簿記1級を取得する8つのメリット!スペシャリストとして活躍できる

簿記1級のメリットの画像です

「簿記1級を取得しようか悩んでいる。取得するメリットはあるの?」

「簿記1級に意味がないって本当?どんな人が取得するメリットがあるの?」

簿記検定の最上位となる「簿記1級」。

非常に難易度が高く取得に時間と労力がかかるため「取得するメリットがあるのか」「取得しても資格を活かせるのか」悩んでいる方もいるでしょう。

簿記1級には、仕事やスキルアップなど様々な側面から見て8つのメリットがあります。

仕事・学校でのメリット
会計や経理の就職・転職で有利になる上場企業や監査法人などで専門性を活かして活躍できる
資格手当・昇進につながることがある資格の価値が評価されて資格手当支給や社内での昇進につながる
大学入試や推薦時のアピールポイントになる大学入試で優遇を用意しているケースがある
スキルアップ面でのメリット
公認会計士・税理士にチャレンジしやすい公認会計士試験・税理士試験受験で役に立つ
独立や起業時に知識を役立てられる独立時の財務諸表作成や業績把握に役立つ
職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される事務科の試験科目の一部が免除される
ライフワークでのメリット
資格の保有価値が高い難易度が高く誰もが合格できる資格ではないので保有価値が高い
投資や資産形成に活用できるプライベートでの資産形成や投資に活用できる

とくに専門性の高いスキルを活かして転職や就職、スキルアップに役立つことは大きなメリットだと言えるでしょう。

ただし、簿記1級は会計や経理のスペシャリストとして活躍できるレベルを持つからこそ「オーバースペック」になり「取得しても意味がない」と感じるケースがあります。

簿記1級のメリットを最大限に活用できるかどうか理解して、取得するべきか判断するようにしましょう。

日商簿記1級の取得が向いている人の画像です

そこでこの記事では、簿記1級を取得するメリット・デメリット、注意点、簿記1級を取得するメリットを最大限に活用できる人をご紹介します。

とくにメリットはリアルな声を踏まえてまとめているので必見です。

この記事を読むと分かること
・簿記1級を取得するメリットが分かる
・簿記1級は取得しても意味がないと言われるデメリット・注意点が分かる
・簿記1級のメリットを最大限に活用できる人が分かる

この記事を最後まで読めば、簿記1級を取得するべきか判断できるようになります。

簿記1級は会計や経理のスペシャリストとして活躍できる価値の高い資格なので、ぜひチェックしてみてください。

【簿記検定には3種類ある!日商簿記が主流】
簿記検定には下記の3種類があり「日商簿記」の受験が一般的です。
この記事では、日商簿記1級のメリットについて解説していきます。
3種類の簿記検定の違いは下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
【日商簿記、全商簿記、全経簿記の違いとは?】〜ネット試験などの最新情報もご紹介します!〜

1.日商簿記1級を取得する8つのメリット一覧

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冒頭でも触れたように、日商簿記1級を取得するメリットには下記の8つがあります。

仕事・学校でのメリット
会計や経理の就職・転職で有利になる上場企業や監査法人などで専門性を活かして活躍できる
資格手当・昇進につながることがある資格の価値が評価されて資格手当支給や社内での昇進につながる
大学入試や推薦時のアピールポイントになる大学入試で優遇を用意しているケースがある
スキルアップ面でのメリット
公認会計士・税理士にチャレンジしやすい公認会計士試験・税理士試験受験で役に立つ
独立や起業時に知識を役立てられる独立時の財務諸表作成や業績把握に役立つ
職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される事務科の試験科目の一部が免除される
ライフワークでのメリット
資格の保有価値が高い難易度が高く誰もが合格できる資格ではないので保有価値が高い
投資や資産形成に活用できるプライベートでの資産形成や投資に活用できる

日商簿記1級は日商簿記検定の最上位級なので保有価値が高く、会計や経理のスペシャリストとして活躍したい人にメリットが大きい資格です。

また、将来公認会計士・税理士になりたい人や生涯に渡り活用できる資格にチャレンジしたい人にも価値があるでしょう。

次の章からは日商簿記1級ならではのメリットを紹介するので、参考にしてみてください。

POINT💡【日商簿記1級は受験資格がなく誰でもチャレンジできる】
日商簿記1級には受験資格がないので、
2級や3級に合格していなくてもチャレンジすること自体は可能です。

