就職や転職、そしてキャリアアップにも有利といわれている簿記2級。商業簿記だけではなく、工業簿記という新しい科目も増えるため、簿記3級よりも深く広い知識を身につける必要があります。簿記2級の合格率や勉強方法をくわしく紹介します。
さまざまなシーンで役立つ簿記検定は、知名度も高く履歴書にも堂々と書ける人気の資格です。
簿記はどんな業種でも必要とされるため、簿記2級を取得すると高い評価を得られることも。経理や財務の仕事を極めるのであれば、積極的に取得したい資格の1つです。
簿記2級の取得を考えている方へ、難易度や合格率、おすすめの勉強方法などをくわしく解説していきます。
目次
簿記2級はどんな資格?
簿記2級は、経理や会計の高い知識があると評価される資格です。
簿記3級の試験範囲は商業簿記だけですが、簿記2級になると商業簿記の出題範囲が広くなるのに加え、工業簿記という新しい科目もプラスされます。
商業簿記は外部から仕入れた商品の販売を記録していきますが、工業簿記は社内で製造した製品の販売を記録していきます。
簿記2級を取得すれば、財務諸表を読み取る能力や企業の経営にかかわる分析力を高められます。
簿記2級は知名度も高く、簿記3級よりもかなり難易度が高いことは有名なので、経理関係の仕事に就きたい人や、すでに経理や財務に携わり、自社でのキャリアアップを目指したい人にもおすすめの資格です。
簿記2級とは、一般的に日商簿記検定のことを指します。
簿記検定には種類があり、日商簿記検定のほかに、経理関係の専門学校に通う学生が受けることの多い「全経簿記」や、商業高校に通う高校生を対象とした「全商簿記」があります。
以下の記事では、簿記2級の申し込み方法について解説しています。申し込み締め切り前にぜひご確認ください。
【2023年度】簿記2級の試験日は?試験内容や申込み方法も解説
簿記2級の試験について
簿記検定は受験資格がないため、簿記3級から受ける必要はありません。
経理の実務経験がある人や学生のころに簿記に触れたことがある人は、いきなり簿記2級から受験したい人もいるのではないでしょうか。
簿記2級の試験について、合格率や必要な勉強時間、簿記3級との違いを確認しておきましょう。
合格率
日商簿記2級の合格率は統一試験とネット試験の2種類がありますが、ネット試験のほうが合格率は高くなっています。また、100点満点で70点以上が合格となるため、難易度による合格率の変動が大きい試験です。
統一試験の合格率は20%前後。ネット試験の合格率は40%前後です。統一試験とネット試験の難易度は変わりありません。
この合格率は、試験に申し込みをした人ではなく、実際に受験した人数から合格率を算出しています。
簿記3級の合格率は50%前後のため、合格するのは難しいかもと感じた人もいるかもしれません。
しかし、いきなり簿記2級から受けた人や職場や学校で強制的に受験させられている人などは、十分な試験対策をせず受験している場合も考えられます。
そのため、体感はもう少し合格率が高いと感じるかもしれません。
必要な勉強時間
簿記2級に必要な勉強時間は、200時間程度といわれています。
これは、1日1時間勉強するのであれば、約半年かかる計算です。
簿記3級の知識がある前提での勉強時間のため「基礎を忘れてしまった」「いきなり簿記2級を受けたいけど初心者」という場合は、さらに時間がかかります。
独学ではなく、スクールや通信教育を利用した場合も最低100時間はかかると考えておきましょう。
以下の記事では、簿記2級に合格するために必要な勉強時間についてさらに詳細に解説しています。2級取得を目指す方は是非一読ください。
簿記2級の合格に必要な勉強時間やおすすめの勉強方法を徹底解説!
