簿記は一般的にも有名な資格だと思いますが、実は簿記には「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の3つの検定があります。
では、この3つの簿記検定はどのような違いがあり、簿記取得を目指す際には、どの検定を受験するべきなのでしょうか。
今回はこの疑問を解消していきます。
また、以下の記事ではこれらの根幹である複式簿記の歴史を紹介しています。ご興味のある方は是非一読ください。
複式簿記の歴史を紹介!複式簿記が広まった理由や株式会社との関係性も解説
目次
日商簿記・全商簿記・全経簿記の比較
1.受験者数と受験者層で日商簿記・全商簿記・全経簿記を比較
まず、それぞれの簿記検定を、受験者数と受験者層で比較していきます。
3つの検定の中で、日商簿記検定が一番多くの人々に受験されていることが分かりますね。
また、各検定で受験者層にも違いがあります。
日商検定簿記は社会人の方に多く受験されているのに対して、全商簿記は全国商業高等学校協会が主催しているため、主に商業高校生が受験しています。
全経簿記は全国経理教育協会が主催しているため、経理専門学校生が多い傾向にあります。
参考までに、以下が主催団体の違いです。
2.受験料で日商簿記・全商簿記・全経簿記を比較
次に、それぞれの簿記検定を、受験料で比較していきます。
最も受験者数が多い日商簿記は、1級が7,850円、2級が4,720円、3級が2,850円、初級が2,200円となっています。
3つの簿記試験の内、最も受験料が安い試験は、全商簿記です。
受験する試験を選ぶ際に、受験者数を気にしないという人は、最も受験料の安い全商簿記の受験を検討すると良いと思います。
受験生は受験料の負担を考慮して、受験スケジュールを立てるためにも、各検定の受験料を把握しておきましょう。
3.難易度で日商簿記・全商簿記・全経簿記を比較
続いて、それぞれの簿記検定を、難易度で比較していきます。
この表から2つの事が分かりますね。
1つ目は、日商簿記と全商簿記では受験階級と実際の難易度が一致していないということです。
例えば、日商簿記の3級の難易度は、全商簿記の2級に該当します。
一般的に、簿記のテキストは日商簿記の受験階級をベースに作成されています。
全商簿記・全経簿記を受験する際は、「本当に自分の受けたい難易度の受験階級か」をしっかり確かめるようにしましょう。
2つ目は、全経簿記の受験階級は日商簿記よりも細かく設定されているということですね。
日商簿記は階級が上がるごとに範囲がどんどん膨れあがります。
例えば、中央経済社の簿記のテキストは
- 簿記3級のテキスト・・・1冊
- 簿記2級のテキスト・・・2冊
- 簿記1級のテキスト・・・4冊
で構成されています。
級が上がるごとにテキストの冊数が倍増してますね(笑)。
日商簿記は受験階級が上がる度に学習範囲が一気に増えるため、「自分がどのレベルまで到達できたか」を細かく把握することは難しいです。
それに比べて全経簿記は、受験階級が細かいので「自分がどのレベルまで到達しているのか」を詳しく知ることができます。
実力試しとして全経簿記を受験しても良いかもしれませんね。
📍「日商簿記1級」か「全経簿記上級」を取得すると税理士の受験資格が得られる
日商簿記1級か全経簿記上級のいずれかを取得すると、税理士の受験資格を獲得することができます。
税理士受験資格を獲得するという目的で簿記試験を受験するのであれば、全経簿記上級の受験をおすすめします!
その理由は一般的に、日商簿記1級の方が難易度が高いとされているためです。
具体的には、日商簿記1級の受験者数は10%程度、全経簿記上級の合格率は20%程度となっており、日商簿記1級の方が低い合格率となっています。
また、日商簿記は知名度が高く、公認会計士受験生が受験しやすい試験形式であることから受験者の母集団のレベルが高いことが予想されます。
そのため、相対的に難易度の易しい全経簿記上級を受験することが多いです。
4.試験形態(ネット試験・紙の試験)で日商簿記・全商簿記・全経簿記を比較
最後に、それぞれの簿記検定を、試験形態で比較していきます。
※なお、日商簿記2級、3級のみネット試験が実施されています。
(日商簿記1級はネット試験なし)
📍日商簿記ネット試験のメリット
①日程調整ができる
ネット試験は試験開催日が多いため、自身のスケジュールに合わせて受験することができます。
各ネット試験会場が試験開催日を決定しているため、受験できる開催日がないかチェックしてみましょう。
②合格率が高い
近年、日商簿記2級は統一試験の合格率が安定せず、合格率が一桁になる回もあります。
そのため、合格率が安定的に高いネット試験の受験をおすすめします。
※注意点
ネット試験の受験料は統一試験の受験料+550円(事務手数料)かかります。
ネット試験の受験を検討している方は、把握しておきましょう。
日商・全商・全経のどれを受験したら良いの?