ただし、日商簿記1級は2級までを理解していることが前提の試験内容なので、
2級や3級の試験範囲の論点も理解している必要があります。

2.【仕事・学校】日商簿記1級を取得するメリット

希望を持っている人の画像です

まずは、仕事や学校で日商簿記1級を取得するメリットをご紹介します。

日商簿記1級は専門性の高いスキルが身につくため、会計や経理の仕事で活用できます。

具体的にどのようなメリットがあるのかチェックしてみてください。

【仕事・学校】日商簿記1級を取得するメリット
・会計や経理の就職・転職で有利になる
・資格手当・昇進につながることがある
・大学入試や推薦時のアピールポイントになる

2-1.会計や経理の就職・転職で有利になる

日商簿記1級は高度な会計知識および経営管理能力を持つ証となるので、就職・転職に有利です。

日商簿記の3級や2級と比較すると「1級が最も有利になる」ことは間違いありません。

階級試験勉強する範囲就職・転職での有利度
日商簿記1級
商業簿記・工業簿記・会計学・原価計算難易度の高い資格を取得しているので就職・転職に非常に有利になる
日商簿記2級
商業簿記・工業簿記会計や経理の仕事に活かせるスキルを持っているので就職・転職に有利になる
日商簿記3級
商業簿記帳簿記入の知識に限定されるためサポート業務などには就ける可能性はあるものの上位資格と比較すると有利度が低い

日商簿記1級は帳簿記入・経営管理の専門的な知識だけでなく、会計基準や会社法などを理解し法規に沿って経営分析をするスキルを身につけます。

日商簿記2級や3級と比較すると知識量と専門性が格段に上がるため、企業の即戦力として期待してもらえるでしょう。

また、日商簿記1級を取得していると、就職先・転職先の選択肢が大幅に増えます。

簿記の級の比較の画像です
階級就職先・転職先の例求人例
日商簿記1級会計や経理のスペシャリストとして上場企業・中小監査法人などで勤務できる

上場企業の経理
上場企業の財務部
上場企業の内部監査部
会計・税理士事務所
コンサルティングファーム
監査法人
上場企業(または子会社)の経理職:年収600万円~
大手税理士法人:年収約800万円
日商簿記2級会計や経理の知識を活かして中小企業の会計や経理ができる

中小企業の経理
会計・税理士事務所
コンサルティングファーム
金融業界
監査法人
中小企業の経理部:年収約400万円
会計事務所:年収約480万円

※年収はあくまでも一例で実務経験や能力により左右されます

日商簿記2級の知識では、中小企業の経理や税理士事務所でのサポート業務などの求人が中心です。

一方で、日商簿記1級を取得していると、上場企業や大規模な会計・税理士事務所なども対象になる傾向があります。

なぜなら、上場企業をはじめとする大手企業では、日商簿記2級では学ばない、より複雑で高度な会計処理に関する理解や知識が必要とされるからです。

大手企業は子会社を持っていることが多く、取引先も非常に多いため、企業結合会計や事業分離会計などの日商簿記2級までではカバーできない知識を学んでいる日商簿記1級取得者は、就職先や転職先の選択肢が広がるのです。

【日商簿記1級を取得して就職・転職できた声】

日商簿記1級は専門的なスキルがある分年収もアップするため、理想的な収入を視野に入れた就職・転職ができるでしょう。

一例として、中小企業の経理部と上場企業の経理部では、年収に200万円ほどの差があります。

10年継続勤務すると、単純計算でも2,000万円もの差が出ます。

日商簿記1級の資格を活かして就職・転職したほうが、より高い年収で働ける企業に出会える可能性があるでしょう。

企業規模5年勤務の合計額10年勤務の合計額
中小企業の経理部
年収:約400万円
2,000万円4,000万円
上場企業の経理部
年収:約600万円~
3,000万円6,000万円
2,000万円の差!
※年収はあくまでも一例で実務経験や能力により左右されます

このように、日商簿記1級は高いスキルを持っている証明になるので、簿記2級、3級よりも確実に会計や経理への就職・転職に有利です。

▼日商簿記1級の転職については下記の記事でも触れているので、参考にしてみてください。

簿記1級は転職に有利なの?転職で活かす方法や年収なども紹介

【日商簿記は就職に役立つ資格として定評がある】
日商簿記検定は「日本の資格検定」が実施している
就職に役立つ資格・検定ランキング」で2021~2023年まで3年連続で1位を獲得しています。

