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経理→経理→経理→プロダクトマネージャー→経理。大手経理担当者の経歴から見る、新しいキャリアモデル

経理→経理→経理→プロダクトマネージャー→経理。大手経理担当者の経歴から見る、新しいキャリアモデル

新卒でプライム上場の経理部に所属して以来、長年事業会社の経理を務めているMさん。
4社目で会計ソフト会社のプロダクトマネージャーに転職、という稀有なご経験をされながらも、現在は2社目の会社に戻り、経理としてご活躍されています。

「プロダクトマネージャーを経験するキャリアをおすすめしたい!」と話すMさんですが、一体どのようなキャリアを歩まれて今のポジションに至ったのか。
大手・上場企業経理の働き方や、ネクストキャリアの見つけ方が知りたい方は必見です!

プロフィール Profile

名前 :Mさん
業界 :飲食サービス業
卒業学部 :経済学部
所持資格 :日商簿記2級、AEAJアロマテラピーインストラクター
大事にしているキーワード :自己開示

経歴 Career

2007年 新卒で東証プライム上場企業(総合電機メーカー)の経理部会計課に就職
2016年 全国に店舗のある大手飲食サービス業に転職
2020年 IT会社に転職し、子会社管理等を経験
2021年 会計ソフトを作る会社でプロダクトマネージャーに
2022年 2社目の会社に戻り、経理担当としてご活躍

ここから始まる経理キャリアの引き金は、就活中のとある出会い

Mさんは新卒から経理ということですが、最初に経理を選んだ理由を伺ってもよろしいでしょうか?


 

いろんな会社の採用面接を受けていく中で、経理の魅力を熱く語ってくださる方に出会いまして。その方の言葉が一番の要因ですね。

 

その方はどんな風に経理の魅力を語ってくださったんですか?


 

「会社の業績を左右する流れは3つ、ヒト・モノ・カネだ」と。「その中でもお金は他の二つの根底にあるものだから、好奇心さえあれば会社の全てが分かる人になれるよ」というような文句で勧誘してくれました(笑)

 

そこの会社にはご縁がなくて入れなかったのですが、その言葉に感化されて経理志望で就活を進めることに。でも大学では会計や簿記を特別に学んでいたわけではなかったので、事前の知識は全然なかったです。1社目に就職した後「簿記取得して」と言われて、1年目のうちに2級まで取りました。

 

実際に経理になってみていかがでしたか?


 

15年前だったという時代背景もあって、1社目は残業も多く、経験値は積めましたが正直しんどいことの方が多かったです(笑)

 

でもなんだかんだで9年間働きまして、そのうち6年間はグローバルの連結決算、残りの3年間は単独決算をメインに担当しました。連結決算はパッケージ収集から開示資料作成まで一通り回った感じです。単独決算は金融商品と固定資産を主に担当しました。

 

全国の支社に加えて海外にも子会社があるので、どこに転勤になってもおかしくなかったんですが、9年間奇跡的に転勤も異動もなかったです。ただ、子供が産まれたタイミングで、自分の単身赴任が家庭にとって最大のリスクになると考え、転勤のない会社を探して転職をすることにしました。

 

初めてのキャリアチェンジとなる2社目はどのように探されたんですか?


 

2社目(兼現職)は転職エージェントさんからの紹介で出会いました。転勤のない会社が第一条件だったこと、他業種にチャレンジしてみたかったことに加え、ご縁を感じたのもあって入社を決めました。

 

2社目の会社では現在も働かれているということですが、当時はどんなお仕事をされていたんですか?


 

アルバイト・パートも合わせるとかなりの人数規模になるため、提出される大量の経費精算が正しい内容かを確認したり、請求書の内容と申請が合っているかを確認したり、という支払い内容の確認が一つ。

 

全国に店舗があるので、それぞれの店舗の固定資産を計上し台帳管理する業務も担当していました。なんだかずっと固定資産を見ている気がしますね。

 

そこから更に転職を考えたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?


 

サブリーダー的なポジションで入って、その後チームマネージャーになったものの、コロナ禍が生じたタイミングで自分のやりたいこと、個人として勝負したいことへの思いが強くなり、再度転職をすることにしました。

 

異業界の経理を経て、今若手におすすめしたいキャリアとは

「個人として勝負がしたい」という思いのもと、3社目はどのような会社に転職されたのでしょうか?


 

IT・デジタル分野にずっと興味があったので、ITで人材紹介マッチングを支援する会社に転職しました。そこでは子会社の管理や連結決算のとりまとめをしていたんですが、商習慣が今までと全然違っていて、同じ経理でも求められるものが違うことを身をもって知りましたね。

 

ただ、自分の思っていた環境と実際とのギャップについていくことができず、多くの学びを得られた環境ではあったのですが1年経たずに辞めてしまいました。転職先を選ぶ難しさを痛感した経験です。

 

そうだったんですね。4社目の会社も、ご興味のあったIT系を選ばれたのでしょうか?