簿記3級との違い
簿記3級は入門資格。経理や会計の基礎知識が身に付く資格です。
簿記2級はより深く幅広い商業簿記の知識が必要とされます。さらに新しい科目である工業簿記も加わることにより、製造に関する経理業務のノウハウも習得できます。
問題数も増えるため、試験時間は90分。第1問から3問までが商業簿記、第4問と5問は工業簿記の問題となっています。
簿記2級を取得していると、就職や転職活動でも有利に働く傾向があります。簿記以外のほかの資格にも、知識を活かすことができますよ。
以下の記事では、簿記2級の難易度について詳細に解説しています。簿記2級の受験を考えている方は是非参考にしてみてください。
簿記2級の難易度とは?独学で合格可能なのか、合格率なども紹介
統一試験とネット試験の違い
統一試験とネット試験の違いは、回答方法が紙かインターネット上で回答するかの違いです。簿記2級の場合、統一試験とネット試験では合格率に倍近くの差がありますが、出題範囲は変わりません。
また、統一試験は年に3回ですが、ネット試験は試験センターが定める日時でおこなわれるため、実施回数が多いのも特徴です。さらにネット試験では、受験日3日前までは受験日や会場の変更も可能。
合否に関しても違いがあり、統一試験は1か月程度時間がかかりますが、ネット試験はその場で結果がわかります。そのため、不合格だった場合は、すぐに再受験を検討したり、簿記3級からチャレンジしてみたりと、スケジュールも立てやすいことがうれしいポイントです。
簿記検定は、以前は統一試験だけでしたが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響によりネット試験が導入されました。
簿記2級と3級はネット試験の実施がありますが、簿記1級だけは今も変わらず統一試験のみの実施です。
簿記2級に合格するための勉強方法
簿記3級よりも難易度が高いと聞いて、どのように勉強したらいいのか悩んでいる人も少なくありません。
独学の場合、間違った勉強方法で進めていても、教えてくれる人はいないため「簿記2級に受かる気がしない」と挫折してしまう人も。
諦めずに合格を目指すために、簿記2級を独学で勉強するときにおすすめの方法をご紹介します。
テキストを繰り返し読む
まずは、テキストをしっかりと読みましょう。
簿記3級の知識はあるからといって、先に問題を解いてわからない部分をテキストで調べる勉強方法では、挫折してしまうことも。
テキストは少なくとも3回読むといいでしょう。1回目はあまり深入りせず全体を把握するように読み、2回目・3回目はより細部にも注目するようにしてください。
ただし、1回目を読んだときにほとんどよくわからない場合は、簿記3級の知識が浅いことも考えられます。もう一度、簿記3級のテキストを確認し、焦らず基礎から学んだほうがいいかもしれません。
簿記2級は、商業簿記と工業簿記のどちらからはじめても構いませんが、簿記3級の基礎知識がないと用語やルールに慣れず苦戦してしまいます。
テキストはさまざまなものがありますが、どのテキストも基本はしっかりと書かれているので、パラパラとめくって見やすい、読みやすいと感じるものを選べばOK。
簿記3級のときに活用したテキストが読みやすいと感じたときは、同じ出版社の簿記2級バージョンにするといいでしょう。
テキストは、最新のものを使用してください。出題範囲が改定されることがあるからです。
また、何冊もテキストを購入する必要はありません。わからないときは同じ一冊を繰り返し読むようにしましょう。
以下の記事では、簿記2級のおすすめテキストについて紹介しています。簿記2級の学習を始めようとしている方は是非参考にしてみてください。
簿記2級のおすすめテキスト15選!簿記2級の基本知識や勉強方法も
問題集は三回は解く
テキストをしっかりと読み終えたら、問題集を解いていきます。テキストでインプットした知識を定着させることが重要。
とくに間違えた問題は、しっかりと理解するまで繰り返しおこないましょう。ただし、答えを覚えてしまわないように注意。意味を覚えなくては、違う問題文や数字になったときに答えることができません。
丸暗記を防止するために、テキストと違い問題集は何冊か用意してもOKです。
過去問を解く
問題に慣れてきたら、過去問題にチャレンジ。過去5~6年分に挑戦してみるといいですよ。
過去問題を解くときは、本番と同じ条件でおこないましょう。時間も本番同様の90分で、どのくらい解けるのか試してみてください。
時間が足りない場合は、十分に理解していない部分がある証拠なので、間違えた部分や時間がかかってしまった部分の対策をしましょう。
また過去問題は、過去に実際に出題されたため、同じ問題は出ません。過去問題で80点以上取れるようになったら、予測問題を解いてみるといいでしょう。
苦手分野をつくらない
簿記は苦手分野をつくらないことが重要です。