採用担当者も日商簿記の資格価値を理解しているので、
最も難易度の高い1級を取得していると一目置かれて、
就職・転職時の大きなアピールポイントになります。

2-2.資格手当・昇進につながることがある

日商簿記1級を取得していると、資格手当支給や昇進につながることがあります。

日商簿記1級を取得していると「経理や会計のスペシャリスト」として、難易度の高い業務や専門性の高い業務も任せてもらえます。

その結果、社内での昇進につながる可能性があります。

会社によっては昇進の条件として「日商簿記1級取得」を掲げている場合があり、このケースでは日商簿記1級の取得は昇進への第一歩となるでしょう。

また、日商簿記1級のレベルの高さを理解して、資格手当を用意している会社もあります。

資格手当の金額は会社により異なりますが、数千円~数万円が相場です。

【資格手当の例】
・毎月の給与に数千円~数万円の資格手当が上乗せされる
・日商簿記1級合格時に一時金として資格手当が支給される

【日商簿記1級を取得して資格手当が支給された声】

例えば、毎月5,000円が支給された場合は、年間で6万円分の資格手当を受け取ることができます。

専門的な知識を業務に活かし昇進や資格手当の対象となれるのは、日商簿記1級ならではの魅力だと言えるでしょう。

2-3.大学入試や推薦時のアピールポイントになる

高校生が日商簿記1級を取得している場合は、大学入試や推薦時のアピールポイントになります。

入試時に優遇を受けられる大学は商工会議所の公式サイトで公表されています。

大学の種類優遇される内容優遇のある大学数
国公立大学応募時:資格保有に加え別要件も満たすことで出願資格を獲得8校
選考時:資格保有により選考時に加点1校
私立大学応募時: 資格保有により出願資格を獲得29校
応募時:資格保有に加え別要件も満たすことで出願資格を獲得45校
選考時:資格保有により選考時に加点33校
参考:日本商工会議所「活用の仕方」
※簿記の対象級について言及がない場合を除きます
※学科や選抜方法により優遇が異なる場合があります
※商工会議所の公式サイトで公表している大学のみで算出しています。詳しい優遇は志望大学にご確認ください

日商簿記1級は一橋大学商学部の学校推薦型選抜や滋賀大学経済学部の総合型選抜など、難関大学の出願資格の要件の一部になっています。

市立大学では主に選抜入試で選考時に加点対象となる大学が33校もあるので、志望大学が対象の場合は有効活用できるでしょう。

また、商業科や経済学部など会計や経営に関する知識を学ぶ学科では、エントリーシートや自己PRでのアピールポイントになります。

面接官は、日商簿記1級の難易度の高さやレベルを把握しています。

「目標に向けてコツコツと努力できる」「難易度の高い試験勉強に取り組める」など、試験勉強への姿勢と知識を評価してもらえるはずです。

【高校生で簿記1級に合格した声】

ハードルが高く感じるかもしれませんが少なからず高校生での合格者はいるので、大学入試に向けて挑戦してみるのもいいでしょう。

【大学生は日商簿記1級取得を就職活動に活かせる】
高校生が日商簿記1級を取得すると進学に活用できますが、
大学生が日商簿記1級を取得すると就職活動に活かせます。

とくに会計や経理に関する仕事では
大学時代に日商簿記1級を取得したことを評価してもらえることが多いため、
日商簿記1級の資格を保持していることで、希望の企業に就職出来る可能性が高くなります。

3.【スキルアップ】日商簿記1級を取得するメリット

ステップアップしている人の画像です

続けて、スキルアップを目指すときに日商簿記1級を取得するメリットをご紹介します。

日商簿記1級は公認会計士・税理士を目指すときや独立・起業を目指すときに役立ちます。

具体的にどのような点がメリットになるのかチェックしてみてください。

【スキルアップ】日商簿記1級を取得するメリット
・公認会計士、税理士にチャレンジしやすい
・独立や起業時に知識を役立てられる
・職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される

3-1.公認会計士、税理士にチャレンジしやすい

将来、公認会計士・税理士資格にチャレンジしたい場合は、日商簿記1級を取得するメリットがあります。

なぜなら、公認会計士・税理士試験の出題範囲である「会計科目」を前もって勉強できるからです。

公認会計士試験の出題範囲
会計科目財務会計論:財務諸表作成のための計算や理論的背景を学ぶ科目で日商簿記1級の内容が基礎となる
管理会計論:会社内部で経営判断などに活用する会計データの計算や知識を学ぶ科目で日商簿記1級の内容が基礎となる
その他の科目監査論:監査業務に関する諸制度や公認会計士に必要な資質、価値観を確認する科目
企業法:会社法や商法、金融商品取引法を中心に法律知識を確認する科目
租税法:租税法総論や法人税法、所得税法などの租税実体法の知識を確認する科目
選択科目:経営学・経済学・民法・統計学の中から1科目選択して受験する