結論から申し上げると、基本的には「日商簿記検定」の受験をおすすめします。
なぜなら、日商簿記検定は最も受験者数が多く、その知名度の高さから多くの恩恵を受けることができるからです。
例えば、就職や転職を行う時に最も役立つのは、「日商簿記検定」です。
日商簿記が募集要項に記載されている求人って本当に多いんですよね。
また、先ほどもお伝えしましたが、よく販売されているテキストは日商簿記検定の受験階級に対応しています。
CPAラーニングのテキストも日商簿記検定の受験階級に合わせて作成しています。
そのため、日商簿記検定を受験する方が多いのかもしれません。
以下の記事では日商簿記検定の中でも、商業簿記と工業簿記について解説しています。受験を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
商業簿記ってなに?工業簿記との違いや資格試験での出題についても解説!
全商簿記や全経簿記を受験するメリットは?
全商簿記や全経簿記を取得しても価値がないという事ではありません。
全商簿記は他の試験と比較して安い受験料で受験できるメリットがあり、全経簿記は受験階級が日商簿記よりも細かく設定されているため、自分の力をより正確に知ることができます。
また、全経簿記上級は税理士試験の受験資格の一つとなっているため、税理士試験受験生にとって、魅力的な検定になっています。
日商簿記・全商簿記・全経簿記の詳細な試験情報
1.日商簿記の詳細な試験情報(試験日程・試験範囲・合格基準・受験料・申し込み方法)
それでは、日商簿記の詳細な試験情報を見ていきましょう。
試験日程:
【1級】年2回(6月第2日曜日・11月第3日曜日)
【2級・3級】統一試験:年3回(2月第4日曜日・6月第2日曜日・11月第3日曜日)
ネット受験:各ネット試験会場が設定する任意の日
【初級】ネット受験:各ネット試験会場が設定する任意の日
試験範囲:
【1級】商業簿記・会計学(90分)、工業簿記・原価計算(90分)
【2級】商業簿記・工業簿記(90分)
【3級】商業簿記(60分)
【初級】簿記の基本用語や複式簿記の仕組み(40分)
合格基準:
【1級】70%以上
ただし、1科目ごとの得点は40%以上
【2級・3級・初級】70%以上
受験料:
【1級】7,850円
【2級】4,720円(ネット試験は+事務手数料550円)
【3級】2,850円(ネット試験は+事務手数料550円)
【初級】2,200円
申し込み方法:
申込日時・申し込み方法は商工会議所によって異なる
※試験日の約2か月前になったら、受験希望地の商工会議所に確認ください。
2.全商簿記の詳細な試験情報(試験日程・試験範囲・合格基準・受験料・申し込み方法)
次に、全商簿記の詳細な試験情報を見ていきましょう。
試験日程:
【1級・2級・3級】年2回(6月と1月の日曜日)
試験範囲:
【1級】会計(90分)、原価計算(90分)
【2級・3級】商業簿記(90分)
合格基準:
【1級・2級・3級】70点以上
受験料:
【1級】会計1,300円、原価計算1,300円
【2級】1,300円
【3級】1,300円
申し込み方法:
【高校生】原則として在籍校で、受験票により申し込む
【一般】 指定された最寄の試験場校で、受験申込書(写真貼付)により申し込む
在籍校が試験場校ではない等の場合、高校生もこの方法に従うことができる
3.全経簿記の詳細な試験情報(試験日程・試験範囲・合格基準・受験料・申し込み方法)
最後に、全経簿記の詳細な試験情報を見ていきましょう。
試験日程:
【上級】年2回(2・7月の日曜日)
【1級・2級・3級・基礎】年4回(2・5・7・11月の日曜日)
試験範囲:
【上級】商業簿記・会計学(90分)
工業簿記・原価計算(90分)
【1級】商業簿記・会計学(90分)
工業簿記・原価計算(90分)
【2級】商業簿記(90分)
工業簿記(90分)
【3級】商業簿記(90分)
【基礎簿記会計】(90分)
合格基準:
【上級】1科目100点を満点とし,全科目得点70点以上
ただし、各科目の得点が40点以上で全4科目の合計得点が280点以上
【1級・2級・3級・基礎簿記会計】1科目100点を満点とし,全科目得点70点以上
受験料:
【上級】7,800円
【1級】商業簿記・会計学2,600円、工業簿記・原価計算2,600円
【2級】商業簿記2,200円、工業簿記2,200円
【3級】2,000円
【基礎簿記会計】1,600円
申し込み方法:
「公益社団法人 全国経理教育協会」のHPから申し込み
まとめ 〜CPAラーニングは日商簿記の受験をおすすめします!~
簿記には「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」があり、それぞれ主催者や受験料などが異なります。
簿記検定の取得を検討されている方は、各検定の特徴を把握して自身に合っている簿記検定はどれかを考えてみてください。
その上で、受験する検定を迷っている方には「日商簿記検定」の受験をおすすめします。
「日商簿記検定」は社会的認知度が高く、就職や転職を行う際に力を発揮してくれる資格です。
これから簿記の取得を検討している方は、ぜひこの記事を参考に学習を始めてみてください。
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