簿記2級では、新しい科目として増えた工業簿記を苦手とする人が比較的多くみられます。しかし、点数配分は商業簿記が60点、工業簿記が40点となっているため、合格に必要な70点以上を取るには、工業簿記への対策が欠かせません。
出題率の高い問題ばかりを重点的におこなったり、自分が苦手な部分の出題率が低いからといって勉強しなかったりすると、類似問題や応用問題を解く力がつかないため、ヤマをはるのはNG。
間違えた原因を把握し、間違えなくなるまで問題を解き、苦手分野をつくらないようにしましょう。
簿記2級を受ける際の注意点
簿記2級は試験前の対策だけではなく、本番当日の対策も欠かせません。
まず、使い慣れた電卓を使用してください。電卓は種類によってボタンの位置や大きさが少しずつ違うため、いつもと違うものを使用すると計算ミスにつながります。簿記2級は時間との勝負でもあるので、素早い計算が要求されます。
また、試験当日は余裕をもった行動が大切です。行ったことのない場所が試験会場の場合は、下見をしておくとベスト。
試験直前の準備のほかに、試験が開始したら、どのようなことに気をつけるべきなのか確認しておきましょう。
まずはすべての問題に目を通す
試験が始まったら、第1問目から順番に解くのではなく、まず全体に目を通します。
1分程度でさっと全体を確認し、どのように解いていくかスケジュールを立てることが大切です。先に工業簿記から解いてももちろんOK。
試験開始後、周りは一斉に電卓をたたき始めるかもしれませんが、焦ることはありません。
解ける問題から解く
全体を把握したら、まずは自信のある、考えなくてもすぐに解ける問題から順番に解いていきましょう。
試験本番では、緊張して頭が真っ白になってしまい、いつもできていたことができなくなってしまうこともあります。そんなときは慌てずにわかる問題から先に解くことで、自信を取り戻すことができます。
とくに商業簿記は、わからない問題も部分点が取れる可能性もあるので、最後まであきらめずに頑張りましょう。
工業簿記は、計算自体は難しくはないため、後回しにして時間がなくなって焦るよりも、先に解いてしまうのもおすすめです。
時間配分を意識する
試験では時間配分を意識することがポイント。過去問題を解いたときに、ある程度かかる時間を把握しましょう。
商業簿記で50分、工業簿記で30分、見直し時間10分など、しっかりと時間配分をおこなうことで、1つの問題に時間をかけすぎてしまい、ほかの問題に手をつけることができなかったというトラブルを防げます。見直し時間も取ることも大切です。
また、途中で退出する人は気にしないようにしましょう。
早く問題が解けたから受かるわけではありません。さらに途中退出する人は、早く問題が解けたわけではなく、諦めた可能性もあります。
早さを競う必要はないため、周りは気にせず、自分のペースで問題を解いていきましょう。
試験本番での立ち回り方を意識する
試験本番では、難易度の高い問題が出題されるなどの予期せぬハプニングが起こることがあります。
難易度の高い問題が出たときは、焦らないことがポイント。「難しくて解けない…どうしよう」と悩むのではなく「これだけ難しいのだから、きっと周りの人もわかっていない」と気持ちを切り替えるようにしてください。
たとえば、工業簿記から解くと決めていても、第4問が難しいときは、第5問から解くなど、上手に立ち回ることが大切です。
簿記2級は独学で合格可能?
簿記2級は、独学でも合格可能です。しかし、3級よりも難易度が上がるため、計画をしっかりと立てて継続的に勉強しなくてはなりません。
簿記2級のテキストを見ても理解ができない場合は、簿記の基礎が身についていないことが考えられます。わからないまま進めるのではなく、苦手分野を作らないように簿記3級を復習するといいでしょう。
テキストを読んだあとは、問題集と過去問題にチャレンジ。わからない部分は放置せずにテキストを読み返し、問題に再チャレンジしてください。
制限時間が限られているため、問題を解く順番をあらかじめ決めたり、時間配分を考えたり、戦略を立てて挑むことも重要です。
独学では難しいと感じたときは、動画教材を使用したり、通信講座を受けてみたりするのもおすすめ。
また、簿記2級の学習期間は長いことが予測されるため、独学では集中力がなく、勉強が続かない人はスクールも検討してみるといいでしょう。
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まとめ
簿記2級は、3級とくらべると専門性が高くなるため、しっかりとスケジュールを立てて勉強をおこなうことが大切です。
簿記3級の基礎を忘れてしまった人は復習をしましょう。
統一試験とネット試験がありますが、出題範囲は同じです。自分に合った試験方法を選びましょう。ネット試験のほうが、実施日が多く日程変更もしやすいので、忙しい人にとっては便利です。
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