財務会計論は日商簿記1級の商業簿記・会計学の試験範囲と大半が被っています。また、管理会計論は日商簿記1級の工業簿記・原価計算の試験範囲と大半が被っています。

そのため、簿記1級を保持している方は、公認会計士試験にかかる時間と負担を軽減でき、効率よく合格を目指せるでしょう。

公認会計士に興味のある方は、以下の記事を参考にしてください。

【CPA会計学院:公認会計士とは?仕事内容や向いている人を解説】

(URL:https://cpa-net.jp/blog/about-cpa/)

【CPA会計学院:【最新】公認会計士試験の詳しい内容や日程、難易度を解説】

(URL:https://cpa-net.jp/blog/exam/

税理士試験の出題範囲
会計科目
必須科目
簿記論:帳簿記入の方法を学ぶ科目で9割が日商簿記1級の出題範囲と被っている
財務諸表論:財務諸表の考え方、ルールを学ぶ科目で日商簿記1級の内容が基礎になる
税法科目
※選考科目あり
国税科目:法人税や所得税、消費税など
地方税科目:固定資産税法や住民税、事業税

税理士試験では「会計科目」と「税法科目」が出題範囲で、「会計科目」は誰もが受験しなければならない必須科目になっています。

会計科目は「簿記論」と「財務諸表論」の2つで構成されており、実はどちらも日商簿記1級で学ぶ内容が含まれています。

簿記論は9割が日商簿記1級の範囲と被っていると言われているので、日商簿記1級を取得すれば効率よく勉強を進められるでしょう。

財務諸表論も日商簿記1級で学んだ内容がベースとなるため、税理士試験の勉強を開始したときの理解に役立ちます。

また、日商簿記1級合格者は税理士試験税法科目※の受験資格を獲得できます。

※令和5年(2023年)4月1日以降、税理士試験の受験資格は緩和されています。税理士試験の会計科目(簿記論・財務諸表論)に関しては受験資格が不要となっております。
URL:https://www.nichizeiren.or.jp/prospects/exam_relief/

資格による受験資格
日商簿記検定1級合格者全経簿記検定上級合格者
出典:国税庁「税理士試験受験資格の概要」
※全経簿記検定とは経理・会計専門学校の学生を対象とした簿記検定のこと

税理士試験税法科目の受験資格には「学識」「資格」「職歴」による受験資格があり、いずれか1つを満たさなければなりません。

日商簿記1級に合格すれば会計に関する職歴や学歴がなくても、税理士試験に挑戦できます。

実際に日商簿記1級にチャレンジをして税理士を目指す方は一定数いるので、将来税理士として活躍したい場合にも魅力的な資格だと言えるでしょう。

【日商簿記1級取得から税理士を目指す声】

3-2.独立や起業時に知識を役立てられる

将来、何らかの事業で独立や起業を考えている場合は、日商簿記1級の知識を役立てられます。

【独立・起業時に知識が役立つシーン】
・お金の流れを把握しながら事業計画が立てられる
・財務諸表を理解しているため決算書作成・確定申告ができる
・財務諸表から経営状況を読み解き軌道修正ができる

独立したばかりのときに、財務諸表の作成や管理を税理士などに依頼すると費用がかさみます。

独立時の規模にもよりますが毎月税理士に8万円の費用を支払うとすると、年間で96万円のコストがかかります。

また、財務諸表の作成を外部に依頼してしまうと、即時に収益の状況を掴むことが難しくなるでしょう。なぜなら、財務諸表を作成している外部者から財務諸表を提供されない限り、自社の経営状況を客観的に閲覧することができないからです。

独立した直後は、「予定通りの収益が発生しているのか」「どこに課題があるのか」ということを分析し、改善を繰り返していくことが特に重要ですが、財務諸表作成の外部委託により自社の経営状況の迅速な分析および改善ができない可能性が高くなってしまします。