 

そうなんです。ただ経理ではなくて。

1年しかいなかったんですが、会計ソフトを作る会社にプロダクトマネージャーとして入社しました。これは本当に「興味の深い分野で、個人としてどこまで勝負できるか」を試したかった転職になります。

 

プロダクトマネージャー!?…というと、エンジニア経験が必要なイメージがありますが…。


 

基本的にはそうですよね。

もちろん僕はエンジニア経験なんてゼロの状態で入ったんですが、『作っている製品が経理が使用するもの』という背景で、会社側から「ぜひ来てほしい」と言ってもらえたんです。

 

実際の業務はどのようなことをされていたんでしょうか?


 

プロダクトを開発する側が思い描いている「ユーザーだったらこういうサービスが欲しいはずだ」というものと、ユーザーの「本当にほしいもの」がずれていることって結構あると思うんですよ。

 

だから経理として自分の経験を活かして、ユーザーインタビューを行って、他のエンジニアやデザイナー、セールスのメンバーと話して調整して、ユーザーの意見をサービス開発に反映させる、というのが僕の役目でした。

 

プロダクトマネージャーとしての日々はいかがでしたか?


 

楽しかったですねぇ。でも「10年早くチャレンジしておけばよかった」というのが本音です。僕は社会人になって17年で始めているので、若いうちからやっている人に比べたら社会に対して与えるインパクトって限界があるなと感じてしまって。

 

「自分でもやればできるじゃん!」と思うのと同時に「この仕事って本当に今の自分の影響力が最大化されてるのかな?」って疑問を覚えたんです。そう考えたら、経理として教育や業務改善をした方が、周囲に与える影響も自分のキャリアの可能性も大きいと思って。

 

だからまた経理に戻ることにしたのですが、お若い方にはぜひこのキャリアをおすすめしたいですね。経理という仕事、業務を別の視点から捉えることができ、業務の一般化や効率化に新たな気づきを得ることができました。また開発の現場に加わることで、会計システムのロジックの理解も深まりました。

 

おすすめとはいえ、簡単に選べるキャリアではないと思うのですが、どうしたらこのようなキャリアを歩めると思いますか?


 

難しいですよね…(笑) 思い浮かぶのは、IT系の資格を取りに行くか、今社内で扱っているシステムを使い倒すか、ですかね。ただどちらかを選ぶのであれば、資格取得よりも社内のシステムを使い倒す経験をするほうがステップアップにつながると思います。

 

自分はたまたま連結決算のチームに入って、たまたま「システムはよろしく!」って任されたのがきっかけだったので。連結決算にもシステムにも詳しくなれたおかげで『経理でシステムもチョットワカル人』っていうポジションとして働けているんですよね。

 

だから「このシステムに関しては自分に任せてください!」って言えるようになるまでシステムを使い倒すか、もっとシンプルに、Excelでもいいので縦横無尽に使いこなして業務改善を徹底的にやるのが一番効果的なんじゃないかな。そうすると引く手あまたな人材になれると思います。

 

具体的な解決策をありがとうございます!システムに詳しい方の市場価値はこれからもどんどん上がっていきそうですね。

売上を上げられない経理ができる、会社への貢献の仕方

色々な経験をされた上で、今後はどんな経理パーソンになりたいですか?


 

経理として日々の業務にあたるよりは、『経理の知識をもったデジタル人材』的な立ち位置で、部門横断で業務改善をしていきたいと思ってます。

 

世の中の職種でいうと業務改善コンサルが近いのかなと思うけど、コンサルの専門会社にいくと『社外から改善提案をする人』になってしまうので、経営戦略室とか、社長特命みたいな肩書きで、あくまでも『社内の人間』としてコンサル的な動きをしたいなと。今はそうやって部門を跨いでやっている人がいないので、2〜3年以内にそのポジションを作れたらいいなと思っています。

 

新卒以来ずっと経理と共に歩んで来られているMさんですが、経理という仕事の何が、そこまでMさんを惹きつけているのでしょうか?


 

経理って、良くも悪くも数字をひたすらながめる仕事なんですよ。だけどその数字は、会社の血液なんです。だから経理の仕事は『会社の健康診断』みたいなものだと思っていて。

 

自分たちはあくまでも縁の下の裏方ポジションなので、表で売上をつくる人の責任感とは違うけど、会社の動きや業績の変化にいち早く気付かなきゃいけないし、表舞台に出ないからこそデータの流れを整理したり、表の人が仕事しやすいように改善したりしないといけない。そういう責任感を持って仕事ができるのが、経理の一番のやりがいだと思っています。

 

誰よりも会社のお金を見ているからこそ芽生える責任感かもしれませんね。


 

だって経理だけで売上は上げられないじゃないですか。経理は、費用を少なくすることでしか主に貢献できないんです。だから表舞台の人たちがもっと売上を上げられるように、人件費以上の価値を発揮し続けていかないといけないんです。

 

社会人3年目くらいから、自分にそう言い聞かせてます。

経理を目指す人、もっと増えてもいいと思ってます!

 

経理という仕事の本質を教えていただいた気がします。経理の魅力をもっと発信できるよう、CPAラーニングも頑張ります!Mさん、熱いお話をありがとうございました!

Mさん的、経理に大事な3つのスキル

  • 1. 先読み力(異変に気付く力)
  • 2. 「悩んだら自分に相談してね」という雰囲気づくり(その前に日々の業務で信頼してもらうこと!)
  • 3. デジタルセンス(経理業務を効率化しようとすると、もう避けては通れない…)