個別BSもしくはPLを作るような問題。

・個別BSもしくはPLの作成の場合、それぞれBSならばBS項目にだけ注目、PLならばPL項目にだけ注目して、ピンポイントで解答するべき。

⇒(BS作成の場合の売上が上がった場合)『売掛金xxx/売上xxx』と丁寧にメモする必要はなく、『売掛金xxx』だけ集計すれば時間短縮になります。

◆第4問、第5問:~40分

・工業簿記の方が簡単なので、工業簿記から解いていき、できるだけ商業簿記に時間を残す

・点数が来ない場所には基本的には、何も打ち込まない

ネット試験の場合、慣れないパソコン操作が必須になるため、ネット模擬試験で必ず練習しておくようにしましょう。

また、試験当日に試験以外のことに神経を使わないように、当日の持ち物や試験会場については前日にしっかり確認しておきましょう。

全体的に、日商簿記2級は試験制度の変更後、試験時間が120分→90分と短縮したことに伴い、問題の難易度が易しくなってきています。

つまり、解答方法の工夫や時間短縮をうまくこなせれば合格可能性はグッと高まります。

簿記の各論点の復習はもちろん大切ですが、ネット試験慣れも大切ですのでネット模擬試験を活用し、合格を勝ち取りましょう。

以下の記事でも簿記2級のネット試験について解説しています。統一試験との相違点を十分に理解するために、ぜひ参考にしてみてください。
簿記2級のネット試験について解説!統一試験との違いや注意すべきこと

簿記検定の統一試験(筆記試験)とネット試験との違い

統一試験とネット試験との違いの画像です

① 解答方法が統一試験とネット試験で異なる

◆統一試験

・現地で紙形式により行う

◆ネット試験

・テストセンターでコンピューターを利用して行う

なお、いずれの場合も出題形式と試験時間は下記となります。

2級:(出題形式)選択式+入力式5題以内、(試験時間)90分

3級:(出題形式)選択式+入力式3題以内、(試験時間)60分

② 合格発表にかかる時間が統一試験とネット試験で異なる

◆統一試験

2〜3週間程度経過後、各商工会議所ごとに発表

※ 原則、商工会議所に掲示ですが、商工会議所によってはホームページなどで発表しているところもあります。受験した商工会議所に予めご確認ください。

◆ネット試験

・試験終了後、即時に合否が発表

※ 合格者のみQRコードが配布され、デジタル合格証が取得できます。

③ 申込方法が統一試験とネット試験で異なる

◆統一試験

各商工会議所窓口

① 商工会議所HPにて試験日と施工する商工会議所を確認

② 試験日の2ヵ月前を目安に、受験希望地の商工会議所に受験申込方法、受験申込書の入手方法、受験料の支払方法等を確認

③ 受験希望地の商工会議所で受験申込みを行う

※ 同一の検定試験において、同級の重複受験は認められていないことに注意しましょう。

◆ネット試験

申込HP

① ネット試験会場を確認

② 受験を希望するネット試験会場の試験日や受験申込方法、受験料の支払方法等を、ネット試験会場に直接確認

③ 受験希望地のネット試験会場に直接申し込みを行う

‍④ 受験日・受験会場が統一試験とネット試験で異なる

◆統一試験

・全国各地で6月、11月、2月の同一日(※)

※ 2022年度は、2022年6月12日(日)、11月20日(日)、2023年2月26日(日)

◆ネット試験

・受験停止期間(※)を除いて毎日

※ 2022年度は、2022年4月1日(金)〜4月13日(水)、6月6日(月)〜6月15日(水)、11月14日(月)〜11月23日(水・祝) 

【重要】統一試験とネット試験で簿記資格の価値は変わらない

ここまで、簿記検定の統一試験(筆記試験)とネット試験との違いについて見てきましたが、1番大事なことは、統一試験とネット試験で簿記資格の価値は変わらないということです。

ネット試験と統一試験の合格は同じように扱われます。

「それでは、統一試験とネット試験のどちらを受けようか?」思われた方もいると思います。

なので、以降の章で、ネット試験のメリット・デメリットを深掘りして見ていきたいと思います。

ネット試験のメリットは?