日商簿記1級を取得していれば、自社の財務諸表を作成するための知識も十分に持ち合わせているため、自分で財務諸表の作成が可能です。

加えて、財務諸表を読み解くスキルも備わっているので、経営戦略に活かすこともできます。

そのため、自ら財務諸表を作成することで、思ったように収益化できていない等の経営改善が必要な部分を分析しながら、すぐに軌道修正することもできるでしょう。

このように、独立や起業を視野に入れている場合は、経営状況を把握するスキルとして日商簿記1級を活用できます。

【日商簿記1級を独立に活かす声】

【日商簿記1級の資格で専門家になることは難しい】
日商簿記1級の資格そのもので、会計や経理の専門家として起業することは難しいのが実状です。
5-2.独占業務がなく資格のみで活躍することが難しい」でも詳しく解説していますが、
日商簿記1級には税理士や公認会計士のような独占業務がなく、
専門家として活躍するには乏しい側面があります。

そのため、コンサルティングや金融業など他の業種で独立するときの補助的な知識として、
活用することがベストでしょう。

3-3.職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される

日商簿記1級を取得していると、指導員資格試験の一部科目が免除されます。

合格者の特典    
職業能力開発促進法の指導員資格試験で、事務科の試験科目の一部が免除されます
出典:日本商工会議所「試験科目・注意事項」

職業能力開発促進法の指導員とは、職業能力開発促進法に基づいて職業能力開発施設で指導をする指導員(先生)のことです。

具体的には、職業訓練生に簿記や会計の知識を教えたり就職のサポートをしたりする業務を担います。

指導員になるには、小学校や中学校の先生と同じように免許を取得しなければなりません。

免許取得には指定の講習受講後に試験を受ける必要がありますが、日商簿記1級に合格していると事務科の試験科目の一部が免除されます。

つまり、一部科目免除を受けながら効率よく指導員の免許取得を目指せるのです。

・地域の職業能力開発施設の指導員として活躍したい

・日商簿記1級の試験勉強で得た知識を第三者に教えたい

という場合には、日商簿記1級を取得するメリットがあるでしょう。

4.【ライフワーク】日商簿記1級を取得するメリット

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日商簿記1級は仕事だけでなく、プライベートでも活用できます。

ここでは、ライフワークでの日商簿記1級を取得するメリットをご紹介します。

日商簿記1級の価値を理解するためにも、ぜひチェックしてみてください。

【ライフワーク】日商簿記1級を取得するメリット
・資格の保有価値が高い
・投資や資産形成に活用できる

4-1.資格の保有価値が高い

日商簿記1級は難易度が非常に高く、保有者が少ないです。

過去10回(152~165回)の平均合格率は10.95%で、受験者の10人に約1人しか合格できない難関資格です。

社会保険労務士や中小企業診断士、一級建築士と同等の偏差値が必要だとも言われています。

日商簿記1級 統一試験の合格率
実受験者数合格者数合格率
165回(2023年11月19日実施)10,251名1,722名16.8%
164回(2023年6月11日実施)9,295名1,164名12.5%
162回(2022年11月20日実施)9,828名1,027名10.4%%
161回(2022年6月12日実施)8,918名902名10.1%
159回(2021年11月21日実施)9,194名935名10.2%
参考:日本商工会議所「1級受験者データ(統一試験)」

日商簿記3級や2級の平均合格率と比較してみても日商簿記1級の難易度が非常に高く、簡単に取得できるものではないことが分かるでしょう。

日商簿記1級約10%
日商簿記2級約30%
日商簿記3級約40%

このように、日商簿記1級は難易度が高く合格するハードルが高いため、保有しているだけでも箔がつきます。

「日商簿記1級を取得しているのは凄い」「合格できるのは尊敬する」など、周囲から一目置かれるでしょう。

【日商簿記1級の保有価値を評価する声】

また、日商簿記検定は更新など制度もなく、一度取得すれば生涯に渡り「日商簿記1級取得者」だと名乗ることができます。

現在の仕事に活用できなかったとしても将来の転職や起業、資産形成など様々な面で役立つため、保有価値が高いと言われています。

▼日商簿記1級の合格率については下記の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

簿記1級の合格率が知りたい!取得するメリットや勉強時間はどのくらいかかる?

4-2.投資や資産形成に活用できる

日商簿記1級の知識は仕事だけでなく、プライベートでも活用できます。

【日商簿記1級の知識を活かす例】
・資産運用をするときに「財務諸表」を読み解き今後の予測に役立てる
・マイホームの購入など大きな決断をするときに収支のバランスを考えながら計画を立てられる
・家計を見直して無駄な支出を減らし効率よく資産形成ができる

【日商簿記1級を投資に活用している声】

例えば、株式投資をするときに日商簿記1級の知識があれば、投資したい会社の財務諸表を理解できます。

会社の現状を正しく理解したうえで、将来性や収益性を分析できるようになるでしょう。

また、プライベートでの日々の買い物は家計簿アプリなどを使えば簡単にできますが、判断が難しいのはマイホームなど大きな買い物をするときです。

日商簿記1級の知識があれば収支のバランスを考えながら、納得できる計画を立てられるでしょう。

日商簿記で学ぶ「お金の流れ」は、世の中が資本主義社会である以上、日常生活から切り離すことができません。

だからこそ、専門性の高い確かな知識を身につけることで、プライベートでも最適な判断ができるようになります。

5.日商簿記1級は意味がない?目指すときの注意点・デメリット

悩みを持っている人の画像です

ここまで、日商簿記1級のメリットを解説してきました。

日商簿記1級は会計や経理の専門性の高い知識を身につけるため、幅広い領域で役立ちます。

また、希少価値が高いため、持っているだけで差別化が図れるところも大きな魅力でしょう。

一方で「日商簿記1級は取得しても意味がない」という声があることも確かです。

【日商簿記1級は取得しても意味がないという声】

なぜ、そのような声が出てしまうのでしょうか?ここでは、日商簿記1級を目指す前に知っておきたい注意点やデメリットをご紹介します。

日商簿記1級を取得するデメリット・注意点
・難易度が高くコツコツと勉強をしなければならない
・独占業務がなく資格のみで活躍することが難しい
・一般職では価値を発揮しにくい

▼日商簿記1級は意味がないと言われる理由は下記の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

簿記1級は意味がない?簿記1級を取得するメリットが大きい人と小さい人について解説!

5-1.難易度が高くコツコツと勉強をしなければならない

4-1.資格の保有価値が高い」で触れたように、日商簿記1級は平均合格率が約10%で難易度の高い資格です。

だからこそ希少価値があるのですが、見方を変えると専門的なスキルを身につけられるレベルの勉強をしなければなりません。

日商簿記3級や2級と勉強時間、出題範囲を比較すると、1級合格には2倍以上の時間がかかります。

階級出題範囲勉強時間の目安
日商簿記1級商業簿記・工業簿記・会計学・原価計算500~2,000時間
日商簿記2級商業簿記・工業簿記250時間
日商簿記3級商業簿記100~150時間

勉強時間に幅があるのは、日商簿記2級までの理解度により必要な時間が変わるからです。

日商簿記1級は日商簿記2級までの知識があることを前提に、会計学や原価計算など新しい出題範囲が加わります。

そのため、日商簿記2級までの理解度が低いと、試験勉強に1,000時間以上かかる場合もあるでしょう。

仮に1,000時間の勉強が必要で毎日2~3時間程度試験勉強すると、約1年試験勉強を継続しなければなりません。

日商簿記2級までと比較すると、試験勉強にかかる負担と期間が大きく変わるので「絶対に日商簿記1級に合格したい」という強い意志を持ち、勉強を続けることが大切です。

【工夫して試験勉強をすれば一発合格は夢ではない】
「日商簿記1級はハードルが高いかも」と感じる方もいるかと思いますが、
試験勉強法を工夫して毎日コツコツ取り組めば一発合格も夢ではありません。

▼下記の記事では日商簿記1級の全国1位合格者に合格の秘訣を聞いているので、
ぜひ参考にしてみてください。
日商簿記1級 全国1位合格の藤木さんに勉強方法のコツを聞いてみた!
▼日商簿記1級の試験勉強に使えるおすすめテキストをまとめたので、
ぜひチェックしてみてください。
簿記1級におすすめのテキスト5選!今は1級も無料で勉強できる時代

5-2.独占業務がなく資格のみで活躍することが難しい

日商簿記1級は難易度が高い資格ではあるものの、独占業務がありません。

独占業務とは、資格を有する人しか携われない業務のことです。

公認会計士や税理士、行政書士などは下記のようにそれぞれ独占業務があります。

職種独占業務
監査・会計のスペシャリスト
公認会計士
監査
(法律に基づいて企業や学校、公共団体の監査業務を行う)
税務のスペシャリスト
税理士
税務の代理
税務書類の作成
税務相談
(税務に関する代理業務や書類作成、相談を行う)
法務と実務のスペシャリスト
行政書士
官公署に提出する書類の作成と代理、相談
権利義務に関する書類の作成と代理、相談
事実証明に関する書類の作成と代理、相談