ネット試験のメリットの画像です

まず、ネット試験のメリットは次の3つが挙げられます。

① 好きなタイミングで簿記検定を受験することができる

受験停止期間を除いて毎日受験することができるので、ご自身の好きなタイミングで簿記検定を受験することができます。

好きなタイミングで受験できるということは、学習のスケジュールが立てやすいということです。

また、当初予定していた受験日・時間・試験会場を受験日の3日前までなら変更が可能です。

突然外せない予定が入ってしまった場合や勉強が間に合わない場合に、受験するタイミングをずらせるのはとても大きなメリットですよね。

統一試験の場合、年に3回しか行われず大きな会場に一斉に集まる形になるため、コロナウイルス等のパンデミックや自然災害が起こった場合、中止となるリスクがあります。

一方、ネット試験であればテストセンターで随時行われる試験なので、受験者を多くの会場と日程で分散させて受験させることができ、これらにも強いと思われます。

② 簿記検定の合否が当日中に分かる

紙試験であれば、2〜3週間待たないといけないところ、ネット試験では合否が即時に分かります。
仮に、合格だった場合には次の級の学習へ、不合格だった場合には同じ級の復習へすぐに着手することができるのはとても大きなメリットですね。

それに、試験を待つ時間というのは、誰でも多かれ少なかれ不安を感じると思いますが、ネット試験であれば即時に分かるため、余計な不安を感じずに済みます。

③ ネット試験の合格率が統一試験よりも高い

実は、簿記2級・3級の合格率の直近10回の平均は、紙試験では【2級】20.60%、【3級】48.57%

、ネット試験では【2級】45.85%、【3級】43.06%となっています。

なので、難易度については、現時点ではネット試験の方が合格しやすい状況となっています。

ネット試験のデメリットは?

ネット試験のデメリットの画像です

次に、ネット試験のデメリットは次の2つが挙げられます。

① 問題用紙に数字やメモを書き込むことができない

そもそも、ネット試験は、コンピューターの画面上に問題が表示されるため、問題用紙は配られません。

普段、簿記の計算問題を解く際に、問題文の間違えやすいポイントに下線を引いたりマーカーを引いたりしている場合には、大きなデメリットになりますね。

② PC上での操作に慣れる必要がある

パソコンの操作にあまり慣れていないという場合、試験でパソコン操作が必須になります。

試験当日に試験以外のことに神経を使ってしまっては、大変もったいないので、ネット模擬試験で必ず練習しておくようにしましょう。

CPAラーニングではネット試験の受験をおすすめしています!

ネット試験にはメリットもあり、デメリットもあります。

しかし、デメリットに比べて、好きなタイミングで簿記検定を受験することができる、簿記検定の合否が当日中に分かる、といったメリットの方が大きいです。

また、デメリットは普段からネット試験を意識して勉強を行うことで対策することが可能だと思います。

何より、ネット試験の合格率が統一試験よりも極端に高いというメリットが非常に大きいので、CPAラーニングではネット試験の受験をお勧めします。

ネット試験の申し込み方法

ネット試験の申込み方法には、①インターネット申込方式、②会場問い合わせ方式の2つがあります。

ネット試験の申し込み方法の画像です

① インターネット申込方式

株式会社CBT-Solutionsという全国47都道府県全てに300件以上のテストセンターを展開する会社に直接申込む方式です。

全国に140超の会場があります。

なお受験料とは別に事務手数料550円(10%消費税込)が別途発生します。

支払方法はクレジットカードもしくはコンビニ/Pay-easy払いです。

申込みはこちらから

② 会場問い合わせ方式

日本商工会議所のネット試験会場、日商リカレントスクール、商工会議所パソコン教室、プラチナ会場など、日本商工会議所が展開する各地域の会場に直接問い合わせる方式です。

全国に120超の会場があります。

申込み方法や事務手数料の発生の有無については会場によって異なるため、直接問い合わせる必要があります。

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最後に

いかがでしたか。

ネット試験の登場で、日商簿記検定は大きく変わったと思います。

時代の変化に伴い、ネット試験制度を導入した日商簿記の資格は、今後も社会から求められていく資格なのではないかと思います。

ネット試験の登場で、自分のペースで学習のスケジュールを立てられるようになった今こそ、日商簿記検定の学習をスタートする良いチャンスです。

⚠筆者の戯言

ネット試験が導入されてから早1年。圧倒的に簿記検定試験を受験しやすくなり、合格者が増加しました。

一方で、ネット試験の導入により”いつでも受けられる”状況があるため、緊張感がなくなり、勉強が続かなくなったという話を、筆者はよく耳にするようになりました。

日商簿記の資格の合格を確実にするためには、一定の期限を決めて、設定した日からは変えられず、「その日に合格するんだ!」という強い意志を持って挑むことも大切かもしれません。

皆さんの合格を心よりお祈り申し上げます。

この記事に関してよくある質問

簿記1級にネット試験はありますか?

簿記1級には2・3級と違いネット試験はありません。統一試験のみ開催されています。

ネット試験と統一試験は就活などで区別されますか?

ネット試験と統一試験はどちらも「日商簿記検定◯級取得」と履歴書に記入できます。つまり、就活でも区別されることがなく、これが合格の「価値が変わらない」理由です。

おすすめの解く順番はありますか?(商業簿記)

前提として試験中は大問を自由に行き来できるため、好きな順番で解いて問題ありません。おすすめは、着実に点を積み重ねるために、1つの問題を解くのに時間がかからない第1問から解き始めることです。もちろん、得点源になる得意な問題から始めるのもおすすめです。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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