例えば、監査業務は、公認会計士資格がある人しか行うことができません。

他の資格者では携わることができないので、公認会計士資格を使い活躍しやすくなります。

また、独占業務があると独立しやすいので、資格の価値を活かしてステップアップすることも可能です。

一方で、日商簿記1級にはこのような独占業務がないため、資格の価値を理解している経理や会計業務の場に身を置く必要があります。

経理や会計業務の場にいれば日商簿記1級の資格の価値を活かして業務ができますが、日商簿記1級のみで独立や開業はなかなか難しいです。

経理や会計の場で資格を活かして活躍するためにも、リーダーシップやコミュニケーション能力など他のスキルも磨いておくといいでしょう。

5-3.一般職では価値を発揮しにくい

日商簿記1級は会計や経理のスペシャリストとして活躍できる専門性の高いスキルだからこそ、一般職ではなかなか価値を発揮しにくいです。

なぜなら、一般職では日商簿記1級ほどの専門性の高いスキルを必要としていないからです。

【日商簿記1級の知識を活かせない例】
・一般的な事務職や営業職:オーバースペックで専門性を活かせる機会が少ない
・中小企業の経理:簡単な経理・会計処理しか必要ない場合は専門性を活かしきれない
・製造業以外の中小企業:工業簿記や原価計算が不要なので専門性を活かしきれない

上記のケースでももちろん日商簿記1級を取得していて損はないのですが、せっかく身につけた専門性の高い知識を活かせる機会が少ないです。

例えば、中小企業の経理で連結会計が不要・簡単な経理・会計処理しか行わないとなると、日商簿記1級の知識はオーバースペックとなるでしょう。

日商簿記1級の知識を活かした仕事がしたい場合は、自分のスキルを適切に発揮できる職業に就けるような就職・転職を目指すことが大切です。

6.日商簿記1級のメリットを最大限に活用できる!メリットが大きい人の特徴

パソコンを使って勉強している人の画像です

日商簿記1級は専門性の高い資格だからこそ「資格の知識を活かせる」シーンが限定されます。

では、どのようなケースに日商簿記1級のメリットを最大限に活用できるのでしょうか?

ここでは、日商簿記1級取得のメリットが大きい人の特徴をご紹介します。

どのようなケースに日商簿記1級の資格を有効活用できるのかチェックしておきましょう。

日商簿記1級のメリットを最大限に活用できる人
・大手企業の会計・経理業務に携わりたい人
・日商簿記1級の知識を活かせる業種に転職したい人
・公認会計士、税理士を目指す人

6-1.大手企業の会計・経理業務に携わりたい人

こんな人におすすめ
・日商簿記1級の知識を実務に活かしたい
・日商簿記1級の価値を理解してくれる環境で働きたい
・会計や経理のスペシャリストとして実務経験を積みたい

1つ目は、大手企業の会計や経理業務に携わりたい人です。

2-1.会計や経理の就職・転職で有利になる」でも触れましたが、大手企業の会計や経理に従事するには日商簿記1級で学ぶ税効果会計や連結会計など専門性の高い知識が必要です。

日商簿記2級レベルでも挑戦できないことはないですが、日商簿記1級を取得していたほうが圧倒的に有利でしょう。

また、大手企業では日商簿記1級で学ぶ知識を活かせる環境と資格の価値を評価してもらいやすい環境があります。

項目概要
日商簿記1級で学ぶ知識を活かせる環境日商簿記1級で学ぶ商業簿記・会計学・連結会計を活かしながら実務経験を積める
資格の価値を評価してもらいやすい環境日商簿記1級の難易度や価値を理解している
ある程度実務経験を積んだ後に内部監査に回る・経営に携わるなど様々なキャリアを描ける

大企業には日商簿記1級で学んだ知識を体系的に使える環境があるので「日商簿記1級の資格を活かして働きたい」「日商簿記1級の知識を実務に役立てたい」という場合に向いています。

また、大企業は日商簿記1級の価値を理解しているので、実務経験を積んだ後に内部監査に回る、経営に携わるなど社内でのキャリアアップがしやすいです。

このように、会計や経理のスペシャリストとして専門性を活かして活躍したい人には、日商簿記1級のメリットが最大限に活用できるでしょう。

6-2.日商簿記1級の知識を活かせる業種に転職したい人

こんな人におすすめ
・現状の給与や業務内容に満足していない
・日商簿記1級の資格を活かして他業種にチャレンジしたい

2つ目は、日商簿記1級の知識を活かせる業種に転職したい人です。

日商簿記1級は会計や経理に関する専門的なスキルがある証明になるので、未経験や他業種からでも転職できる場合があります。

現状の給与や待遇に満足していない場合や経理・会計の仕事に興味がある場合は、日商簿記1級を取得して転職活動をしてみるのもいいでしょう。

実際に、日商簿記1級保有を条件にしている求人で「未経験歓迎」「実務経験不問」のものは一定数あります。

条件や業務内容を確認しながら転職活動をすることで、理想の働き方を実現できる可能性があります。

また、「2-1.会計や経理の就職・転職で有利になる」で触れたように、日商簿記1級を必要とする会社は大企業や監査法人、会計・税理士事務所が主流です。

中小企業と比較すると年収が高くなる傾向があるため、年収アップも狙えるでしょう。

6-3.公認会計士、税理士を目指す人

こんな人におすすめ
・公認会計士、税理士を目指している
・税理士を目指したいけれど受験要件を満たせず困っている

3つ目は、将来公認会計士・税理士を目指したい人です。

3-1.公認会計士、税理士にチャレンジしやすい」でも触れたように、日商簿記1級は下記の観点から公認会計士・税理士を目指したい人に向いています。

【日商簿記1級が公認会計士を目指す人に向いている理由】
1)公認会計士試験の出題範囲である「会計科目」を前もって勉強できる
【日商簿記1級が税理士を目指す人に向いている理由】
1)税理士試験の出題範囲である「会計科目」を前もって勉強できる
2)税理士試験税法科目の受験要件を満たせる

とくに、今まで会計や経理の仕事をしたことがない場合や会計や経理に関する学校に進学していない場合は、税理士試験税法科目の受験要件を満たすことが難しいです。

日商簿記1級に合格すればそれだけで税法科目の受験要件を満たせるため、税理士を目指して一歩前進できます。

【公認会計士を目指すなら公認会計士試験勉強からスタートするのがおすすめ】
前述したように、日商簿記1級の勉強は公認会計士試験の勉強に役に立ちますが、
公認会計士を目指そうと決意している場合は、
日商簿記1級に挑戦していると遠回りになると言われています。

なぜなら、日商簿記1級と公認会計士試験の会計科目では、
問題の出題形式が少し異なっているため、簿記1級に合格する実力を身につけても、
公認会計士試験の問題形式に慣れる必要があるからです。

また、基本的に公認会計士の資格スクールの入門講義では、
簿記3級や2級レベルの内容から始まるため、公認会計士の勉強から始めても問題ありません。

そのため、公認会計士を目指すと決めているなら、
公認会計士試験勉強からスタートすることがおすすめです。

7.まとめ

今回は、日商簿記1級を取得するメリットを詳しくご紹介しました。

日商簿記1級のメリットが理解でき、取得するべきか判断できたでしょう。

最後にこの記事の内容を振り返ってみましょう。

〇日商簿記1級を取得するメリットは下記のとおり

1)仕事・学校でのメリット

・会計や経理の就職・転職で有利になる

・資格手当・昇進につながることがある

・大学入試や推薦時のアピールポイントになる

2)スキルアップでのメリット

・公認会計士、税理士にチャレンジしやすい

・独立や起業時に知識を役立てられる

・職業能力開発促進法の指導員資格試験の一部科目が免除される

3)ライフワークでのメリット

・資格の保有価値が高い

・投資や資産形成に活用できる

〇日商簿記1級を目指すときのデメリット・注意点は次の3つ

・難易度が高くコツコツと勉強をしなければならない

・独占業務がなく資格のみで活躍することが難しい

・一般職では価値を発揮しにくい

〇日商簿記1級のメリットを最大限に活用できる人は下記のとおり

・大手企業の会計・経理業務に携わりたい人

・日商簿記1級の知識を活かせる業種に転職したい人

・公認会計士、税理士を目指す人

日商簿記1級は希少価値があり、会計や経理のスペシャリストとして活躍できる資格です。

将来のビジョンや資格取得の目的に応じて、日商簿記1級を目指すか検討してみてください。

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